介助技術ハブ|移乗・体位変換の型

臨床手技・プロトコル
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介助技術ハブ|移乗・体位変換を「腰を守る型」で最短で引く

評価 → 介入 → 再評価の「型」をまとめて見る( PT キャリアガイド )

移乗や体位変換は「力任せに持ち上げない」だけでなく、姿勢・支点・重心移動・環境設定・用具をそろえるほど、対象者の安心と介助者の負担が同時に下がります。このハブでは、現場で迷いやすい介助場面を型(手順)に落とし込み、まず読むべき総論と、場面別の各論(小記事)を整理します。

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最短導線(まず読む 3 本)

最初は「総論 → 関連総論」の順で読むと、場面別の介助が一気に整理できます。

※スマホでは表が横スクロールできます。

最短導線( 3 本 ):介助の“型”をそろえる読み順
優先 記事 このハブでの役割 読むときの着眼点
看護・介護へのボディメカニクスの活用( 8 原則 ) 総論(入口) 支点・重心・基底面/環境設定/「持ち上げない」
シーティングハブ 車いす周りの総論(移乗とセット) ブレーキ・フットレスト・座位の安定化
評価ハブ 介助前後の評価(安全と再評価) 移乗前の起居・バランス・耐久性の見立て

このハブの使い方( 5 分フロー )

  1. 環境をそろえる:ベッド高、ブレーキ、障害物、足底接地(靴・床)を先に整えます。
  2. “どこが詰まっているか”を 1 つ決める:寝返り・起き上がり・立ち上がり・移乗・体位変換のどこで止まるか。
  3. 型で介助する:支点(骨盤・肩甲帯など)と重心移動(前方移動・回旋)を優先し、持ち上げは最小限にします。
  4. 用具を選ぶ:摩擦を下げる(スライディングシート)/段差を越える(ボード)/回旋を助ける(回転盤)など、目的で選びます。
  5. 記録と再評価:介助量(声かけ・見守り・一部介助など)と「できた動き」を残し、次回は 1 段階だけ軽くします。

場面別:介助の型(小記事の置き場所)

このハブ配下は、まず「 6 場面」の各論を増やすと育てやすいです(準備中でも OK )。

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場面別の介助:まず増やす“小記事”の設計図
場面 まずそろえる環境 型(コアになる動き) よくある詰まり 記事ステータス
寝返り(仰臥位 → 側臥位) ベッド柵、上肢の位置、下肢の回旋余地 骨盤の回旋を“先導”して体幹回旋を引き出す 肩を引っ張る/上肢がからむ 準備中
起き上がり(側臥位 → 端座位) ベッド高、肘支持のスペース、足底接地 体幹前方移動+支持基底面の確保 頸部だけが先行して苦しい 準備中
立ち上がり(端座位 → 立位) 座面高、足位置、手すり・歩行器の位置 骨盤前傾 → 重心前方移動 → 股関節伸展 上肢で引く/膝が前に出ない 準備中
移乗(ベッド ⇄ 車いす) 角度( 30–45 度目安)、段差、ブレーキ “回旋”と“すべり”を使い分ける 段差が大きい/車いす設定が甘い 準備中
ベッド上方移動 摩擦低減(シート)、2 人介助の配置 摩擦を下げて“水平移動”にする ずれ(剪断)が増える 準備中
体位変換・ポジショニング クッション・枕、ずれ対策、皮膚観察 荷重の分散と支持面の再設計 一時的に楽でも崩れる 準備中

用具の使い分け(早見)

用具は「摩擦を下げる/段差を越える/回旋を助ける/持ち上げをゼロに近づける」のどれを狙うかで選ぶと迷いが減ります。

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福祉用具の使い分け:目的 → 用具 → 失敗しやすい点
目的 用具の例 向く場面 注意点(現場の落とし穴)
摩擦を下げる スライディングシート ベッド上方移動、体位変換 引く方向が斜めだと“ずれ”が増える/端で皮膚を巻き込まない
段差・間隙を越える スライディングボード 座位でのベッド ⇄ 車いす移乗 座位保持が不十分だと危険/差し込み・抜去時に体幹が崩れやすい
回旋を助ける 回転盤(ターンディスク) 立位での方向転換を伴う移乗 足底の滑りと混同しやすい/膝の捻れが出ると中止
把持点を作る 歩行ベルト(ゲイトベルト) 立位保持、立ち上がり補助、歩行介助 “引っ張る道具”ではなく“支点を作る道具”/腹部の圧迫に注意
持ち上げを限りなくゼロへ リフト(床走行・天井走行 等) 重介助、協力が得にくい場面 準備に時間がかかるため手順の標準化が重要/吊り具サイズ確認

