FABER( Patrick )テストの見方|鼠径部痛か、殿部痛( SIJ / 腰椎)かを“部位”で読む
FABER( Flexion / ABduction / External Rotation )テストは、股関節周囲痛の鑑別で頻出です。実務で最も重要なのは、陽性/陰性の二択ではなく、どこが痛いかを読むことです。
本記事は、①最短手順 → ②痛み部位別の読み替え → ③次に行う確認 → ④よくある失敗の回避の順で、臨床で再現しやすい運用に整理します。
やり方( 30 秒)|角度より“痛みの場所”を固定して記録
FABER は、股関節を屈曲・外転・外旋位( 4 の字)にし、膝をゆっくり床方向へ誘導します。圧を強くすると疼痛誘発が過剰になりやすいため、圧は最小で部位を確認します。
| 手順 | 操作 | 観察 | 記録の型( 1 行) |
|---|---|---|---|
| ① 体位 | 背臥位。反対側の骨盤回旋を抑える | 骨盤回旋、腰椎代償 | 背臥位・骨盤代償(有 / 無) |
| ② 4 の字 | 評価側足部を反対膝上へ置く | 開始肢位での痛み / つっぱり | 開始肢位で痛み(部位) |
| ③ 誘導 | 膝を床方向へゆっくり誘導(最小圧) | 痛み部位(鼠径部 / 外側 / 殿部) | FABER:殿部痛(右) |
| ④ 停止 | 痛み急増 / 防御増大で中止 | 増悪の有無 | 中止理由(痛み急増 / 防御 / 術後制限) |
痛み部位で読む|鼠径部・外側・殿部で意味が変わる
FABER は股関節だけでなく、殿部〜仙腸関節付近の痛みを誘発することがあります。SIJ 由来の評価は単一テストで断定せず、疼痛誘発テストを組み合わせて解釈する運用が推奨されます。(Nejati 2020、Saueressig 2021)
| 痛みの部位 | 示唆 | 次にやる確認(最小) | メモ |
|---|---|---|---|
| 鼠径部(深部) | 股関節内の関与を優先 | FADIR、Scour、内旋 ROM | 関節内に寄せる入口 |
| 殿部〜仙腸関節付近 | SIJ / 腰椎由来の関与も疑う | 疼痛誘発テストの組み合わせ + 腰椎スクリーニング | 単独で決め打ちしない |
| 外側(大転子周囲) | 外側股関節の関与も疑う | Trendelenburg、片脚立位時疼痛 | 支持相で増悪するか |
| 痛みなし・左右差大 | 可動域差として評価(病態確定ではない) | 条件固定で ROM 比較 | 測定条件でブレやすい |
症例ミニケース|部位で読むと次の一手が迷わない
50 代男性。右股関節周囲痛。歩行時痛を主訴に来院。FABER で右鼠径部に再現痛、殿部痛はなし。骨盤代償は軽度で、最小圧でも同部位の痛みが再現しました。
| 場面 | 観察・所見 | 解釈 | 次の一手 |
|---|---|---|---|
| FABER | 右鼠径部に再現痛(殿部痛なし) | 股関節内関与を優先して疑う | FADIR / Scour / 内旋 ROM を追加 |
| 追加評価 | FADIR で同部位痛、内旋 ROM 制限あり | 関節内由来の可能性が高まる | 負荷調整と再評価条件を統一 |
| 記録 | 部位・代償・中止基準を記載 | チーム共有しやすい | SOAP の A に反映 |
再現性を上げるコツ|高さ(距離)と代償をそろえる
FABER は膝の高さ(距離)で左右差を追う運用がありますが、条件が曖昧だと再現性が下がります。骨盤代償の管理と測定条件の固定を優先すると比較精度が上がります。(Bagwell 2016)
- 骨盤回旋が出ると“下がったように見える”ため、先に骨盤を観察
- 同一肢位・同一圧で高さ(距離)を記録して左右比較
記録用 1 行テンプレ(コピペ用)
そのまま使えるように、1 行テンプレを分けて置きます。必要箇所だけ置換して使ってください。
| 用途 | テンプレ文 |
|---|---|
| 基本形 | FABER(右):鼠径部痛(+)、殿部痛(-)、骨盤代償(軽度)、最小圧で再現。 |
| 殿部痛優位 | FABER(左):殿部〜SIJ 付近痛(+)。単独で断定せず、疼痛誘発テスト群と腰椎スクリーニングを追加。 |
