口腔管理体制と誤嚥性肺炎予防【PT向け】

制度・実務
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口腔管理体制と誤嚥性肺炎予防とは?

委員会業務や口腔管理体制で「赤信号」を感じたときの動き方を見る( PT キャリアガイド )

高齢者や要介護患者では、口腔内の汚れや嚥下障害が 誤嚥性肺炎・窒息・栄養低下 に直結します。診療報酬上は「口腔管理体制」「誤嚥性肺炎対策」がさまざまな加算・施設基準に組み込まれていますが、現場感としては「誰が・どこまで・どう連携するか」が曖昧になりがちな領域です。

本記事では、歯科・歯科衛生士・看護・リハ・介護が関わる 口腔管理体制のイメージ を整理しつつ、病棟ラウンドで使える 口腔・嚥下ケアラウンドメモ と、部署横断の棚卸しに使える 口腔管理体制自己点検シート(いずれも A4 )の使い方をまとめます。 PT ・ OT ・ ST が誤嚥性肺炎予防や 誤嚥性肺炎予防バンドル とどう絡むか、という視点もあわせて押さえておきましょう。

口腔管理体制のイメージと役割分担

口腔管理体制は、シンプルに言えば「誰が・どの段階で・何を見て・どう動くか」を決めておくことです。入院・入所時のスクリーニングで口腔内の状態や嚥下リスクを把握し、誤嚥性肺炎ハイリスク者には歯科・歯科衛生士・ ST ・リハが段階的に介入できるルートを整えるイメージです。

典型的な流れは、①看護・介護が日常の口腔ケアと観察、②歯科・歯科衛生士が専門的口腔ケアと治療、③ ST・ PT が嚥下訓練・姿勢調整・呼吸リハ、④医師が全身状態・薬物療法を統合して判断、という形です。重要なのは「評価結果や方針が記録され、多職種で見える化されているか」であり、そこを補う道具としてこの記事の A4 シートを位置づけるとイメージしやすくなります。

現場の詰まりどころ(口腔管理体制で起きがちなこと)

口腔管理体制は、書類上は整っていても「実際には回っていない」ケースが少なくありません。よく聞くのは、①歯科・歯科衛生士への依頼が遅れる、②誤嚥性肺炎を契機に初めて体制の弱さに気づく、③ラウンドやカンファレンスの内容が現場のケアに落ちてこない、などのパターンです。

こうした詰まりどころを整理するために、ありがちな状況と改善のヒントを簡単な表にまとめました。自施設の状況と見比べながら、どこから手をつけるか決めるヒントにしてみてください。

口腔管理体制でよくある詰まりどころと改善の方向性
よくある状況 なぜ詰まるのか 一歩目の具体策
誤嚥性肺炎になってから歯科へ依頼している 入院時スクリーニングやハイリスク者の基準が曖昧で、先手を打てていない 「誤嚥性肺炎ハイリスクチェック」を標準化し、ハイリスク者は歯科・ ST へ自動的に情報共有する流れを決める
口腔ケアの頻度・方法が人によってばらばら 標準手順(マニュアル)があっても、現場で参照されていないか、記録様式と紐づいていない 「いつ・誰が・何を・どこに記録するか」を A4 シートや記録用紙とセットで決める
ラウンドのメモが個人のノートに留まり、多職種で共有されない 記録様式が統一されておらず、診療録やカンファレンス資料に反映されない 口腔・嚥下ケアラウンドメモのような A4 様式を用意し、コピーして診療録に貼り付ける/スキャン保存する運用にする
リハの嚥下・呼吸介入が「依頼ベース」で、タイミングが遅れがち リハと歯科・看護の間で、誰がどの段階で関わるかの役割分担が不明瞭 自己点検シートで役割分担を棚卸しし、「この条件ならリハに自動相談」と決めておく

口腔・嚥下ケアラウンドメモの使い方(病棟ラウンド用)

