Tinetti / POMA の評価方法|手順・採点・解釈

評価
記事内に広告が含まれています。
B_InArticle_Body

Tinetti / POMA は歩行とバランスをまとめて見る評価です

教育体制や評価の全体像も整理したい方向け

評価の選び方や記録の型までまとめて見直したい方は、先に PT 向けキャリア総合ガイドを見ておくと迷いが減ります。

PT のキャリア総合ガイドを見る

Tinetti / POMA は、立ち上がり・立位・方向転換などのバランス要素と、歩幅・連続性・左右差などの歩行要素を 1 本で整理しやすい評価です。まず全体像をつかみたい方は、バランス評価の使い分けを先に見ておくと、どの場面で Tinetti / POMA を足すべきかが分かりやすくなります。

臨床で迷いやすいのは、TUG だけでは移動全体は見えても「どこで崩れるか」が粗くなりやすく、BBS だけでは歩行場面の不安定さを拾いきれないことです。Tinetti / POMA は、その中間で歩行とバランスをまとめて見たい場面に向いています。

Tinetti / POMA とは?

Tinetti / POMA は、1986 年に Tinetti が提案した Performance-Oriented Mobility Assessmentです。高齢者の mobility problems を、検査室の機器ではなく臨床で観察しやすい動作で整理する目的で作られました。

特徴は、合計点だけでなくどの場面で減点されたかを読み取りやすいことです。転倒リスク評価の入口として使いやすく、老年期だけでなく、脳卒中や Parkinson 病でも信頼性・妥当性が検討されています。

Tinetti / POMA が向いている場面

Tinetti / POMA が使いやすいのは、歩けてはいるが不安定さの中身を整理したい場面です。たとえば、立ち上がりは遅いのか、方向転換で足が止まるのか、歩幅が小さいのか、左右差があるのかをまとめて見たいときに向いています。

一方で、高機能例では天井効果が出やすく、community level の症例では差が出にくいことがあります。その場合は、Mini-BESTest や CB&M のような、より難度の高い評価へ切り替える視点が必要です。

Tinetti / POMA の見方と進め方

Tinetti / POMA は、バランス 16 点歩行 12 点の合計 28 点で構成されます。臨床では「何点だったか」だけでなく、どの動作で減点されたかを残すことが重要です。

本記事では公式用紙の項目文をそのまま並べるのではなく、実務で使いやすい観察軸に整理して解説します。観察の主役は、支持の必要性、ふらつき、ためらい、左右差、連続性、方向転換の質です。

バランス項目で見るポイント

バランス項目では、座位からの立ち上がり、立位保持、軽い外乱への反応、方向転換、着座までを見ます。ここで大切なのは、単にできた・できないではなく、上肢支持が必要か、立位で動揺があるか、方向転換で足が止まるかを分けて観察することです。

同じ減点でも、立ち上がりの筋力不足、fear of falling による慎重さ、方向転換時の重心移動の弱さでは意味が違います。減点の背景を所見に残しておくと、次に追加する評価や介入の優先順位が決めやすくなります。

歩行項目で見るポイント

歩行項目では、歩き始めのためらい、歩幅、足の上がり、左右差、連続性、歩隔、体幹の安定性などを見ます。ここでは、速いか遅いかよりも、歩行の質がどこで崩れるかに注目するのがポイントです。

たとえば、歩幅が小さい、歩隔が広い、片側だけ足の上がりが浅い、方向転換で足が分割されるといった所見は、転倒リスクの背景が異なります。歩行項目で減点が多いときは、gait speed だけでなく、左右差や支持脚の安定性も追加で見ておくと解釈しやすくなります。

採点と解釈のコツ

Tinetti / POMA の点数は、転倒リスクを整理する目安として使われます。ただし、研究ごとに対象集団や cut-off の扱いが異なるため、点数だけで転倒を断定しないことが大切です。実務では、総得点よりも減点の分布を見る方が役立ちます。

バランス項目の減点が多いのか、歩行項目の減点が多いのか、両方なのかで次の一手が変わります。臨床記録では、「方向転換で足が止まる」「立ち上がりで上肢支持あり」「歩隔が広く左右差あり」のように、点数+短い観察語をセットで残す運用がおすすめです。

Tinetti / POMA で減点が多いときの見方
減点が目立つ領域 考えやすい背景 次に足したい評価
バランス項目 立ち上がり、立位保持、方向転換、重心移動の不安定さ 静的バランス、Functional Reach、反応的姿勢制御
歩行項目 歩幅低下、左右差、歩隔拡大、連続性低下、体幹不安定 TUG、歩行観察、Step Test、FSST
両方 全身持久力低下、fear of falling、複合的な mobility 低下 転倒既往、生活場面の聞き取り、最小セットで再整理

TUG・BBS・Tinetti / POMA の使い分け

Tinetti / POMA の位置づけを整理するときは、TUG は移動全体の把握、BBS は基本動作の幅広い確認、Tinetti / POMA は歩行+バランスの内訳整理と考えると分かりやすくなります。下の図版は、その違いを 1 枚で見返しやすい形にまとめたものです。

