MIP・MEPとは?測定方法・基準値と呼吸筋力の見方

臨床手技・プロトコル
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MIP・MEPとは?呼吸筋が生み出す最大圧を評価する検査

MIP(最大吸気圧)とMEP(最大呼気圧)は、口元で発生する最大圧を測定し、吸気筋・呼気筋の筋力を非侵襲的に評価する検査です。MIPは主に横隔膜を含む吸気筋群、MEPは腹筋群などを含む呼気筋群が生み出す圧を反映します。

文献では、MIPはPImax(maximal inspiratory pressure)、MEPはPEmax(maximal expiratory pressure)と表記されることもあります。

重要なのは、MIP・MEPが低いからといって、その1回の測定だけで「呼吸筋力低下」と断定しないことです。最大努力を必要とする検査なので、理解度、努力、口元からの空気漏れ、測定開始肺気量などでも値が変わります。

MIPとMEPの違い|吸う力と吐く力を分けて評価する

MIPとMEPの違い
項目 MIP MEP
日本語 最大吸気圧 最大呼気圧
別表記 PImax PEmax
主な評価対象 吸気筋力 呼気筋力
代表的な開始肺気量 残気量(RV)付近 全肺気量(TLC)付近
動作 最大限吐いた後、閉塞された状態で強く吸う 最大限吸った後、閉塞された状態で強く吐く
臨床で関連する場面 吸気筋力低下、呼吸困難、神経筋疾患、IMTなど 呼気筋力、咳嗽・排痰能力の評価補助など

MIPとMEPは対になる検査ですが、どちらか一方だけで呼吸機能全体を評価するものではありません。症状、肺活量、SpO₂、呼吸数、咳嗽力などを組み合わせて解釈します。

MIPとMEPの測り方。MIPは最大まで吐いてRV付近から強く吸い、MEPは最大まで吸ってTLC付近から強く吐く
MIPは最大呼気後に強く吸い、MEPは最大吸気後に強く吐いて評価します。1回の値だけで判断せず、複数回測定して再現性を確認します。

MIPの測定方法|最大呼気後に強く吸う

MIPは一般に、できるだけ息を吐いて残気量(RV)付近まで肺気量を下げた状態から、閉塞されたマウスピースに対して最大吸気努力を行って測定します。

  1. 座位を基本として姿勢を整える
  2. ノーズクリップを装着する
  3. マウスピースを口唇でしっかり密閉する
  4. 可能な範囲で最大限まで息を吐く
  5. 合図に合わせて、できるだけ強く吸う
  6. 十分な最大努力を保つ
  7. 休息を入れて複数回測定する
  8. 値の再現性を確認する

測定機器や施設手順によって詳細は異なりますが、ERSの呼吸筋評価ステートメントでは、MIPは通常RVから測定します。

ポイント:MIPは「一瞬だけ強く吸ったピーク」だけを見るのではなく、使用機器が採用する測定方法に従って、十分な最大圧が得られているかを確認します。同一患者を経時比較する場合は、肺気量・姿勢・機器・測定方法をできるだけそろえます。

MEPの測定方法|最大吸気後に強く吐く

MEPは一般に、できるだけ息を吸って全肺気量(TLC)付近まで肺を膨らませた状態から、閉塞されたマウスピースに対して最大呼気努力を行います。

  1. 座位を基本として姿勢を整える
  2. ノーズクリップを装着する
  3. マウスピースから空気が漏れないよう密閉する
  4. 可能な範囲で最大限まで息を吸う
  5. 合図に合わせて、できるだけ強く吐く
  6. 十分な最大努力を保つ
  7. 休息後に複数回測定する
  8. 値の再現性を確認する

特にMEPでは、頬を膨らませる、口元から空気が漏れる、マウスピースを十分に保持できないといった影響を受けやすいため、測定中のフォーム確認が重要です。

MIP・MEPは1回で決めない|10%以内の再現性を確認する

MIP・MEPは最大努力検査なので、1回目がその人の最大値とは限りません。

ERSステートメントでは、MIPは通常RV、MEPはTLCから測定し、3回の測定値が10%以内に収まることを再現性確認の目安としています。

一方で、慣れていない患者では数回練習すると値が上昇することがあります。最初の3回だけで機械的に終了するのではなく、測定波形、努力、再現性、学習効果を見ながら追加測定を検討します。

MIP・MEP測定で値が低くなる主な原因
原因 確認ポイント
努力不足 手順を理解できているか、最大努力になっているか
口元からの漏れ 口唇・マウスピースの密閉を確認する
開始肺気量が不十分 MIPは十分な呼気後、MEPは十分な吸気後か確認する
疼痛 胸部・腹部・顔面などの痛みで最大努力が制限されていないか
認知・理解 指示理解や運動学習が可能か確認する
呼吸器疾患の影響 過膨張や拘束性変化など肺気量の影響も考える

