地域包括支援センターへのリハ職配置は決まった?
第10期介護保険事業計画の基本指針案に、地域包括支援センターの職員配置として「リハビリテーション専門職等」が明記されました。
厚生労働省が2026年6月29日に開催した第135回社会保障審議会介護保険部会では、地域包括支援センターの体制を検討する際、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員の三職種以外に、リハビリテーション専門職等の専門職や事務職を配置することも含めて必要な体制を検討し、その確保に取り組む方針案が示されました。[1][2]
ただし、全国すべての地域包括支援センターにPT・OT・STを配置することが決まったわけではありません。三職種の代わりにリハ職を配置できると決まったものでもなく、具体的な人数、雇用形態、予算措置も未確定です。
この記事の結論
リハ職の全国一律配置や配置義務は、2026年8月2日時点では決まっていません。今回の重要点は、自治体が地域包括支援センターの体制を検討する際の選択肢として、リハビリテーション専門職が基本指針案に明示されたことです。
基本指針案に何が追加されたのか
基本指針案には、三職種以外の人員として「リハビリテーション専門職等」を明示する文言が追加されました。

追加されたのは、市町村介護保険事業計画における「地域包括支援センターの設置、適切な運営及び評価並びに体制の強化」に関する部分です。
基本指針案では、地域包括支援センターが担当する高齢者人口、相談件数、運営方針、業務評価の結果などを踏まえ、業務量に見合った人員体制を確保することが求められています。
そのうえで、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員の三職種以外についても、次の趣旨が追加されました。
基本指針案の要点
リハビリテーション専門職等の専門職や事務職の配置を含め、地域包括支援センターに必要な体制を検討し、その確保に取り組むことが重要とされました。
従来の基本指針にも「三職種以外の専門職や事務職」という表現はありましたが、今回の案では、その専門職の例としてリハビリテーション専門職等が明示されています。[2]
リハ職の配置が初めて認められたわけではない
PT・OT・STを地域包括支援センターに配置すること自体は、今回初めて可能になったものではありません。
厚生労働省の「地域包括支援センターの設置運営について」では、保健師等、社会福祉士等、主任介護支援専門員等以外の職員について、市町村の判断でセンターに配置できるとされています。
具体例として、すでに次の職員が示されています。[3]
- センター長
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- その他のリハビリテーション専門職
- 事務職員
リハ職については、自立支援や介護予防に資する介護予防ケアマネジメントなどを実施する観点から、配置が想定されると明記されています。
したがって、今回の変更を「地域包括支援センターにリハ職を配置できるようになった」と説明するのは正確ではありません。
今回の明記は何が違うのか
| 整理 | 示されている内容 | 意味 |
|---|---|---|
| 現行の運営通知 | 市町村の判断でPT・OT・ST等をセンターに配置できる | すでに配置は可能 |
| 第10期基本指針案 | 必要な体制を検討する際にリハ専門職等の配置を明示 | 自治体の計画や体制整備で検討されやすくなる |
| 今後の自治体対応 | 地域の業務量、課題、人員、財源を踏まえて検討 | 実際の配置は自治体ごとに異なる |
今回の意義は、リハ職の配置が単なる運営上の選択肢として示されるだけでなく、2027年度から始まる第10期介護保険事業計画の体制整備に関する方針案へ明示されたことにあります。
全国一律の配置義務ではない
基本指針案にリハ職が明記されても、全国すべての地域包括支援センターに配置する義務が生じるわけではありません。
基本指針案が求めているのは、地域包括支援センターが担当する高齢者人口や相談件数、業務内容、評価結果などを踏まえて、必要な人員体制を検討・確保することです。
そのため、実際にリハ職を配置するかどうかは、次の要素によって自治体ごとに異なると考えられます。
- 担当圏域の高齢者人口
- 相談件数と業務量
- 介護予防ケアマネジメントの実施状況
- 地域ケア会議で扱う課題
- 総合事業や通いの場の実施状況
- 既存の地域リハ支援体制
- センターの運営主体
- 人材確保と予算の状況
誤解しやすいポイント
「基本指針案への明記」と「配置義務化」は別です。また、明記されたことだけで求人や採用枠が直ちに増えるとは限りません。
現在の地域包括支援センターの職員配置
地域包括支援センターでは、保健師等、社会福祉士等、主任介護支援専門員等の三職種を配置することが原則です。
センターが担当する区域の第1号被保険者数がおおむね3,000人以上6,000人未満ごとに、原則として次の常勤職員を配置します。[3]
- 保健師その他これに準ずる者:1人
- 社会福祉士その他これに準ずる者:1人
- 主任介護支援専門員その他これに準ずる者:1人
人材確保が難しい状況などを踏まえ、一定の条件下では、複数のセンターの担当区域を合算した配置や常勤換算による配置、小規模自治体等における特例も認められています。
ただし、リハ職は現時点で、この三職種と同じ必須配置職種として位置づけられているわけではありません。
リハ職は三職種の代わりになれる?
