リスター結節はどこ?位置・触診方法と長母指伸筋腱の見分け方

臨床手技・プロトコル
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リスター結節は、橈骨遠位端の背側にある骨性ランドマークです。手関節背側で触れられ、長母指伸筋腱が結節の尺側を通過して母指方向へ走行を変えるため、腱の位置を確認するときの基準になります。

触診では、手関節背側の出っ張りを探すだけでは不十分です。橈骨茎状突起から橈骨背側をたどり、動かない骨性隆起を確認したうえで、母指を伸展させたときに動く長母指伸筋腱と照合します。この記事では、リスター結節の位置、触診手順、周囲の骨・腱との見分け方、安全上の注意点を整理します。

手関節を含む骨指標の全体像は、理学療法士が押さえる骨性ランドマークから確認できます。

リスター結節は橈骨遠位端の背側にある

リスター結節は、橈骨遠位端背側にある骨性隆起です。「橈骨背側結節」「Lister結節」と表記されることもあります。

位置を確認するときは、次の4点を押さえます。

  • リスター結節は橈骨にある
  • 手関節の背側から触れる
  • 橈骨茎状突起より背側・尺側寄りにある
  • 長母指伸筋腱は結節の尺側を通り、母指方向へ走行を変える
リスター結節を見つけるための位置関係
確認項目 リスター結節の位置 触診での確認点
所属する骨 橈骨 手根骨や尺骨上の隆起ではない
部位 橈骨遠位端の背側 前腕背側から手関節へ向かってたどる
橈骨茎状突起との関係 背側・尺側寄り 母指側端の隆起とは位置が異なる
長母指伸筋腱との関係 腱の橈側に位置する 腱は結節の尺側を通過する
触診時の動き 母指運動では移動しない 動く腱と動かない骨を区別する
リスター結節、橈骨茎状突起、尺骨茎状突起、長母指伸筋腱、第3背側コンパートメントの位置関係と触診ルート
図1 リスター結節は橈骨遠位端背側にあり、長母指伸筋腱は結節の尺側を通って母指方向へ走行を変えます。触診では橈骨茎状突起から背側・尺側へたどり、動かない骨と母指伸展で動く腱を照合します。

リスター結節の突出の程度や形状には個人差があります。そのため、「手関節背側で最も高い一点」のように突出の強さだけで判断せず、橈骨との連続性と長母指伸筋腱との位置関係を組み合わせます。

長母指伸筋腱はリスター結節の尺側で方向を変える

長母指伸筋腱は、手関節背側の第3背側コンパートメントを通過します。橈骨遠位端ではリスター結節の尺側に沿って走行し、結節を滑車のような支点として母指方向へ斜めに向きを変えます。

リスター結節の橈側には、主に長橈側手根伸筋腱と短橈側手根伸筋腱が通る第2背側コンパートメントがあります。第3背側コンパートメントより尺側には、総指伸筋腱と示指伸筋腱が通る第4背側コンパートメントがあります。

リスター結節と背側コンパートメントの位置関係
位置 背側コンパートメント 主な腱 動きを使った確認
リスター結節の橈側 第2背側コンパートメント 長橈側手根伸筋腱、短橈側手根伸筋腱 手関節伸展で緊張が変化する
リスター結節の尺側近傍 第3背側コンパートメント 長母指伸筋腱 母指IP関節伸展で腱が動く
さらに尺側 第4背側コンパートメント 総指伸筋腱、示指伸筋腱 示指から小指の伸展で腱が動く

