- 2026 年診療報酬改定×リハの実務|急性期〜在宅のポイント
- まず “地図” を作る:基本方針の 4 本柱をリハ業務に落とす
- 病期別チェック:最小セットを “ 1 枚 ” で揃える
- 急性期:早期離床 “だけ” で終わらせず、質と連携で伸ばす
- 回復期:アウトカム運用(測定→使う→渡す)を “ 回す ”
- 外来/在宅:引き継ぎの “ 情報品質 ” を上げると再入院が減る
- 横断テーマ:リハ×栄養・口腔、医療 DX、タスクシフトを “ 実務 ” にする
- 今からの 5 分フロー:改定に振り回されない準備
- 現場の詰まりどころ:まず “ ここ ” を直すと回り出す
- よくある失敗:院内共有と記録が “ ぶれる ” パターン
- 回避の手順:5 分でできる “ 準備チェック ”
- よくある質問( FAQ )
- 次の一手(この順でやる)
- 参考文献
- 著者情報
2026 年診療報酬改定×リハの実務|急性期〜在宅のポイント
令和 8 年( 2026 年 )診療報酬改定は、点数の増減だけでなく「機能分化・連携」「質(アウトカム)」「リハ×栄養・口腔」「医療 DX/業務効率化」といった 方向性 が、現場の業務設計に直結します。本記事では、その方向性を 急性期・回復期・外来/在宅 の実務に翻訳して整理します。
告示・通知・疑義解釈で細部は変わります。だからこそ今の段階でやるべきは「方向性に沿って、院内の型(記録・カンファ・引き継ぎ)を先に整え、あとから点数に合わせて微調整できる状態」にしておくことです。
まず “地図” を作る:基本方針の 4 本柱をリハ業務に落とす
改定資料を読むときは、個別点数を追う前に「何を評価しやすくするか(体制/質/連携/効率化)」の地図を作ると迷いが減ります。リハ部門では、同じ資料でも “ 病期ごとの実務 ” に置き換えると、準備の優先順位が決まります。
基本方針の全体像(確定版)の読み方は別記事で整理しています。方向性を先に押さえたい方は 2026 診療報酬改定の基本方針(確定版)まとめ も併読すると理解が速くなります。
| 柱(基本的視点) | リハ部門で起きやすい変化 | 今から用意できる “ 型 ” | 最小単位(まずここから) |
|---|---|---|---|
| 物価・賃金・人手不足への対応 | 処遇・人材確保/業務負担軽減/タスクシフト | 説明・記録テンプレ、役割分担表、会議短縮 | 1 病棟でテンプレ統一 |
| 機能分化・連携/地域包括ケア | 入退院の質、在宅・介護との連携、逆紹介 | 退院時サマリの要点フォーマット | 退院支援カンファの議題固定 |
| 安心・安全で質の高い医療 | アウトカム、質の高いリハ、口腔・栄養連携 | アウトカム測定の運用(いつ/誰が/どこに) | 測定タイミングの統一 |
| 効率化・適正化/持続可能性 | 医療 DX・ ICT 連携、適正化、ムダ取り | カンファ資料 1 枚化、情報の拾い方固定 | “ 1 画面( 1 枚 ) ” を作る |
病期別チェック:最小セットを “ 1 枚 ” で揃える
点数より先に整えるべきは「順番」と「型」です。急性期→回復期→外来/在宅で、やることを “ 同じ順番 ” に固定すると、あとから告示・通知に合わせた微調整が効きます。
急性期:早期離床 “だけ” で終わらせず、質と連携で伸ばす
急性期は「早期離床・早期リハ」が当然の前提になった一方で、今後は “ 早いかどうか ” よりも「安全・質・連携を担保したうえで、アウトカムにつながるか」が問われやすくなります。スタッフ不足や土日体制の課題があっても、まずは “ できる形 ” に再設計するのが現実的です。
急性期で効く準備は、①介入の中止基準の共有、②カンファでの論点固定(栄養・口腔・退院見通し)、③退院時に渡す情報の要点化、の 3 点です。ここを整えると、回復期や在宅へ繋ぐ “ 運用の強さ ” が上がります。
| 詰まり | NG(起きがち) | OK(こう直す) | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 早期離床が “ 量だけ ” になる | 介入した事実だけが残る | 介入目的(何を改善したいか)と反応を残す | 介助量、歩容、症状(息切れ・めまい) |
| 中止基準が曖昧 | 不安で止める/無理して続ける | 病棟で共通の中止基準を決めて運用する | バイタル推移、症状、対応(中止・再開) |
