CPAxは呼吸も含めてICUの全身機能を整理する評価です
CPAx(Chelsea Critical Care Physical Assessment Tool)は、ICU患者の身体機能だけでなく、呼吸機能や咳嗽も含めて総合的に確認しやすい評価です。IMSのように「今日どこまで動けたか」を短く残す尺度ではなく、呼吸・支持性・動作能力のどこが制限になっているかを整理する目的で使います。この記事では、CPAxの特徴、使う場面、IMS・FSS-ICUとの使い分け、記録例まで臨床向けにまとめます。
日々の最高到達を短く共有したい場合は IMS(ICU Mobility Scale)の使い方、課題別の介助量を追いたい場合は FSS-ICUの使い方 もあわせて確認すると整理しやすくなります。
CPAxとは
CPAxは、ICU患者のphysical morbidityを評価するために開発された観察ベースの尺度です。
特徴は、起き上がりや移乗などの機能課題だけでなく、呼吸機能と咳嗽も含めて確認できる点です。つまり「動けるか」だけでなく、「呼吸・咳嗽・支持性・動作能力のどこが制限になっているか」を整理しやすい評価といえます。
採点は10項目・各0〜5点・合計0〜50点です。点数が高いほど機能が高い方向で読みますが、臨床では合計点だけでなく、どの領域が低いかを確認することが重要です。
CPAxが向く場面
CPAxが向くのは、呼吸状態も含めてICU患者の全身機能をまとめて把握したい場面です。
たとえば、人工呼吸器離脱前後、離床を進めたいが呼吸負荷や咳嗽の弱さも気になる症例、ベッド上動作から立位準備まで一連で確認したい症例では、CPAxの情報が役立ちます。
実際の現場では、ICU患者は酸素条件、ライン類、疲労、鎮静、循環反応によって評価結果が変わりやすいです。そのためCPAxを使うときは、点数だけでなく「どの条件で評価したか」も一緒に残すと、前回比較がしやすくなります。
| 場面 | CPAxが役立つ理由 | 確認したいポイント | 記録例 |
|---|---|---|---|
| 人工呼吸管理中〜離脱前後 | 呼吸と動作能力を同時に確認しやすい | 酸素化、呼吸仕事量、咳嗽の有効性 | 呼吸負荷により立位前に休息を要す |
| 離床初期 | ベッド上動作から立位準備まで追いやすい | 循環反応、支持物、介助者数 | 端座位は可能だが立位前に疲労増強 |
| 経過共有 | 呼吸・咳嗽・機能課題をまとめて示しやすい | 前回条件、補助具、実施時間帯 | 前回より咳嗽と移乗が改善 |
| ICU退室前の見立て | 病棟移行時の介助量や呼吸管理を整理しやすい | 病棟で必要な介助量、酸素条件 | 病棟移行は可、立位保持に見守り要 |
スマホでは表を横スクロールできます。
CPAxでみる10領域
CPAxは、呼吸から移動準備までを縦につないで確認する評価です。
評価領域には、呼吸機能、咳嗽、ベッド上動作、起き上がり、動的座位、立ち上がり、立位バランス、ベッドから椅子への移乗、ステップ動作、握力が含まれます。
実務では、10領域を均等に眺めるよりも、まず低い領域がどこかを確認します。呼吸・咳嗽が低いのか、立ち上がりや立位バランスが低いのかで、介入の優先順位が変わるためです。
| 領域 | 主にみたいこと | 低いときの解釈例 |
|---|---|---|
| 呼吸機能 | 活動時の呼吸負荷や呼吸の安定性 | 離床前に呼吸負荷が大きい |
| 咳嗽 | 排痰に必要な咳の有効性 | 分泌物管理に課題がある |
| ベッド上動作 | 寝返りや体位調整の自力性 | ベッド上で介助依存が強い |
| 起き上がり | 臥位から端座位への移行 | 離床の前段階が制限になっている |
| 動的座位 | 座位での安定性と耐久性 | 端座位でふらつきや疲労が出やすい |
| 立ち上がり | 下肢支持性と立位準備 | 下肢・体幹の出力不足が強い |
| 立位バランス | 立位保持と重心制御 | 立位保持に見守り以上を要する |
| 移乗 | ベッドから椅子への移動能力 | 病棟移行後の介助量が大きい |
| ステップ | その場足踏みや歩行準備 | 歩行前段階で制限が残る |
| 握力 | 全身機能低下の一端としての筋力 | 上肢出力や全身衰弱が目立つ |
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採点の見方と解釈
CPAxは、合計点よりも「どの領域が低いか」を見ると臨床で使いやすくなります。
各領域は0〜5点で評価し、合計0〜50点で示します。点数が高いほど機能が高い方向で読みますが、ICUでは酸素条件、介助量、補助具、疲労、鎮静などの影響を受けやすいため、合計点だけで判断しないことが大切です。
前回と比較する場合は、酸素投与条件、補助具、介助者数、評価時間帯をできるだけそろえます。条件が異なる場合は、点数の横に条件を残しておくと、チーム内で解釈がずれにくくなります。

IMS・FSS-ICUとの違い
ICU評価は、どれが優れているかではなく、何を共有したいかで選ぶと運用しやすくなります。
IMSは「今日どこまで動けたか」を短く共有しやすい尺度です。FSS-ICUは、課題別の介助量を追いやすい尺度です。CPAxは、呼吸・咳嗽も含めて総合機能を確認しやすい尺度です。
そのため、日々の申し送りはIMS、課題別の介助量はFSS-ICU、呼吸を含めた総合機能の節目評価はCPAxと分けると、役割が重なりにくくなります。
| 尺度 | 主な目的 | 強み | 向く記録 |
|---|---|---|---|
| IMS | その日の最高到達を共有する | 短時間で到達レベルを共有しやすい | 到達レベル、距離、介助者数 |
| FSS-ICU | 課題別の介助量を追う | どの動作が低いかを分けやすい | 低い課題、介助量、実施条件 |
| CPAx | 呼吸も含めた総合機能を評価する | 呼吸・咳嗽・機能課題を一体で見やすい | 低い領域、呼吸反応、総合機能の経過 |
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CPAxでよくある失敗
CPAxでよくある失敗は、合計点だけを記録して終わることです。
CPAxの価値は、低い領域を見つけて、その日の介入や申し送りにつなげる点にあります。合計点だけでは、呼吸が制限なのか、咳嗽が弱いのか、立位バランスが問題なのかが見えにくくなります。