長母指伸筋腱は、リスター結節の真上を直線的に通過するわけではありません。結節の尺側を通ったあと、手背を斜めに横切って母指末節骨方向へ向かいます。

この「結節の尺側を通過し、母指方向へ曲がる」という走行が、リスター結節と長母指伸筋腱を相互に確認するポイントです。

リスター結節の触診方法

触診では、骨性隆起を一点だけで探すのではなく、橈骨茎状突起、橈骨遠位端背側、長母指伸筋腱の順に位置関係を確認します。

準備する肢位

前腕を回内位にして、手背を上に向けます。前腕と手を台の上に置き、手関節周囲の力を抜いてもらいます。

手関節は中間位、または対象者が無理なく保持できる軽度屈曲位とします。強く掌屈させる必要はありません。

触診前に疼痛、腫脹、皮膚障害、手術創、固定範囲、運動制限の指示を確認します。橈骨遠位端骨折後や手術後では、通常の触診をそのまま行わないでください。

触診の5ステップ

  1. 橈骨茎状突起を確認する:手関節の母指側で、橈骨遠位端の骨性隆起を確認します。
  2. 橈骨上を背側・尺側へたどる:指腹を橈骨から離さず、橈骨茎状突起から橈骨遠位端背側へ移動します。
  3. 動かない骨性隆起を捉える:橈骨背側で触れる硬い隆起を、指腹で広く確認します。
  4. 母指IP関節を伸展してもらう:母指末節を伸ばしたときに、結節の尺側で動く索状構造を確認します。
  5. 腱の走行を母指方向へ照合する:長母指伸筋腱が結節付近から母指背側へ斜めに続くことを確認します。

リスター結節は母指を動かしても移動しません。一方、長母指伸筋腱は母指IP関節の伸展に伴って緊張や位置が変化します。

骨と腱の判別に迷う場合は、触れている指を強く押し込まず、母指の伸展と弛緩をゆっくり繰り返してもらいます。指の下で滑走する構造が腱で、その橈側にある動かない硬い隆起がリスター結節の目安になります。

リスター結節と橈骨茎状突起・腱を見分ける

リスター結節と混同しやすいのは、橈骨茎状突起、尺骨茎状突起、手根骨の隆起、長母指伸筋腱です。それぞれ所属する骨、手関節上の位置、運動時の変化が異なります。

リスター結節と周囲構造の見分け方
構造 主な位置 運動時の特徴 見分けるポイント
リスター結節 橈骨遠位端背側 母指運動では移動しない 長母指伸筋腱の橈側にある骨性隆起
橈骨茎状突起 橈骨遠位端の母指側 手指運動では移動しない リスター結節より橈側にある
尺骨茎状突起 手関節の小指側 前腕回内外で橈骨との位置関係が変化する 橈骨ではなく尺骨にある
長母指伸筋腱 リスター結節の尺側から母指背側へ走行 母指IP関節伸展で動く 骨ではなく索状の可動性構造
手根骨 橈骨遠位端より遠位 手関節運動に伴い橈骨との位置関係が変化する 橈骨上の隆起か、関節より遠位かを確認する

橈骨茎状突起との見分け方

橈骨茎状突起は手関節の母指側にあり、リスター結節はそこから背側・尺側寄りにあります。どちらも橈骨遠位端にあるため、骨面を連続してたどることができます。

橈骨茎状突起の位置と触診方法は、橈骨茎状突起はどこ?触診方法と周囲構造の見分け方で確認できます。

長母指伸筋腱との見分け方

長母指伸筋腱は硬く触れることがあるため、小さな骨性隆起と誤認する可能性があります。母指IP関節を伸展してもらい、触れている構造が動くかを確認します。

索状構造が母指方向へ移動・緊張すれば、長母指伸筋腱を触れている可能性があります。動かない硬い骨面を橈骨上で確認できれば、リスター結節の位置を判断しやすくなります。

手根骨との見分け方

手関節背側には、橈骨遠位端だけでなく手根骨による凹凸もあります。橈骨の長軸を遠位へたどり、触れている隆起が橈骨上にあるかを確認します。

手関節を小さく屈曲・伸展したときに、橈骨と隆起の位置関係が変化する場合は、手根骨側を触れている可能性があります。疼痛や術後制限がある場合は、見分けるために無理な運動を加えないでください。

