METs 早見表|生活動作・家事・運動

評価
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METs 早見表:生活動作・運動の代表値

このページは、代表的な生活動作・家事・移動・運動の METs(メッツ)を、臨床で使いやすい範囲に絞って早見表にまとめたものです。「ざっくり強度の当たりを付けたい」ときに、まずここで候補を拾い、条件(速度・負荷・休憩)をそろえて記録すると再現性が上がります。

METs は「同じ活動名でも条件で値が変わる」ため、表はあくまで代表値として使い、迷うときは 運動強度の決め方( METs・ Borg・心拍の使い分け)のフローで、別指標( RPE / 心拍 / 症状)も併用してください。

早見表の使い方(迷わない 3 ステップ)

ステップ 1:まず「何のために使うか」を決めます。目的が強度の目安なら METs で十分な場面が多い一方、目的が安全管理なら症状・ RPE ・心拍なども合わせて評価します。

ステップ 2:表から近い活動を選び、条件を固定します(例:歩行なら速度、坂、杖の有無、休憩間隔)。条件が揃うほど、再評価が「同じ比較」になります。

ステップ 3:記録は「活動名+条件+時間(分)」までセットで残します。強度が高すぎる場合は、速度を落とす/休憩を入れる/分割するなどで調整します。

生活動作( ADL / IADL )の代表 METs

同じ「歩く」でも、速度や坂で強度は大きく変わります。迷うときは「条件」列を先に見て、近いものを選ぶのがコツです。

生活動作の代表 METs(成人の目安・条件で変動)
活動(例) 代表 METs 条件の目安 臨床メモ
座位安静 1.0 静かに座る 基準( 1 MET )
立位(静的) 1.3 立っている 立位保持の目安に
更衣(上衣中心) 2.0 ゆっくり 疼痛・息切れで上がりやすい
入浴(洗体) 2.5 椅子座位を含む 温熱・血圧変動に注意
階段昇降(ゆっくり) 4.0 手すりあり 膝痛・心不全では負荷増
階段昇降(速い) 8.0 休憩なし 転倒・息切れの監視を
歩行(ゆっくり) 2.5 室内・平地 補助具で実負荷が変わる
歩行(やや速い) 3.3 約 3 mph 相当 中強度に入り始める目安
歩行(速い:早歩き) 5.0 約 4 mph 相当 中強度の代表

家事・作業の代表 METs

家事は「同じ作業名でも、連続時間・姿勢・道具」で負荷が変動します。表は見積もりとして使い、症状と RPE を合わせるのが安全です。

家事・作業の代表 METs(成人の目安・環境で変動)
活動(例) 代表 METs 条件の目安 臨床メモ
調理(立位中心) 2.5 切る・盛る・片付け 立位耐久の目安に
食器洗い 2.3 立位 腰痛では姿勢調整を
洗濯(干す・取り込む) 2.8 腕上げを含む 肩痛・息切れで上がりやすい
掃除機がけ 3.3 連続 10 分以上 中強度の目安になりやすい
床拭き(中腰) 3.5 しゃがみ動作を含む 膝痛・ふらつき注意
庭仕事(一般) 4.0 草取り・軽作業 熱中症と血圧変動に注意
雪かき(重い作業) 6.0 連続作業 高強度になりやすい

移動(歩行・自転車など)の代表 METs

移動は「速度」が強度を左右します。歩行は速度、自転車は速度+坂をそろえると記録が安定します。

移動の代表 METs(成人の目安・速度で変動)
活動(例) 代表 METs 条件の目安 臨床メモ
歩行(平地:中等度) 3.3 約 3 mph 相当 中強度( 3〜5.9 METs )の入り口
歩行(速い:早歩き) 5.0 約 4 mph 相当 中強度の代表
ジョギング(軽め) 7.0 ゆっくり 高強度( 6 METs 以上)に入りやすい
ランニング( 6 mph 目安) 9.8 一定ペース 心肺負荷が高い
自転車(ゆっくり) 4.0 < 10 mph(平地) 下肢負荷は軽めでも心拍が上がることがある
自転車(やや速い) 6.8 10〜 12 mph(平地) 高強度に入りやすい

運動(有酸素・筋トレ)の代表 METs

運動は「フォーム」「休憩」「負荷」で強度が動きます。筋トレは休憩が長いと平均 METs が下がるため、連続時間ではなく「セット構成」も記録すると評価が安定します。

