療養型病院の褥瘡予防ではPT評価を介入へつなげる
療養型病院の褥瘡予防では、皮膚所見だけでなく、体位変換能力、骨突出、関節拘縮、浮腫、座位姿勢、活動量を評価し、除圧方法まで決めることが重要です。特にPTは、OHスケールの点数をつけて終わるのではなく、ポジショニング、シーティング、体圧分散寝具、離床計画、多職種共有へ変換する役割を担います。本記事では、療養病棟で働くPT向けに、初回評価から介入・再評価までの流れと、A4褥瘡予防チェックシートの使い方を整理します。

療養型病院では褥瘡リスクが複数重なりやすい
療養型病院では、長期臥床や自力体位変換の困難さに、骨突出、関節拘縮、低栄養、浮腫、失禁、皮膚の脆弱性などが重なりやすくなります。
褥瘡は圧だけでなく、ずれ、摩擦、皮膚の湿潤、組織の耐久性、圧が加わる時間などが複合して生じます。そのため、発赤部位だけを確認しても、原因となる姿勢・動作・環境を修正できなければ再発や悪化を防げません。
PTは、皮膚所見を診断するのではなく、なぜその部位へ圧やずれが集中したのかを、姿勢・動作・支持面から整理します。
| 領域 | 主なリスク | PTが確認すること |
|---|---|---|
| 基本動作 | 寝返りや座り直しができない | 除圧につながる自発的な体動があるか |
| 活動量 | 長期臥床、離床頻度の低下 | 同じ姿勢がどの程度続いているか |
| 骨突出 | 仙骨部、踵部、大転子部などへの圧集中 | 姿勢ごとの接触部位と突出の程度 |
| 関節拘縮 | 下肢交差、局所接触、姿勢の非対称 | 拘縮角度とクッション配置の適合 |
| 座位姿勢 | 骨盤後傾、側方傾斜、ずり落ち | 仙骨部・坐骨部への圧やずれ |
| 浮腫 | 皮膚脆弱性、摩擦による損傷 | 部位、圧痕、左右差、皮膚状態 |
| 栄養 | 痩せ、筋量低下、組織耐久性の低下 | 骨突出や活動量と合わせて多職種へ共有 |
| 湿潤 | 尿失禁、便失禁、多汗 | 湿潤部位とスキンケア状況を確認 |
| 支持面 | マットレスやクッションの不適合 | 沈み込み、底づき、ずれ、姿勢保持への影響 |
| ケア体制 | 体位変換方法やクッション位置の不統一 | 病棟スタッフが同じ方法を再現できるか |
PTは皮膚・姿勢・動作・環境をセットで評価する
PTが見るべき褥瘡リスクは、皮膚所見だけでなく、体位変換能力、座位保持能力、座り直し能力、骨突出、拘縮、浮腫、支持面、活動量まで含まれます。
たとえば仙骨部に発赤がある場合でも、原因は一つとは限りません。寝返りができず仰臥位が続いている場合、ベッド上で身体が足側へずれている場合、車椅子で骨盤後傾とずり落ちが生じている場合では、必要な対策が異なります。
療養病棟の臨床では、次の順番で確認すると原因を絞りやすくなります。
- 皮膚に何が起きているかを確認する
- その部位へ圧やずれが加わる姿勢を確認する
- 自力で除圧できるかを確認する
- マットレス・クッション・車椅子を確認する
- 介助方法と実施頻度を確認する

| 評価項目 | 確認内容 | 介入へのつなげ方 |
|---|---|---|
| 体位変換能力 | 寝返りや姿勢修正が可能か | 自力除圧が困難なら介助方法と実施条件を共有する |
| 座位保持能力 | 骨盤・体幹を保てるか | 骨盤後傾や側方傾斜があればシーティングを見直す |
| 座り直し能力 | 不快感に応じて姿勢を変えられるか | 自力困難なら除圧介助と座位時間を調整する |
| 骨突出 | 仙骨部、踵部、大転子部などの突出 | 局所圧が集中しない支持方法を検討する |
| 関節拘縮 | 股・膝・足関節の可動域制限 | 拘縮角度に合わせて支持位置を変更する |
| 浮腫 | 腫脹、圧痕、皮膚の緊張や脆弱性 | 摩擦や局所圧を避け、皮膚状態を共有する |
| 皮膚状態 | 発赤、損傷、浸軟、スキンテア | 観察所見として看護師・医師へ速やかに共有する |
| 体圧分散寝具 | 沈み込み、底づき、ずれ、動作への影響 | リスクと介助体制に合わせて再選定を提案する |
| ポジショニング | 骨突出部、下肢交差、クッション位置 | 除圧・安楽・呼吸・介助の再現性を両立する |
