CAM-ICU の評価方法|4 特徴と判定フロー

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CAM-ICU の評価方法|4 特徴と判定フロー(人工呼吸中でも運用)

CAM-ICU(Confusion Assessment Method for the ICU)は、成人 ICU 患者のせん妄を短時間でスクリーニングする実装性の高い手法です。評価の精度は「才能」よりも順番の固定で上がります。本記事は、前提確認(RASS)→4 特徴→判定→記録を、現場で再現できる形に整理しています。

せん妄は日内変動が強く、単発評価だけでは取りこぼしが起きます。だからこそ、同じ手順で反復し、条件つきで再評価する運用が重要です。

CAM-ICU とは:何を見て、何が分かる?

CAM-ICU は CAM の考え方を ICU 向けに運用しやすくしたスクリーニングです。評価軸は ①急性発症/変動、②注意障害、③意識レベルの変化、④思考のまとまりの低下 で、①と②があり、③または④があれば陽性と判定します。

人工呼吸管理中でも、発話に依存しない反応(うなずき・合図)で実施可能です。ただし成立条件を満たさないときは、無理に判定せず「評価不能」として残すことが重要です。

評価の前提:まず RASS で覚醒度を確認する

CAM-ICU は覚醒が前提です。深鎮静などで反応が成立しない場面では、せん妄判定を急がず、評価不能(覚醒不十分)として記録します。まず RASS で現時点の覚醒レベルをそろえ、成立するタイミングで再評価してください。

CAM-ICU 実施前チェック(成人・病棟運用)
確認項目 見落としやすい点 現場のコツ 記録メモ例
覚醒度(RASS) 深鎮静で課題が成立しない RASS を先に記録し、成立時のみ CAM-ICU へ RASS ○、評価可/不可
疼痛・呼吸苦 不穏の主因がせん妄とは限らない 疼痛/呼吸状態を先に調整 疼痛対応後に再評価
聴覚・視覚補助 「聞こえない/見えない」で誤判定 補聴器・眼鏡の装着確認 補助具あり/なし
反応様式 評価者ごとに合図が違う うなずき/握る等の合図を固定 合図方法を明記

CAM-ICU のやり方:4 特徴を同じ順番で拾う

再現性を上げるコツは「毎回同じ順番」です。以下の順で観察し、評価者間のブレを減らします。

特徴 1:急性発症/変動

「いつもと違う」「日内で上下する」を拾います。短時間観察だけでは不十分になりやすいため、看護記録や家族情報を統合して判断します。

特徴 2:注意障害

注意の持続や抜けを確認します。発話が難しい患者では、非言語反応での統一運用(例:握る/離す)を先に決めると安定します。

特徴 3:意識レベルの変化

清明状態からのズレを確認します。RASS 併記で共有しやすくなり、鎮静の影響との切り分けにも有効です。

特徴 4:思考のまとまりの低下

応答の一貫性や指示理解を見ます。失語・聴覚障害などで偽陽性が起きやすいため、前提条件(聞こえる・見える・理解できる)を先に整えます。

CAM-ICU 4 特徴の観察ポイント(成人)
特徴 観察ポイント つまずき 安定化の工夫
1 急性/変動 急な変化、日内変動 単発評価で取りこぼす 記録・家族・スタッフ情報を統合
2 注意 持続できるか、抜けるか 感覚障害で誤判定 補助具と合図方法を統一
3 意識 清明からのズレ 鎮静影響と混同 RASS と実施時刻を併記
4 思考 一貫性、指示理解 失語・挿管で評価困難 反応形式を調整して再確認

判定のまとめ:陽性・陰性・評価不能を分ける

CAM-ICU 判定フロー(RASS確認から陽性・陰性・評価不能の分岐まで)
図:CAM-ICU 判定フロー(成人 ICU)。RASS で成立条件を確認し、4 特徴の組み合わせで陽性/陰性/評価不能を判断します。

