リハ職が関わる医療機器 20 選|病棟・在宅で「安全に回す」ための結論
病棟や在宅では、リハビリテーション専門職が医療機器の装着状態のまま離床・運動を行う場面が増えます。結論として、機器ごとの細かな操作より、① 何が危険サインか(観察)、② どこで止めるか(中止基準)、③ 次回も同じ判断ができるか(記録)を標準化すると、安全と回遊(チーム連携)が一気に進みます。
なお、排痰補助装置( MI-E )の考え方は、運用の型(禁忌・中止基準・観察・記録)がそのまま横展開できます。先に整理したい方は MI-E(排痰補助装置)の適応と使い分け を入口にすると早いです。
まず押さえる共通ルール|「開始条件→観察→中止→記録」を 1 セットにする
医療機器が絡む離床では、毎回「機器別の正解」を探すより、共通の安全フレームで判断すると事故が減ります。
| 段階 | 見ること | 記録で残すこと |
|---|---|---|
| 開始条件 | 意識・協力、 SpO2 / 呼吸数、循環、疼痛、ライン固定 | 開始前のベースライン(数値と見た目) |
| 観察 | 「数値」+「見た目」+「機器のトラブル(リーク・閉塞・アラーム)」 | 最小値、回復速度、トラブル内容 |
| 中止基準 | 悪化が続く/休止で回復しない/症状が強い | 中止理由と、戻した段階(座位へ等) |
| 再評価 | 次回は上げるか、段階を戻すか | 次回方針(同段階/ 1 段階戻す/保留) |
リハ職が遭遇しやすい医療機器 20 選(病棟・在宅)
一覧は「目的」「まず確認」「詰まりどころ」を最短で把握できる形にしています。詳細は各論記事で深掘りしていきます。
| 分類 | 機器 | 目的 | まず確認(安全) | 詰まりどころ(よくある) |
|---|---|---|---|---|
| モニタ | パルスオキシメータ | 酸素化の把握 | ベースライン固定、波形・末梢冷感 | 数値だけで判断して見た目を見落とす |
| モニタ | 心電図モニタ | 不整脈・虚血兆候の監視 | 電極固定、動作時の波形変化 | 体位変換で電極が外れアラーム多発 |
| モニタ | 自動血圧計 | 循環動態の把握 | 起立での変動、めまい・冷汗 | 測定タイミングがバラバラで比較できない |
| 酸素 | 酸素ボンベ/流量計 | 酸素投与 | 残量、流量、導線(転倒) | 歩行でチューブ牽引・流量が変わる |
| 酸素 | 酸素カニュラ/マスク | 酸素投与 | ずれ、乾燥・圧迫、 SpO2 低下 | 動作で外れて低下、再装着に時間がかかる |
| 呼吸 | ネブライザ | 気道薬投与・加湿補助 | 実施タイミング、咳嗽・喘鳴 | 離床直前でむせ・咳増加→スケジュール破綻 |
| 呼吸 | 吸引(開放式) | 分泌物除去 | 吸引準備、陰圧、 SpO2 変動 | 上がった痰の回収が遅れて苦しくなる |
| 呼吸 | 吸引(閉鎖式) | 換気を保ちながら吸引 | 閉鎖回路の扱い、リーク | 操作に慣れず時間がかかる |
| 呼吸 | MI-E(排痰補助装置) | 咳を補助して排痰 | 禁忌の除外、吸引までの流れ | 「やりっぱなし」で回収が遅れる |
| 呼吸 | HFNC(ハイフロー) | 高流量酸素で呼吸負荷軽減 | チューブ導線、乾燥、 SpO2 と呼吸数 | 歩行で外れやすい/流量・加温の管理 |
| 呼吸 | NPPV( NIV ) | 非侵襲的換気補助 | リーク、同調、嘔吐リスク | 立位でリーク増大/苦しさ増悪 |
| 循環 | IPC(間欠的空気圧迫) | DVT 予防・浮腫対策 | 皮膚、疼痛、末梢循環、外す判断 | 離床時に外したまま再開忘れ |
| 循環 | 弾性ストッキング | DVT 予防・浮腫対策 | サイズ、皮膚トラブル、しびれ | しわ・ずれで皮膚障害 |
| 創傷 | NPWT(陰圧閉鎖療法) | 創傷治癒促進 | チューブ牽引、陰圧維持、アラーム | 移動でリーク→アラーム連発 |
| 褥瘡 | 体圧分散マットレス | 褥瘡予防・疼痛軽減 | 沈み込み、端座位の安定、移乗時の安全 | 沈み込みで立ち上がりが崩れる |
| 栄養 | 経管栄養( NG ) | 栄養投与 | 固定、牽引、嘔気 | 離床で抜去リスク増 |
| 栄養 | 胃瘻( PEG ) | 栄養投与 | ボタン・固定、疼痛、体位 | 腹圧や体位で不快感 |
| 栄養 | 栄養ポンプ | 投与速度の管理 | 導線、停止・再開、アラーム | 移動でアラーム→中断が増える |
| 活動 | 離床センサー/コール | 転倒予防 | 解除手順、再設定、導線 | 解除忘れでアラーム多発/転倒リスク |
| 活動 | 移乗補助具/リフト | 安全な移乗 | 手順、吊り具、介助者配置 | 人員不足で手順が崩れる |
場面別の「最初の一手」|迷ったらここに戻る
離床で迷ったときは、機器の分類ごとに「最初に見る 1 点」を固定すると判断が速くなります。