| 離床・活動量 | 離床頻度、座位時間、活動範囲 | 長時間同一姿勢を避けられる計画へ修正する |
初回評価は5分フローで介入優先度を決める
褥瘡予防の初回評価では、すべてを細かく測定する前に、皮膚・除圧能力・局所要因・支持面・共有の5段階で優先度を決めます。

| 順番 | 確認すること | 判断すること |
|---|---|---|
| 1.皮膚 | 発赤、損傷、湿潤、熱感、疼痛の有無 | 速やかな報告や除圧が必要か |
| 2.除圧能力 | 寝返り、座り直し、自発的な体動 | 自力除圧が可能か、介助が必要か |
| 3.局所要因 | 骨突出、浮腫、関節拘縮、接触部位 | どの部位へ圧が集中しているか |
| 4.支持面 | マットレス、クッション、車椅子、姿勢 | 現在の環境で除圧できているか |
| 5.共有 | 体位、クッション位置、座位時間、再評価条件 | 病棟スタッフが同じ方法を継続できるか |
皮膚損傷や持続する発赤を認めた場合は、PTだけで判断せず、院内手順に従って看護師や医師へ報告します。評価を続けることより、除圧と情報共有を優先します。
OHスケールは局所リスクを介入へ変換するために使う
OHスケールは、自力体位変換能力、病的骨突出、浮腫、関節拘縮の4項目から、虚弱高齢者の褥瘡発生リスクを評価する方法です。
各項目がPTの日常診療と重なるため、療養型病院では姿勢・動作評価と組み合わせやすい特徴があります。一方で、OHスケールだけでは、湿潤、栄養、感覚、摩擦・ずれ、介助体制などを十分に評価できません。
したがって、OHスコアだけで対策を決めるのではなく、皮膚所見、姿勢、活動量、支持面、病棟の実行可能性を合わせて判断します。
| OHスケール項目 | PTが確認すること | 主な介入候補 |
|---|---|---|
| 自力体位変換能力 | 寝返りの可否だけでなく、除圧につながる体動か | 体位変換方法、実施条件、支持面の見直し |
| 病的骨突出 | 仙骨部などの突出と姿勢ごとの接触 | 局所除圧、マットレス、クッションの調整 |
| 浮腫 | 部位、程度、圧痕、皮膚の脆弱性 | 摩擦・ずれの軽減、皮膚観察、多職種共有 |
| 関節拘縮 | 拘縮が姿勢崩れや局所接触を生じていないか | 拘縮角度に合わせた支持、下肢交差の回避 |
OHスケールの具体的な採点条件や点数区分は、OHスケールの評価方法と採点手順で確認できます。
PTの介入はポジショニング・シーティング・活動量を組み合わせる
PTが行う褥瘡予防では、ポジショニングだけに依存せず、座位姿勢、活動量、支持面、多職種によるケアの継続性を組み合わせます。
ポジショニングは圧が移動したかまで確認する
ポジショニングでは、仙骨部、踵部、大転子部などの骨突出部へ圧が集中しないように調整します。
クッションを置くこと自体が目的ではありません。圧を避けたつもりでも、別の骨突出部やクッションの縁へ圧を移していることがあります。設定後は、接触部位、姿勢の安定性、呼吸、疼痛、ずれ、皮膚反応を再確認します。
拘縮が強い患者では、標準的なクッション配置が合わないことがあります。股関節・膝関節の拘縮角度、骨盤の回旋、下肢交差、踵部の接触状態に合わせて支持位置を調整します。
シーティングはクッションと座位姿勢を分けずに見る
車椅子座位では、骨盤後傾、ずり落ち、側方傾斜によって仙骨部や坐骨部への圧・ずれが増えます。
体圧分散クッションを使用していても、骨盤が前方へ滑り、仙骨座りになっていれば十分な効果を得られません。PTは、骨盤位置、体幹傾斜、座面奥行き、フットサポート高、アームサポート、クッションの向きと適合を確認します。
自力で座り直せない患者では、座位時間、除圧介助の方法、ベッドへ戻す条件も決めておきます。
離床は時間を増やす前に姿勢の耐久性を確認する
離床や活動量の確保は、同じ部位への持続的な圧を減らす機会になります。ただし、不良姿勢での長時間離床は、局所圧やずれを増やす可能性があります。
離床時間だけで評価せず、座位姿勢が保てる時間、疲労、疼痛、呼吸状態、自力での姿勢修正、離床後の皮膚状態を確認します。必要に応じて、短時間の離床を複数回行うなど、姿勢の耐久性に合わせて調整します。
