リハビリのカルテに必要な記録は「内容の要点」と「開始・終了時刻」
リハビリテーションのカルテでは、「毎回どこまで書けばよいのか」「訓練名と実施時間だけでよいのか」と迷うことがあります。
令和8年度の診療報酬に関する通知では、各区分のリハビリテーションを実施する際、全ての患者について「機能訓練の内容の要点」と「実施時刻(開始時刻と終了時刻)」を診療録等へ記載することが示されています。
ここで重要なのは、「カルテ本文の自由記載欄へすべての情報を繰り返し入力する」という意味ではない点です。電子カルテでは、開始・終了時刻や訓練項目、実施時間などが専用の所定欄に保存される場合があります。
そのため、まずは電子カルテの記録体系全体を見て、「いつ、何を行ったか」と「その患者ではどうだったか」が確認できる状態になっているかを考えることが重要です。

例えば、開始・終了時刻や「ROM訓練10分」「歩行訓練20分」といった情報が患者ごとの所定欄に記録されているのであれば、カルテ本文では同じ内容をそのまま繰り返すのではなく、所定欄だけでは分からない患者固有の状態を補うという整理が実務上分かりやすくなります。
「機能訓練の内容の要点」は何を書けばいい?
結論として、訓練名や実施時間だけでなく、その患者にどのような条件で実施し、どのような状態だったかが分かる情報を必要に応じて残すことがポイントです。
例えば、電子カルテの所定欄に次のように入力されている場合を考えてみます。
- ROM訓練 10分
- 筋力訓練 10分
- 歩行訓練 20分
この記録から、「何を何分行ったか」は確認できます。
一方、「歩行訓練20分」だけでは、歩行器を使用したのか、どの程度の介助を要したのか、どのくらい歩けたのか、疼痛や息切れがあったのかなど、その日の患者の状態までは分かりません。
地方厚生局が公表している個別指導の資料でも、機能訓練の内容の要点について、診療録等への記録がない、または不十分である事例が指摘されています。
そこで実務上は、所定欄で把握できない情報として、次のような項目からその日のリハビリテーションを特徴づける内容を簡潔に補足すると整理しやすくなります。
- 介助量:見守り、軽介助、中等度介助など
- 実施条件:歩行器、杖、手すりなど
- 実施量:歩行距離、回数、保持時間など
- 動作状況:膝折れ、ふらつき、動作方法など
- 症状・反応:疼痛、息切れ、めまい、疲労など
- 変化:介助量の軽減、歩行距離の延長など
- 変更・中止理由:症状出現、疲労、全身状態など
これらを毎回すべて書く必要があるという意味ではありません。また、「患者固有の情報を1項目書けば診療報酬上十分」という基準があるわけでもありません。
その日のリハビリテーションを後から確認したときに、患者の状態や実施状況を把握できるかという視点で必要な情報を選ぶことが大切です。
開始・終了時刻や訓練内容をカルテ本文にも書く必要はある?
電子カルテの別欄に必要な情報が患者ごとに記録されている場合、同じ内容をカルテ本文へそのまま転記すること自体が目的ではありません。
令和8年度の通知では、機能訓練の内容の要点と実施時刻について、「診療録等へ記載する」とされています。
また、リハビリテーションに関する施設基準では、医師の指示、実施時間、訓練内容、担当者等の記録を患者ごとに一元的に保管し、医療従事者が閲覧できるようにすることが示されています。
例えば電子カルテ上で、開始・終了時刻が実施記録から確認でき、さらに「ROM訓練10分」「歩行訓練20分」などが実施内容欄から確認できる場合を考えてみます。
この場合、カルテ本文に、
「ROM訓練10分、歩行訓練20分実施。」
と同じ情報だけをもう一度書くよりも、
「歩行器・見守りで病棟30m可能。右立脚期に軽度ふらつきあり。」
のように、所定欄では確認できない情報を補う方が、その日の患者の状態を把握しやすくなります。
ただし、「所定欄に記録があるため、必ずカルテ本文への記載が不要」と一律に判断できるわけではありません。電子カルテの構成や院内の記録体系によって異なるため、自施設で必要な記録が患者ごとに確認できる状態になっているかを確認してください。
画一的な記録を避けるカルテ記載例
記録を具体化するために、長文を書く必要はありません。すでに所定欄へ訓練項目や実施時間を入力している場合は、「その患者ではどうだったか」が分かる情報を簡潔に補います。
歩行練習の記載例
所定欄の例
歩行訓練 20分
カルテ本文の補足例
歩行器・見守りで病棟30m歩行可能。右立脚期に軽度ふらつきを認めるが、膝折れなし。
訓練名を繰り返さなくても、歩行条件、介助量、距離、動作状況が分かります。
立ち上がり練習の記載例
所定欄の例
基本動作訓練 20分
カルテ本文の補足例
ベッド端座位から手すり使用し軽介助で立ち上がり可能。前回より殿部離床時の介助量軽減。
介助量だけでなく、前回からの変化まで確認できます。
作業療法の記載例
所定欄の例
ADL訓練 20分
カルテ本文の補足例
上衣更衣は座位で実施。袖通し時に口頭指示を要するが、その後は見守りで完遂。
「ADL訓練」だけでは分からない対象動作や介助状況を補えます。
言語聴覚療法の記載例
所定欄の例
言語訓練 20分
カルテ本文の補足例
呼称課題では語頭音ヒントにより正答が増加。会話場面では喚語困難を認めるが、意思伝達は可能。
実施した課題だけでなく、患者の反応や能力が分かる記録になります。
予定した訓練を変更した場合の記載例
カルテ本文の補足例
端座位でめまいを認めたため立位練習は実施せず。臥床後に症状軽快。
予定した内容を変更・中止した場合は、なぜ変更したのか、その判断につながった患者状態を記録しておくと、後から経過を確認しやすくなります。
毎日同じ訓練をしている場合はどう記載する?