中止・変更の目安(安全に戻すポイント)

介助は「続ける」よりも「一段階戻す」判断が難しいです。迷ったら、いったん姿勢と環境をリセットしてから再開します。

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中止・変更の目安:介助を“戻す”判断を早くする
サイン その場で起きがちなこと まずやる対応 次に選ぶ選択肢
強い痛み・恐怖で身体が固まる 抵抗が増え、持ち上げ介助に寄る 一旦座り直し/深呼吸/手順を短く説明 用具の追加(ベルト、ボード等)
足底接地が崩れ、膝が内側に入る 回旋ストレスが増える 足位置の再設定/座面高の調整 立位移乗 → 座位移乗へ変更
めまい・息切れ・顔色不良 立ち上がり途中で停止 座位へ戻す/休息/呼吸を整える 分割(起立は次回)/見守りへ変更
介助者の腰部に違和感 姿勢が崩れているサイン ベッド高調整/足幅を取り直す 2 人介助/シート・リフトの検討

現場の詰まりどころ( OK / NG )

うまくいかないときは、技術そのものより準備(環境)で詰まっていることが多いです。

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現場の詰まりどころ:まず直すのは“介助のやり方”より“準備”
よくある NG 起きる問題 OK(型に戻す) 記録ポイント
ベッド高が低いまま介助 介助者が前屈し、腰に負担 ベッド高を“自分の大腿付け根”付近へ 設定した高さ( cm )
車いす設定が毎回バラバラ 段差・間隙が増えて怖い ブレーキ・フットレスト・角度を固定手順化 角度/段差の有無
“引っ張る”介助に寄る 対象者が怖くなり抵抗 支点(骨盤)と重心移動(前方)を先行 声かけ(合図)とタイミング
持ち上げで解決しようとする 介助者負担が急増 摩擦低減(シート)や座位移乗(ボード)へ 用具の使用有無

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1.ボディメカニクスだけで腰痛予防は十分ですか?

十分条件にはなりにくいです。ボディメカは「土台」ですが、重介助や繰り返しの多い現場では、摩擦低減や持ち上げ回避の用具を組み合わせて“高リスク動作を減らす”設計が重要になります。まずは「環境設定 → 型 → 用具」の順で整えると、再現性が上がります。

Q2.1 人介助と 2 人介助、どう判断しますか?

目安は「座位保持」「立位保持」「協力(理解とタイミング)」です。座位が崩れる/合図で動けない/恐怖が強い場合は、2 人介助または座位移乗(ボード)などに切り替えた方が安全に進みます。

Q3.立ち上がりで“膝が抜けそう”になります。どこを直せばいい?

多くは、足位置と重心前方移動の不足です。足底接地を作り、体幹を前に運べる座面高に調整し、骨盤前傾 → 前方移動 → 伸展の順に戻します。ベルトは“支点”として使い、引っ張って立たせる方向には寄らないようにします。

Q4.スライディングボードが怖い(危ない気がする)です。

怖さの多くは「座位保持が崩れる」「差し込み・抜去で体幹が傾く」場面で起きます。座位保持介助を優先し、段差と間隙を小さくし、対象者の移動方向を短くする(角度を整える)と安定します。必要なら 2 人介助で、前後の役割を分けるのが基本です。

Q5.介助量を軽くしていく“順番”はありますか?

介助量は「持ち上げ → 支点介助 → 誘導(重心移動) → 声かけ → 見守り」の順に薄くすると、対象者の成功体験を残しやすいです。毎回 1 段階だけ軽くし、うまくいかなければ 1 段階戻す、で十分に進みます。

参考資料

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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