高次脳機能障害の退院時情報提供【回復期リハ・2026改定】

制度・実務
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回復期リハの高次脳機能障害 退院時情報提供|令和 8 年改定で何が変わるか

結論からいうと、令和 8 年診療報酬改定の回復期リハビリテーション病棟では、高次脳機能障害を有する患者が退院後にリハビリテーションを利用する予定の保険医療機関又は生活介護等を提供する事業所若しくは施設に対して、リハビリテーション総合実施計画書等を文書で提供する運用が整理されました。実務で大切なのは、どこへ提供するかどこへは提供先として数えないかを最初に分けることです。

施設基準や届出の “紙対応” だけだと、現場では漏れます。病棟カンファの役割分担と、同意取得・提供先・提供内容・提供日を記録様式で固定してはじめて算定・監査に耐える形になります。特に今回の疑義解釈その 2 では、「介護保険によるリハビリテーション」の具体範囲と、「利用する予定」は単なる受診予定やケアプラン作成予定を含まないことが明確になったため、提供先を広く取りすぎないことが重要です。

最終更新:2026 年 4 月 1 日(疑義解釈その 2 反映)

改定ポイント|現場で押さえるべき変更点

要点は 3 つです。①提供先を「リハ利用先」で統一する、②介護保険によるリハの範囲を具体化する、③単なる受診予定やケアプラン作成予定を提供先に含めない。この 3 点を “型” にすると、担当者が替わっても運用が崩れません。

高次脳機能障害の退院時情報提供で追加確認したい実務要点(回復期リハ病棟)
観点 要点 現場で必要な対応
提供先の考え方 退院後にリハビリテーションを利用する予定の先に文書提供する 提供先候補を「リハ利用先」に限定して確認する
介護保険によるリハ 訪問リハ、通所リハ、介護予防訪問リハ、介護予防通所リハ、介護保険施設での適切なリハが該当 退院先確認シートに具体例を固定表示する
含まない先 単なる受診予定の医療機関、ケアプラン作成予定の居宅介護支援事業所等は含まない 「受診のみ」「ケアプランのみ」を除外欄で分ける
退院時情報提供の提供先をカテゴリでそろえる図(回復期リハ・高次脳機能障害)
提供先は固有名詞ではなく “リハ利用先のカテゴリ” でそろえると、地域差が出にくく運用が安定します。

提供先は「リハ利用先」のカテゴリでそろえると迷いにくい

退院時情報提供の「提供先」カテゴリ早見(回復期リハ・高次脳機能障害)
カテゴリ 提供先の考え方 伝えるとよい内容(型)
医療保険 退院後にリハビリテーションを利用する保険医療機関 機能面、行動特性、生活課題、必要配慮、再評価の目安
介護保険 訪問リハ、通所リハ、介護予防訪問リハ、介護予防通所リハ、介護保険施設での適切なリハ 生活場面での困りごと、見守り条件、事故予防のポイント
障害福祉サービス 生活介護等を提供する事業所・施設のうち、退院後にリハ利用予定がある先 遂行機能、注意、記憶の特徴と、支援時の配慮案
含まない例 単なる受診予定の別医療機関、ケアプラン作成予定のみの居宅介護支援事業所等 提供先としては数えず、必要なら別の退院支援記録で管理する

このテーマは、同時に進む「入退院支援の強化」「地域連携の強化」とセットで運用するほど漏れが減ります。制度の背景は “退院後の生活支援への接続不全を減らす” 点にあるため、退院前カンファでの役割分担が成果を左右します。ただし、今回の疑義解釈その 2 を踏まえると、広く紹介先を書くのではなく、実際にリハビリテーションを利用する先かを先に確認する流れが必要です。

「提供してよい先」と「含まない先」を最初に分ける

現場で最も詰まりやすいのは、「退院後に関わる先なら全部提供先に入れてよい」と考えてしまうことです。今回の整理では、利用する予定とは、医療保険、介護保険又は障害福祉サービスによるリハビリテーションを利用する場合のみを指します。したがって、単なる受診予定やケアプラン作成予定だけでは、文書提供先に含めません。

提供先に含むもの・含まないものの整理
区分 含む 含まない
医療 退院後にリハビリテーションを利用する保険医療機関 単なる受診予定の別の保険医療機関
介護保険 訪問リハ、通所リハ、介護予防訪問リハ、介護予防通所リハ、介護保険施設での適切なリハ ケアプラン作成予定のみの居宅介護支援事業所等
障害福祉 生活介護等を提供する事業所・施設のうち、リハ利用予定がある先 生活支援だけでリハ利用予定がない先

5 分で回せる運用フロー(入院時→退院後)

忙しい病棟では、まず最小フローを固定するのが近道です。運用を 4 フェーズに分けると、誰が見ても同じ動きにできます。

1. 入院時(初期評価〜週内)

  • 高次脳機能障害の疑い/確定をスクリーニングする
  • 退院後の生活課題(服薬、金銭管理、通院、就労/通学)を初期聴取する
  • 家族キーパーソンと連絡手段を確定する