同じ訓練を継続しているからといって、毎日無理に違う文章を作る必要はありません。
疾患や病期によっては、同じ運動療法や基本動作練習を継続することは珍しくありません。重要なのは、文章を変えることではなく、当日の患者を確認した結果が記録へ反映されていることです。
例えば前回が、
「歩行器・軽介助で病棟30m。右立脚期にふらつきあり。」
だった患者について、当日もほぼ同じ状態であれば、
「歩行器・軽介助で病棟30m。右立脚期のふらつきは前回同様。疼痛増悪なし。」
のように記録できます。
「前回同様」という表現そのものを避ける必要はありません。ただし、「著変なし」「前回同様」だけでは何が同じなのか分かりにくいため、何を確認して同様と判断したのかが分かるようにすると記録として理解しやすくなります。
コピーや定型文は使ってはいけない?
電子カルテのコピー機能や定型文を使用すること自体が問題なのではありません。
注意したいのは、前回の記録をコピーした結果、当日の患者状態と記録内容が一致しなくなることです。
例えば前回は歩行器で30m歩行できていたものの、当日は体調不良で立位練習を中止した場合に、前回の「歩行器歩行30m」の記録がそのまま残っていれば、実際に行ったリハビリテーションと記録が一致しません。
定型文や前回記録を利用する場合でも、保存前に当日の実施内容へ修正されているかを確認します。
- 当日に実施した内容と記録が一致しているか
- 介助量、実施量、症状などの変化が反映されているか
- 当日に実施していない内容が前回記録から残っていないか
記録時間を短縮するために定型化できる部分と、患者ごと・日ごとに確認して更新する部分を分けることが重要です。
リハビリのカルテ記載でよくある疑問
開始・終了時刻はカルテ本文にも書く必要がありますか?
開始・終了時刻を診療録等へ記録することは必要です。一方、電子カルテの実施記録欄などに患者ごとの開始・終了時刻が記録され、後から確認できる場合に、同じ時刻をカルテ本文へ重複して入力することまでが一律に求められているわけではありません。自施設の電子カルテで、実施時刻がどこに保存されているかを確認してください。
「ROM訓練10分、歩行訓練20分」だけでは不十分ですか?
訓練種別と実施時間は重要な記録ですが、それだけで全ての患者について十分とは断定できません。地方厚生局の個別指導でも、機能訓練の内容の要点について、診療録等への記録がない、または不十分である例が指摘されています。
介助量、実施条件、実施量、症状、反応、前回からの変化など、その日の患者の実施状況を把握するために必要な情報が記録体系全体で確認できるようにします。
毎日同じ訓練なら、同じ記載でもよいですか?
実際に同じ訓練を行い、患者状態にも大きな変化がなければ、記録内容が似ること自体は不自然ではありません。
ただし、前回記録をそのまま流用するのではなく、当日の状態を確認したうえで記録します。「前回同様」と記載する場合も、歩行距離、介助量、症状など、何が同様なのかを具体的にすると分かりやすくなります。
まとめ
リハビリテーションの実施記録では、令和8年度の診療報酬に関する通知により、全ての患者について「機能訓練の内容の要点」と「実施時刻(開始時刻と終了時刻)」を診療録等へ記載することが求められています。
一方、電子カルテでは、開始・終了時刻、訓練項目、実施時間などが専用の所定欄に保存されている場合があります。
その場合は、同じ情報をカルテ本文へ繰り返すことだけを目的とせず、介助量、実施条件、実施量、患者の反応、症状、前回からの変化、変更・中止理由など、所定欄だけでは分からない情報を必要に応じて補うと整理しやすくなります。
カルテを長文化することが目的ではありません。記録体系全体を見たときに、「いつ、何を行い、その患者ではどうだったか」を確認できることを意識して記録することが重要です。
リハビリテーションの制度や実務に関する記事は、リハビリ実務・手続きのまとめでも整理しています。
参考文献
- 厚生労働省保険局医療課. 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について. 保医発0305第6号. 令和8年3月5日. 厚生労働省.
- 東海北陸厚生局. 個別指導等における主な指摘事項「リハビリテーション」. 東海北陸厚生局.
- 厚生労働省保険局医療課. 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて. 保医発0305第8号. 令和8年3月5日. 厚生労働省.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

