離床を伴わないリハ減算時代の診療記録
離床を伴わないリハビリテーションに対する減算の流れを受け、「ベッド上リハをどう記録するか」に悩む場面が増えています。しかし実際の臨床では、急性期、術後、重症患者、廃用症候群、起立性低血圧など、すぐに離床できない患者も少なくありません。
重要なのは、「今日は離床できたか」だけではなく、離床へ向けて何を評価し、どこまで進め、何が障害になったのかを診療記録へ残すことです。本記事では、段階的離床と目的連動型リハ記録の考え方を整理します。
なぜ「目的」を書くことが重要なのか
「ROM 実施」「起き上がり練習実施」「ギャッジアップ実施」だけでは、何を目標にした介入なのかが伝わりにくくなります。
特に現在は、リハビリテーション実施計画書や日々の診療記録において、目標設定と再評価の流れが重視されています。そのため、単に「何をしたか」ではなく、「何を目的に、どこを評価・介入したのか」を残すことが重要です。
目的連動型リハ記録として整理する
重要なのは、「今日は離床できなかった」という視点ではなく、離床へ向けた段階的介入だったと整理することです。
最終目標、本日の目的、確認した反応、次回の調整点を一連の流れで記録すると、日々の介入の意味が明確になります。

| 最終目標 | 本日の目的 | 評価・介入 | 確認したこと | 次回調整点 |
|---|---|---|---|---|
| 車椅子離床 | 離床耐性確認 | 50° ギャッジアップ+ダングリング | 血圧低下、倦怠感 | 角度・時間調整 |
| 端座位保持 | 体幹支持性確認 | on elbow まで誘導 | 肩痛、支持性低下 | 支持方法変更 |
| 排痰・呼吸状態改善 | 喀痰排出促進 | 体位排痰法+胸郭ストレッチ | 痰喀出状況、呼吸状態 | 排痰肢位調整 |
記録例:ギャッジアップ・ダングリング
単に「ギャッジアップ実施」と書くのではなく、離床へ向けた評価として整理すると、記録の意味が明確になります。
| よくある記録 | 目的連動型の記録 |
|---|---|
| 50° ギャッジアップ実施。 | 車椅子離床へ向けた離床耐性確認として、50° ギャッジアップおよび下肢ダングリングを実施。血圧が 128/74 mmHg から 98/60 mmHg へ低下し、倦怠感を認めたため、本日はここまでとした。 |
記録例:呼吸リハ・排痰介入
呼吸リハでも、「何を実施したか」だけではなく、「何を目的に、どの反応を確認したか」を残すことが重要です。
| よくある記録 | 目的連動型の記録 |
|---|---|
| 喀痰吸引実施。 | 胸部レントゲンより右下葉に浸潤影を認めたため、喀痰排出促進を目的に左側臥位で体位排痰法を実施。徒手的胸郭ストレッチにより喀痰移動を促し、咳嗽練習を行った。痰喀出を認めたため、本日はここまでとした。 |
「今日はここまで」の意味を残す
離床関連の記録では、「今日はここまで」という判断の意味が重要です。単なる中止ではなく、患者反応を踏まえた評価として残すことで、次回介入につながります。
| 観察項目 | 確認内容 | 次回へつなげる視点 |
|---|---|---|
| 血圧・脈拍 | 循環動態変化 | 負荷量・角度調整 |
| SpO2・呼吸状態 | 酸素化・呼吸苦 | 排痰方法・休憩調整 |
| 疼痛 | 肩・体幹・創部痛 | 支持方法変更 |
| 疲労・覚醒 | 持久性・集中力 | 実施時間調整 |
SOAP と「本日の目的」をつなげる
SOAP 形式そのものが問題なのではなく、「本日の目的」が曖昧なまま記録を書くと、A と P が抽象化しやすくなります。
例えば、「車椅子離床へ向けた離床耐性確認」という目的を最初に置くと、O では血圧低下や疲労を整理しやすくなり、A では「離床耐性低下あり」、P では「次回は角度調整して再評価」など、記録の流れが具体化しやすくなります。
多職種共有にもつながる
このような記録は、監査対策だけでなく、多職種共有にも役立ちます。
例えば、看護師や医師から見ても、どこまで進めたか、何が離床の障害になったか、次に何を確認するかが分かりやすくなります。
結果として、「なぜまだ離床できないのか」ではなく、「離床へ向けてどこまで進んでいるか」を共有しやすくなります。
現場の詰まりどころ
現場では、「A が書けない」「P が毎回同じになる」「ベッド上リハだけに見えてしまう」と悩むことがあります。
この場合は、まず「最終目標」を明確にし、そのうえで「本日の目的」を 1 行で設定します。そして、その目的に対して確認した所見と、次回何を調整するかを残します。
つまり、最終目標、本日の目的、確認した反応、次回調整点の 4 点を意識すると、記録の軸がぶれにくくなります。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
離床できなかった日は減算対象になりますか?
制度解釈や患者状態によって異なるため、施設基準や通知の確認が必要です。ただし、重要なのは「離床へ向けて何を評価・介入したか」を記録として残すことです。
ベッド上介入でも意味はありますか?
重要なのは、単にベッド上で実施したことではなく、「離床へ向けた評価・介入」として整理されていることです。離床耐性、呼吸状態、支持性、疼痛など、確認した内容を記録へ残すことが重要です。
「今日はここまで」はどう書けばよいですか?
「血圧低下」「疼痛」「SpO2 低下」など、終了理由を患者反応とともに記録します。そのうえで、次回どの条件を調整するかを書くと、継続的な評価として整理しやすくなります。
SOAP 形式でも使えますか?
はい。本日の目的を最初に整理すると、O・A・P が具体化しやすくなります。特に A と P の内容が実践的になりやすいです。
次の一手
離床関連の記録では、「できた / できなかった」だけではなく、「離床へ向けてどこを評価したか」を残すことが重要です。目的連動型リハ記録を意識すると、日々の介入の意味が整理しやすくなります。
環境要因で「離床が進みにくい」と感じることはありませんか?
教育体制や記録文化、人員配置によって、段階的離床が進めにくいケースもあります。まずは「今の環境で何が詰まりやすいか」を整理してみるのも重要です。
参考文献
- 厚生労働省.令和 6 年度診療報酬改定の概要(リハビリテーション関連).
- 日本集中治療医学会.早期離床・リハビリテーションに関するエキスパートコンセンサス.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信しています。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、摂食・嚥下


