悪液質・サルコペニア・飢餓(摂取不足)の違い|見分け方と介入の優先順位

栄養・嚥下
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悪液質・サルコペニア・飢餓(摂取不足)は「同じ痩せ」ではありません

新人〜若手 PT 向け|比較の考え方(軸の作り方)を見る

見た目が似ていても、悪液質( cachexia )・サルコペニア( sarcopenia )・飢餓(摂取不足が主因の低栄養)は「起きていること」と「優先すべき介入」が違います。ここが曖昧なままだと、栄養だけ/運動だけに寄りやすく、改善が遠回りになります。

本記事は、まず 最初に固定する 3 つの質問で見分け、次に 比較早見表で運用に落とし、最後に 介入の優先順位までつなげます。原因( etiology )の 3 類型で初動を組みたい方は、低栄養の原因( etiology )を 3 類型で整理する記事も合わせてどうぞ。

まず 1 分で見分ける:最初に固定する 3 つの質問

「名前当て」より、初動の方向を決めるための質問です。迷ったら、いったんこの 3 問に戻るとブレません。

悪液質・サルコペニア・飢餓(摂取不足)を分ける 3 質問( 1 分)
質問 はい のときに疑う主役 初動の考え方
摂取不足が “理由つきで” 説明できる? 飢餓(摂取不足) 摂取( % )の可視化 → 理由の分解 → 介入を 1 つ決めて回す
慢性疾患+持続する炎症(増悪・治療)で機能が落ちている? 悪液質( cachexia ) 疾患フェーズ共有 → 低負荷運動併走 → 栄養をセットで設計
筋力低下・パフォーマンス低下が前景で、経過が慢性的? サルコペニア( sarcopenia ) 筋力・機能の定点観測 → 漸進負荷(安全範囲)+栄養の土台づくり

臨床では併存が多いので、「 1 つに決め切る」より 主役を置いて初動の優先順位を揃えることを重視します。

比較早見表: 3 つの違いを「運用の観点」でそろえる

違いを覚えるより、「観察 → 記録 → 介入」の型が決まる表にしておくと運用が安定します。

悪液質・サルコペニア・飢餓(摂取不足)の違い:運用の観点(成人)
観点 悪液質( cachexia ) サルコペニア 飢餓(摂取不足)
主役 疾患+炎症による代謝変化(栄養単独で反応が鈍いことがある) 筋力・筋量の低下と機能低下(慢性的) 摂取不足(食べられない理由がある)
見た目のヒント 体重減少+機能低下が進みやすい(増悪・治療イベントと連動) 筋力・歩行・立ち上がりなどの低下が前景 摂取量が落ちており、介助・食形態・症状・環境が絡む
評価の軸 疾患イベントと機能の連動、症状・体調の波 筋力・機能の定点観測(同じ指標を固定) 摂取( % )と理由、体重推移、機能
介入の焦点 疾患フェーズ共有 → 低負荷運動併走 → 栄養の設計 安全範囲での漸進負荷(筋力・機能)+栄養の土台 摂取の可視化 → 理由の分解 → 1 つずつ改善
再評価 増悪・治療イベントを挟んだ前後で機能を見る 週次〜隔週で機能の変化を追う 1 週で摂取の反応、 2 〜 4 週で推移を見る

併存が多い:現場では「名前当て」より “束の運用” が大事

実際は、飢餓(摂取不足)で体力が落ちた人にサルコペニアが重なったり、慢性疾患の悪液質に摂取低下が重なったりします。ここで大事なのは、診断名のラベルより 主役(いま動かすべきレバー)を置くことです。

主役が「摂取不足」なら摂取を上げる施策から、「炎症・疾患イベント」なら安全管理とフェーズ共有から、「筋力・機能」なら定点指標を固定して漸進負荷から始めます。

評価の最小セット: PT が押さえる「 3 点固定」

迷いを減らすには、まず “見る指標” を固定します。体重だけに寄らず、摂取・体重推移・機能の 3 点をセットで追うと判断が安定します。

最小セット(成人):摂取・体重推移・機能の 3 点固定
項目 見るポイント おすすめ頻度 記録の型
摂取 摂取( % )、食形態、介助量、補助食品の有無 毎日〜週次 「理由 → 対策 → 反応」を 1 行で
体重推移 週次の変化(浮腫があるときは解釈に注意) 週次 単発ではなく “推移” で残す
機能 歩行・立ち上がり等の同一指標で定点観測 週次〜隔週 体重より先に落ちることがある

