このテンプレで揃うこと
症例発表が詰まる原因は「内容」より、スライドの順番が毎回ズレて話す流れが崩れることです。まずは見出し(章タイトル)を 10 枚で固定し、各ページに 1 行の要点を置くと、作成時間とやり直しが減ります。
この記事では、症例発表スライドの章タイトル例(見出し)と、各スライドで話す 1 行要点をセットで提示します。全体像(総論)は 症例発表の作り方まとめで先に押さえると迷いません。
書き始める前に決める 3 つ
見出しテンプレを使っても、最初の設定が曖昧だとスライドが散らかります。先に 3 つだけ決めてから埋めると、後戻りが減ります。
①発表時間( 5 分 / 7 分 / 10 分 など)→ 10 枚を基準に、余るときは「背景」と「評価」を短くします。②軸( PT / OT / ST のどれで語るか)→ 介入の強みとアウトカムが決まります。③主アウトカム 1 つ→ 変化のストーリーが 1 本になります。
スライド 10 枚|見出し(章タイトル)テンプレ
下の表は、症例発表の「章タイトル」をそのまま使える形にしたテンプレです。スライドの本文は、各行の「置くもの」を埋めるだけで骨組みができます。
スマホでは横スクロールで確認してください。
| No | 見出し(章タイトル) | この 1 枚の目的 | 置くもの(最小) |
|---|---|---|---|
| 1 | 結論(今日の一言) | 最初に着地を見せる | 主アウトカムの変化/介入の核 1 つ |
| 2 | 症例概要 | 対象を 10 秒で共有 | 年齢・主疾患/入院前後の状況/制約(疼痛・装置など) |
| 3 | 背景と課題 | 「なぜこの症例を出すか」 | 詰まりどころ 1 つ/現場の意思決定ポイント |
| 4 | 初期評価(要点) | 問題の根拠を揃える | 主アウトカム/関連する所見 2〜 3 個 |
| 5 | 問題点の整理(仮説) | 因果を 1 本にする | 問題点 2 点まで/仮説(なぜ起きる) |
| 6 | 介入方針(狙い) | 介入の意図を示す | 狙い 1 行/頻度・負荷の枠/中止基準 |
| 7 | 介入内容(具体) | 「何をやったか」を最小で | 核となる介入 2 つまで/進め方(段階) |
| 8 | 結果(前・中・後) | 変化を 1 枚で見せる | 経過表/グラフ/臨床的意味(例:介助量) |
| 9 | 考察(なぜ変わった / 変わらない) | 解釈を 30 秒で | 要因 2 点/限界 1 点/次に試す 1 点 |
| 10 | まとめ(Take-home message) | 聞き手の行動に落とす | 学び 3 行/明日からの適用条件 |
各スライドの 1 行要点(話す順番)
見出しが同じでも、話す順番がズレると伝わりません。各スライドは「 1 行だけ決めてから」文章を足すと、読み上げが減ります。
下の 10 行をそのままメモ欄に置いて作り始めるのがおすすめです。
- 1:今日は「主アウトカムがこう変わった」症例です。
- 2:症例の前提はこの 3 点です(疾患/生活/制約)。
- 3:詰まりどころはここで、判断が割れました。
- 4:根拠になる所見はこの 3 つです(主+関連)。
- 5:問題は 2 点に絞ると、この仮説になります。
- 6:介入の狙いはこの 1 行で、枠はこう決めました。
- 7:核の介入は 2 つで、段階はこの順です。
- 8:前・中・後でこう変化し、臨床的にこう意味があります。
- 9:変化の要因は 2 点、限界は 1 点、次はこれを試します。
- 10:持ち帰りは 3 行です(条件つきで明日から使える)。
よくある失敗と直し方
症例発表が長くなるのは、情報量ではなく「見せる場所」が分散するからです。失敗パターンを先に潰すと、作成が安定します。
| 失敗 | 起きる理由 | 直し方(最小) | 確認ポイント |
|---|---|---|---|
| 結論が最後 | 流れを「起承転結」にしてしまう | 1 枚目に主アウトカムを置く | 1 枚目だけで症例の価値が伝わるか |
| 評価の羅列 | 測ったものを全部載せたくなる | 主アウトカム 1+関連 2〜 3 に絞る | 問題点(仮説)に必要な所見だけか |
| 介入の列挙 | 日々の実施をそのまま貼る | 核となる介入 2 つ+段階の順にする | 「狙い」と対応しているか |
| 結果が読めない | 文章で経過を書いてしまう | 前・中・後を表かグラフ 1 枚で出す | 5 秒で改善/不変が分かるか |
| 読み上げになる | スライドが台本になっている | 各スライドは 1 行要点 → 箇条書き 3 つまで | 文字量より「視線の導線」があるか |
質疑で崩れない “補足 3 点” の置き場
質疑で詰まるのは、答えがないからではなく「補足がスライド内に散らばる」からです。補足は 3 点だけ、置き場を決めておくと安定します。
- 補足 1:介入の負荷(回数・強度・中止基準)を 1 行で言えるようにする
- 補足 2:アウトカムの測定条件(体位・補助具・介助量)を固定して言えるようにする
- 補足 3:限界(症例の条件依存)を 1 点だけ先に言えるようにする
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
スライドは 10 枚より少なくしていいですか?
できます。まず 10 枚の見出しで骨組みを作り、時間が短い場合は「背景と課題」と「初期評価(要点)」を短くします。逆に 10 枚を下回ると、問題点と介入の対応が曖昧になりやすいので、削るなら「文章量」を先に減らすのがおすすめです。
評価をどこまで載せると十分ですか?
目安は主アウトカム 1 つと、問題点(仮説)を裏づける所見を 2〜 3 個です。測った指標を全て載せるより、「この症例で迷った判断」に必要な根拠だけに絞るほうが、聞き手に伝わります。
介入内容が多すぎて収まりません
介入は「核となる 2 つ」を残し、その他は介入方針(狙い)でまとめます。たとえば「離床量を増やす」「呼吸困難を抑える」など、狙いが同じものは一段上の言葉で束ねると、スライドが整理されます。
考察が弱いと言われます
考察は長さではなく「要因 2 点+限界 1 点+次の一手 1 点」が言えるかで決まります。原因を 5 つ並べるより、「最も効いた要因」を 2 点に絞り、条件依存(限界)を 1 点添えると、質疑でも崩れにくくなります。
次の一手
見出しテンプレで骨組みが作れたら、次は「全体の流れ」と「題名( 1 行 )」を固めると、発表準備が速くなります。
- 全体像を先に確認する:症例発表の作り方まとめ
- 題名(抄録・症例報告)の型を作る:学会抄録タイトルの付け方|題名テンプレ
- 経過表・グラフで見える化する(次に作る子記事想定):症例発表の経過表とグラフの作り方
参考文献
- Gagnier JJ, et al. The CARE guidelines: consensus-based clinical case reporting guideline development. J Clin Epidemiol. 2014;67(1):46-51. PubMed
- Riley DS, et al. CARE guidelines for case reports: explanation and elaboration document. J Clin Epidemiol. 2017;89:218-235. PubMed
- Alley M. The Craft of Scientific Presentations. 2nd ed. Springer; 2013. DOI
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