MIP・MEPの正常値|1つの数字では判断しない

MIP・MEPを評価するときに最も注意したいのが、「正常値は○cmH₂O」と単一の数字で判断しないことです。

最大呼吸筋力は、年齢、性別、体格、測定開始肺気量、使用するマウスピース、測定方法などの影響を受けます。MIPの参照値を検討した系統レビューでも、男性は女性より高い傾向があり、中年期以降は加齢に伴って低下する傾向が確認されています。

そのため実務では、以下の順番で読むと整理しやすくなります。

  1. 使用機器・施設で採用している参照式や基準範囲を確認する
  2. 年齢・性別などに応じた予測値や下限値と比較する
  3. 測定が十分な最大努力だったか確認する
  4. 過去値があれば同じ条件で経時比較する
  5. 症状や他の呼吸評価と整合するか確認する

誤読防止:基準値を下回ったことだけでは、呼吸筋力低下を確定できません。低値には実際の筋力低下のほか、努力不足、疼痛、理解不足、口元の漏れ、肺気量の影響などが含まれます。

MIPのマイナス表記に注意|−80と−40を混同しない

MIPでは、吸気時に口腔内圧が陰圧になるため、機器や文献によって「−80 cmH₂O」のように負の符号を付ける場合と、圧の大きさだけを「80 cmH₂O」と表示する場合があります。

たとえば−80 cmH₂Oと−40 cmH₂Oを比較すると、絶対値としては80 cmH₂Oのほうが大きな吸気圧を発生しています。

MIPの符号を読むときの考え方
表示 圧の大きさ 解釈
−80 cmH₂O 80 cmH₂O −40 cmH₂Oより強い吸気圧
−40 cmH₂O 40 cmH₂O −80 cmH₂Oより弱い吸気圧

経時比較するときは、符号だけでなく施設・機器がどの形式で記録しているかをそろえておくことが重要です。

MIP・MEPが低いとき|まず測定不良と臨床所見を分ける

MIP・MEPが低値だったときは、すぐに「呼吸筋力低下」と結論づけず、次の順番で確認します。

  1. 測定が成立したか:指示理解・密閉・最大努力・開始肺気量
  2. 再現性があるか:測定間で大きなばらつきがないか
  3. 症状と一致するか:呼吸困難、起座呼吸、咳の弱さなど
  4. 他指標と一致するか:VC・FVC、SNIP、PCFなど
  5. 経時変化があるか:以前より明らかに低下していないか

ARTPの肺機能検査ステートメントでも、MIP・MEP・SNIPは簡便なスクリーニングとして有用である一方、低値は筋力低下・不十分な検査努力・肺機能の影響を区別できないため、単独で筋力低下を確定する検査ではないと整理されています。

MIPとSNIPの違い|吸気筋力低下を疑うときは併用する

SNIP(sniff nasal inspiratory pressure)は、鼻から短く強く吸ったときに生じる陰圧を測定する吸気筋力評価です。

MIPとSNIPの違い
項目 MIP SNIP
動作 閉塞されたマウスピースから最大吸気 鼻から素早く最大吸気
特徴 標準的な吸気筋力評価 比較的自然な吸気動作
主な弱点 努力・口元の密閉・手技の影響 鼻閉・気道抵抗などの影響
使い方 単独値だけでなく他評価と併用 MIPを補完して吸気筋力を確認

特にMIPが低値の場合、SNIPも合わせて確認することで、不十分な努力による偽陽性を減らせる可能性があります。ERSステートメントでは、混合疾患患者でMIPにSNIPを追加すると、吸気筋力低下の偽陽性診断が減少したことが示されています。

MEPとPCFの違い|呼気筋力と実際の咳嗽能力は同じではない

MEPが低い患者では咳嗽力低下も疑いますが、MEPとPCF(Peak Cough Flow)は同じ評価ではありません。

MEPは閉塞された状態で発生できる最大呼気圧を評価するのに対し、PCFは実際の咳でどの程度の呼気流量を出せるかを評価します。

MEPとPCFの役割
評価 主に見るもの 臨床での使い方
MEP 最大呼気圧 呼気筋力を整理する
PCF 咳の最大呼気流量 分泌物を排出できる咳嗽能力を整理する

咳が弱い患者では、MEPだけでなくPCFの測定方法と咳嗽力の見方も合わせて確認すると、次の介助方法を考えやすくなります。

MIP・MEPはどんな患者で使う?