2. 中間期(退院 2〜3 週前)

  • 退院後にリハ利用予定がある医療・介護保険・障害福祉サービスの候補先を選定する
  • 患者・家族へ「退院後に必要な支援」の説明を開始する
  • 主治医・ MSW ・リハで情報提供の必要性を判定する

3. 退院前(最終カンファ)

  • 情報提供先、提供方法(書面/電話/面談)、担当者を確定する
  • 本人同意の確認と記録を残す
  • 提供内容(機能面、行動特性、リスク、支援提案)を統一様式で整理する
  • 単なる受診先やケアプラン作成予定のみの先が混ざっていないか確認する

4. 退院時〜退院後

  • 実施記録(提供日・提供先・提供者)を残す
  • 未接続リスクがある場合は追跡連絡の条件を明文化する

記録テンプレ|算定漏れを防ぐ最小記録セット

「やったのに記録が残っていない」は最も避けたい失点です。以下の 7 項目を電子カルテ/紙様式に固定すると運用が安定します。

高次脳機能障害の退院時情報提供で残すべき記録項目(最小セット)
項目 記録例 チェックポイント
対象判定 高次脳機能障害(注意・遂行機能・記憶)の生活影響あり 誰が判定したかを明記
説明実施 患者・家族へ退院後支援の必要性を説明 日時・同席者を明記
同意確認 情報提供について本人/家族の同意あり 口頭/書面を統一運用
提供先区分 医療保険/介護保険/障害福祉サービス 「リハ利用先」かどうかを先に確認
提供先 訪問リハ事業所、通所リハ事業所、退院後にリハを利用する医療機関 等 正式名称を記載
提供内容 機能、行動特性、生活課題、必要配慮 抽象語を避け具体化
提供実績 提供日、提供方法、担当者 実施有無を必ず記録

現場の詰まりどころ・よくある失敗

高次脳機能障害の退院支援で起きやすい失敗と対策
よくある失敗 なぜ起きるか 対策
対象抽出が遅い 入院時にチェック項目がない 初期評価シートに「退院後支援必要性」を固定追加する
説明はしたが記録がない 説明欄と提供欄が分離していない 説明/同意/提供を 1 画面で記録できる様式へ統一する
提供先選定が広すぎる 「退院後に関わる先」をすべて含めてしまう リハ利用先だけを提供先にする確認欄を置く
単なる受診先を提供先に含める 「利用する予定」の意味を広く取りすぎる 受診のみ/ケアプランのみは除外欄で管理する
退院前に時間が足りない 説明開始が遅い 退院 2〜3 週前を起点に運用ルール化する

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. どの患者を「情報提供の対象」にすべきですか?

A. 高次脳機能障害が生活機能や社会参加に影響し、退院後にリハビリテーションを利用する支援先への接続が必要と判断される患者です。診断名だけでなく、注意・記憶・遂行機能などの実生活課題で判断基準を院内統一すると運用が安定します。

Q2. 情報提供は必ず外部機関に行う必要がありますか?

A. 必要に応じて行います。実務では、必要性判定の根拠と、実施した場合の提供記録を残すことが重要です。そのうえで、提供先は「退院後にリハビリテーションを利用する予定の先」に絞って考えると整理しやすくなります。

Q3. 「介護保険によるリハビリテーション」とは具体的に何ですか?

A. 訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、介護予防訪問リハビリテーション、介護予防通所リハビリテーション、又は介護保険施設で医師・ PT ・ OT ・ ST により行われる、高次脳機能障害者に適したリハビリテーションを指します。

Q4. 単なる受診予定の病院や、ケアプラン作成予定の居宅介護支援事業所は提供先に含みますか?

A. 含みません。「利用する予定」とは、医療保険、介護保険又は障害福祉サービスによるリハビリテーションを利用する場合のみを指します。単なる受診予定やケアプラン作成予定だけでは、文書提供先に含めません。

Q5. 退院前カンファで最低限そろえるべき項目は?

A. ①対象判定、②患者・家族説明、③同意確認、④提供先区分、⑤正式な提供先、⑥提供内容、⑦提供実績(日時・担当)です。 7 点セットで回すと漏れが減ります。

Q6. 同意は口頭でよいですか?書面が必要ですか?

A. 現場では「口頭/書面のどちらでも、院内ルールを統一して “記録に残る形” にする」ことが最重要です。外部機関へ情報提供する場合は、同意の有無だけでなく、同意方法(口頭/書面)・同意取得者・取得日を固定欄で残すと運用が安定します。

次の一手

運用を整えたあとに、職場環境の詰まりも点検しておきましょう

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参考文献

  1. 厚生労働省. 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて. 令和 8 年 3 月 5 日.
  2. 厚生労働省. 疑義解釈資料の送付について(その 2). 2026-03-31. https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001684646.pdf
  3. 厚生労働省. 令和 8 年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(案). 2026. https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001631272.pdf
  4. 厚生労働省. 第 643 回 中央社会保険医療協議会 総会(公聴会)資料. 2026-01-21. https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001637094.pdf

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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