本記事のねらい
FAI(Frenchay Activities Index)と Lawton IADL は、いずれも IADL を評価する代表的な尺度です。しかし、IADL の評価スケールは種類が多く、「どれをどう使い分ければよいか分からない」という声もよく聞かれます。本記事では両者の「似て非なる点」を整理し、症例像に応じた IADL 評価の使い分け方をコンパクトにまとめました。新人〜中堅の理学療法士が、今日から臨床で迷わず選択できることを目標にしています。
結論の先出しです。活動の頻度を俯瞰=FAI、行為の可否を具体化=Lawton が基本軸です。重度〜生活期の広いレンジをカバーするには併用が実務的で、BI/FIM などの基本 ADL 尺度と組み合わせると、機能 → 生活 → 社会参加の連続性を説明しやすくなります。IADL 評価の使い分けに悩んだときは、「頻度」と「可否」の 2 軸で考えるのがポイントです。
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PT キャリアガイドを見るIADL 評価スケールの基本仕様比較(FAI vs Lawton)
両者は「何を測るか」「どれだけ詳しいか」が異なります。FAI は過去 3〜6 か月の活動頻度を 15 項目で広くカバーし、0–3 点(合計 0–45 点)で経時変化のシグナルを捉えます。IADL の中でも「外出・趣味・社会活動」などを含めて、活動レベル全体の“広がり”を見るのに向いています。
一方で Lawton は 8 領域の遂行可否を短時間で把握し、介護者や他職種への説明・サービス調整に直結しやすいのが利点です。「買物・電話・服薬管理・家事」など、在宅生活を維持するうえでの具体的な IADL にフォーカスしたスケールと捉えるとイメージしやすいと思います。
| 項目 | FAI | Lawton IADL |
|---|---|---|
| 目的 | 生活活動の頻度を俯瞰 | 生活行為の遂行可否を把握 |
| 項目・所要 | 15 項目・約 5–10 分 | 8 領域・約 5–10 分 |
| スコア | 各 0–3 点(合計 0–45) | 各 0–1 点(合計 0–8 ※様式により 0–2) |
| 強み | 領域が広く、経時変化に敏感 | 具体で説明しやすく、ケア設計に直結 |
| 注意 | 性役割・文化差の影響 | 頻度情報が乏しい(変化の感度) |
| 主な場面 | 退院支援〜生活期の活動再開モニタ | 方針共有、サービス調整、要介護文脈 |
ケース別の使い分け(PT の実務)
歩行自立・外出再開を狙う症例では、FAI で屋外/余暇の頻度をモニタし、Lawton で「買物・電話・服薬管理」など具体行為のハードルを特定します。IADL の種類ごとに「どの程度できているか」を可視化しつつ、「どのくらいの頻度で実行されているか」を組み合わせて読むイメージです。
重度例や介助量の説明が求められる場面では Lawton を主軸に、FAI の頻度シグナルで活動再開の広がりを示すと納得度が高まります。再評価は外来・通所で 1〜3 か月ごとが目安です。FAI は項目別の増減を目標に直結させ、Lawton は領域ごとに介入と環境調整(福祉用具・住宅改修・家事支援)を紐づけます。基本 ADL は Barthel/FIM を併用し、機能と生活のズレを最小化します。
IADL 評価フローの最小セット(院内標準案)
院内でばらつきを抑えるには、初回〜退院前〜フォローの 3 点で評価手順と説明フレーズを標準化します。初回で「頻度=FAI」と「可否=Lawton」を両輪で把握し、退院前に再検・共有、生活期は頻度シグナルで増減を示すと、本人・家族・多職種の合意形成がスムーズです。
書式は「FAI 自己記入 → PT 確認」「Lawton 面接(必要箇所を重点)」が負担軽減に有効です。評価票の保管は再検時の比較に直結するため、前回と並べて色分け・注釈を残す運用を推奨します。IADL 評価全体の設計は、ADL・IADL 評価の全体像ガイドと組み合わせて院内フローを整えると運用しやすくなります。
- 初回:FAI(自己記入 → 確認)+ Lawton(面接)
- 退院前:FAI 再検(前回比較)+ Lawton の要点再確認
- 外来・通所:FAI を 1–3 か月ごとに再検、Lawton は必要箇所のみ
関連リンク(学習用)
参考文献
- Holbrook M, Skilbeck CE. An activities index for use with stroke patients. Age Ageing. 1983;12(2):166–170. doi: 10.1093/ageing/12.2.166. PubMed: 6869117
- Schuling J, de Haan R, Limburg M, Groenier KH. The Frenchay Activities Index: assessment of functional status in stroke patients. Stroke. 1993;24(8):1173–1177. doi: 10.1161/01.STR.24.8.1173. PubMed: 8342192
- Lawton MP, Brody EM. Assessment of older people: self-maintaining and instrumental activities of daily living. Gerontologist. 1969;9(3):179–186. PubMed: 5349366
- Graf C. The Lawton Instrumental Activities of Daily Living Scale. Am J Nurs. 2008;108(4):52–62. PubMed: 18367931
- RehabMeasures Database. Frenchay Activities Index. Web


