2027 年度介護報酬改定は「処遇改善」と「サービス提供体制」が焦点
2027 年度介護報酬改定に向けた議論が、社会保障審議会・介護給付費分科会で始まりました。現時点では単位数や個別加算の見直しが決まった段階ではありませんが、厚生労働省の資料では、介護分野の賃上げ、経営の安定、離職防止、人材確保、人口減少に応じたサービス提供体制などが大きな論点として示されています。
リハ職が早めに見ておきたいのは、訪問リハ・通所リハ・老健などの個別改定だけではありません。処遇改善、事業所経営、生産性向上、地域包括ケア、給付の効率化が横断的に議論されるため、2026 年度中の資料更新を追いながら「自施設・自事業所に関係する論点」を整理しておくことが重要です。前回の期中改定の流れは、2026 年 6 月の介護報酬改定の整理もあわせて確認してください。
現時点で決まっていること
現時点で確認できるのは、「2027 年度介護報酬改定に向けた検討が始まった」という段階です。厚労省資料では、2024 年度介護報酬改定で掲げられた地域包括ケア、自立支援・重度化防止、働きやすい職場づくり、制度の安定性・持続可能性を踏まえつつ、2027 年度改定では物価・賃金上昇、人材確保、地域差への対応をどう反映するかが論点になります。
一方で、個別サービスの単位数、加算要件、人員基準、リハ関連加算の具体的な変更内容はまだ確定していません。そのため、この記事では「今から追うべき論点」と「リハ職・管理者が準備しておきたい確認事項」に絞って整理します。
| 項目 | 現時点の位置づけ | リハ職が見るポイント |
|---|---|---|
| 単位数 | 未確定 | 訪問リハ・通所リハ・老健・短期集中系の見直し有無を確認する |
| 処遇改善 | 重要論点 | PT・OT・ST への配分、賃金改善、職場環境改善との関係を見る |
| サービス提供体制 | 横断論点 | 人口減少地域、訪問系サービス、複合ニーズへの対応を確認する |
| 生産性向上 | 継続論点 | ICT、記録、業務改善、協働化が加算要件に関わるかを見る |
| 制度の持続可能性 | 横断論点 | 給付の効率化・適正化がリハ提供量や算定要件に影響するかを見る |
2027 年度介護報酬改定のスケジュール案
厚労省資料では、2026 年 4 月〜夏頃に主な論点の議論と事業者団体等からのヒアリング、10〜12 月頃に具体的方向性の議論、12 月中に報酬・基準に関する基本的な考え方の整理、2027 年 1 月頃に介護報酬改定案の諮問・答申というスケジュール案が示されています。
つまり、リハ関連の具体的な単位数や要件は、2026 年後半にかけて徐々に見えてくる可能性があります。今の時点では「結論」を断定するよりも、会議資料が出るたびに論点を追記していく更新型の記事として運用するのが適しています。
| 時期 | 予定されている内容 | 記事で追記したい内容 |
|---|---|---|
| 2026 年 4 月〜夏頃 | 主な論点の議論、事業者団体等からのヒアリング | 訪問リハ・通所リハ・老健・処遇改善に関する発言や資料 |
| 2026 年 10〜12 月頃 | 具体的な方向性について議論 | 加算、基準、算定要件の見直し候補 |
| 2026 年 12 月中 | 報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・とりまとめ | リハ職向けの確定前チェックリスト |
| 2027 年 1 月頃 | 介護報酬改定案の諮問・答申 | 確定内容、実務対応、届出・運用準備 |
リハ職が見るべき 3 つの主要論点
2027 年度改定では、個別サービスの単位数だけでなく、分野横断的なテーマが重要になります。リハ職向けに実務へ落とし込むなら、まずは「処遇改善」「提供体制」「生産性向上」の 3 つに分けると整理しやすくなります。
制度の安定性・持続可能性は、この 3 つすべての背景にある大きな論点です。給付の効率化・適正化が進むほど、リハの必要性、目標設定、生活機能の変化、再評価、多職種連携を説明できる記録の重要性が高まります。
| 論点 | 概要 | リハ職への影響 |
|---|---|---|
