緩和ケア病棟入院料とは
緩和ケア病棟入院料は、A310に位置づけられる特定入院料です。届出を行った緩和ケア病棟で、対象となる患者に緩和ケアを提供した場合に算定します。入院料1・2があり、それぞれ30日以内、31〜60日、61日以上の期間で1日当たりの点数が異なります。
療法士が押さえたいのは、「対象患者」「1・2の施設基準」「リハ料が入院料に含まれるか」の3点です。この記事では、2026年度の現行告示に基づき、病棟の届出と患者ごとの算定区分を確認するための要点を整理します。
制度確認日:2026年10月5日。厚生労働省の現行点数表・施設基準告示と地方厚生局の届出案内を参照しています。
入院料全体の位置づけは、入院基本料とは?療法士向けに病棟機能を整理で確認できます。
この記事の結論
- 対象は、緩和ケアを要する悪性腫瘍・後天性免疫不全症候群・終末期の末期腎不全の患者です。
- 1・2とも看護師による7対1の配置基準があり、入院料1には受入れ体制または在宅緩和ケアの実績と、関連する届出が追加されます。
- A310を算定している患者のリハビリテーション料は包括されます。リハを実施することと、別に算定することを分けて確認します。
対象患者はがん・AIDS・終末期の末期腎不全です
A310の注1では、届出病棟に入院している緩和ケアを要する患者について算定するとされ、対象疾患・状態として悪性腫瘍、後天性免疫不全症候群、終末期の末期腎不全が示されています。病名があるだけで判断せず、緩和ケアの必要性と患者の算定区分を確認します。
| 疾患・状態 | 確認すること |
|---|---|
| 悪性腫瘍 | 緩和ケアを要し、届出病棟で対象となる入院医療を受けているか |
| 後天性免疫不全症候群(AIDS) | 告示上の対象疾患と緩和ケアの必要性に該当するか |
| 終末期の末期腎不全 | 単に慢性腎臓病・腎不全であるだけでなく、告示に示された状態に該当するか |
| 上記以外 | 同じ病棟に入院していてもA310を当然には算定できません。注1では特別入院基本料の例による取扱いが示されています。 |
2026年度は、「終末期の末期腎不全」が対象に含まれていることを確認してください。心不全や呼吸不全の患者すべてが、この入院料の対象になったわけではありません。緩和ケア診療加算や療養病棟の医療区分など、別の制度における対象拡大と混同しないことが重要です。
出典:参考資料1のA310・注1、参考資料2の第九・十三。
緩和ケア病棟入院料1・2の点数
入院料1・2は、いずれも入院期間に応じた3段階の点数です。下表は基本となる1日当たりの点数であり、個別の加算・減算などを含む請求総額や、患者の自己負担額ではありません。
| 期間 | 入院料1 | 入院料2 |
|---|---|---|
| 30日以内 | 5,277点 | 5,025点 |
| 31日以上60日以内 | 4,724点 | 4,555点 |
| 61日以上 | 3,515点 | 3,449点 |
30日・60日は点数の区切りであり、その日までに必ず退院するという入院上限ではありません。一方、再入院や転棟に伴う期間の扱いは、日付だけで自己判断せず、算定上の留意事項と患者の入院歴を医事担当者と照合してください。
出典:参考資料1のA310。
入院料1と2の違いは受入れ体制・在宅実績・関連届出です
入院料1・2で看護配置の基準が変わるわけではありません。対象患者、看護師の配置、緩和ケアを提供する体制、構造設備、入退棟の判定体制などは共通です。
施設基準告示では、入院料2は入院料1の基準のうち「イからリまで及びヲ」を満たすものとされます。入院料1で追加確認が必要なのは、「ヌ」の受入れ体制または在宅緩和ケアの実績と、「ル」の関連する届出です。
| 項目 | 入院料1 | 入院料2 |
|---|---|---|
| 病棟の単位 | 対象患者を主として入院させる一般病棟の病棟単位 | |
| 看護師の配置 | 7対1の配置基準。夜勤については所定の条件の下で看護師2人以上とする規定があります。 | |
| 診療体制・構造設備・入退棟判定 | 共通の要件を確認 | |
| 連携医療機関への研修 | 連携する医療機関の医師・看護師等に研修を実施 | |
| 受入れ体制または在宅緩和ケアの実績 | 速やかな受入れに十分な体制、または在宅緩和ケアの相当の実績が必要 | 入院料1の「ヌ」に相当する追加要件はありません |
| 関連する届出 | 緩和ケア診療加算・外来緩和ケア管理料・在宅がん医療総合診療料のいずれかの届出が必要 | 入院料1の「ル」に相当する追加要件はありません |
| データ提出加算 | 届出が必要。経過措置への該当は別途確認します。 | |
出典:参考資料2。告示上の主な相違点を整理した表であり、施設基準の全項目や通知上の詳細を網羅したものではありません。
