Tinetti / POMA の評価方法|採点・解釈・記録例

評価
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Tinetti / POMA は歩行とバランスの崩れ方を整理する評価です

Tinetti / POMA は、歩行とバランスをまとめて観察し、転倒リスクの背景を整理する評価です。この記事では、Tinetti / POMA の目的、構成、採点の見方、TUG・BBSとの使い分け、記録例までを臨床向けにまとめます。点数だけで判断するのではなく、「どの動作で崩れたか」を次の評価や介入につなげたい新人PT・リハ職向けの記事です。

この記事で扱うのは、Tinetti / POMA を臨床でどう見て、どう記録するかです。転倒リスク評価全体の流れから整理したい場合は、先に 転倒リスク評価ハブ を確認すると位置づけが分かりやすくなります。

Tinetti / POMA とは?

Tinetti / POMA は、高齢者の移動能力を「バランス」と「歩行」に分けて観察する Performance-Oriented Mobility Assessment です。

特徴は、合計点だけでなく、立ち上がり、立位保持、方向転換、歩幅、左右差、歩行の連続性など、どこで不安定さが出たかを整理しやすいことです。TUG のように移動全体を短時間で見る評価と比べると、Tinetti / POMA は動作の内訳を残しやすい評価と考えると使いやすくなります。

Tinetti / POMA が向いている場面

Tinetti / POMA が向いているのは、歩けてはいるものの、転倒につながる不安定さの中身を整理したい場面です。

たとえば、立ち上がりで上肢支持が必要なのか、方向転換で足が止まるのか、歩幅が小さいのか、左右差が目立つのかを見たいときに役立ちます。療養病棟や高齢者リハでは、単に「歩行可」ではなく、どの場面で介助・見守りが必要かを説明する材料になります。

一方で、高機能例では差が出にくいことがあります。屋外歩行や応用歩行の細かい不安定さを見たい場合は、Mini-BESTest、DGI、FGA など別の評価を検討します。

Tinetti / POMA の構成と見方

Tinetti / POMA は、バランス領域と歩行領域を合わせて評価します。

臨床で重要なのは、項目を機械的に埋めることではなく、支持の必要性、ふらつき、ためらい、左右差、連続性、方向転換の質を観察することです。合計点だけでは、介入の優先順位が見えにくくなります。

Tinetti / POMA で観察したい主な視点
領域 主に見ること 記録に残したい所見
バランス 立ち上がり、立位保持、方向転換、着座 上肢支持、動揺、ふらつき、足の止まり方
歩行 歩き始め、歩幅、左右差、歩行の連続性、体幹安定性 ためらい、歩隔、すり足、左右差、体幹動揺
全体 転倒リスクにつながる動作の崩れ方 どの場面で見守り・介助が必要か

採点と解釈のコツ

Tinetti / POMA は、点数を転倒リスクの目安として使いますが、点数だけで転倒を断定しないことが大切です。

Tinetti / POMAで見るポイントをバランス・歩行・記録の視点で整理した図版
Tinetti / POMAでは、合計点だけでなく「どこで・なぜ崩れるか」を観察語として残すことが重要です。

研究や対象者によって cut-off の扱いは異なります。実務では、総得点よりも減点の分布を見ます。バランスで減点が多いのか、歩行で減点が多いのか、両方なのかによって、次に確認すべき評価や介入が変わります。

Tinetti / POMA の減点パターンと次に見る評価
減点が目立つ領域 考えやすい背景 次に確認したいこと
バランス項目 立ち上がり、立位保持、方向転換、重心移動の不安定さ 静的バランス、Functional Reach、立ち上がり動作
歩行項目 歩幅低下、左右差、歩隔拡大、連続性低下 TUG、歩行速度、歩行観察、方向転換
両方 全身機能低下、転倒恐怖感、複合的な mobility 低下 転倒歴、認知機能、環境要因、起立時血圧

記録例:点数だけで終わらせない

Tinetti / POMA は、点数に短い観察語を添えると再評価に使いやすくなります。

新人PTでは、合計点だけをカルテに残してしまい、次回の評価で「何が変わったのか」が分からなくなることがあります。記録では、点数に加えて、崩れた場面を短く残すのがおすすめです。

Tinetti / POMA の記録例
記録の型
点数のみ Tinetti / POMA 20点。
点数+所見 Tinetti / POMA 20点。立ち上がりで上肢支持あり。方向転換で足が止まり、歩隔拡大を認める。
再評価向け 前回より歩き始めのためらいは軽減。方向転換時の分割歩行は残存し、トイレ動作時は見守り継続。

TUG・BBS・Tinetti / POMA の使い分け

Tinetti / POMA は、TUG と BBS の中間的な位置づけで考えると分かりやすい評価です。

TUG は、立つ・歩く・方向転換・座るまでの移動全体を短時間で把握しやすい評価です。BBS は、立位や移乗を含む基本的なバランス能力を幅広く確認しやすい評価です。Tinetti / POMA は、歩行とバランスの内訳をまとめて整理したいときに向いています。

