リハビリ診療記録の書き方|目的の決め方・例文・PDF

制度・実務
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リハビリ診療記録は「本日の目的」から書くとつながる

リハビリの診療記録は、計画書の目標を「本日の目的」に分解し、目的に関係する所見、判断、次回方針の順につなげると書きやすくなります。「歩行練習を実施」のような実施内容だけでは、介入理由や変化が十分に伝わりません。本記事では、記録が毎回同じになる、SOAPのAが書けない、計画書との関係を説明できないと悩むPT・OT・STに向けて、目的の決め方、記録例、30秒で確認できる修正方法を整理します。

診療記録の最低ラインから確認したい方へ

本記事は「計画書の目標と日々の記録をつなぐ方法」に絞っています。日付、実施内容、根拠など、記録全体に必要な要件は総論記事で確認できます。

診療記録の最低ラインと5要件を見る

診療記録が書きづらい原因は介入目的が決まっていないこと

記録が止まる主な原因は、SOAPの知識不足ではなく、その日に何を確認するのかが決まらないまま書き始めることです。

「歩行練習を実施」「ROM練習を実施」「ADL練習を実施」だけでは、計画書のどの目標に対する介入なのか、前回から何が変化したのか、なぜ継続するのかが読み手に伝わりません。

一方で、「病棟内歩行の見守り移行に向け、方向転換時の安定性を確認した」のように目的が決まると、残すべき所見と次回の確認点を選びやすくなります。文章力を高める前に、まず介入の焦点を1つに絞ることが重要です。

本日の目的は3ステップで決める

本日の目的は、計画書の目標、現在の課題、今日確認することの3段階で決めます。

  1. 計画書の目標を1つ選ぶ:トイレ移動、病棟内歩行、更衣など、今回の介入と関係する目標を選びます。
  2. 目標を妨げる課題を1つ選ぶ:方向転換、疲労、立ち上がり、座位保持など、達成を妨げている要素を絞ります。
  3. 今日確認することを動詞で決める:「確認する」「比較する」「練習する」「条件を調整する」のように、本日の焦点を1行にします。
計画書の目標から本日の目的を決める例
計画書の目標 現在の課題 本日の目的 優先して残す所見
トイレ移動を見守りで行う 方向転換時にふらつく 方向転換時の安定性と介助量を確認する 体幹動揺、足部位置、接触介助の回数
病棟内歩行の安全性を高める 歩行後半に速度が低下する 疲労に伴う歩行速度と安全性の変化を確認する 歩行距離、休憩、息切れ、介助量
更衣動作の自立度を高める 上衣操作中に座位が崩れる 上衣操作時の座位保持と修正方法を確認する 重心偏位、上肢到達、声かけへの反応

計画書の大きな目標は、そのまま記録へ転記するのではなく、その日に確認できる具体的な課題まで分解します。

たとえば「屋内歩行を見守りで行う」という目標があっても、1回の介入ですべてを確認することは困難です。方向転換、トイレまでの動線、歩行補助具、疲労時の変化、注意配分などに分け、当日の焦点を1つ選びます。

次回は別の要素を確認するか、同じ条件で変化を比較します。この積み重ねが、介入継続、介助量変更、目標見直しの根拠になります。

目的連動型リハ記録の4ステップ|計画書の目標から本日の目的、所見・判断、次回方針まで
計画書の目標から本日の目的、所見・判断、次回方針までを一貫させる4ステップ

記録は「目的・所見・判断・次回」の4要素でつなげる

目的連動型の記録では、目的、所見、判断、次回の4要素が一直線につながっているかを確認します。

目的連動型リハ記録の4要素
要素 書く内容 確認する質問 短い記載例
目的 何の目標に向けて何を確認したか 今日は何を明らかにする日だったか 病棟内歩行見守りに向け、方向転換時の安定性を確認
所見 目的に関係する数値・観察・介助条件 目的に対して何が起きたか 右方向転換で体幹動揺があり、接触介助を2回要した
判断 所見をどう解釈したか 目標達成を妨げる主な課題は何か 右足部の踏み替え遅延が安定性を低下させている
次回 次に何を継続・変更・再確認するか 次回は何を比較するか 足部位置を視覚提示し、同一動線で介助量を再確認する

すべてを長文で書く必要はありません。目的と所見が対応し、判断から次回方針が導かれていれば、短い記録でも介入の流れを追いやすくなります。

SOAPは本日の目的を決めた後に当てはめる

SOAPは記録を整理する形式であり、本日の介入目的を決める代わりにはなりません。

先に目的を決めておくと、Sでは目的に関係する本人・家族の訴え、Oでは確認した事実、Aでは目的に対する解釈、Pでは次回の介入条件を整理できます。

反対に、目的を決めずにSOAPの欄から埋めると、Oが実施内容の羅列になり、Aが感想で終わり、Pが毎回「継続」となりやすくなります。SOAP各項目の詳しい線引きや例文は、記事末の関連記事で確認してください。