今回の基本指針案だけを根拠に、PT・OT・STを三職種の代わりとして配置することはできません。
基本指針案でも、「保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員の三職種以外のリハビリテーション専門職等」と記載されています。
つまり、リハ職は三職種を置き換える職種ではなく、地域包括支援センターの課題や業務量に応じて体制を補完・強化する職種として示されています。
| 確認項目 | 三職種 | リハビリテーション専門職 |
|---|---|---|
| 現在の位置づけ | 原則として配置が必要 | 市町村の判断で配置するその他の職員 |
| 配置目的 | 包括的支援事業等を担う | 自立支援・介護予防等の体制を補完する |
| 第10期案の扱い | 引き続き三職種として記載 | 三職種以外の専門職として明示 |
| 全国一律の配置 | 人員基準あり | 配置義務は未決定 |
地域包括支援センターでリハ職に期待される役割
基本指針案には、配置されたPT・OT・STの具体的な業務内容までは定められていません。
一方、現行の運営通知では、リハ職を配置する目的として、自立支援・介護予防に資する介護予防ケアマネジメント等の実施が示されています。
地域包括支援センターの機能とリハ職の専門性を踏まえると、次のような役割が考えられます。ただし、実際の担当業務は自治体やセンターの運営方針によって異なります。
介護予防ケアマネジメントへの助言
- 生活機能低下の原因を整理する
- 心身機能・活動・参加を分けて評価する
- 過剰なサービス利用になっていないか確認する
- 本人ができる活動と支援が必要な活動を区別する
- 短期集中予防サービスや地域活動への接続を検討する
リハ職がすべてのケアプランを作成するという意味ではなく、ケアマネジャーや三職種に対して、生活機能や自立支援の観点から助言する役割が想定されます。
地域ケア会議への参加
地域ケア会議には、個別課題の解決だけでなく、地域包括支援ネットワークの構築、地域課題の発見、地域づくり・資源開発、政策形成という機能があります。[3]
リハ職は、個別ケースの動作能力だけを見るのではなく、複数の事例に共通する課題を整理し、地域に不足している支援や社会資源の提案につなげることが重要です。
介護予防と通いの場への支援
- フレイルや転倒リスクの評価
- 運動プログラムの助言
- 通いの場の参加者に応じた負荷設定
- 住民主体の活動を継続するための支援
- 医療・介護サービスが必要な人の早期把握
リハ職が継続的に運動教室を直接運営するだけでなく、住民や支援者が主体となって活動を続けられる仕組みを作る視点も必要です。
PT・OT・STそれぞれの専門性
| 職種 | 専門性を活かせる場面の例 |
|---|---|
| 理学療法士 | 移動能力、転倒リスク、身体活動、福祉用具、住環境、外出手段の評価 |
| 作業療法士 | ADL・IADL、認知機能、家庭内役割、趣味、社会参加、生活環境の評価 |
| 言語聴覚士 | コミュニケーション、認知・言語機能、摂食嚥下、地域活動への参加支援 |
職種ごとに業務を完全に分けるのではなく、本人の生活課題と地域のニーズに応じて、三職種や医療・介護・福祉の関係者と協働することが前提となります。
リハ職の求人や行政での採用は増える?
基本指針案への明記により配置が検討されやすくなる可能性はありますが、採用増が確定したわけではありません。
地域包括支援センターは、市町村が直接運営する場合と、社会福祉法人、医療法人などへ運営を委託する場合があります。
そのため、リハ職が関与する形も一律ではありません。
- 市町村の常勤職員として採用する
- 委託先法人がセンター職員として採用する
- 既存の行政リハ職をセンター業務へ配置する
- 医療機関や介護事業所から出向する
- 地域ケア会議や介護予防事業へ外部専門職として関与する
基本指針が正式決定されても、実際の採用や配置には、自治体によるニーズ把握、計画への記載、予算の確保、運営主体との調整などが必要です。
したがって、「2027年4月から全国でPT・OT・STの求人が始まる」と断定することはできません。
決まったこと・まだ決まっていないこと
基本指針案に明記された事実と、今後決まる可能性がある内容を分けて確認することが重要です。
| 確認できること | まだ決まっていないこと |
|---|---|
| 基本指針案にリハ専門職等が明記された | 基本指針の最終的な文言 |
| PT・OT・STは現行通知でも配置可能 | 全国一律の配置義務 |
| 自治体が必要な体制を検討する方向性が示された | 配置する職種と人数 |
| 第10期計画は2027年度から始まる | 各自治体の計画への記載内容 |
| 三職種以外の専門職として記載された | リハ職を三職種の代わりに配置できるか |
| 人員体制の確保が計画上の論点になった | 国や自治体による具体的な財政支援 |
第10期介護保険事業計画のスケジュール
第10期介護保険事業計画の対象期間は、2027年度から2029年度までです。
| 時期 | 主な動き | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 2026年6月 | 国が基本指針案を提示 | リハ専門職等を含む体制整備の文言 |
| 2026年度 | 自治体が第10期計画を作成 | 地域課題、人員、事業、予算への反映 |
| 2027年4月 | 第10期計画期間が開始 | 各自治体の正式な計画と実施体制 |
