何が違う?(先に結論)
臨床現場で混同されやすい 悪液質・サルコペニア・飢餓は、主因・炎症の有無・可逆性・一次介入が異なります。見極めの最短ルートは、体重変化(%)× BMI × 筋量 × 炎症の 4 点セットを「同日に」押さえることです。本稿は比較表と簡易フローで、初動の使い分けを示します。
運用は 栄養スクリーニング運用プロトコルと、機能評価(TUG/6MWT/握力)をセット化し、必要に応じて PG-SGA、GNRI を追加します。
比較早見表
項目 | 悪液質 | サルコペニア | 飢餓 |
---|---|---|---|
炎症 | あり/高頻度(CRP↑) | 必須でない | なし |
診断の軸 | 体重減少+筋量低下(Fearon 2011) | 筋量+筋力/機能 | 摂取不足と体重減少 |
可逆性 | 低い(栄養単独は不十分) | 中等度(運動+栄養で改善) | 高い(栄養で改善しやすい) |
一次介入 | 運動×栄養を同期+原因治療 | 運動中心+栄養 | 栄養中心 |
簡易フロー(初診日にまとめて判断)
- 体重減少%(過去 6 か月)/BMI を確認
- 筋量(BIA/DXA/CT いずれか)+機能(握力・TUG・6MWT)
- 炎症(CRP)と栄養指標(Alb/PreAlb)
- 悪液質の閾値(Fearon 2011)を満たせば同日から運動×栄養の同期介入
運用のコツ(PT 目線)
- 負荷は頻度優先で短時間分割→倦怠感・治療スケジュールに合わせる
- たんぱく・エネルギー投与は運動の前後±1 時間に寄せる
- スクリーニング運用を“曜日固定”にし、抜け漏れを防ぐ
関連リンク
参考文献
- Evans WJ, Morley JE, Argilés J, et al. Cachexia: a new definition. Clin Nutr. 2008;27(6):793-799. PubMed / doi:10.1016/j.clnu.2008.06.013
- Fearon K, Strasser F, Anker SD, et al. Definition and classification of cancer cachexia. Lancet Oncol. 2011;12(5):489-495. PubMed / doi:10.1016/S1470-2045(10)70218-7
- Muscaritoli M, Arends J, Bachmann P, et al. ESPEN practical guideline: Clinical Nutrition in cancer. Clin Nutr. 2021;40(5):2898-2913. PubMed / doi:10.1016/j.clnu.2021.02.005
- Arends J, et al. ESMO Clinical Practice Guideline. ESMO Open. 2021;6(3):100092. PMC