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脳卒中患者の体幹機能の重要性

脳卒中片麻痺者の日常生活活動(ADL)は多くの要因が複雑に影響して成り立っています。
身体機能としては、運動麻痺、高次脳機能障害、感覚障害、バランス障害、体幹機能、非麻痺側機能、疼痛などが重要になり、身体機能以外にも認知機能、意欲を含めた精神状態、家族による介護力や自助具、補装具などを含めた家屋の環境などが関与してきます。
身体機能では各項目全てが重要になりますが、起居動作能力や日常生活動作能力において、体幹機能は大きく関係しており、Verheyden は脳卒中後に体幹パフォーマンスが低下すること、また体幹パフォーマンスがバランス、歩行、FIM、FACT、BRS上肢、BRS手指、BRS 機能的活動の評価と強く関連していることを報告しています。
他にも体幹機能の重要性については多くの研究により報告されており、Davies は上肢機能、歩 行、バランス能力の改善には体幹機能の改善が必要であること、富田は発生発達学的視点から体幹機能が重要性であること、Hsieh らは脳卒中後の体幹制御の早期評価と治療が包括的 ADL の予後予測となることを報告しています。
Trunk Control Test(TCT)とは

Trunk Control Test(TCT)は脳卒中患者の体幹制御能力を評価するための簡易的な臨床テストになり、別名で体幹コントロールテストとも呼ばれています。
Trunk Control Test(TCT)は寝返り、起き上がり、座位保持などの臨床で日常的に実施するような評価項目で構成されていることが特徴になります。
Veebeek らによると、Trunk Control Test(TCT)の 4 つめの項目である座位バランスが 30 秒可能かつ Motricity Index(MI)の麻痺側下肢が 25 点以上の場合には、6 ヶ月後の歩行が自立になると報告されています。
簡便に評価することが可能であり、歩行の自立・非自立を予測する指標にもなる評価尺度となっています。
TCT 評価項目

Trunk Control Test(TCT)は以下の 4 つの基本的動作で構成されています。
- 背臥位から麻痺側への寝返り
- 背臥位から非麻痺側への寝返り
- 背臥位から座位への起き上がり
- 座位バランス、座位保持
TCT 評価方法 評価のやり方