「口腔・嚥下ケアラウンドメモ」 は、ベッドサイドでの口腔・嚥下ラウンド時に、患者単位で情報を整理するための A4 シートです。義歯・歯牙・舌苔・乾燥などの口腔内所見、食形態や食事中のむせ、呼吸状態( SpO2 ・呼吸数・痰)、日常の口腔ケア・嚥下ケア、そして今後の依頼事項までを 1 枚でまとめられる構成になっています。

実務的には、「ラウンド前に看護が事前情報を記入 → ラウンド中に歯科・歯科衛生士・ ST が追加 → ラウンド後にリハが体位調整や呼吸リハの方針を追記」という形で使うと便利です。書き終えたシートは診療録に添付し、誤嚥性肺炎の 予兆評価 やバンドル実施状況の振り返りにも活用できます。

口腔管理体制 自己点検シートの使い方(部署横断の棚卸し)

「口腔管理体制 自己点検シート」 は、施設レベルで「口腔・嚥下ケアがどこまで実装できているか」を見渡すためのチェックリストです。体制整備・評価・日常ケア・教育・インシデント振り返りの 5 領域で、「はい/どちらともいえない/いいえ」をチェックしながら、部署横断で話し合う前提で作っています。

ポイントは、「制度の施設基準を満たしているか」よりも、「実際の現場で回っているか」を確認する視点です。例えば、誤嚥性肺炎のインシデントは記録していても、口腔ケアの改善に還元されていなければ赤信号です。自己点検シートの最後にある「今後 6 か月で優先的に取り組みたい課題」に 1〜3 個だけ書き出し、委員会や NST・摂食嚥下チームのアクションプランに落とし込むと、無理なく前進しやすくなります。

ラウンドメモ/自己点検シート(ダウンロード)

この記事の内容をそのまま現場で使えるように、口腔管理体制向けの A4 シートを 2 種類用意しました。いずれも HTML 形式なので、自施設の様式やロゴに合わせて編集し、印刷してご活用ください。

  • 口腔・嚥下ケア ラウンドメモ(誤嚥性肺炎予防・口腔管理体制用)
    口腔内所見・嚥下・食事状況・呼吸状態・日常ケア・今後の依頼事項を 1 枚で整理できます。口腔・嚥下ラウンドや誤嚥性肺炎ハイリスク患者の巡回におすすめです。
  • 口腔管理体制 自己点検シート(誤嚥性肺炎予防・多職種連携用)
    体制整備・評価・日常ケア・教育・インシデントの 5 領域で、現状を棚卸しできます。委員会や部署横断会議でのディスカッションシートとしてご利用ください。

口腔・嚥下ケア ラウンドメモ( A4・無料ダウンロード )

口腔管理体制 自己点検シート( A4・無料ダウンロード )

おわりに:口腔管理と誤嚥性肺炎対策を「仕組み」で回す

口腔ケアや嚥下ケアは、どうしても「頑張っている人」に依存しやすい分野です。誤嚥性肺炎症例が出るたびに個人の技量や注意力の問題として振り返るのではなく、評価・ラウンド・自己点検といった 仕組み を通じて、施設全体で底上げしていく視点が重要になります。

働き方を見直すときの抜け漏れ防止に。見学や情報収集の段階でも使える面談準備チェック( A4 ・ 5 分)と職場評価シート( A4 )を無料公開しています。印刷してそのまま使えます。ダウンロードページを見る

よくある質問

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教育体制に不安があるとき、転職はいつ検討すべきですか?

口腔管理体制や誤嚥性肺炎対策の中心メンバーになるのは大きなチャンスですが、研修や相談相手が不十分なまま「委員会・ラウンド・加算対応」だけが増えると、燃え尽きやヒヤリハットにつながりかねません。まずは、①業務量、②学べる環境(指導・フィードバック)、③自分のキャリア希望の 3 点を書き出し、上司や先輩と率直に話し合ってみるのがおすすめです。

改善を求めても状況が変わらない、あるいは安全に関わる問題が放置されている場合は、職場環境の見直しを検討してよいタイミングです。判断材料を整理したいときは、PT キャリアガイドの「赤信号チェックリスト」も参考になります。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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