| 2027~2029年度 | 計画に基づく事業を実施・評価 | 配置状況、業務内容、効果、課題 |
今後は、国の基本指針が正式に決定したかだけでなく、各都道府県・市町村の介護保険事業計画にリハ職の配置や活用がどのように記載されるかを確認する必要があります。
リハ職と自治体が今から確認したいこと
現時点で必要なのは、配置が決まったと考えて採用準備を始めることではなく、地域でリハ職が必要とされる課題を具体化することです。
リハ職が確認したいこと
- 勤務する地域の第9期介護保険事業計画
- 第10期計画の策定委員会や意見募集の状況
- 地域包括支援センターの設置数と運営主体
- 地域ケア会議へのリハ職の参加状況
- 通いの場や短期集中予防サービスへの関与状況
- 都道府県・市町村の地域リハ支援体制
- 既存の行政リハ職の配置状況
自治体・センターが整理したいこと
- 相談件数と業務量に対して現在の人員が足りているか
- 介護予防ケアマネジメントで不足する専門性は何か
- 地域ケア会議で繰り返し挙がる生活機能上の課題は何か
- リハ職を配置することで改善したい指標は何か
- 常勤配置、兼務、出向、外部協力のどれが適しているか
- 既存の地域リハ事業と役割が重複しないか
- 配置後の業務、成果、評価方法を説明できるか
配置そのものを目的にしない
「リハ職を何人置くか」から考えるのではなく、地域包括支援センターが抱えるどの課題を、どの専門性によって改善するのかを先に整理する必要があります。
よくある質問
地域包括支援センターへのPT配置は義務化されますか?
2026年8月2日時点では義務化されていません。基本指針案に、必要な体制を検討する際の専門職としてリハビリテーション専門職等が明記された段階です。
地域包括支援センターにPT・OT・STを配置することは、以前から可能ですか?
可能です。現行の運営通知でも、市町村の判断により、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等を三職種以外の職員として配置することが想定されています。
リハ職を保健師や社会福祉士の代わりに配置できますか?
今回の基本指針案だけを根拠に代替することはできません。リハ職は、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員の三職種以外の専門職として明記されています。
2027年4月からリハ職の求人は増えますか?
配置を検討する自治体が増える可能性はありますが、求人増は確定していません。各自治体の計画、予算、運営主体、人材確保の状況によって異なります。
地域包括支援センターでリハ職は何を担当しますか?
具体的な業務はまだ全国共通で定められていません。介護予防ケアマネジメントへの助言、地域ケア会議、通いの場、生活機能評価、地域課題の分析などが考えられます。
第10期介護保険事業計画はいつから始まりますか?
2027年度から2029年度までの3年間です。自治体は2026年度中に、第10期計画の作成を進めます。
まとめ
第10期介護保険事業計画の基本指針案に、地域包括支援センターの職員配置としてリハビリテーション専門職等が明記されました。
- 基本指針案にリハ専門職等の配置が明示された
- PT・OT・STの配置自体は現行通知でもすでに可能
- 全国一律の配置義務は決まっていない
- 三職種の代替として配置できると決まったわけではない
- 具体的な人数、業務、雇用形態、予算は自治体ごとに検討される
- 第10期計画は2027年度から2029年度まで
今回の明記は、すぐに全国の地域包括支援センターへリハ職が配置されることを意味するものではありません。
一方で、自治体が地域包括支援センターの人員体制を検討する際、リハ職の専門性を具体的な選択肢として位置づけやすくなる重要な変化です。
今後は、基本指針の正式決定とともに、各自治体の第10期介護保険事業計画、配置方針、予算、求人情報を確認する必要があります。
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参考文献
-
厚生労働省.第135回社会保障審議会介護保険部会の資料について.2026年6月29日.
厚生労働省公式ページ -
厚生労働省老健局.基本指針(案)について(新旧案).社会保障審議会介護保険部会(第135回)資料2-2.2026年6月29日.
厚生労働省資料(PDF) -
厚生労働省老健局.地域包括支援センターの設置運営について.2024年8月5日.
厚生労働省通知(PDF) -
厚生労働省老健局.第10期介護保険事業(支援)計画の作成準備について.2026年.
厚生労働省資料(PDF) -
日本理学療法士協会.「基本方針(案)」に地域包括支援センターの職員配置として「リハビリテーション専門職等」が明記される.2026年6月30日.
日本理学療法士協会公式ページ
本記事は2026年8月2日時点で公表されている資料をもとに作成しています。基本指針は案の段階であり、今後の審議、正式な告示、自治体の介護保険事業計画によって内容が変更される可能性があります。
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設しました。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療・介護制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

