肩関節・肩甲帯の触診は「順番」で覚える
肩関節・肩甲帯の触診で迷いやすい原因は、部位を単発で覚えてしまうことです。実務では、肩峰、AC 関節、鎖骨、烏口突起、大結節、結節間溝、長頭腱、肩甲棘、肩甲骨内側縁などを、どこを起点にして、次にどこへたどるかで整理すると再現しやすくなります。
このページでは、肩の触診を「前方・上方・外側・肩甲骨後方」に分け、最初に触る部位、次に確認する部位、痛みの場所からの逆引きをまとめます。個別の詳しい触診方法は各部位の記事で確認し、このページは肩触診シリーズ全体の入口として使ってください。
肩の触診を順番で整理したい方へ
このページは肩関節・肩甲帯触診シリーズの入口です。評価全体の流れに戻りたい場合は、まず評価ハブから確認できます。
このページで決めること
このページで決めるのは、肩の触診でどの部位から入り、次にどこへ進むかです。各部位の細かい触り方を全部このページに詰め込むのではなく、触診ルートと逆引きの地図として使える形に整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象読者 | 肩の触診を順番で整理したい新人 PT・OT、復習したい臨床者 |
| このページで答えること | 肩の前方・上方・外側・肩甲骨後方を、どの順番で触るか |
| このページで深掘りしないこと | 各部位の詳細な触診手順、検査法、疾患別評価 |
| 使い方 | 全体像を確認してから、必要な部位の個別記事へ進む |
まずは3分で触る基本ルート
肩の触診は、最初に分かりやすい骨性ランドマークを固定すると迷いにくくなります。健側で位置関係を確認してから患側へ移ると、左右差も読みやすくなります。

肩の前方は烏口突起から腱の走行へ進む
肩の前方は、烏口突起、結節間溝、上腕二頭筋長頭腱を混同しやすい場所です。前方肩痛では、まず骨性ランドマークを取り、そのあと腱の走行へ進むと局在を整理しやすくなります。
肩の上方は肩峰とAC関節を分ける
肩の上方では、肩峰、AC 関節、鎖骨外側端の距離が近く、同じ場所として触ってしまいやすいです。肩峰は面、AC 関節は境目、鎖骨外側端は終点として整理すると見分けやすくなります。
肩の外側は肩峰から大結節へたどる
肩の外側は、肩峰から大結節へたどると整理しやすいです。肩の外側痛や挙上時痛では、骨性ランドマークと腱・滑液包周囲の痛みを混同しないように、まず骨の位置関係を確認します。
肩甲骨後方は線から角へ進む
肩甲骨後方は、面でなんとなく触ると曖昧になりやすいです。肩甲棘を横の線、肩甲骨内側縁を縦の線として取り、そのあと下角・上角へ進むと位置関係を整理しやすくなります。
痛みの場所から最初の一手を決める
痛みの場所から入る場合は、いきなり痛い場所だけを押すのではなく、近くの骨性ランドマークを先に取ります。起点を決めてから隣接部位へ広げると、評価の手戻りが減ります。
現場で迷いやすい組み合わせ
肩の触診で詰まりやすいのは、近い部位を同じものとして扱ってしまう場面です。見分けるときは、点で覚えるよりも、面・境目・線・角・溝・腱という種類の違いで整理します。
| 迷いやすい組み合わせ | 見分ける視点 | 回避のコツ |
|---|---|---|
| 肩峰 と AC 関節 | 肩峰は面、AC 関節は切り替わり | 肩峰を広く取ってから内側の境目へ進む |
| 鎖骨外側端 と AC 関節 | 鎖骨外側端は終点、AC 関節は関節裂隙 | 鎖骨を外側へたどって終点と境目を分ける |
| 大結節 と 結節間溝 | 大結節は骨の隆起、結節間溝は溝 | 肩を軽く内外旋しながら位置変化を確認する |
| 結節間溝 と 長頭腱 | 結節間溝は場所、長頭腱はその中を走る構造 | 溝を取ってから腱の滑走や圧痛を確認する |
| 肩甲棘 と 内側縁 | 肩甲棘は横線、内側縁は縦線 | 線の方向を変えて確認する |
| 上角 と 筋の張り | 上角は骨の角、筋の張りは軟部組織 | 骨の終点を先に取ってから周囲の圧痛を見る |
触診が毎回ばらつくときは、個人の努力だけでなく学び方の環境も見直しポイントです。
評価の組み立て方、記録の考え方、臨床で伸びる環境をまとめて確認したい方は、PT 向けの総合ガイドも参考にしてください。
最初に読むならこの順番
新人が最初に読むなら、肩の上方と外側の基準点を作る順番がおすすめです。まず肩峰、AC 関節、大結節を押さえると、肩の前方・外側・後方へ広げやすくなります。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
このページは肩触診シリーズの最初に読むページですか?
はい。肩関節・肩甲帯の触診を順番で整理したい場合は、このページから読むと全体像がつかみやすいです。各部位の詳しい触り方は個別記事で確認してください。
新人が最初に覚えるならどこからですか?
肩峰、AC 関節、大結節の順番がおすすめです。肩の上方と外側の基準点ができると、結節間溝、長頭腱、肩甲骨後方へ広げやすくなります。
痛い場所をそのまま押せばよいですか?
痛い場所だけを押すと、近い部位を混同しやすくなります。まず近くの骨性ランドマークを取り、そこから痛みの位置を相対的に確認すると再現性が上がります。
結節間溝と長頭腱は同じですか?
同じではありません。結節間溝は上腕骨の溝で、上腕二頭筋長頭腱はその中を走る腱です。場所と構造を分けて考えると整理しやすくなります。
肩甲骨まわりはどこから覚えるとよいですか?
肩甲棘を横方向の線、肩甲骨内側縁を縦方向の線として覚えると、そのあと下角・上角へ進みやすくなります。
次の一手
このページを読んだあとに現場で試すなら、まずは肩峰 → AC 関節 → 大結節を健側で順番に触れてみてください。肩の上方と外側の基準点ができると、前方肩痛や肩甲骨後方の評価にも広げやすくなります。
肩の触診を評価全体の中で整理したい場合は、評価ハブに戻ると、他の評価記事とのつながりも確認できます。部位別に進める場合は、肩峰、AC 関節、大結節の個別記事から読むのがおすすめです。
参考文献
- Donnelly TD, et al. Clinical Assessment of the Shoulder. Open Orthop J. 2013;7:389-394. PMC3785041
- Sciascia A, Uhl T, Kibler WB. Current views of scapular dyskinesis and its possible clinical relevance. Int J Sports Phys Ther. 2022;17(1):144-160. PMC8805107
- Paine R, Voight M. The role of the scapula. J Orthop Sports Phys Ther. 2013;43(10):A1-A40. PubMed: 24175141
- Wong M, Kiel J. Anatomy, Shoulder and Upper Limb, Acromioclavicular Joint. StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing. NCBI Bookshelf
- Epperson TN, Varacallo M. Anatomy, Shoulder and Upper Limb, Sternoclavicular Joint. StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing. NCBI Bookshelf
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下