TUG・BBS・Tinetti / POMA の使い分け比較図
TUG・BBS・Tinetti / POMA の役割の違いを整理した図版です。

※スマホでは表を左右にスクロールしてご覧ください。

TUG・BBS・Tinetti / POMA の役割の違い
評価 主に見やすいこと 向いている場面 補いにくいこと
TUG 起立・歩行・方向転換・着座を含む移動全体 短時間で全体像をつかみたいとき どの場面で減点されたかの内訳
BBS 基本動作を含む幅広いバランス能力 立位・移乗・リーチなどを広く確認したいとき 歩行そのものの質、左右差、連続性
Tinetti / POMA 歩行+バランスの内訳整理 転倒リスクを歩行面も含めて見たいとき 高機能例での subtle deficit、天井効果対策

TUG は短時間で移動全体を見やすい一方で、どこで崩れているかの内訳は見えにくいことがあります。BBS は基本動作を広く拾えますが、歩行の質を深く見るにはやや不足します。Tinetti / POMA はその中間で、歩行面も含めて転倒リスクを整理したい場面で使いやすい評価です。

現場の詰まりどころとよくある失敗

Tinetti / POMA で多い失敗は、合計点だけを見て終わることです。点数は入口ですが、実際に介入へつながるのは、立ち上がり、方向転換、歩幅、左右差など、どの場面で減点されたかという情報です。

もう 1 つ多いのは、症例の機能レベルに合わないまま使い続けることです。高機能例では差が出にくく、重度例では全項目を安全に回しにくいことがあります。目的が「転倒リスクの入口整理」なのか、「高機能帯の微妙な差を見る」なのかを先に決めておくと失敗が減ります。

Tinetti / POMA 運用の OK / NG
場面 OK NG
記録 点数と一緒に「方向転換で足が止まる」など観察語を残す 合計点だけをカルテに残して終える
解釈 点数は目安として、減点の分布を見る cut-off だけで転倒を断定する
評価選択 目的に応じて TUG・BBS・Mini-BESTest と組み合わせる 高機能例にも一律に同じ評価だけを使い続ける

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Tinetti / POMA は高齢者以外にも使えますか?

はい。原著は高齢者を対象にした尺度ですが、脳卒中や Parkinson 病でも信頼性・妥当性が検討されています。ただし、高機能例では天井効果が出やすいため、症例によっては Mini-BESTest や CB&M の方が向くことがあります。

cut-off はそのまま使ってよいですか?

点数帯は参考になりますが、研究ごとに対象や目的が異なるため、数字だけで転倒を断定しない方が安全です。既往転倒、fear of falling、感覚・認知、環境要因も合わせて判断してください。

まず何と組み合わせると使いやすいですか?

短時間で全体像を見たいなら TUG、基本動作を広く見たいなら BBS、高機能帯まで深く見たいなら Mini-BESTest が組み合わせやすいです。Tinetti / POMA は、その中で歩行とバランスをまとめて整理する役割で使うと運用しやすいです。

どんな所見を残すと再評価に使いやすいですか?

「立ち上がりで上肢支持あり」「方向転換で足が止まる」「歩隔が広い」「左右差あり」のように、点数と一緒に短い観察語を残すのがおすすめです。再評価時に、何が改善し、どこが残っているかを比較しやすくなります。

次の一手

Tinetti / POMA は、歩行とバランスをまとめて見たいときの入口として使いやすい評価です。次に迷いやすいのは、「全体把握を優先するか」「最小セットで回すか」「高機能帯まで深掘りするか」です。


参考文献

  1. Tinetti ME. Performance-oriented assessment of mobility problems in elderly patients. J Am Geriatr Soc. 1986;34(2):119-126. DOI: 10.1111/j.1532-5415.1986.tb05480.x
  2. Faber MJ, Bosscher RJ, van Wieringen PCW. Clinimetric properties of the performance-oriented mobility assessment. Phys Ther. 2006;86(7):944-954. DOI: 10.1093/ptj/86.7.944
  3. Canbek J, Fulk G, Nof L, Echternach J. Test-retest reliability and construct validity of the Tinetti Performance-Oriented Mobility Assessment in people with stroke. J Neurol Phys Ther. 2013;37(1):14-19. DOI: 10.1097/NPT.0b013e318283ffcc
  4. Kegelmeyer DA, Kloos AD, Thomas KM, Kostyk SK. Reliability and validity of the Tinetti Mobility Test for individuals with Parkinson disease. Phys Ther. 2007;87(10):1369-1378. DOI: 10.2522/ptj.20070007
  5. Yang C, Mo Y, Cao X, Zhu S, Wang X, Wang X. Reliability and validity of the Tinetti performance oriented mobility assessment in Chinese community-dwelling older adults. Geriatr Nurs. 2023;53:85-89. DOI: 10.1016/j.gerinurse.2023.06.020
  6. Jepsen DB, Robinson K, Ogliari G, Montero-Odasso M, Kamkar N, Ryg J, et al. Predicting falls in older adults: an umbrella review of instruments assessing gait, balance, and functional mobility. BMC Geriatr. 2022;22:615. DOI: 10.1186/s12877-022-03271-5
  7. Omaña H, Bezaire K, Brady K, Davies J, Louwagie N, Power S, et al. Functional Reach Test, Single-Leg Stance Test, and Tinetti Performance-Oriented Mobility Assessment for the Prediction of Falls in Older Adults: A systematic review. Phys Ther. 2021;101(10):pzab173. DOI: 10.1093/ptj/pzab173

著者情報

rehabilikun のアイコン画像

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

運営者について編集・引用ポリシーお問い合わせ

タイトルとURLをコピーしました