もう1つの失敗は、IMSやFSS-ICUと役割が混ざることです。毎日の到達共有にCPAxを主役にすると記録が重くなり、課題別の介助量を細かく追いたい日にCPAxだけで済ませると情報が足りないことがあります。
| よくある失敗 | なぜ困るか | 回避策 | 記録例 |
|---|---|---|---|
| 合計点だけ残す | 介入ターゲットが見えにくい | 低い領域を1〜2個書き添える | 低値:咳嗽、立位バランス |
| 条件をそろえない | 前回比較がぶれる | 酸素条件・補助具・介助者数を残す | HFNC、歩行器、1名介助で実施 |
| IMSと役割が混ざる | 日々の申し送りが長くなる | 日々はIMS、節目でCPAxと分ける | 本日は節目評価としてCPAx実施 |
| 退室先を点数だけで考える | 生活背景や病棟要件が抜ける | 呼吸管理と介助量も併記する | 病棟移行は可、酸素条件に留意 |
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CPAxの記録例
CPAxは、点数に加えて低い領域と実施条件を1行で残すと共有しやすくなります。
記録では、合計点だけでなく「何が制限だったか」「どの条件で実施したか」「次に何を見るか」を短く残します。療養病棟や一般病棟へ申し送る場合も、呼吸条件と介助量があると引き継ぎやすくなります。
| 目的 | 記録例 |
|---|---|
| 低い領域を残す | CPAx 28/50。低値は咳嗽、立位バランス。呼吸負荷により立位保持は短時間。 |
| 条件を残す | 酸素○L、歩行器使用、1名介助で評価。前回より起き上がりと移乗で改善あり。 |
| 次の介入につなげる | 咳嗽弱く排痰に課題。次回は呼吸介助後に端座位・立位保持を再評価する。 |
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よくある質問
各項目名をタップすると回答が開きます。もう一度タップすると閉じます。
CPAxはどんな患者に向いていますか?
呼吸と身体機能をあわせて確認したいICU患者に向いています。人工呼吸器離脱前後、離床初期、呼吸負荷がmobilityに影響しやすい症例で使いやすいです。
IMSやFSS-ICUがあればCPAxは不要ですか?
不要とは限りません。IMSは最高到達、FSS-ICUは課題別介助量、CPAxは呼吸も含めた総合機能評価に強みがあります。目的に応じて使い分けると便利です。
CPAxは毎日取るべきですか?
毎日必須ではありません。日々の申し送りはIMS、節目や総合機能の見直しでCPAx、課題別の変化を追いたいときはFSS-ICUという分け方が現実的です。
CPAxの点数はどう読めばいいですか?
合計点だけでなく、低い領域を見るのがコツです。呼吸・咳嗽が低いのか、起き上がりや立位が低いのかで、介入の優先順位が変わります。
CPAxはICU退室先や転帰の参考になりますか?
研究では予測的妥当性が報告されていますが、臨床ではCPAx単独で判断しません。呼吸管理、介助量、病棟要件、家族支援などもあわせて解釈します。
次の一手
CPAxを測って終わりにしないためには、主役を決める、条件を残す、低い領域を1行で共有することが大切です。ICU評価で迷う場合は、まず評価尺度の役割を分けてから使うと、記録と申し送りが整理しやすくなります。
参考文献
- American Physical Therapy Association. Chelsea Critical Care Physical Assessment Tool. 公式ページ
- Corner EJ, Wood H, Englebretsen C, Thomas A, Grant RL, Nikoletou D, Soni N. The Chelsea critical care physical assessment tool: validation of an innovative new tool to measure physical morbidity in the general adult critical care population. Physiotherapy. 2013;99(1):33-41. DOI: 10.1016/j.physio.2012.01.003
- Corner EJ, Soni N, Handy JM, Brett SJ. Construct validity of the Chelsea Critical Care Physical Assessment tool: an observational study of recovery from critical illness. Crit Care. 2014;18(2):R55. DOI: 10.1186/cc13839
- Eggmann S, Verra ML, Stefanicki V, et al. Predictive validity of the Chelsea Critical Care Physical Assessment tool (CPAx) in critically ill, mechanically ventilated adults: a prospective clinimetric study. Disabil Rehabil. 2023;45(1):111-116. DOI: 10.1080/09638288.2021.2022785
- Eggmann S, Paton M. Clinimetrics: The Chelsea Critical Care Physical Assessment tool (CPAx). J Physiother. 2025;71(3):204-205. DOI: 10.1016/j.jphys.2025.05.006
- Eggmann S, Kindler A, Hilfiker R, Nydahl P. Reliability, validity and practicability of the Chelsea Critical Care Physical Assessment tool (CPAx) following an e-learning programme: a clinimetric study. Intensive Crit Care Nurs. 2025;87:103959.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下