| 処遇改善 | 賃上げ、人材確保、離職防止をどう制度に反映するか | PT・OT・ST への配分、職場環境改善、賃金改善の説明が焦点になる |
| 提供体制 | 人口減少や地域差に応じたサービス提供をどう支えるか | 訪問リハ、通所リハ、老健、地域連携の役割が問われやすい |
| 生産性向上 | ICT、記録、業務改善、協働化をどう評価するか | 記録時間、会議、情報共有、業務改善の証跡が重要になる |
処遇改善は訪問リハにも関係が深い
2027 年度改定を考えるうえで、処遇改善は特に重要です。2026 年度の介護従事者処遇状況等調査では、調査対象に訪問看護事業所と訪問リハビリテーション事業所が追加されることが示されています。これは、訪問リハを含めた処遇改善の状況を把握し、今後の改定の基礎資料にする流れと考えられます。
リハ職側では、加算が「取れるか」だけでなく、「誰に、どのように配分されるか」「基本給・手当・一時金のどこに反映されるか」「職場環境改善や生産性向上の取り組みとセットで説明できるか」が実務上の確認ポイントになります。
| 確認項目 | 見るべき内容 | 記録・説明のポイント |
|---|---|---|
| 対象職種 | PT・OT・ST が配分対象に含まれるか | 職種別の配分方針を事業所内で明確にする |
| 賃金改善方法 | 基本給、手当、一時金のどこに反映するか | 月次で説明できる形にしておく |
| 職場環境改善 | 教育、業務改善、健康管理、ICT 活用など | 取り組み内容を箇条書きで残す |
| 生産性向上 | 記録時間、移動、会議、情報共有の効率化 | 導入前後の変化を簡単に示せるようにする |
訪問リハ・通所リハ・老健で注目したい点
リハ関連サービスでは、訪問リハ、通所リハ、老健の論点を分けて見ておくと整理しやすくなります。訪問リハは人材確保と地域差、通所リハは自立支援・重度化防止とサービス機能、老健は在宅復帰・在宅療養支援の役割が引き続き論点になりやすい領域です。
ただし、現時点では各サービスの具体的な加算・単位数の変更は確定していません。今後の分科会資料で、個別サービスごとの資料が出た段階で、この記事に追記していく形が安全です。
| サービス | 注目論点 | 現場で準備したいこと |
|---|---|---|
| 訪問リハ | 人材確保、移動効率、地域差、処遇改善 | 訪問件数、移動時間、連携記録、処遇改善の証跡を整理する |
| 通所リハ | 自立支援、重度化防止、短時間利用、生活行為支援 | 目標設定、ADL・IADL の変化、卒業支援の記録を整える |
| 老健 | 在宅復帰、医療・介護連携、リハ提供体制 | 入退所支援、家屋評価、退所後連携、在宅復帰率の説明を準備する |
| 居宅・地域連携 | ケアマネ連携、複合ニーズ、地域包括ケア | 情報提供書、サービス担当者会議、目標共有の型を整える |
現場の詰まりどころ:単位数だけを追うと準備が遅れる
介護報酬改定では、単位数や新設加算が出てから対応すればよいと考えがちです。しかし、実際には処遇改善、記録、届出、職場環境改善、ICT、説明責任などがセットで求められるため、確定後に一気に整えようとすると現場負担が大きくなります。
特にリハ部門では、提供したリハの「量」だけでなく、生活課題、目標、再評価、他職種連携、在宅生活への反映を説明できる記録が重要です。改定の方向性が見えてから慌てるのではなく、今のうちに記録・会議・処遇改善の証跡を月次で残す運用にしておくと、改定対応が進めやすくなります。
| よくある失敗 | 起こりやすい問題 | 今からの対策 |
|---|---|---|
| 単位数だけ追う | 記録・届出・説明資料の準備が遅れる | 論点ごとに「自施設への影響」を月 1 回確認する |
| 処遇改善を給与だけで見る | 職場環境改善や生産性向上との関係を説明しにくい | 賃金改善と業務改善を同じ表で管理する |
| リハ記録が実施内容中心 | 生活機能やアウトカムへの説明が弱くなる | 目標、変化、次の判断を 1 行で残す |
| 情報共有が属人的 | 担当者が変わると改定対応が止まる | 会議メモ、届出資料、Q&A を共有フォルダで管理する |
5 分で確認するチェックリスト
