GNRI運用プロトコル(目的と全体像)
本記事は GNRI( Geriatric Nutritional Risk Index )を臨床に実装するための手順書です。採血データの取得 → IBW 設定( Lorentz / BMI 22 )→ 算出 → 判定 → GLIM 連携 → 介入・記録までを、病棟・在宅の双方で使える形に整理しました。定義や計算式の背景は既存記事(GNRI とは)をご覧ください。
GNRI はスクリーニングです。リスク検出後は GLIM などの診断枠組みへ進み、食事・運動・疾病コントロールを統合したプランに落とし込みます(低栄養スクリーニングの運用)。
手順(病棟・在宅での標準フロー)
- 採血・身体計測:Alb( g/dL )、身長、体重を取得。浮腫・脱水は所見化。
- IBW を決める:院内標準を Lorentz または BMI 22 で統一し、方式を記録に明記。
- 算出:GNRI = 14.89 × Alb + 41.7 ×( 体重 / IBW )(※ 体重 / IBW は 1 を上限)。
- 判定:一般 4 区分、透析は 92 を実務目安に。
- 診断:リスクありなら GLIM の表現型+原因(摂取低下・炎症)で評価を深化。
- 介入・共有:食事強化+運動(6MWT、5×STS)で機能も併走。栄養・看護・ ST と KPI を共有。
判定表(一般/透析)
GNRI | リスク | 推奨 |
---|---|---|
> 98 | なし | 定期モニタ(食事量・体重・活動) |
92–98 | 低 | 食事支援+経過観察 |
82–<92 | 中等度 | 多職種による栄養介入 |
< 82 | 高度 | 積極的介入(経腸/静脈栄養も含む) |
GNRI | 評価 | 対応 |
---|---|---|
≥ 92 | リスクなし | 維持・生活指導・運動併用 |
< 92 | リスクあり | 摂取・炎症・体液の拡張評価( GLIM へ) |
落とし穴(必ず読む)
- Alb は炎症・浮腫・脱水で変動(単独で栄養「診断」は不可)。
- 体重 / IBW は1 を超える場合は 1として計算。
- IBW の方式( Lorentz / BMI 22 )が混在すると混乱の元。方式を統一・明記。
- 在宅では体重計測の再現性に注意。必要に応じて 在宅スクリーニングの工夫を併用。
記録テンプレ(コピペ可)
日付 | Alb( g/dL ) | 身長( m / cm ) | 体重( kg ) | IBW 方式 | IBW( kg ) | 体重 / IBW | GNRI | 判定 | 次アクション |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2025-10-05 | 3.4 | 1.60 / 160 | 48.0 | BMI 22 | 56.3 | 0.85( → 1 を上限 ) | 14.89×3.4+41.7×0.85 | 中等度 | GLIM 評価へ |
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GNRI とは(計算式・解釈)/ MNA-SF・MUST・GNRI の比較/ 低栄養スクリーニングの運用/ 栄養・嚥下ハブ
参考文献
- Bouillanne O, et al. Am J Clin Nutr. 2005;82(4):777–783. doi: 10.1093/ajcn/82.4.777
- Cereda E, et al. Br J Nutr. 2009;102(6):958–965.
- GLIM Update 2025. JPEN. 2025. doi: 10.1002/jpen.2756
- 加藤明彦ほか. 慢性透析患者における低栄養の評価法. 透析会誌. 2019;52(6):319–.