多職種連携では再現できる情報を伝える
褥瘡予防は日常ケアの中で継続されるため、PTだけが正しい方法を知っていても十分ではありません。
「側臥位にしてください」「クッションを入れてください」だけでは、実施者によって方法が変わります。体位、支持する部位、クッションの位置、避けたい接触、座位時間、再評価条件まで具体的に共有します。
療養病棟では、複数のスタッフが同じ方法を再現できることが、理想的な姿勢を一度作ること以上に重要です。
記録は観察・原因・介入・反応・共有を残す
褥瘡予防の記録では、「ポジショニング実施」の一文だけで終わらせず、何を観察し、何が原因と考え、どのように修正したかを残します。
記録例
仙骨部に発赤あり。仰臥位では自力体位変換困難で、骨盤が足側へずれ仙骨部への接触が強い。右30°側臥位へ変更し、背部から骨盤を面で支持。仙骨部への直接接触がないこと、呼吸苦・疼痛がないことを確認した。クッション位置と体位変換方法を看護師へ共有し、次回体位変換時に皮膚状態を再確認する。
発赤や損傷を褥瘡と断定せず、部位、色調、範囲、接触状況、患者の反応など、観察できた事実を記載します。
よくある失敗は対策と原因が結びついていないこと
療養病棟で起こりやすい失敗は、クッションやマットレスを導入したことで安心し、実際に圧やずれが減ったかを確認しないことです。
| よくある失敗 | 問題点 | 見直しポイント |
|---|---|---|
| クッションを入れて終了する | 骨突出部やクッションの縁に圧が残る | 設定後の接触部位と皮膚反応を確認する |
| OHスコアだけで対策を決める | 湿潤・栄養・ずれ・介助体制を見落とす | 皮膚、姿勢、支持面、ケア体制を統合する |
| 体位名だけを共有する | スタッフごとにクッション位置が変わる | 支持部位と避けたい接触を具体化する |
| エアマットで安心する | ずれ、底づき、姿勢崩れが残る | 導入後の姿勢と皮膚状態を再評価する |
| 離床時間だけを増やす | 不良座位による圧やずれが増える | 姿勢を保てる時間と皮膚反応で調整する |
| 一度決めた方法を続ける | 拘縮、浮腫、活動量の変化に合わなくなる | 状態変化時に支持方法と時間を更新する |
再評価は状態変化と介入後に行う
褥瘡予防では、一度決めた体位や支持面を固定せず、患者の状態と皮膚反応に応じて見直します。
少なくとも、次の場面では再評価が必要です。
- 発赤や皮膚損傷を新たに認めたとき
- 浮腫や拘縮が変化したとき
- 活動量や自力体位変換能力が低下したとき
- マットレスやクッションを変更したとき
- 離床時間を延長したとき
- 体位変換方法を変更したとき
- 病棟スタッフが方法を再現しにくいとき
再評価では、OHスコアの変化だけでなく、皮膚状態、接触部位、ずれ、疼痛、姿勢の安定性、介助の実行可能性まで確認します。
A4褥瘡予防チェックシートをダウンロード
療養型病院での初回評価や状態変化時に使用できる、A4 1枚の褥瘡予防チェックシートです。体位変換能力、座位、骨突出、浮腫、拘縮、ポジショニング、シーティング、多職種共有を一枚で確認できます。
チェックシートの中身をプレビューする
療養型病院で使う褥瘡予防チェックリスト
チェックリストは、項目を確認するだけでなく、介入や多職種共有へつなげるために使用します。
| 領域 | 確認項目 | 評価・確認内容 | 介入・共有の視点 |
|---|---|---|---|
| 基本動作 | 体位変換能力 | 自力可/一部介助/全介助 | 除圧につながる体動があるか |
| 基本動作 | 座位保持能力 | 安定/不安定/保持困難 | 骨盤・体幹の姿勢崩れを確認する |
| 基本動作 | 座り直し能力 | 自力可/介助下可/不可 | 不快感に応じて除圧できるか |
| 骨突出 | 仙骨部 | なし/軽度/重度 | 仰臥位や仙骨座りで圧が集中していないか |
| 骨突出 | 踵部 | なし/軽度/重度 | 踵部免荷と下腿支持の必要性を確認する |