図の順番(RASS → 4 特徴 → 判定 → 記録)を固定すると、評価者間のブレが減り、再評価の判断もそろえやすくなります。

判定は ①+②+(③ or ④) で陽性です。陰性でも、臨床的違和感がある場合は時間帯を変えて再評価します。深鎮静などで成立しない場合は、無理に結果を作らず「評価不能」を明確に残してください。

記録のコツ:結果より条件を残す

有用な記録は、陽性/陰性だけでなく条件がセットです。最低限、RASS・時刻・反応様式・環境要因・再評価予定を残すと、チームで次の打ち手を決めやすくなります。

CAM-ICU 記録の最小セット(成人)
項目 記録例 使いどころ
RASS RASS -1 成立条件・鎮静影響の確認
CAM-ICU 結果 陽性 / 陰性 / 評価不能 チーム共有の基礎
反応様式 うなずきで回答 再現性の担保
実施条件 吸引後 10 分、家族同席なし 変動要因の把握
再評価予定 14:00 再評価 取りこぼし予防

現場の詰まりどころ

同じ患者でも結果が揺れる主因は、評価者の技量差より「手順の不一致」です。まずは失敗パターンを共通化し、次に回避手順を固定してください。

よくある失敗:ズレるのは刺激・前提・タイミング

CAM-ICU のよくあるミスと対策(成人 ICU)
よくあるミス 起きる理由 対策 記録の一言
評価者で結果が割れる 刺激・合図が統一されていない 反応様式を固定 合図方法を明記
深鎮静のまま判定 前提確認の不足 RASS 先行、不可は評価不能 RASS と評価可否
陰性だが違和感 変動で取りこぼし 時間帯を変えて再評価 再評価時刻
注意障害に見える 聴覚/視覚/失語の影響 前提調整後に再実施 調整内容を残す

よくある質問(FAQ)

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Q1. CAM-ICU は何分くらいで実施できますか?

A. 習熟後は短時間で実施可能です。時間短縮よりも、同じ順番・同じ刺激で再現性を確保することを優先してください。

Q2. いつ評価するのが最も安定しますか?

A. 変動があるため、病棟で「標準時刻」を決めると安定します。陰性でも違和感があれば時間帯を変えて再評価します。

Q3. 深鎮静で反応が乏しい場合はどうしますか?

A. 判定を作らず「評価不能(覚醒不十分)」として記録します。鎮静・疼痛・呼吸状態を整え、成立条件がそろってから再評価します。

Q4. 失語や聴覚障害がある場合でも使えますか?

A. 反応様式を調整して実施することは可能です。ただし偽陽性/偽陰性のリスクが上がるため、前提条件を整えたうえで経時的に判断します。

次の一手

教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。

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参考文献

  1. Lewis K, Balas MC, Stollings JL, et al. A focused update to the clinical practice guidelines for the prevention and management of pain, anxiety, agitation/sedation, delirium, immobility, and sleep disruption in adult patients in the ICU. Crit Care Med. 2025;53(3):e711-e727. SCCM Guideline page
  2. Devlin JW, Skrobik Y, Gélinas C, et al. Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Management of Pain, Agitation/Sedation, Delirium, Immobility, and Sleep Disruption in Adult Patients in the ICU. Crit Care Med. 2018;46(9):e825-e873. doi:10.1097/CCM.0000000000003299
  3. Inouye SK, van Dyck CH, Alessi CA, Balkin S, Siegal AP, Horwitz RI. Clarifying confusion: the Confusion Assessment Method. Ann Intern Med. 1990;113(12):941-948. doi:10.7326/0003-4819-113-12-941
  4. Ely EW, Inouye SK, Bernard GR, et al. Delirium in mechanically ventilated patients: validity and reliability of the CAM-ICU. JAMA. 2001;286(21):2703-2710. doi:10.1001/jama.286.21.2703
  5. ICUdelirium.org. CAM-ICU Training Manual (updated Aug 2016). 配布ページ

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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