2027 年度介護報酬改定は、これから個別論点が出てくる段階です。現場では、今からすべての制度文書を読み込むよりも、まず「自施設に影響しそうな論点」を 5 分で仕分けるほうが実用的です。
以下のチェックに 1 つでも該当する場合は、今後の分科会資料や通知を定期的に確認し、管理者・事務部門・リハ部門で共有しておくと安全です。
| チェック項目 | 該当 | 確認すること |
|---|---|---|
| 訪問リハを提供している | □ | 処遇改善、移動効率、地域差、訪問件数の記録 |
| 通所リハを提供している | □ | 自立支援、重度化防止、ADL・IADL 変化の記録 |
| 老健でリハを提供している | □ | 在宅復帰支援、退所後連携、リハ計画の説明 |
| 処遇改善加算を算定している | □ | 配分対象、賃金改善方法、職場環境改善の証跡 |
| ICT・記録効率化を進めている | □ | 生産性向上の取り組みとして説明できるか |
よくある質問
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Q1. 2027 年度介護報酬改定の内容はもう決まっていますか?
まだ決まっていません。現時点では、厚労省の介護給付費分科会で検討の進め方や横断的な論点が示された段階です。個別サービスの単位数、加算要件、人員基準などは、今後の議論で具体化されます。
Q2. リハ職が最初に見るべき論点は何ですか?
まずは、処遇改善、サービス提供体制、生産性向上の 3 つを見ておくと整理しやすいです。特に訪問リハ・通所リハ・老健に関わる場合は、自施設の提供体制、記録、業務改善、処遇改善の証跡が説明できるかを確認しておきましょう。
Q3. 訪問リハは今回の議論で重要になりますか?
重要になる可能性があります。2026 年度の介護従事者処遇状況等調査では、訪問リハビリテーション事業所が調査対象に追加されています。処遇改善や人材確保の実態把握が、今後の報酬改定の基礎資料になるためです。
Q4. 今から現場で準備できることはありますか?
あります。リハの実施記録だけでなく、目標、再評価、生活機能の変化、多職種連携、処遇改善の配分方針、職場環境改善の取り組みを月次で残しておくと、改定内容が具体化したときに対応しやすくなります。
Q5. この記事は今後更新した方がよいですか?
更新前提の記事にするのがおすすめです。2026 年夏頃までに主な論点、10〜12 月頃に具体的方向性、2027 年 1 月頃に改定案が示される流れのため、分科会資料が出るたびに追記していくと、制度・実務カテゴリのミニハブとして育てやすくなります。
次の一手
2027 年度介護報酬改定は、まだ具体的な単位数や要件が出ていない段階です。まずは 2026 年 6 月の期中改定や訪問リハの処遇改善の流れを整理し、そのうえで今後の分科会資料を追うと理解しやすくなります。
参考文献
- 厚生労働省. 第 256 回社会保障審議会介護給付費分科会(web 会議)資料. 2026 年 4 月 27 日. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_72489.html
- 厚生労働省. 令和 9 年度介護報酬改定に向けた今後の検討の進め方について(案). 第 256 回社会保障審議会介護給付費分科会 資料 4. 2026 年 4 月 27 日. https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001695747.pdf
- 厚生労働省. 令和 8 年度介護従事者処遇状況等調査の実施について(案). 第 256 回社会保障審議会介護給付費分科会 資料 1. 2026 年 4 月 27 日. https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001695659.pdf
- 厚生労働省. 社会保障審議会(介護給付費分科会). https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126698_00022.html
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

