ICU 再栄養リスク|リハ負荷は「上限固定」で迷いが減ります
再栄養リスクが高い場面で迷うのは、栄養の是非ではなく「今日の離床を進めてよいか」です。結論として、再栄養は中止よりも、上限( RPE / 時間 / 段階 )を先に固定し、再評価条件までセットにすると事故が減ります。
このページは病態の解説ではなく、ICU の現場で使える①最小セット→②上限テンプレ→③悪化サイン時の置き換え→④最小記録を表で標準化します。全体フロー(入室→ 72 h → 1 週レビュー)は親ページにまとめています。
ICU の栄養×リハ連携は「全体フロー」を先に固定すると回ります
栄養・嚥下の全体像(ハブ)
親:ICU 栄養 GL 2024 の運用フロー
栄養スクリーニングの運用(拾い上げの型)
臨床の型(フロー・表・テンプレ)を揃えると、院内の標準化が一気に進みます。
PT の“型”をまとめて整える(無料)まず見る最小セット:P / K / Mg と「呼吸・循環・意識」
再栄養は「採血の話」で終わらせると、負荷設計に反映されません。リハ側は診断ではなく、負荷が崩れるサインを早く拾える形に落とします。
最小セットはP / K / Mgに加え、呼吸( RR / 努力呼吸 )、循環( HR / BP )、意識・せん妄です。所見を増やすより、見る項目を固定して「上限」とセットで共有します。
今日の負荷を決める:上限( RPE / 時間 / 段階 )を先に固定
再栄養リスクで重要なのは「どこまでやるか」を先に決め、再評価条件まで残すことです。上限は 3 点セット( RPE / 時間 / 段階 )で固定すると、引き継ぎでもブレません。
迷ったら、強度よりも分割(短時間×回数)で回数を確保し、悪化サインが出たら「別ルート」に置き換えます。
| 状況 | 上限( RPE ) | 時間(合計) | 段階(例) | 再評価条件 | 記録例(短文) |
|---|---|---|---|---|---|
| 再栄養リスク:高(採血フォロー中) | 3–4 | 10–15 分 | 端座位中心/立位は回数限定 | P / K / Mg 確認後に上げ幅検討 | 上限:RPE 3–4/ 10 分/段階据え置き(採血後再評価) |
| P 低下傾向・補正あり | 3 | 10 分 | 端座位+ ADL 練習(分割) | 補正量増/症状出現で即共有 | P 低下傾向/本日上限固定(分割で実施) |
| 呼吸仕事量が増えやすい | 3 | 5–10 分 | 休息比率↑/呼吸介助を併用 | RR ↑・努力呼吸で中断→置換 | RR ↑ 時は休息比率↑へ変更(置換ルール固定) |
悪化サインが出たら「別ルート」へ:置き換え表で安全に回す
再栄養リスクの日は、「中止」ではなく同じ目標を別ルートで達成するのが現実的です。悪化サインを拾ったら、強度を落とすより姿勢・分割・休息比率で置き換えます。
下の表は、チームでの共通言語( NG → OK )としてそのまま使えます。
| 見るもの | 変化のサイン | やりがち NG | OK の置き換え | 記録の要点 | 報告優先度 |
|---|---|---|---|---|---|
| P / K / Mg | 低下・補正増 | 段階を進める | 段階据え置き+分割で回数確保 | 上限固定+再評価条件(採血後) | 高 |
| 呼吸( RR / 努力呼吸 ) | RR ↑/努力呼吸 | 同じ強度で続行 | 休息比率↑/端座位中心へ置換 | 休息比率と置換理由 | 中 |
| 循環( HR / BP ) | 立位で破綻 | 立位を繰り返す | 端座位+上肢練習/ポジショニング | 破綻した姿勢と次の代替 | 中 |
| 意識・せん妄 | 興奮・拒否増 | 時間で押し切る | 短時間×回数に分割( 5 分× 2 など) | 分割回数と反応 | 中 |
最小記録テンプレ:親の「 5 行」+再栄養 1 行
記録は長文より、意思決定が追える短文化が効きます。まずは上限固定+再評価条件を残し、次に置き換え(分割・姿勢変更)を 1 行で書きます。
全体の最小記録( 5 行)は親ページにまとめています。本ページでは再栄養の追記 1 行だけ固定します。
| 行 | 書く内容 | 例(そのまま使える) |
|---|---|---|
| + 1 | 再評価条件 | P / K / Mg 確認後に上げ幅再検討(本日段階据え置き) |
現場の詰まりどころ:ここで事故る(よくある失敗)
① 採血は見ているのに、上限が決まっていない → まず 上限( RPE / 時間 / 段階 )を固定してから実施します。
② 悪化サインが出ても「中止 or 続行」で二択になる → 置き換え表で “別ルート” を用意します。
③ 記録が長文化して、意思決定が追えない → 親の最小記録に寄せ、再栄養は「採血後再評価」の 1 行だけ追記します。関連:ICU 栄養×リハ 最小記録(親)
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 再栄養リスクの日は “中止” が正解ですか?
中止よりも、上限固定( RPE / 時間 / 段階 )と置き換えで回すほうが現実的です。負荷を落とす日は、強度ではなく分割・姿勢選択・休息比率で回数を確保し、再評価条件(採血後など)まで記録します。
Q2. PT は P / K / Mg を “どこまで” 見るべきですか?
診断や治療ではなく、負荷設計に反映できる形で見るのが役割です。低下・補正増がある日は、段階を進めずに段階据え置き+再評価条件を固定し、呼吸・循環・意識の変化も合わせて短く残します。
Q3. 上限を決めるとき、最初に固定すべき 1 つは?
段階(どの姿勢までやるか)です。段階が決まると、時間(合計)と RPE が決めやすくなります。迷ったら「端座位中心+分割」で回数を確保し、採血後に上げ幅を再検討します。
Q4. 悪化サインが出たら、どの順で置き換えますか?
おすすめは①休息比率↑→②段階を下げる(立位→端座位)→③分割(短時間×回数)です。「中止」ではなく、目標(離床回数・ ADL )を別ルートで守ります。
次の一手
- 栄養・嚥下ハブ(総合):関連テーマをまとめて確認
- 親:ICU 栄養 GL 2024(運用フロー):入室→ 72 h → 1 週レビューへ戻る
運用を整えたあとに、職場環境の詰まりも点検しておきましょう
チェックシートで「人員・教育・標準化」の詰まりを先に見える化すると、改善の打ち手が早く決まります。
参考文献
- Nakamura K, et al. The Japanese Critical Care Nutrition Guideline 2024. J Intensive Care. 2025;13(1):18. doi: 10.1186/s40560-025-00785-z
- da Silva JSV, et al. ASPEN Consensus Recommendations for Refeeding Syndrome. Nutr Clin Pract. 2020;35(2):178-195. doi: 10.1002/ncp.10474
- Mehanna HM, Moledina J, Travis J. Refeeding syndrome: what it is, and how to prevent and treat it. BMJ. 2008;336(7659):1495-1498. doi: 10.1136/bmj.a301
- National Institute for Health and Care Excellence (NICE). Nutrition support for adults: oral nutrition support, enteral tube feeding and parenteral nutrition (CG32). 2006. Guideline PDF
- Singer P, et al. ESPEN guideline on clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr. 2019;38(1):48-79. doi: 10.1016/j.clnu.2018.08.037
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