受入れ体制や実績の判定では、告示の表現だけでなく、施設基準通知と届出様式に定める具体的な集計方法・判定条件を確認します。また、関連する加算等の届出が施設基準になっていても、その加算をA310に上乗せできることを意味するわけではありません。

施設基準は人員配置・療養環境・連携体制を照合します
届出や院内点検では、病棟の受理区分と、実際の配置・設備・運用を照合することが重要です。看護配置だけを満たしていれば届出できる制度ではありません。
| 確認項目 | 確認する内容 | 院内で照合する資料の例 |
|---|---|---|
| 看護師の配置 | 日中・夜間を含む所定の配置条件 | 勤務表、看護配置の集計、届出書類 |
| 医師・緩和ケア提供体制 | 十分な診療体制と、対象患者に応じた緩和ケア研修受講医師の配置 | 配置表、研修修了の記録 |
| 構造設備・療養環境 | 必要な設備と、特別の療養環境を提供する病室の割合 | 病棟図面、病室一覧、届出時の根拠資料 |
| 入退棟の判定 | 患者の入退棟を判定する体制 | 院内の判定手順、会議・判定の記録 |
| 病院の機能・評価 | がん診療の拠点病院、医療機能評価を受けた病院、またはこれらに準ずる病院への該当 | 指定・評価等の確認資料 |
| 地域との連携・研修 | 連携する医療機関への研修、入院料1の追加要件 | 研修実績、連携先一覧、実績集計 |
| データ提出 | 届出状況と経過措置への該当 | 受理通知、経過措置の確認資料 |
資料の例は院内点検のための実務上の提案です。すべてが同じ名称で提出を求められる書類という意味ではありません。
看護配置の7対1は、所定の方法で確認する施設基準です。ある時間帯の患者数を、その場にいる看護師数だけで割って届出の適否を判断しないようにしてください。
A310算定中のリハビリテーション料は包括されます
緩和ケア病棟入院料を算定している患者では、疾患別リハビリテーション料やがん患者リハビリテーション料は入院料に含まれます。A310の注3は、別に算定できる費用を列挙していますが、第7部リハビリテーションはその除外項目に含まれていません。
そのため、がん患者リハビリテーション料の施設基準や患者要件に該当していても、A310算定中に同料を別に上乗せできるわけではありません。最初に患者が実際に算定している入院料を確認することが大切です。
| 場面 | 確認すること |
|---|---|
| リハが必要な患者に介入する | 患者の希望・状態、医師の指示、病棟のケア方針に基づいて必要性と内容を検討します。 |
| リハ料を別に請求する | A310算定中は包括です。臨床上の介入の必要性とは分けて判断します。 |
| 同じ病棟で特別入院基本料の例により算定する患者 | A310算定患者と同じ請求方法とは限りません。適用される入院料と個別の算定条件を確認します。 |
| 一般病棟などへ転棟する | 移動先の入院料、リハ料の施設基準、患者要件、起算日等を改めて照合します。 |
包括されることは、リハの実施を禁止する意味ではありません。療法士は、苦痛に配慮した動作や姿勢、本人が望む生活行為の支援などについて多職種と目的を共有し、実施内容と患者の反応を記録します。
H007-2の算定要件自体は、がん患者リハビリテーション料|205点・算定要件・施設基準で確認できます。まず本記事で包括範囲を確認し、別算定が可能な入院料等を算定する場面で個別の要件を照合してください。
別に算定できる費用はA310の注で確認します
緩和ケア病棟入院料は多くの診療費用を包括しますが、すべての費用が包括されるわけではありません。注2・注4の加算や、注3で除外される費用について、それぞれの要件を満たすか確認します。
| 項目 | 概要 | 注意点 |
|---|---|---|
| 緩和ケア病棟緊急入院初期加算 | 1日200点、入院日から15日を限度 | 連携する在宅療養支援診療所・病院による在宅緩和ケア、事前の文書による情報提供、急変等に伴う受入れなどの条件があります。 |
| 緩和ケア疼痛評価加算 | 1日100点 | 疼痛を有する患者への評価その他の療養上必要な指導など、所定の要件を確認します。 |
| 神経ブロック | 第11部第2節と、それに係る薬剤料・特定保険医療材料料が包括から除外 | 麻酔の全項目が一律に除外されるわけではありません。 |
| 放射線治療 | 第12部が包括から除外 | 実施内容に対応する個別の算定要件を確認します。 |
出典:参考資料1のA310・注2〜4。除外費用の全一覧ではありません。その他の加算、在宅療養管理指導料、除外薬剤・注射薬などは注3と関連規定を確認してください。
届出は様式52と管轄厚生局の案内を確認します
