ノルディックのポール設定(結論)|長さ・ストラップ・先ゴムで “痛い/続かない” を防ぐ
結論:ノルディックは “ポール設定” が合うだけで、肩・肘の痛みとフォームの崩れが大きく減ります。初心者がつまずきやすいのは、①長さが長すぎる、②ストラップを握ってしまう、③路面に合わない先端で滑るの 3 つです。
本記事では、ポールの種類→長さの決め方(目安→微調整)→ストラップ設定→先ゴム(石突き)の順に、現場で “そのまま運用できる” 形で整理します。ノルディックの効果や適応の全体像は、ノルディック・ウォーキングの効果(各論)でまとめています。
まずはポールの種類を決める(固定長/伸縮/先端)
ポールは “高価=正解” ではなく、用途(継続環境)と調整のしやすさで決めると外れません。導入期は長さを試す必要があるため、基本は伸縮ポールが扱いやすいです。
| 項目 | 選び方の目安 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 固定長 | 使用者が固定で、長さが決まっている | 軽い/ブレにくい | 微調整できない(靴・路面・体調で合わせづらい) |
| 伸縮 | まずはこちら(導入〜継続) | 1〜 2 cm で微調整できる/持ち運びしやすい | ロックが甘いと滑るため、開始前に点検が必要 |
| 先端(石突き) | 土・芝・砂利など “柔らかい路面” が多い | 刺さって安定しやすい | 舗装路では滑りやすいことがある |
| 先ゴム(ラバー) | 舗装路(アスファルト)中心なら必須 | 滑りにくい/音が静か | 摩耗するので定期交換が必要 |
長さの決め方( “目安” → 1〜2 cm の微調整で合わせる)
長さは “身長換算” よりも、姿勢と上肢の負担が少ない角度で合わせる方が再現性が高いです。長すぎると肘が伸び切って肩がすくみやすく、短すぎると推進が作りにくくなります。
| 手順 | やること | 良いサイン | 修正が必要なサイン |
|---|---|---|---|
| ①入口を作る | 直立でポールを体側に置き、グリップを軽く持つ(肩をすくめない) | 肘が軽く曲がり、首肩の力が抜ける | 肘が伸び切る/肩が上がる/手首が詰まる |
| ②微調整 | 1〜 2 cm ずつ短く/長くして “歩いたときの反応” で決める | 腕が自然に振れ、肩・肘に張りが出にくい | 上肢が先に疲れる/体幹が反る/ポールを前に突きやすい |
| ③最終確認 | 平地で 3〜 5 分歩き、上肢の張り・息切れ・歩行の安定を確認 | 会話ができ、上肢の張りが増えない | 息切れ急増/歩行が不安定/上肢痛が出る |
ストラップ設定( “握らない” を作るのが目的)
ストラップは “落とさないため” ではなく、握力で支えずに手を預けるための仕組みです。ここが崩れると前腕が張り、肩がすくみ、結果的に “ノルディックがつらい” になりやすいです。
| よくある失敗 | 起きる理由 | 直し方 | 確認ポイント |
|---|---|---|---|
| ストラップを握ってしまう | ポールを落とす不安が強い | “握る” より “手のひらで押す” を優先し、指先は力を抜く | 前腕の張りが早く出ないか |
| 手首が痛い | ストラップがねじれて圧が集中 | 左右の向きとねじれを整え、手首の一点に当てない | 圧迫感・しびれが出ないか |
| 肩がすくむ | 握り込み+長さが長い | 長さを 1〜 2 cm 短くし、肩甲帯を下げた姿勢で歩く | 首肩の緊張が増えないか |
先ゴム(石突き)の使い分け(滑りを減らして “怖さ” を消す)
先端が路面に合わないと滑りやすく、転倒不安や “ノルディックは危ない” につながります。まずは安全を最優先で切り替えます。
- 舗装路(アスファルト):先ゴムで滑りを減らし、音も抑える
- 土・芝・砂利:石突きで刺さりを作り、安定しやすくする
- 雨・落ち葉・凍結:強度を上げない/歩幅と速度を下げる(無理をしない)
現場の詰まりどころ・よくある失敗(対策つき)
| 詰まり | 出やすい症状 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 長すぎる | 肩・首が張る/肘が伸び切る | 腕が後ろに流れず “前突き” になりやすい | 1〜 2 cm 短くして、腕を “後ろに流す” 感覚を作る |
| 握り込み | 前腕が疲れる/手が痛い | ストラップが機能していない | ストラップの向き・ねじれ・テンションを整え、指先の力を抜く |
| 先端が合わない | 滑る/怖い/歩幅が小さくなる | 路面と先端(石突き/先ゴム)がミスマッチ | 路面に合わせて先端を切り替え、安全を最優先にする |
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. まず伸縮ポールを選ぶのが無難ですか?
はい。導入期は “長さの微調整” が効果的なので、まずは伸縮が無難です。固定長は、フォームと好みが固まってからでも遅くありません。
Q2. 肩や肘が痛くなります。続けていいですか?
痛みが出る場合は、まず設定(長さ・ストラップ)と握り込みを疑います。いったん負荷(時間・速度)を下げ、フォームを整えてから再開します。痛みが強い、増悪する場合は中止して評価を優先します。
Q3. 先ゴムは必須ですか?
舗装路中心なら必須に近いです。滑りにくさと騒音低減の面でメリットが大きく、転倒不安がある人ほど効果的です。
おわりに
ノルディックは、設定(長さ・ストラップ・先端)→フォーム→段階的に量を増やすの順に進めると “肩や肘が痛くて続かない” を減らせます。ポール設定が整ったら、あとは安全の確認→段階介入→観察記録→再評価のリズムで、無理なく継続できる運動に仕上げていきましょう。
参考文献
- Tschentscher M, Niederseer D, Niebauer J. Health benefits of Nordic walking: a systematic review. Am J Prev Med. 2013. PubMed: 23253654
- Hansen EA, Smith G, Aagaard P. Energy expenditure and comfort during Nordic walking with different pole lengths. J Strength Cond Res. 2009. PubMed: 19528847
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