※スマホでは表を左右にスクロールしてご覧ください。

TUG・BBS・Tinetti / POMA の役割の違い
評価 主に見やすいこと 向いている場面 補いにくいこと
TUG 起立、歩行、方向転換、着座を含む移動全体 短時間で移動能力を把握したいとき どの場面で崩れたかの詳細
BBS 基本動作を含むバランス能力 立位、移乗、リーチなどを広く確認したいとき 歩行の質、左右差、連続性
Tinetti / POMA 歩行とバランスの内訳 転倒リスクを歩行面も含めて整理したいとき 高機能例の細かな応用歩行能力

短時間で移動全体を見たい場合は TUG の評価方法、転倒リスク評価を最小限で回したい場合は 転倒リスク評価の最小セット も参考になります。

現場でよくある失敗

Tinetti / POMA で最も多い失敗は、合計点だけを見て終わることです。

合計点は転倒リスクを考える入口になりますが、介入につながるのは、立ち上がり、方向転換、歩幅、左右差、連続性などの具体的な所見です。点数が同じでも、バランスで崩れる症例と歩行で崩れる症例では、介入の優先順位が変わります。

Tinetti / POMA 運用の OK / NG
場面 OK NG
記録 点数と一緒に「方向転換で足が止まる」など観察語を残す 合計点だけをカルテに残す
解釈 点数は目安として、減点の分布を見る cut-off だけで転倒リスクを断定する
評価選択 目的に応じて TUG・BBS・Mini-BESTest などと使い分ける どの症例にも同じ評価だけを使い続ける

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Tinetti / POMA は何を見る評価ですか?

歩行とバランスをまとめて観察し、転倒リスクにつながる不安定さの背景を整理する評価です。合計点だけでなく、立ち上がり、方向転換、歩幅、左右差、歩行の連続性など、どこで崩れるかを見ることが重要です。

Tinetti / POMA は高齢者以外にも使えますか?

高齢者を対象にした評価として知られていますが、脳卒中や Parkinson 病などでも信頼性・妥当性が検討されています。ただし、高機能例では差が出にくいことがあるため、対象者の機能レベルに合わせて評価を選ぶ必要があります。

cut-off はそのまま使ってよいですか?

点数帯は参考になりますが、対象集団や研究によって扱いが異なります。点数だけで転倒を断定せず、転倒歴、認知機能、感覚障害、起立時血圧、環境要因も合わせて判断します。

TUG と Tinetti / POMA はどう使い分けますか?

TUG は移動全体を短時間で把握したいときに向いています。Tinetti / POMA は、歩行とバランスのどの場面で崩れるかを整理したいときに向いています。まず TUG で全体を見て、必要に応じて Tinetti / POMA で内訳を確認する使い方もできます。

記録では何を書けばよいですか?

点数に加えて、「立ち上がりで上肢支持あり」「方向転換で足が止まる」「歩隔が広い」「左右差あり」のような短い観察語を残すと、再評価やカンファレンスで説明しやすくなります。

次の一手

Tinetti / POMA は、歩行とバランスをまとめて見たいときの各論評価です。次に読むなら、全体像を整理する記事と、短時間で回しやすい実践記事を確認すると使い分けやすくなります。


参考文献

  1. Tinetti ME. Performance-oriented assessment of mobility problems in elderly patients. J Am Geriatr Soc. 1986;34(2):119-126. DOI: 10.1111/j.1532-5415.1986.tb05480.x
  2. Faber MJ, Bosscher RJ, van Wieringen PCW. Clinimetric properties of the performance-oriented mobility assessment. Phys Ther. 2006;86(7):944-954. DOI: 10.1093/ptj/86.7.944
  3. Canbek J, Fulk G, Nof L, Echternach J. Test-retest reliability and construct validity of the Tinetti Performance-Oriented Mobility Assessment in people with stroke. J Neurol Phys Ther. 2013;37(1):14-19. DOI: 10.1097/NPT.0b013e318283ffcc
  4. Kegelmeyer DA, Kloos AD, Thomas KM, Kostyk SK. Reliability and validity of the Tinetti Mobility Test for individuals with Parkinson disease. Phys Ther. 2007;87(10):1369-1378. DOI: 10.2522/ptj.20070007
  5. Jepsen DB, Robinson K, Ogliari G, Montero-Odasso M, Kamkar N, Ryg J, et al. Predicting falls in older adults: an umbrella review of instruments assessing gait, balance, and functional mobility. BMC Geriatr. 2022;22:615. DOI: 10.1186/s12877-022-03271-5
  6. Omaña H, Bezaire K, Brady K, Davies J, Louwagie N, Power S, et al. Functional Reach Test, Single-Leg Stance Test, and Tinetti Performance-Oriented Mobility Assessment for the Prediction of Falls in Older Adults: A systematic review. Phys Ther. 2021;101(10):pzab173. DOI: 10.1093/ptj/pzab173

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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