MIP・MEPは、呼吸筋力低下が症状や機能低下に関与している可能性がある患者で活用できます。

  • COPDなどの慢性呼吸器疾患
  • ALSや筋ジストロフィーなどの神経筋疾患
  • 呼吸筋力低下が疑われる患者
  • 呼吸サルコペニアを評価する場面
  • 吸気筋トレーニング前後の評価
  • 原因不明の呼吸困難や換気能力低下を評価する場面

ただしMIP・MEPのみで病態を診断することはできません。疾患、症状、肺機能、呼吸パターン、運動耐容能などを組み合わせます。

IMTではMIPを負荷設定と経時評価に使う

MIPは、IMT(吸気筋トレーニング)の負荷設定にも使用されます。

たとえば「MIPの○%」という形で負荷を設定する研究がありますが、重要なのは一度測定したMIPを固定して使い続けないことです。呼吸筋力が変化すれば同じ負荷でも相対強度が変わるため、目的に応じて再評価します。

具体的な負荷設定・回数・中止判断については、IMTのやり方|負荷設定・中止基準・記録で整理しています。

MIP・MEPの記録方法|数値だけでなく測定条件を残す

MIP・MEPを経時比較する場合は、数値だけではなくどの条件で測定したかを残すことが重要です。

MIP・MEPで記録しておきたい項目
記録項目 記録例
姿勢 端座位
MIP 72 cmH₂O
MEP 94 cmH₂O
測定回数 5回
再現性 上位3回10%以内
測定状況 口元リークなし、疼痛なし

記録例:端座位、ノーズクリップ使用。MIP 72 cmH₂O、MEP 94 cmH₂O。各5回施行、上位値の再現性を確認。口元リークなし。前回MIP 54 cmH₂Oから上昇。

経時評価では、「正常か異常か」だけでなく、同じ測定条件で以前からどう変化したかを見ることが実務では重要です。

測定前に確認したいこと|最大努力が適さない状態では無理に行わない

MIP・MEPは強い最大吸気・最大呼気努力を必要とします。検査実施前には、急性疾患や症状によって安全に最大努力できる状態かを確認します。

また、ARTPでは以下のような状態では、最大努力検査が十分に行えず、値の信頼性が低下する可能性があるとされています。

  • 胸部・腹部の疼痛
  • マウスピースで悪化する口腔・顔面痛
  • 認知症や混乱によって指示理解が難しい場合
  • 胸部感染症や呼吸器疾患の急性増悪
  • その他、最大努力が安全に行えない状態

実施可否は患者の病態、主治医の指示、施設基準を優先してください。

MIP・MEPでよくある間違い

MIP・MEPのよくある誤読と修正
よくある誤り 考え方
低値=呼吸筋力低下と即断する 努力・リーク・肺気量・疼痛などを確認する
1回測って終了する 複数回測定し再現性を確認する
正常値を1つの数字で覚える 年齢・性別・測定法に合った参照値を使う
MIP −40のほうが−80より強いと思う 陰圧の絶対値で比較する
MEPが正常なら咳も十分と判断する 必要時はPCFで実際の咳嗽能力を確認する
前回と条件を変えて比較する 姿勢・開始肺気量・機器・手順をそろえる

MIP・MEPのFAQ

MIPとPImaxは違いますか?

基本的には同じ最大吸気圧を指します。文献や機器によってMIP、PImaxなど表記が異なることがあります。

MEPとPEmaxは違いますか?

基本的には同じ最大呼気圧を指します。MEPまたはPEmaxと表記されます。

MIPは何cmH₂Oなら正常ですか?

年齢・性別・測定法などで参照値が変わるため、1つの数字だけで正常・異常を判断しません。使用している測定法に対応した参照式や下限値を確認し、測定の再現性や症状も合わせて評価します。

MIPが低ければ吸気筋力低下ですか?

必ずしもそうではありません。MIPは最大努力を必要とするため、努力不足、理解不足、口元の漏れ、疼痛、開始肺気量などでも低くなります。低値の場合は再測定やSNIPなどを組み合わせて確認します。

MEPが低い場合は何を確認しますか?

測定手技を確認したうえで、呼気筋力低下の可能性を考えます。痰を出しにくい、咳が弱い患者ではPCFなどを追加し、実際の咳嗽・排痰能力も評価します。

まとめ|MIP・MEPは「最大値」より測定条件と再現性をそろえる

MIP・MEPは、呼吸筋力を非侵襲的に評価できる基本的な検査です。MIPは通常RV付近から最大吸気努力、MEPはTLC付近から最大呼気努力を行って測定します。

ただし最大努力に依存する検査であり、低値だけでは実際の筋力低下と測定不良を区別できません。

MIP・MEPを読む5ステップ

  1. MIPはRV、MEPはTLC付近から測定する
  2. 複数回測定して再現性を確認する
  3. 年齢・性別・測定法に合った参照値と比較する
  4. 低値なら努力・リーク・疼痛などを確認する
  5. SNIP・PCF・肺活量・症状と合わせて判断する

MIP・MEPは単回値で診断する検査ではなく、測定条件を標準化して経時変化を追うことで臨床的な価値が高まります。

参考文献

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  4. Sclauser Pessoa IMB, Franco Parreira V, Fregonezi GAF, Sheel AW, Chung F, Reid WD. Reference values for maximal inspiratory pressure: a systematic review. Can Respir J. 2014;21(1):43-50. doi:10.1155/2014/982374.