リスター結節は手関節背側の位置を共有する基準になる

リスター結節の触診は、それだけで腱損傷や手関節疾患を診断する検査ではありません。手関節背側の位置関係を整理し、評価部位を再現可能な形で共有するために使用します。

  • 橈骨遠位端背側の骨性ランドマークを確認する
  • 長母指伸筋腱の走行を推定する
  • 第2・第3・第4背側コンパートメントの位置関係を整理する
  • 手関節背側の圧痛や腫脹の位置を記録する
  • 橈骨遠位端骨折後や手術後の所見を経時的に共有する

「リスター結節周囲に圧痛がある」という所見だけでは、骨、腱、腱鞘、関節包など、疼痛を生じている組織を確定できません。

疼痛の発症経過、外傷歴、腫脹、母指運動時痛、腱の滑走、筋力、感覚、画像所見などを組み合わせて解釈します。

橈骨遠位端骨折後は長母指伸筋腱の変化に注意する

リスター結節は、橈骨遠位端骨折や手術の影響を受ける可能性がある部位です。また、その近くを長母指伸筋腱が通るため、骨折片、局所の形態変化、腱周囲の状態などが腱に関係する場合があります。

橈骨遠位端骨折後や手術後に、次のような変化がみられる場合は、触診だけで経過を判断せず、医師による評価につなげます。

  • 母指IP関節を伸ばしにくくなった
  • 母指を伸ばした状態で保持できない
  • 手関節背側から母指側に新たな疼痛が生じた
  • 母指運動時に引っかかりや軋轢感がある
  • 以前と比べて腱の動きを確認できなくなった
  • 腫脹、熱感、発赤が増加している

長母指伸筋腱の動きを触れにくいことだけで、断裂を確定したり除外したりすることはできません。疼痛、腫脹、皮下組織の厚さ、固定、運動方法なども触知性に影響します。

以下の場合は、強い圧迫や確認目的の反復運動を避けてください。

  • 急性外傷や骨折が疑われる
  • 橈骨遠位端骨折の受傷直後である
  • 手術後で接触・運動範囲に制限がある
  • 著明な腫脹、皮膚損傷、感染徴候がある
  • 安静時にも強い疼痛がある
  • 主治医から母指・手関節運動を制限されている

