ALS 重症度分類(1〜5)|定義の要点と臨床での使い方【早見表つき】
ALS(筋萎縮性側索硬化症)の重症度分類は、指定難病(医療費助成)の判定に用いられる公式の 1〜5 段階です。本稿では定義のポイントを表で簡潔に整理し、リハビリテーションや多職種連携での具体的な活用法、ALSFRS-R/King’s/MiToS との違いまでを一気に把握できるようにまとめました。検索意図を満たすため、ALS 重症度 1〜5 の違いも明示します。
公的な重症度分類(指定難病・医療費助成)
重症度は 1 → 5 の順で重くなります。判定は主治医が行い、治療中は直近 6 か月で最も悪い状態で評価します。助成の対象は原則「重症度 2 以上」ですが、「軽症高額」「高額かつ長期」等で対象となる場合もあります(自治体の運用を確認)。
| 重症度 | 定義(要点) | リハ・ケアの着眼点(例) |
|---|---|---|
| 1 | 家事・就労はおおむね可能。 | 初期教育(省エネ動作・安全な運動)、ADL/IADL 維持、呼吸・嚥下のスクリーニング(FVC・MIP/MIF 等)。 |
| 2 | 家事・就労は困難だが、日常生活(身の回り)はおおむね自立。 | 装具・自助具の早期導入、姿勢/体位管理、摂食姿勢・食形態の調整、基本的な呼吸理学療法。 |
| 3 | 食事・排泄・移動のいずれか 1 つ以上ができず、介助を要する。 | 移乗・体位変換の省力化、座位保持/車いす選定、嚥下評価の強化、呼吸筋機能のモニタリング強化。 |
| 4 | 呼吸困難・喀痰喀出困難、あるいは嚥下障害がある。 | 排痰支援(呼吸補助・機械排痰の検討)、NIV 導入検討、誤嚥予防と栄養経路の検討。 |
| 5 | 気管切開、人工呼吸器、非経口的栄養(経管/中心静脈)を使用。 | 呼吸ケア体制の標準化、意思伝達支援(意思伝達装置等)、褥瘡/拘縮予防、家族教育と多職種連携。 |
臨床での使い方(進行予測と先回りの準備)
- 3 → 4 期の移行では呼吸・嚥下イベントが増加しやすい:NIV/機械排痰、食形態・摂食姿勢、吸引体制を先回りで準備。
- 福祉用具・住宅改修は自立度が落ちる前に前倒し実施。座位保持・体圧分散・移乗動線の最適化。
- コミュニケーション手段の二重化(音声 → 意思伝達装置など)を余力のある時期に練習開始。
研究・評価で用いる病期モデル(King’s/MiToS)
公的重症度は「助成の判定」に使う段階分類で、研究・臨床評価で用いる病期モデルとは目的が異なります。代表的な 2 方式を整理します。
| モデル | ステージ構成 | 基準の要点 | 臨床での読み方(例) |
|---|---|---|---|
| King’s | 1 → 4A/4B | 罹患領域の広がりで進行を定義( 1 領域 → 2 領域 → 3 領域/4A = 経腸栄養、4B = 呼吸補助)。 | 部位進展の可視化に有用。栄養・呼吸の臨床マイルストーン到達を把握。 |
| MiToS | 0 → 4 | ALSFRS-R の 4 ドメイン(歩行/セルフケア・嚥下・コミュニケーション・呼吸)で機能喪失数をカウント。 | 6–18 か月のイベント予測に応用報告あり(アウトカム設計の補助)。 |
ALSFRS-R と重症度分類の違い
ALSFRS-Rは 12 項目( 0–48 点)の機能評価スケールで、重症度の「段階」そのものではありません。臨床や研究では ALSFRS-R の推移と上記の病期モデル(King’s/MiToS)を併用して、進行の把握と臨床意思決定を補完します。項目本文の転載は行わず、評価の概要と公式情報へのリンクを示します。
- 参考:ALSFRS-R の概要(日本語解説)→ ALS STATION
申請・運用の実務メモ
- 原則 重症度 2 以上が助成対象(自治体の要件・更新時期を確認)。
- 治療中の評価:適切な医学的管理下での直近 6 か月で最も悪い状態を基準。
- 軽症高額/高額かつ長期などの枠で対象となる場合あり(医療費要件に留意)。
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よくある質問(ミニ)
重症度の条件が複数あてはまるときは、どう判定しますか?
治療中は直近 6 か月で最も悪い状態を基準にし、該当する中で最も重い重症度を選びます。最終的な判定は主治医の医学的判断に基づきます。
重症度 2 でも助成の対象になりますか?
原則として重症度 2 以上が助成対象です。自治体の要件・更新時期・必要書類を必ず確認してください。
参考文献
- 日本神経学会. 筋萎縮性側索硬化症 診療ガイドライン 2023. PDF
- Roche JC, et al. A proposed staging system for ALS. Brain. 2012;135(3):847-852. https://doi.org/10.1093/brain/awr365
- Chiò A, et al. Development of a clinical staging system for ALS (MiToS). Ann Neurol. 2015;77(3):384-394. https://doi.org/10.1002/ana.24326
- Cedarbaum JM, et al. The ALSFRS-R: a revised ALS functional rating scale. J Neurol Sci. 1999;169(1-2):13-21. https://doi.org/10.1016/S0022-510X(99)00210-5
- ALS STATION(日本語解説):ALSFRS-R の概要とスコアリング https://als-station.jp/alsfrs-r.html
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


