回復期リハ 高次脳機能障害の退院時情報提供を解説

制度・実務
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回復期リハの高次脳機能障害 退院時情報提供|令和 8 年改定で何が変わるか

制度要件の変更は「知っている」だけだと現場で漏れます。まずは 5 分で全体像を確認し、運用の型を先に固定しましょう。 PT キャリアガイドで実務の型を確認する

結論からいうと、令和 8 年診療報酬改定では、回復期リハビリテーション病棟において「高次脳機能障害患者の退院支援体制」が要件として追加される整理が示されています。ポイントは、退院後に必要となる障害福祉サービス等へ円滑に接続するため、退院時の情報提供を運用として明確化することです。施設基準や届出の“紙対応”だけでなく、病棟カンファと記録様式まで実装してはじめて算定・監査に耐える形になります。

厚労省資料の議論整理では、回復期リハ病棟入院料にこの要件を追加する方向が明記されています。加えて、職能団体の改定サマリーでも「必要に応じた対象機関への情報提供要件化」が示されており、現場では「誰が・いつ・どこまで説明/提供したか」の再現性が重要です。

改定ポイント|現場で押さえるべき変更点

今回の論点は、単なる理念ではなく、退院支援プロセスに具体的な行為を組み込む点にあります。実務上は次の 3 点が核です。

高次脳機能障害の退院支援で追加・強化される実務要点(回復期リハ病棟)
観点 要点 現場で必要な対応
対象の考え方 高次脳機能障害患者の退院後支援を明確化 対象抽出ルール(診断・症候・生活課題)を病棟で統一
退院時説明 必要な障害福祉サービス等へつなぐための情報説明 患者・家族への説明テンプレを標準化
情報提供 必要に応じて対象機関へ患者情報を提供 同意取得・提供先・提供内容・提供日を記録欄で固定

このテーマは、同時に進む「入退院支援の強化」「地域連携の強化」とセットで運用するほど漏れが減ります。制度の背景は“退院後の生活支援への接続不全を減らす”点にあるため、退院前カンファでの役割分担が成果を左右します。

5 分で回せる運用フロー(入院時→退院後)

忙しい病棟では、まず最小フローを固定するのが近道です。運用を 4 フェーズに分けると、誰が見ても同じ動きにできます。

1. 入院時(初期評価〜週内)

  • 高次脳機能障害の疑い/確定をスクリーニング
  • 退院後の生活課題(服薬、金銭管理、通院、就労/通学)を初期聴取
  • 家族キーパーソンと連絡手段を確定

2. 中間期(退院 2〜3 週前)

  • 連携候補(支援センター、相談支援、福祉サービス)を選定
  • 患者・家族へ「退院後に必要な支援」の説明を開始
  • 主治医・MSW・リハで情報提供の必要性を判定

3. 退院前(最終カンファ)

  • 情報提供先、提供方法(書面/電話/面談)、担当者を確定
  • 本人同意の確認と記録
  • 提供内容(機能面、行動特性、リスク、支援提案)を統一様式で整理

4. 退院時〜退院後

  • 実施記録(提供日・提供先・提供者)を残す
  • 未接続リスクがある場合は追跡連絡の条件を明文化

退院前会議の進め方は、退院前カンファの議題固定テンプレと合わせると、説明漏れ・記録漏れを減らしやすくなります。

記録テンプレ|算定漏れを防ぐ最小記録セット

「やったのに記録が残っていない」は最も避けたい失点です。以下の 6 項目を電子カルテ/紙様式に固定すると運用が安定します。

高次脳機能障害の退院時情報提供で残すべき記録項目(最小セット)
項目 記録例 チェックポイント
対象判定 高次脳機能障害(注意・遂行機能・記憶)の生活影響あり 誰が判定したかを明記
説明実施 患者・家族へ退院後支援の必要性を説明 日時・同席者を明記
同意確認 情報提供について本人/家族の同意あり 口頭/書面を統一運用
提供先 支援センター、相談支援事業所 等 正式名称を記載
提供内容 機能、行動特性、生活課題、必要配慮 抽象語を避け具体化
提供実績 提供日、提供方法、担当者 実施有無を必ず記録

現場の詰まりどころ・よくある失敗

高次脳機能障害の退院支援で起きやすい失敗と対策
よくある失敗 なぜ起きるか 対策
対象抽出が遅い 入院時にチェック項目がない 初期評価シートに「退院後支援必要性」を固定追加
説明はしたが記録がない 説明欄と提供欄が分離していない 説明/同意/提供を 1 画面で記録できる様式へ統一
提供先選定が属人化 地域資源マップが更新されていない 四半期ごとに連携先リストを更新
退院前に時間が足りない 説明開始が遅い 退院 2〜3 週前を起点に運用ルール化

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. どの患者を「情報提供の対象」にすべきですか?

A. 高次脳機能障害が生活機能や社会参加に影響し、退院後に福祉支援が必要と判断される患者です。診断名だけでなく、注意・記憶・遂行機能などの実生活課題で判断基準を院内統一すると運用が安定します。

Q2. 情報提供は必ず外部機関に行う必要がありますか?

A. 議論整理では「必要に応じて」の情報提供が示されています。実務では、必要性判定の根拠と、実施した場合の提供記録を残すことが重要です。

Q3. 退院前カンファで最低限そろえるべき項目は?

A. ①対象判定、②患者・家族説明、③同意確認、④提供先、⑤提供内容、⑥提供実績(日時・担当)です。6 点セットで回すと漏れが減ります。

Q4. すでに退院支援加算の運用がある場合、何を追加すればよいですか?

A. 既存運用に「高次脳機能障害の退院後支援」専用のチェック欄を追加し、説明と情報提供の記録を明示化するのが最短です。新規様式を増やすより、既存様式への統合が定着しやすいです。

次の一手


参考文献

  1. 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(案). 2026. https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001631272.pdf
  2. 厚生労働省. 第643回 中央社会保険医療協議会 総会(公聴会)資料. 2026-01-21. https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001637094.pdf
  3. 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(パブコメ関連資料). 2026. https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001646855.pdf
  4. 日本理学療法士協会. 令和8年度診療報酬改定 答申 理学療法士に関連する項目. 2026-02-13. https://www.japanpt.or.jp/pt/function/asset/pdf/20260213_relational_pt_c.pdf

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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