NPI-NH 運用プロトコル(目的と適応)
NPI-NH は、施設(病棟・老健・特養など)での BPSD を、スタッフ観察を主情報源として評価する面接手順です。各ドメインの有無→具体例→頻度 0–4 × 重症度 0–3でドメイン点(0–12)を算出し、合計は10 ドメイン=最大 120 / 12 ドメイン=最大 144。施設内で採用ルールを統一し、同一基準で再評価します。
導入準備(観察ログと分担)
- 観察収集:日勤・夜勤それぞれで具体例を最低 1 件(時間帯・状況・誘因・対応・結果)。
- 対象整理:高頻度の行動(例:夕食前の易刺激性、夜間の徘徊)を先に列挙。
- 役割分担:面接(質問役)/記録(書記)/タイムキーパーを決める。
- 内部連携:共有フローを事前に確認(申し送り→カンファ→実装)。
面接スクリプト(自作・意訳の例)
原著設問の逐語転載は避け、以下のような“要点スクリプト”を使います(例:妄想)。
- 有無の確認:最近「〜だと思い込む」「根拠のない確信」のような様子はありましたか?
- 具体例:最も最近の出来事はいつ・どこで・誰と・何がきっかけでしたか?
- 頻度・重症度:1 週間のうちどのくらい起きますか(0–4)? 生活やケアにどのくらい影響しましたか(0–3)?
- 誘因メモ:時間帯・環境・関わり方で変化は?(次回介入のヒント)
採点・記録(10/12ドメインの統一)
施設として10/12 ドメインのどちらで運用するかを決め、記録様式に明記します。A4 1 枚のテンプレート(有無→具体例→頻度→重症度→負担→合計)を推奨。院内配布向けのノンスタイル版は以下から取得できます(アップロード後は院内 URL に差し替えてください)。
多職種共有と非薬物的介入
- 優先度決定:ドメイン点が高い 1–2 つを優先(例:易刺激性・夜間行動)。
- 介入設計:環境(音・光・待機時間)/関わり方(声かけ・選択肢提示)/活動(回想・作業・運動)を 1 つだけ実装。
- 記録統一:電子カルテの定型文に「ドメイン/誘因/対応/結果」を登録して時短。
再評価(1–2 週間サイクルと可視化)
- 同一条件で再測(同じスタッフ・時間帯を意識)。
- 高ドメインの点推移を折れ線グラフで可視化。
- 効果が乏しければ介入を 1 つだけ変更(同時に複数を変えない)。
参考文献(代表)
- Wood S, Cummings JL, Hsu M-A, et al. The Neuropsychiatric Inventory—Nursing Home version (NPI-NH). Am J Geriatr Psychiatry. 2000;8(1):75–83. https://doi.org/10.1097/00019442-200002000-00010
- Cummings JL, Mega M, Gray K, et al. The Neuropsychiatric Inventory. Neurology. 1994;44(12):2308–2314. https://doi.org/10.1212/WNL.44.12.2308