| 栄養・口腔が後回し | 食べられない理由が整理されない | 嚥下・栄養・口腔を “ 議題として固定 ” | 摂取状況、咳嗽、痰、口腔ケア状況 |
| 退院支援がギリギリ | 退院直前に情報を集める | 退院時に渡す項目を先に決めて集める | 移動(監視/介助量)、転倒要因、福祉用具 |
早期介入や土日祝の体制設計は、別記事で “作り方” に落としています:早期リハ+土日祝リハの評価(運用の型) / 急性期リハ「 3 日以内」介入の作り方
回復期:アウトカム運用(測定→使う→渡す)を “ 回す ”
回復期は、提供単位や体制の議論が起きやすい領域ですが、実務としては「アウトカムをどう回すか」が最重要です。測定はしていても、カンファで使われない・退院時に要点が渡らない、という形だと “ 質の説明力 ” が弱くなります。
回復期での準備は、①アウトカム指標の測定タイミング(入棟・ 2 週・ 4 週・退院など)を統一、②カンファ資料に必ず載せる、③退院サマリへ短く要約、の 3 点を “ まず 1 病棟 ” で固定するのが現実的です。
| ステップ | 目的 | やること(実務) | よくある失敗 |
|---|---|---|---|
| 1 )測定 | 改善の “ 現状把握 ” | 測定日を固定し、担当を決める | 忙しさで測れない/測定が属人化 |
| 2 )使う | 介入の “ 意思決定 ” | カンファ資料 1 枚に必ず載せる | 測って終わり(会議で使われない) |
| 3 )渡す | 地域への “ 引き継ぎ ” | 退院サマリに “ 要点 5 行 ” で残す | 長文で要点が埋もれる/情報が不足 |
外来/在宅:引き継ぎの “ 情報品質 ” を上げると再入院が減る
外来・在宅の領域は、訪問診療・訪問看護・介護との接点が増え、医療側から “ 支える医療 ” へ寄っていきます。リハの役割は「訓練する」だけでなく、生活場面のリスク(転倒・誤嚥・低栄養・活動低下)を早く見つけて、連携へ繋ぐことです。
ここで詰まりやすいのは「何を渡すか」が曖昧で、結局 “ いつも通りの長文サマリ ” になってしまう点です。退院サマリの情報は、相手(在宅側)がすぐ使える “ 具体 ” に寄せると価値が上がります。
| 領域 | 要点(短く) | 根拠(観察) | レッドフラッグ |
|---|---|---|---|
| 移動 | 監視/介助量、屋内外の差 | 転倒状況、歩行補助具、疲労 | ふらつき増悪、失神様、活動急減 |
| 摂食・嚥下 | 食形態、むせ、口腔ケア | 咳嗽、痰、摂取量、呼吸状態 | 発熱、湿性嗄声、食事量低下 |
| 栄養 | 体重変化、栄養課題 | 体重、食事摂取、浮腫、筋力 | 体重減少、食欲低下、脱水傾向 |
| 住宅・福祉用具 | 段差、動線、必要物品 | 家屋課題、試行の結果 | トイレ動作不安定、夜間転倒リスク |
退院時に渡す要点( 5 行テンプレ ):長文より “ 条件 ” を残す
- 移動:監視 / 介助量、屋内外の差、必要物品(例:T 字杖、歩行器)
- レッドフラッグ:転倒・失神様、発熱 / むせ増、食事量低下、活動急減 など
- 生活のボトルネック:トイレ / 入浴 / 屋外(どこが詰まるか)
- 支援の型:家族介助のポイント、見守りの範囲、サービス導入案
- 次回条件:増量 / 中止の基準、フォローの頻度、連絡すべき変化
メモ:数値より “ 条件(いつ・どこで・どの程度)” を揃えると、在宅側がすぐ使えます。
退院前訪問の段取りを “持ち物まで” 固定したい場合は、こちらも使えます:退院前訪問指導の流れと持ち物リスト
横断テーマ:リハ×栄養・口腔、医療 DX、タスクシフトを “ 実務 ” にする
改定の方向性として「リハビリテーション・栄養管理・口腔管理等の高齢者の生活を支えるケアの推進」や「医療 DX/ ICT 連携」「タスクシフト・シェア」が明確に示されています。これは “ どれか 1 つを頑張る ” ではなく、同時に回す体制を作る話です。
現場の最短ルートは、システム導入の前に “ 型化 ” を進めることです。カンファ議題の固定、共同記録の置き場所、退院サマリの要点化、説明チェックリスト化など、まずは紙( 1 枚 )で回してからデジタルへ寄せるほうが、忙しい職場でも定着しやすいです。
| 型化するもの | 狙い | 導入のコツ | 効果が出る指標 |
|---|---|---|---|
| カンファ資料 1 枚化 | 会議短縮+意思決定の質 | 必須項目を固定(アウトカム/栄養/口腔) | 会議時間、決定事項の明確さ |