| 場面 | 最初の一手 | 次に見ること |
|---|---|---|
| 呼吸(酸素・換気) | 開始前の SpO2 と呼吸数を固定 | 動作で悪化が続くか/休止で回復するか |
| 循環( DVT ・浮腫) | 外す判断と「再開」をセットで決める | 皮膚・末梢循環・疼痛 |
| 創傷(陰圧・ドレーン) | チューブ牽引とリーク対策を先に整える | 移動導線、固定位置、アラーム時の戻し方 |
| 栄養(経管) | 牽引リスクと嘔気を先に確認 | 体位、投与タイミング、再開手順 |
よくある失敗|「外すタイミング」と「再開忘れ」が事故を作る
| 失敗(よくある) | 起きる理由 | 対策(型) |
|---|---|---|
| 外していいか迷って動けない | 開始条件・中止基準が曖昧 | 開始前ベースライン+「休止で回復できるか」で段階を決める |
| 離床後に再開忘れ | 責任分担が不明 | 「誰が、いつ、何を再開」を記録に残して合意する |
| チューブ牽引でトラブル | 導線設計がない | 開始前にチューブ余長・固定位置・介助者配置を決める |
| 数値だけで続行して悪化 | 見た目(努力呼吸・冷汗)を見落とす | 数値+見た目+回復速度を 1 セットで観察する |
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 機器が多くて、何から覚えればいいですか?
まずは機器名の暗記ではなく、「開始条件→観察→中止→記録」の共通フレームを先に固定するのが近道です。次に、呼吸(酸素・換気)/循環( DVT ・浮腫)/創傷(陰圧)/栄養(経管)を優先して整理すると、遭遇頻度が高い場面に対応しやすくなります。
Q2. 中止基準は数値で決めたほうが良いですか?
単一の数値で一律に決めるより、「悪化が続く」「休止で回復しない」「症状が強い」を重視すると運用しやすいです。開始前のベースラインを固定し、回復速度(戻りの遅さ)も含めて判断すると安全です。
Q3. 多職種で合意しておくと安全な項目は?
意思疎通が難しい患者さんほど、① 中止基準、② 機器トラブル時の戻し方(誰に連絡)、③ 再開の責任分担(再開忘れ防止)、④ 記録項目のセット、の 4 点を合意しておくと安全に直結します。
Q4. 記録で最低限押さえるべきは何ですか?
開始前ベースライン(数値と見た目)、実施段階(端座位・立位・歩行など)、最小値と回復時間、機器トラブルの内容、次回方針(同段階/ 1 段階戻す)までを 1 セットで残すと再現性が上がります。
次の一手|各論を足して「医療機器クラスター」を完成させる
- 排痰補助装置:MI-E(排痰補助装置)の適応と使い分け
- 換気補助の離床:NPPV( NIV )装着中の離床・運動療法
- 気道クリアランス:IPV(気道内パーカッション)の運用プロトコル
- 気道クリアランス:VOCSN・VC・マスクでの排痰・吸引の組み立て
- 臨床手技の選び方:ジェントルスティムのリハ活用(適応と使いどころ)
運用を整える → 共有の型を作る → 環境の詰まりも点検までまとめて進めたいときは、無料のチェックシートが便利です。
マイナビコメディカルの無料ダウンロードを見る参考文献・資料
- Rochwerg B, Brochard L, Elliott MW, et al. Official ERS/ATS clinical practice guidelines: noninvasive ventilation for acute respiratory failure. Eur Respir J. 2017;50(2):1602426. doi: 10.1183/13993003.02426-2016. ( PubMed : 28860265 )
- Chatwin M, Wakeman RH. Mechanical Insufflation-Exsufflation: Considerations for Improving Clinical Practice. J Clin Med. 2023;12(7):2626. doi: 10.3390/jcm12072626. ( PubMed : 37048708 )
- Davidson AC, Banham S, Elliott M, et al. BTS/ICS guideline for the ventilatory management of acute hypercapnic respiratory failure in adults. Thorax. 2016;71(Suppl 2):ii1-ii35. doi: 10.1136/thoraxjnl-2015-208209. ( PubMed : 26976648 )
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