記録例:実施内容だけの記録を目的連動型へ修正する

記録を修正するときは、「実施した」の前に目的を置き、実施後に具体的な反応と次回方針を加えます。

リハビリ診療記録のBefore/After例
よくある記録 目的連動型の記録 改善した点
平行棒内歩行を実施。 病棟内歩行の見守り移行に向け、方向転換時の安定性を確認した。右方向転換で体幹動揺があり、接触介助を2回要した。次回は足部位置を視覚提示し、同条件で介助量を再確認する。 目標、所見、次回の比較条件が分かる
起立練習を実施。 トイレ移乗の介助量軽減に向け、起立時の前方重心移動を確認した。座面高40cmでは手すり使用で見守り、低座面では殿部離床時に軽介助を要した。次回は座面高38cmで介助量を比較する。 条件と介助量の違いが分かる
ADL練習を実施。 上衣更衣の自立に向け、上肢操作中の座位保持を確認した。右上肢挙上時に後方へ重心偏位したが、前方への視線誘導で修正できた。次回は声かけを減らし、修正の再現性を確認する。 反応と次回の段階づけが分かる

記録例の数値や介助条件は、そのまま転記するものではありません。実際の患者の状態、施設の記録基準、実施した内容に合わせて記載してください。

目的連動型リハ記録シートをダウンロード

「計画書の目標」「本日の目的」「実施内容」「反応・所見」「次回方針」をA4用紙1枚で整理できる記録シートです。

SOAPを書く前の思考整理、新人への記録指導、計画書と日々の記録のつながりを確認するときに活用できます。院内で使用する場合は、施設の記録様式や個人情報の取り扱いに合わせて運用してください。

目的連動型リハ記録シートPDFを開く

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毎回同じ記録になる原因と修正方法

記録が毎回同じになる場合は、訓練内容ではなく、確認する目的や条件が更新されているかを見直します。

目的連動型リハ記録で起こりやすい詰まりと修正方法
詰まりどころ 起きていること 修正方法 修正後の一言
毎回同じ記録になる 実施した訓練名だけを書いている 今日確認する動作・条件・反応を1つ変える 本日は疲労後の介助量を確認した
Aが書けない 目的と関係の薄い所見が多い 目的に対して改善・不変・悪化のどれかを先に決める 方向転換の安定性は改善したが、見守り継続が必要
Pが毎回「継続」になる 次に比較する条件が書かれていない 条件、介助量、回数、再評価項目のいずれかを指定する 次回は杖使用下で10m歩行の介助量を再確認する
計画書との関係が見えない 大きな目標を確認せず訓練を選んでいる 記録の冒頭に目標との関係を短く置く トイレ移動見守りに向けて確認した

療養病棟では、同じ患者に同じ基本動作練習を継続する場面も少なくありません。その場合も、実施内容を無理に変える必要はありません。介助量、反復回数、疲労、声かけへの反応、病棟での再現性など、今回確認した条件を明確にすると、経過を追える記録になります。

記録や評価を相談しにくい環境で悩んでいる方へ

記録の基準が共有されない、添削を受けられない、新人教育を一人で抱えている場合は、教育体制や働く環境を整理することも選択肢です。

PTの働き方と教育環境を整理する

記録後は4項目を30秒で確認する

記録を書き終えたら、目的から次回方針までがつながっているかを4項目で確認します。

  • 目的:何の目標に向けた介入かが分かる
  • 所見:目的に関係する具体的な事実がある
  • 判断:所見をどう解釈したかが分かる
  • 次回:何を継続・変更・比較するかが分かる

4項目のうち1つが欠けている場合は、長文を追加するのではなく、欠けている要素を1文だけ補います。特に「次回も継続」とだけ書いている場合は、何を確認するために継続するのかを加えると記録の意味が明確になります。

よくある質問

各項目名をタップすると回答が開きます。

リハビリの診療記録はSOAPで書く必要がありますか?

施設の記録ルールでSOAPが指定されている場合は、その形式に従います。ただし、SOAPは記録を整理する方法の1つです。形式にかかわらず、計画書の目標、本日の目的、実施した事実、判断、次回方針がつながっていることが重要です。

毎回「本日の目的」を記録に書く必要がありますか?

施設の様式に専用欄がなければ、「病棟内歩行見守りに向けて」「トイレ移乗の介助量軽減に向けて」のように、記録の冒頭へ短く含める方法があります。長い目標文を毎回転記する必要はありません。

SOAPのAが書けないときはどうすればよいですか?

最初に「今日の目的に対して、改善・不変・悪化のどれだったか」を決めます。次に、その判断を支える所見を1〜2点選びます。目的と関係の薄い情報を減らすと、Aを短くまとめやすくなります。

計画書の目標が「ADL向上」のように抽象的な場合はどうしますか?

トイレ移動、更衣、食事姿勢、入浴、病棟内移動など、実際の生活場面へ分解します。さらに、その日に確認する動作や条件を1つ選び、「更衣中の座位保持を確認する」のように具体化します。

同じ訓練を続けると記録も同じになりませんか?

同じ訓練を継続しても、確認する条件は変えられます。介助量、回数、距離、補助具、疲労後の変化、声かけへの反応など、今回比較した要素を記載すると経過を追いやすくなります。

新人教育ではどこから教えるとよいですか?

最初からSOAPの各欄を細かく添削するより、「今日の目的」「目的に対する所見」「次回確認すること」の3点から始めると整理しやすくなります。その後、施設で採用している記録形式へ当てはめます。

次の一手

目的連動型の考え方を身につけたら、次は診療記録の最低要件とSOAPへの当てはめ方を確認します。


参考文献

著者情報

リハビリ診療記録の記事を執筆したrehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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