介入の優先順位:何を先に動かすか

優先順位を間違えると、努力の割に反応が出にくくなります。主役ごとに “最初に外せないこと” を決めましょう。

主役別:最初に外せない介入の優先順位(成人)
主役 最初に外せないこと 次にやること 注意点
飢餓(摂取不足) 摂取( % )を上げる施策を 1 つ決めて回す 形態・回数・介助・症状・環境の調整を積み上げる “理由の分解なし” だと対策が空回りしやすい
悪液質 疾患フェーズ共有と安全管理(体調の波を前提にする) 低負荷運動を併走し、栄養をセットで設計する 栄養単独に寄ると反応が鈍いことがある
サルコペニア 筋力・機能の指標を固定して漸進負荷を組む 生活内活動量の底上げと栄養の土台を整える 痛み・バイタル・疲労の管理とセットで

現場の詰まりどころ:ここで外すと介入が遅れます

どの類型でも起きやすい “つまずき” を先に潰しておくと、運用が安定します。

よくある失敗と対策(成人):比較記事の観点
よくある失敗 なぜ起きる? 対策 記録ポイント
体重だけで判断する 浮腫・炎症・摂取で体重が揺れる 摂取・体重推移・機能の 3 点固定にする 週次レビューを “ 3 点セット” で残す
悪液質に栄養だけで押す 炎症・代謝変化が主役で反応が鈍いことがある 疾患フェーズ共有と低負荷運動併走を外さない 増悪・治療イベントと機能の連動
サルコペニアで負荷が固定されない 指標がバラバラで “やった感” になりやすい 同一指標で定点観測し、漸進負荷の根拠を作る 指標・負荷・反応をセットで残す
摂取不足の理由を分解しない 形態・介助・症状・環境のどこが原因か不明 理由を 1 行で分解し、対策を 1 つずつ回す 「理由 → 対策 → 反応」を短文で

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 3 つは “どれか 1 つ” に決めないといけませんか?

A. 決め切る必要はありません。併存が多いので、まずは “主役(最初に動かすレバー)” を置いて初動の優先順位を揃え、摂取・体重推移・機能の 3 点固定で再評価しながら比率調整する方が回ります。

Q2. 悪液質とサルコペニアの違いは、現場で何が一番変わりますか?

A. 「最初に外せないこと」が変わります。悪液質は疾患フェーズ共有と安全管理、サルコペニアは筋力・機能の指標固定と漸進負荷が初動の中心になります。

Q3. 飢餓(摂取不足)では、最初に何を見直しますか?

A. 摂取( % )の見える化と “食べられない理由の分解” です。食形態、回数、介助、症状、環境のどこで詰まっているかを 1 行で整理すると、対策が決まりやすくなります。

Q4. 体重が減っていないのに、機能が落ちています。どう考えますか?

A. 浮腫や炎症で体重が保たれて見えることがあります。体重単独ではなく、摂取・体重推移・機能の 3 点固定で評価し、主役(摂取不足/炎症/筋力低下)を置き直して介入を調整します。

おわりに

“同じ痩せに見える” 症例ほど、「主役を置く → 3 質問で初動を決める → 3 点固定で記録 → 優先順位どおりに動かす → 再評価」のリズムが効きます。面談前に準備チェックと職場の見立てを整えたい方は、面談準備チェック(職場評価シート)も活用してみてください。

参考文献

  • Fearon K, et al. Definition and classification of cancer cachexia: an international consensus. The Lancet Oncology. 2011;12(5):489-495. doi: 10.1016/S1470-2045(10)70218-7 / PubMed: 21296615
  • Cruz-Jentoft AJ, et al. Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis ( EWGSOP2 ). Age and Ageing. 2019;48(1):16-31. doi: 10.1093/ageing/afy169 / PubMed: 30312372
  • Cederholm T, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition – A consensus report. Clinical Nutrition. 2019;38(1):1-9. doi: 10.1016/j.clnu.2018.08.002 / PubMed: 30181091
  • Jensen GL, et al. Adult starvation and disease-related malnutrition: A proposal for etiology-based diagnosis. JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2010;34(2):156-159. doi: 10.1177/0148607110361910 / PubMed: 20375427
  • Evans DC, et al. The Use of Visceral Proteins as Nutrition Markers: An ASPEN Position Paper. Nutr Clin Pract. 2021. doi: 10.1002/ncp.10588 / PubMed: 33125793
  • Muscaritoli M, et al. Consensus definition of sarcopenia, cachexia and pre-cachexia: joint document. Clin Nutr. 2010;29(2):154-159. doi: 10.1016/j.clnu.2009.12.004 / PubMed: 20060626

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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