緩和ケア病棟入院料の届出では、入院料1・2の区分と、様式52などの添付資料を確認します。九州厚生局の2026年度届出一覧には、別添7に加えて様式5・6・7・9・20・52が案内されています。
実際の提出では、管轄する地方厚生(支)局の一覧を入口に、必要な様式・添付書類・提出方法を確認してください。別の地域の一覧だけで提出書類を確定しないことが重要です。
データ提出加算の届出は1・2とも施設基準に含まれます。ただし、既存届出施設については、病棟構成、対象病床数、提出が困難な正当な理由等を組み合わせた経過措置があります。「200床未満なら一律に不要」とは判断できません。手順や経過措置は、A245データ提出加算とは|経過措置と届出確認で確認してください。
現場で混同しやすい3つのポイント
対象疾患・病棟の届出・別算定の可否を混同しないことが重要です。特に次の3点は、院内で説明をそろえておくと確認しやすくなります。
| 混同しやすい判断 | 確認する内容 |
|---|---|
| 緩和ケアが必要なら全疾患でA310を算定できる | 臨床上の必要性と、告示上の対象疾患・状態は分けて確認します。 |
| 入院料1と2は患者の重症度だけで決まる | 病棟の施設基準・届出区分に基づきます。受入れ体制や在宅実績、関連届出を確認します。 |
| リハ料が包括されるのでリハは実施できない | 別算定の可否と、必要な介入を提供することは別です。患者の希望と状態に応じて検討します。 |
よくある質問
各項目をタップすると回答が開きます。
緩和ケア病棟入院料1と2の主な違いは何ですか?
共通の施設基準に加え、入院料1には、速やかな受入れ体制または在宅緩和ケアの実績と、緩和ケア診療加算・外来緩和ケア管理料・在宅がん医療総合診療料のいずれかの届出が求められます。看護師の7対1の配置基準は共通です。
がん以外の患者も対象ですか?
現行告示では、後天性免疫不全症候群と終末期の末期腎不全も対象です。ただし、非がん疾患全般が対象という意味ではありません。緩和ケアの必要性と告示上の対象条件を確認します。
60日を超えると退院しなければなりませんか?
60日は点数の区切りです。入院料1・2とも61日以上の点数が定められており、60日が一律の入院上限ではありません。治療・療養の必要性や本人の希望を踏まえ、病棟の方針と入退棟の判定に沿って検討します。
がん患者リハビリテーション料を別に算定できますか?
A310を算定している患者では、がん患者リハビリテーション料は包括されます。対象患者や研修等の要件を満たすことだけでは別算定できません。患者が実際に算定している入院料を先に確認してください。
包括される場合もリハの記録は残しますか?
実施した医療の内容として記録します。介入目的、実施内容、患者の反応、病棟への共有事項などを院内の運用に沿って残してください。別算定できないことと、実施内容を記録しなくてよいことは同じではありません。
次に確認すること
まず、病棟の届出区分と患者が実際に算定している入院料を確認します。そのうえで、対象疾患・状態、期間別の点数、包括範囲、施設基準の管理状況を医事担当者・病棟と照合してください。
参考資料
- 厚生労働省. 診療報酬の算定方法[Internet]. 現行条文:A310緩和ケア病棟入院料、注1〜4[参照2026年10月5日]. 厚生労働省法令等データベース.
- 厚生労働省. 基本診療料の施設基準等[Internet]. 第九・十三:緩和ケア病棟入院料の施設基準等、データ提出加算に関する経過措置[参照2026年10月5日]. 厚生労働省法令等データベース.
- 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定について[Internet]. 点数表、施設基準通知、算定上の留意事項、疑義解釈・訂正通知[参照2026年10月5日]. 令和8年度診療報酬改定の掲載ページ.
- 九州厚生局. 基本診療料の届出一覧(令和8年度)[Internet]. 緩和ケア病棟入院料1・2の届出様式[参照2026年10月5日]. 基本診療料の届出一覧.
本記事は主な制度要件を整理したものです。実際の算定・届出では、厚生労働省の最新の告示・通知と、管轄する地方厚生(支)局の案内を確認してください。
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関・介護福祉施設・訪問リハの現場経験をもとに、評価・臨床手順・医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、呼吸リハなどの臨床・教育活動に取り組んでいます。
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