| 中止あり | FABER(右):誘導中に痛み急増のため中止。中止時点で骨盤代償(有)。再評価は圧を減じて実施予定。 |
| 陰性だが左右差 | FABER(両側):疼痛再現なし。膝高差(右>左)あり。病態確定せず、条件固定で ROM 比較を継続。 |
現場の詰まりどころ|よくある失敗 → 回避チェック
よくある失敗(あるある 5 つ)
- FABER 陽性= SIJ と決め打ちする:部位優先で解釈し、必要時は組み合わせで絞る。
- 鼠径部痛で関節内評価に進まない:FADIR / Scour を追加して仮説を固める。
- 骨盤代償を見落とす:回旋が混ざると左右差が崩れる。
- 圧が強すぎる:疼痛誘発が過剰になり情報が荒れる。
- 記録が陽性/陰性だけ:部位・代償・中止理由まで書く。
回避チェック(この順に直す)
| チェック | 見ること | 直し方(最小) |
|---|---|---|
| ① 痛み部位 | 鼠径部 / 外側 / 殿部 | まず場所を言語化して記録 |
| ② 条件 | 骨盤回旋、腰椎代償 | 代償が出る前で止める |
| ③ 刺激量 | 圧が強すぎないか | 圧を半分にして再確認 |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
FABER で殿部が痛いとき、 SIJ が原因で確定ですか?
確定ではありません。殿部〜仙腸関節付近の痛みは SIJ / 腰椎由来の関与を示唆しますが、単一テストでの決め打ちは避けます。疼痛誘発テストの組み合わせと腰椎スクリーニングで候補を狭めます。
鼠径部が痛い場合、FABER は何を示しますか?
股関節内の関与を優先して疑います。FADIR、Scour、内旋 ROM を加えて、関節内示唆を強めるか確認します。
左右差(膝の高さ)が大きいだけで病態は言えますか?
言えません。左右差は可動域差の把握には有用ですが、病態確定には不十分です。体位・圧・代償条件をそろえて比較します。
FABER と FADIR はどちらを先に行うべきですか?
まず FABER で疼痛部位の方向性を取り、鼠径部優位なら FADIR を追加して関節内関与を絞る運用が実務で使いやすいです。
次の一手
評価は実施で終わらせず、共有可能な型にすると再現性が上がります。次の 2 本をセットで進めると運用が安定します。
- 全体像をそろえる:股関節の整形外科テスト一覧(親記事)
- すぐ実装する:SOAP の A が書けない時の書き方テンプレ
参考文献
- Nejati P, Safarcherati A, Karimi F. Accuracy of the Diagnostic Tests of Sacroiliac Joint Dysfunction. J Chiropr Med. 2020;19(4):218-227. PubMed Central
- Saueressig T, Owen PJ, Kent P, et al. Diagnostic Accuracy of Clusters of Pain Provocation Tests for Detecting Sacroiliac Joint Pain: Systematic Review With Meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2021;51(9):422-431. PubMed
- Bagwell JJ, Snibbe J, Gerhardt M, Powers CM. The reliability of FABER test hip range of motion measurements. Int J Sports Phys Ther. 2016;11(7):1101-1105. PubMed Central
- Buchanan P, Vodapally S. Successful Diagnosis of Sacroiliac Joint Dysfunction. Cureus. 2021;13(9):e18153. doi:10.7759/cureus.18153. PubMed Central
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