| 退院サマリの要点フォーマット | 引き継ぎの情報品質 | “ 要点 5 行 ” を先に決める | 問い合わせ減、再入院の減少 |
| 説明チェックリスト | 漏れ防止+負担軽減 | 家族説明で “ 同じ順番 ” にする | 説明の再実施、トラブル減 |
| 役割分担(タスクシフト)表 | 属人化の解消 | “ できる人 ” から “ 役割 ” へ | 残業、引き継ぎの時間 |
リハ×栄養・口腔の “体制+期限+記録” を先に揃えるなら:リハ・栄養・口腔連携加算の見直し(論点と最小セット)
今からの 5 分フロー:改定に振り回されない準備
点数が出る前にやるべきことは、方向性に合わせて “ 後で微調整できる土台 ” を作ることです。やることが多く見えても、まずは最小単位で回し、勝ち筋(型)を作ると横展開できます。
おすすめは「情報源固定 → 論点メモ → 1 病棟で試行 → 記録整備 → 再点検」の順です。これなら、告示・通知が出た後も “ 追いかけるだけ ” になりません。
| 優先 | やること | 目的 | 完了の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | アウトカムの測定タイミングを統一 | 質の説明力を上げる | 入院(入棟)・中間・退院で固定 |
| 2 | カンファ議題に栄養・口腔を固定 | 連携を “ 証拠化 ” | 議題に毎回入る状態 |
| 3 | 退院サマリを “ 要点 5 行 ” に | 在宅側がすぐ使える | フォーマットが 1 つに統一 |
| 4 | 説明・記録テンプレを 1 枚化 | 業務負担軽減( DX の第一歩 ) | 同じ順番で説明できる |
現場の詰まりどころ:まず “ ここ ” を直すと回り出す
このテーマで本当に詰まるのは、制度の暗記ではなく「部署や担当で “ 言葉と順番 ” がブレること」です。まずは下の 3 点を固定すると、回り出します。
よくある失敗:院内共有と記録が “ ぶれる ” パターン
- 早期介入:「いつ開始したか」だけ残り、「安全に判断した根拠」「反応」「次回条件」が薄い
- 回復期:測定しているが、カンファの意思決定に使われない(測って終わり)
- 在宅連携:長文サマリで要点が埋もれ、相手が “ すぐ使えない ”
- 横断:栄養・口腔が “後で” 扱いになり、議題に乗らない
回避の手順:5 分でできる “ 準備チェック ”
- 中止基準(急性期)を “ 1 つ ” に統一した
- アウトカムの測定日(回復期)を固定した
- 退院時に渡す要点(在宅)を 5 行で決めた
- カンファ議題に栄養・口腔を必ず入れた
- 記録の並び(テンプレ)を 1 枚にした
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q 1.この段階(案)で、何から着手すべきですか?
点数を当てにいくより、後で微調整できる “ 土台 ” を作るのが最優先です。具体的には、急性期の中止基準、回復期の測定タイミング、在宅へ渡す要点( 5 行 )を先に固定すると、告示・通知が出た後も運用が崩れにくくなります。
Q 2.早期リハ(入院直後)で記録が弱くなりやすい点は?
開始時刻や実施の事実だけが残り、「安全に判断した根拠」「反応」「次回条件」が薄くなる点です。中止基準の共通化と、記録の並び(根拠→反応→次回条件)をテンプレ化するとブレが減ります。
Q 3.土日祝の提供体制は、どこから整えると現実的ですか?
人を増やす前に、まず “ 初回介入が詰まる場所 ” と “ 休日に必要な最小メニュー ” を決めます。急性期なら、初回介入の成立条件(情報・同意・安全確認)を前倒しで揃えるだけでも改善しやすいです。
Q 4.退院時に在宅へ渡す情報は、何を残せば強いですか?
情報量より “ 条件の明確さ ” が重要です。監視/介助量、転倒・誤嚥・低栄養のレッドフラッグ、必要支援を短く残すと、相手がすぐ使えます(長文で要点が埋もれない形にします)。
Q 5.医療 DX はシステム導入が先ですか?
忙しい現場ほど「紙でも回る 1 枚」を先に作るほうが定着します。カンファ資料 1 枚化、退院サマリ要点化、説明チェックリストなど “ 順番の固定 ” ができてから、デジタルに寄せると破綻しにくいです。
次の一手(この順でやる)
- 運用を整える:早期リハ+土日祝リハ(体制設計)
- 共有の型を作る:2026 リハ記録の見直しポイント(最小セット)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