| 骨突出 | 大転子部 | なし/軽度/重度 | 側臥位で直接圧迫されていないか |
| 関節拘縮 | 股関節・膝関節 | なし/軽度/重度 | 姿勢の非対称や下肢同士の接触を確認する |
| 浮腫 | 下腿・足部など | なし/あり | 圧痕、皮膚脆弱性、摩擦リスクを確認する |
| 栄養 | 低栄養リスク | なし/疑い/あり | 痩せ、筋量、骨突出と合わせて共有する |
| 皮膚 | 発赤・皮膚損傷 | なし/発赤/皮膚損傷 | 観察所見として速やかに共有する |
| 湿潤 | 尿失禁・便失禁・多汗 | なし/あり | スキンケア状況を看護師・介護士と共有する |
| 寝具 | 体圧分散寝具 | 適合/要再検討 | 皮膚、体動、介助体制に合わせて見直す |
| 姿勢管理 | ポジショニング | 実施中/要修正/未実施 | 骨突出、拘縮、ずれを踏まえて調整する |
| 車椅子 | シーティング | 適合/要再検討 | 骨盤後傾、側方傾斜、ずり落ちを確認する |
| 活動 | 離床・活動量 | 十分/不足/困難 | 同じ姿勢が長時間続かない計画にする |
| 連携 | 情報共有 | 済/未実施 | 注意部位、支持方法、座位時間を共有する |
よくある質問
各項目名をタップすると回答が開きます。
PTは褥瘡をどこまで評価しますか?
PTは褥瘡を診断するのではなく、体位変換能力、座位姿勢、骨突出、拘縮、浮腫、活動量、ポジショニング、シーティングなど、圧やずれにつながる姿勢・動作・環境要因を評価します。皮膚所見は観察できた事実として多職種へ共有します。
OHスケールだけで褥瘡リスクを判断できますか?
OHスケールだけで判断するのは不十分です。OHスケールは自力体位変換能力、病的骨突出、浮腫、関節拘縮を確認できますが、湿潤、栄養、感覚、摩擦・ずれ、介助体制などは別に確認する必要があります。
OHスケールの点数が低ければ安心ですか?
点数が低くても、持続する発赤、皮膚湿潤、医療機器による圧迫、座位でのずれなどがあれば対策が必要です。合計点だけでなく、現在起きている皮膚所見と原因を優先して判断します。
ポジショニングだけで褥瘡を予防できますか?
ポジショニングだけでは十分とは限りません。体位変換、支持面、シーティング、皮膚の湿潤対策、栄養、活動量、多職種連携を組み合わせます。設定後に圧やずれが減ったかを再評価することも必要です。
車椅子へ離床すれば除圧になりますか?
必ずしも除圧になるとは限りません。骨盤後傾やずり落ちがある状態で長時間座ると、仙骨部や坐骨部への圧・ずれが増える場合があります。座位姿勢、座位時間、除圧能力、離床後の皮膚状態を確認します。
次の一手
療養型病院の褥瘡予防では、皮膚だけでなく、体位変換能力、骨突出、拘縮、浮腫、姿勢、支持面、活動量を総合的に評価します。PTは評価結果をポジショニング・シーティング・離床計画へ変換し、病棟スタッフが継続できる方法として共有することが重要です。
- 全体像から整理する:褥瘡予防の基本フロー|評価・除圧・再評価
- 介入方法を具体化する:褥瘡予防のポジショニング|ずれ・踵免荷の実践
参考文献
- 日本褥瘡学会学術教育委員会ガイドライン改訂委員会.褥瘡予防・管理ガイドライン.第5版.東京:照林社;2022.
- 日本褥瘡学会.改定DESIGN-R®2020コンセンサス・ドキュメント.2020.
- 日本褥瘡学会.DESIGN-R®2020 褥瘡経過評価用.
- Jansen RCS, Silva KBA, Moura MES. Braden Scale in pressure ulcer risk assessment. Rev Bras Enferm. 2020;73(6):e20190413. doi:10.1590/0034-7167-2019-0413.
- 山口孝一,大畑雅彦.褥瘡発症を予測するOHスケールとN-L比の比較.医学検査.2015;64(1):1-6.doi:10.14932/jamt.13-47.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、リハビリテーション栄養、シーティング、摂食・嚥下