Trunk Control Test(TCT)の各項目の詳細な評価方法について、わかりやすく解説していきます。
背臥位から麻痺側への寝返り
仰臥位から麻痺側へ寝返りを行う動作能力を評価します。
麻痺側への寝返りは、神経学的障害のある脳卒中患者にとっては難易度が高い動作となります。
先行研究によると、寝返り動作を遂行するためには、頭部のコントロール、脊柱の程度な可動性、体幹筋力が重要であると報告されています。
背臥位から麻痺側への寝返り動作能力を 0 点、12 点、25 点の 3 段階で判定します。
- 0 点:介助なしでは行うことができない
- 12 点:遂行できるが正常ではない(ベッド柵や寝返りをするために用意した紐などを掴まないとできない)
- 25 点:動作を正常に遂行できる
背臥位から非麻痺側への寝返り
仰臥位から非麻痺側へ寝返りを行う動作能力を評価します。
非麻痺側への寝返りは、麻痺側への寝返りと比較すると難易度が低くなりますが、麻痺側への寝返りと同様に頭部のコントロール、脊柱の程度な可動性、体幹筋力が必要とされます。
こちらの項目では、麻痺側への寝返り動作と比較して、非麻痺側機能に焦点を当て評価を行います。
背臥位から非麻痺側への寝返り動作能力を 0 点、12 点、25 点の 3 段階で判定します。
- 0 点:介助なしでは行うことができない
- 12 点:遂行できるが正常ではない(ベッド柵や寝返りをするために用意した紐などを掴まないとできない)
- 25 点:動作を正常に遂行できる
背臥位から座位への起き上がり
仰臥位から座位へ自力で起き上がる動作能力を評価します。
多くの ADL において、座位や立位をとることは必要不可欠であり、座位や立位をとるために必要となる基本動作が起き上がりになります。
起き上がり動作はセルフケアを行うためにも必要な動作となり、起き上がり動作の可否は生活に大きな影響を及ぼします。臨床では歩行ができるようになっても起き上がり動作が獲得できないために ADL が自立できないこともあります。
先行研究により脳卒中患者の起き上がり動作には、体幹機能と非麻痺側下肢機能との関係が報告されています。すなわち脳卒中患者の起き上がり動作をスムーズにするためには、麻痺側上下肢機能への機能回復的アプローチのみならず、非麻痺側および体幹へのアプローチが重要になります。
背臥位から座位への起き上がり動作能力を 0 点、12 点、25 点の 3 段階で判定します。
- 0 点:介助なしでは行うことができない
- 12 点:遂行できるが正常ではない(ベッド柵や寝返りをするために用意した紐などを掴まないとできない)
- 25 点:動作を正常に遂行できる
座位バランス、座位保持
座位によるバランス能力および座位保持能力を評価します。
座位でのバランスは、体幹の安定性と調整能力に関連しており、特に座位での活動や移動において重要となります。
こちらの項目は座位保持中に両手を座面や膝から離して、両手を持ち上げた時の体幹の安定性を 0 点、12 点、25 点の 3 段階で評価、判定します。
- 0 点:介助なしでは座位保持することができない
- 12 点:手を使って座面を支持したり、手すりを把持すれば 30 秒間の座位保持が可能である
- 25 点:手で座面などを支持せずに、両手をあげても 30 秒間の座位保持が可能である
TCT 評価用紙 無料 ダウンロード
Trunk Control Test(TCT)の評価用紙を pdf で作成しました。
TCT カットオフ値 結果の解釈
Trunk Control Test(TCT)の最高得点は 100 点となり、得点が高いほど体幹機能が優れているという判定になります。
一方、最低得点は 0 点となり、得点が低いほど体幹機能が低下しているという判定になります。
Trunk Control Test(TCT)の得点は体幹機能の判定や歩行機能の予後予測に繋がります。Trunk Control Test(TCT)を活用した研究報告についていくつか紹介します。
【急性期退院時の歩行自立・非自立を予測するためのカットオフ値】
カットオフ値 68 点(感度 90 %、特異度 94 %)
出典:脳卒中急性期での歩行の予後予測に関与する因子の検討
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!この記事では「Trunk Control Test(TCT)」をキーワードに考えを述べさせていただきました。
脳卒中患者の ADL には多くの要因が関与しますが、体幹機能は起居動作や歩行、バランスに密接に関係し、その重要性が多くの研究で示されています。
体幹機能の評価には「Trunk Control Test(TCT)」が用いられ、寝返り・起き上がり・座位保持の 4 項目を 0 ~ 25 点の 3 段階で評価し、最大 100 点となります。TCT は簡便で、体幹機能だけでなく歩行自立の予測にも有用であり、68 点以上が自立歩行のカットオフとされています。
こちらの記事が、Trunk Control Test(TCT)についての理解を深めることに繋がり、臨床における脳卒中診療および体幹機能評価に少しでもお力添えになれば幸いです。
参考文献
- 藤野雄次,秦和文,花房祐輔,石原俊一,間嶋満.脳卒中急性期での歩行の予後に関与する因子の検討.理学療法科学.27(4),p421-425,2012.
- 江連亜弥,原田慎一,小澤佑介,荻野禎子,奥田裕,内山靖.脳卒中片麻痺者の体幹機能と日常生活活動(ADL)との関係について.理学療法科学.25(1),p147–150,2010.
- 八谷瑞紀,村田伸,大田尾浩,有馬幸史,溝上昭宏.脳卒中片麻痺患者の起き上がり動作能力と身体機能との関連.理学療法科学.24(4),p593–597,2009.