リスター結節の触診で起こりやすい間違い

手関節背側で最も高い場所をリスター結節と判断する

リスター結節の高さや形状には個人差があります。突出の大きさだけで決めず、橈骨茎状突起、橈骨背側、長母指伸筋腱との位置関係を確認します。

長母指伸筋腱を骨性隆起と誤認する

緊張した腱は硬い索状物として触れます。母指IP関節を伸展・弛緩してもらい、触れている構造が動くかを確認してください。

母指全体の動きだけで腱を確認する

母指の運動には複数の筋・腱が関与します。長母指伸筋腱を確認するときは、母指末節を伸ばすIP関節伸展に着目します。

長母指伸筋腱が結節の真上を通ると考える

長母指伸筋腱は、リスター結節の尺側にある第3背側コンパートメントを通過し、その後に母指方向へ走行を変えます。結節中央の真上だけを探すと位置を誤りやすくなります。

圧痛だけで腱鞘炎や腱損傷と判断する

リスター結節周囲の圧痛は、所見の局在を示す情報です。圧痛だけでは原因組織や病態を確定できないため、運動時痛、腱の滑走、筋力、外傷歴、画像所見などと統合します。

骨折後に強く押しながら腱の動きを繰り返す

骨折後や手術後は、組織の状態や運動制限を確認する必要があります。触れにくいからといって圧を強めたり、母指運動を何度も反復させたりしないでください。

記録は結節と腱の位置関係を残す

「手関節背側に圧痛あり」だけでは、再評価時に同じ部位を確認できません。リスター結節、橈骨茎状突起、長母指伸筋腱との位置関係を記録します。

リスター結節周囲を記録するときの項目
項目 記録する内容 記録例
右・左 右手関節
部位 骨指標からの位置 右リスター結節尺側
所見 圧痛、腫脹、熱感など 軽度圧で限局性圧痛あり
腱の動き 母指IP関節伸展時の滑走 長母指伸筋腱の滑走を触知
症状の再現条件 関節運動、抵抗、日常動作 自動母指IP関節伸展時に疼痛あり
筋機能 運動の可否、保持、左右差 母指IP関節伸展可能、保持可能
外傷・術後情報 受傷日、術式、制限事項 橈骨遠位端骨折術後、主治医指示範囲内で確認

記録例は次のようになります。

右橈骨遠位端背側でリスター結節を確認。母指IP関節伸展時、結節尺側から母指背側へ向かう長母指伸筋腱の滑走を触知した。結節尺側に軽度圧痛を認めるが、腫脹・熱感なし。自動伸展および伸展位保持は可能。圧痛所見のみで原因組織は確定せず、運動時痛と筋機能を継続して評価する。

再評価では、手関節と前腕の肢位、母指に行わせた運動、触診部位、圧の強さを可能な範囲でそろえます。

リスター結節についてよくある質問

リスター結節と橈骨背側結節は同じですか?

同じ骨性ランドマークを指します。英語ではLister’s tubercle、解剖学的な名称として橈骨背側結節と表現されることがあります。

リスター結節は誰でも触れますか?

橈骨遠位端背側の骨性ランドマークとして触知できますが、形状や突出の程度には個人差があります。皮下組織、腫脹、疼痛、手関節の肢位などによっても触れやすさが変わります。

長母指伸筋腱はリスター結節の上を通りますか?

長母指伸筋腱は、リスター結節の尺側にある第3背側コンパートメントを通過します。その後、結節を支点にするように母指方向へ斜めに走行を変えます。

リスター結節の圧痛があれば長母指伸筋腱炎ですか?

圧痛だけでは長母指伸筋腱や腱鞘の病変を確定できません。圧痛部位、母指運動時痛、腱の滑走、筋力、外傷歴、画像所見などを組み合わせて評価します。

母指を伸ばせれば長母指伸筋腱断裂を除外できますか?

触診や一つの運動所見だけで腱損傷を確実に除外することはできません。橈骨遠位端骨折後や手術後に母指伸展の低下、疼痛、引っかかり、急な機能変化がみられる場合は、医師の診察や必要な画像評価につなげます。

まとめ

リスター結節は、橈骨遠位端の背側にある骨性ランドマークです。触診では橈骨茎状突起から橈骨上を背側・尺側へたどり、動かない骨性隆起を確認します。

  • リスター結節は橈骨遠位端背側にある
  • 橈骨茎状突起より背側・尺側寄りに位置する
  • 長母指伸筋腱は結節の尺側を通過する
  • 長母指伸筋腱は結節付近で母指方向へ走行を変える
  • 骨は動かず、腱は母指IP関節伸展で動く
  • 形態差があるため、突出の強さだけで判断しない
  • 骨折後の母指伸展低下や急な症状変化は触診だけで判断しない

触診結果は「手関節背側」という表現だけでなく、リスター結節からの方向、長母指伸筋腱との位置関係、症状の再現条件、母指伸展機能まで記録すると、再評価や多職種間の共有に使用しやすくなります。

参考文献

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著者情報

この記事は、脳卒中認定理学療法士、褥瘡・創傷ケア認定理学療法士、登録理学療法士、3学会合同呼吸療法認定士の資格を持つ現役理学療法士が、解剖学的研究と臨床での触診・評価経験をもとに作成しています。

解剖学的な位置関係や触診所見だけで、個別患者の疾患、骨折、腱損傷、疼痛原因を診断することはできません。急性外傷、強い疼痛、腫脹、母指伸展の低下、術後の急な機能変化などがある場合は、医師の診察や必要な検査につなげてください。