前脛骨筋トレーニング|立位・座位・ベッド上メニューと臨床完結シート
前脛骨筋は、つま先クリアランスの確保や初期接地のコントロールに関わる重要筋です。臨床では「筋力を上げる」だけでなく、姿勢ごとに同じ目的(背屈機能の改善)を回せる設計にすると再現性が高まります。
本記事では、立位・座位・ベッド上の姿勢別メニュー、代償の見方、当日記録までを 1 本化して解説します。シリーズ全体は 筋トレメニュー ハブ で確認できます。
結論|前脛骨筋は「姿勢を変えても狙いを固定」すると失敗しにくい
実装の基本は、1) 実施姿勢を選ぶ → 2) 代表メニューを 1〜2 個に絞る → 3) 代償が増える手前で止めるです。これで、立位が不安定な患者でも座位・ベッド上から同じ目的に向かって介入できます。
目安は 8〜12 回 × 2 セット、週 3〜5 回です。反復数よりフォームを優先し、症状(NRS)と代償を同時に記録して次回方針につなげます。評価の整理は 評価ハブ も併用してください。
前脛骨筋を鍛える臨床的意義
前脛骨筋の機能低下は、遊脚期のつまずき、フットスラップ、歩行時の不安定感として現れやすいです。歩行速度や屋外移動の自信にも影響するため、早期から背屈機能を確保しておく意義は大きいといえます。
一方で、代償として体幹後傾、膝屈曲、足部内反が増えると狙いがぼやけます。したがって、メニュー選択と同じくらい、代償の監視と修正キューの統一が重要です。
姿勢別メニュー比較(立位・座位・ベッド上)
下表は、前脛骨筋の介入を姿勢別に実行するための早見表です。患者の安全性・疲労度・支持性に合わせて開始姿勢を決め、可能になれば上位姿勢へ進めます。
「できる姿勢で背屈を確実に出す」ことを優先すると、無理なく継続しやすくなります。
| 姿勢 | 代表メニュー | 目安 | よくある代償 | 修正キュー |
|---|---|---|---|---|
| 立位 | トゥレイズ(壁・手すり支持) | 8〜12 回 × 2 セット | 体幹後傾、膝屈曲で代償 | すねを上げる意識、膝は正面 |
| 座位 | 背屈反復(踵接地でつま先挙上) | 10〜15 回 × 2 セット | 股関節屈曲で代償、足部内反 | 踵を床につけたまま、つま先は天井方向 |
| ベッド上 | 背屈運動(セラバンド/自動介助) | 8〜12 回 × 2 セット | 股関節外旋、反動で一気に引く | つま先正面、上げ 1 秒・下ろし 2 秒 |
姿勢別図解(3カード)
患者説明では、立位・座位・ベッド上を同時提示すると、実施意図と注意点が短時間で共有できます。とくに「よくある代償」と「修正キュー」を同じカード内で示すと、自己修正が進みやすくなります。
以下の図版を記事内に配置し、直下の A4 シート運用へ接続してください。
A4 臨床完結シート(PDF)
この PDF は、上段を「見せる用(患者説明)」、下段を「書く用(当日記録)」に分けた 1 枚完結型です。説明・実施・記録・次回調整までを同日に閉じられるため、運用のブレを減らせます。
下段は 7 行固定(実施姿勢/メニュー/実施量/症状/代償チェック/中止理由/次回方針)です。
PDF を記事内でプレビューする
記録の書き方(短縮版)
まず「実施姿勢」と「メニュー」をチェックし、実施量(回数・セット・休息・RPE)を記入します。次に症状(NRS 前後)と代償チェックを残し、中止理由の有無を明確にします。
最後に次回方針(進行/維持/後退)を必ず選択すると、次回開始時の意思決定が速くなります。記録の連続性は、介入品質の安定化に直結します。
現場の詰まりどころ・よくある失敗
よくある失敗は、回数達成を優先して代償を見逃すことです。前脛骨筋狙いでも、体幹後傾や足部内反が強まると、狙いから外れやすくなります。
対策は「フォーム優先」「代償が増える手前で終了」「NRS 前後を固定記録」です。下肢の連動をみるには 大腿四頭筋トレーニング や ハムストリングストレーニング も合わせて運用すると効果的です。
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
立位が不安定な患者はどこから始めるべきですか?
座位またはベッド上から開始し、背屈が安定して出せるようになってから立位へ移行します。姿勢を下げても狙いは同じです。
目安回数は毎回 8〜12 回で固定ですか?
固定ではありません。代償、RPE、症状変化に応じて調整してください。質を保てる反復回数を優先します。
中止判断で最優先する所見は何ですか?
疼痛増悪、めまい、息切れ増悪、ふらつきです。該当時は中止し、再評価のうえ施設プロトコルと医師指示を優先してください。
代償チェックは何を最初に見ればよいですか?
体幹後傾、膝屈曲代償、足部内反、息こらえの 4 点を優先して確認します。どの反復から崩れるかも記録すると次回調整が容易です。
次の一手
まず 1 週間、同じ記録シートで実施率・症状・代償を継続記録してください。記録がそろうと、進行・維持・後退の判断が定量化できます。
続けて読む:筋トレメニュー ハブ/下腿三頭筋トレーニング/大腿四頭筋トレーニング
参考文献
- Tyson SF, Sadeghi-Demneh E, Nester CJ. The effects of transcutaneous electrical nerve stimulation on strength, proprioception, balance and mobility in people with stroke: a systematic review. Clin Rehabil. 2013;27(5):401-414. doi:10.1177/0269215512464586
- Khan F, Amatya B, Galea MP, et al. Rehabilitation interventions for foot drop in neuromuscular disease and central nervous system conditions. Cochrane Database Syst Rev. 2020;1:CD003908. doi:10.1002/14651858.CD003908.pub4
- Bohannon RW. Muscle strength and muscle training after stroke. J Rehabil Med. 2007;39(1):14-20. doi:10.2340/16501977-0018
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