運動の代表 METs(成人の目安・負荷で変動)
活動(例) 代表 METs 条件の目安 臨床メモ
ストレッチ 2.3 ゆっくり 導入・クールダウン向き
ヨガ(軽〜中等度) 3.0 流れが少ない 呼吸と体位変換に注意
エルゴ(軽負荷) 3.5 会話可能 中強度の立ち上げに
エルゴ(中等度) 5.5 会話は短文 息切れ・血圧を確認
筋トレ(軽〜中等度) 3.5 休憩を含む 関節痛があると RPE が先に上がる
筋トレ(高強度) 6.0 高負荷・休憩短め 高強度として扱う

表の注意点(この 3 つだけ押さえる)

注意 1:同じ活動名でも、速度・坂・環境・休憩で METs は変わります。表は代表値として扱い、条件を記録して再評価の比較を成立させます。

注意 2:「中強度( 3〜5.9 METs )」「高強度( 6 METs 以上)」は便利な分類ですが、臨床では息切れ・症状・ RPE を優先します。特に心不全・ COPD ・β 遮断薬内服などは、主観や症状と合わせて評価します。

現場の詰まりどころ(よくある迷い→対策)

METs 早見表で詰まりやすいポイントと対策
よくある迷い 起こりやすい理由 対策(次アクション) 記録ポイント
活動が複数に当てはまる 条件(速度・負荷)が書けていない 条件を 1 行で固定して、最も近い行を選ぶ 速度、坂、補助具、休憩
表の METs だと強すぎる 疾患・痛み・不安で相対強度が上がる 速度を落とす/分割する/ RPE と症状で調整 RPE、息切れ、疼痛、血圧
同じ活動でも日によって違う 体調・睡眠・薬剤・環境が変動 「その日の条件」を短く残し、次回の比較軸を作る 体調、内服、実施時刻

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1.中強度と高強度の境目は何 METs ですか?

一般的な目安として、3〜5.9 METs が中強度6 METs 以上が高強度とされます。ただし臨床では、数値だけでなく息切れ・症状・ RPE を合わせて判断するのが安全です。

Q2.表の METs と実感(きつさ)が一致しません

METs は「絶対強度」の目安なので、疼痛・不安・体調・疾患や薬剤で「相対強度(きつさ)」が変わります。きつさが先に上がる場合は、速度を落とす/分割する/休憩を入れるなどで調整し、 RPE や症状を優先して進めます。

Q3.家事はどれを選べば良いですか?

家事は条件差が大きいので、「連続しているか」「姿勢(中腰が多いか)」「腕上げが多いか」で近い行を選びます。迷ったら、安全側の行(低め)から開始し、観察しながら調整します。

Q4.臨床の記録は何を残せば再評価に使えますか?

最低限、活動名+条件(速度・坂・補助具・休憩)+時間(分)をセットで残します。加えて、息切れ・疼痛・ RPE ・バイタル(必要時)を記録すると、次回の条件設定が速くなります。

参考文献

  • Ainsworth BE, Haskell WL, Herrmann SD, et al. 2011 Compendium of Physical Activities: a second update of codes and MET values. Med Sci Sports Exerc. 2011;43(8):1575-1581. doi: 10.1249/MSS.0b013e31821ece12 / PubMed: 21681120
  • Herrmann SD, et al. 2024 Adult Compendium of Physical Activities: A third update of the energy costs of human activities. J Sport Health Sci. 2024;13(1):6-12. doi: 10.1016/j.jshs.2023.10.010 / PubMed: 38242596
  • CDC. How to Measure Physical Activity Intensity( METs の目安:中強度 3〜5.9、 高強度 6 以上). https://www.cdc.gov/physical-activity-basics/measuring/index.html
  • U.S. Department of Health and Human Services. Physical Activity Guidelines for Americans, 2nd edition.(中強度・高強度の定義を含む) PDF
  • Compendium of Physical Activities(配布・更新情報). https://pacompendium.com/

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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おわりに

METs は「強度の当たり」を素早く付けるのに便利です。まずは 活動を選ぶ→条件をそろえる→記録する→再評価するのリズムで運用すると、チーム内でも共有しやすくなります。

あわせて、面談準備チェックと職場評価シートを使って「学びやすい環境」を選べるようにしておくと、臨床の伸びが速くなります。続けて マイナビコメディカルのチェックリストを確認するのもおすすめです。

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