Trunk Impairment Scale( TIS )は体幹機能を「静的・動的・協調性」で分解して追える尺度です
TIS( Trunk Impairment Scale )は、脳卒中後の体幹機能を端座位で評価し、「静的座位保持」「体幹の動的コントロール」「協調性(分離運動・回旋など)」を点数化できる尺度です。合計点( 0 〜 23 点)だけでなく、下位尺度ごとに弱点を特定し、介入の優先順位を決められるのが強みです。
本記事は、点数の説明で終わらせず、条件を固定して点数をブレさせない運用と、下位尺度の読み方 → 次の介入までを「現場で迷わない形」に整理します。
TIS は「体幹の質」と「経時変化」を追うのが得意です
体幹評価は「成立確認」と「質の要素分解」で役割が変わります。TCT( Trunk Control Test )は、寝返り〜端座位などの成立(できる / できない)を素早く揃えやすい一方、TIS は端座位での体幹戦略を静的・動的・協調性に分けて追えるため、介入の優先順位と再評価の比較に向きます。
同じ「座位が取れる」でも、静的が弱いのか、動的の戻りが弱いのか、回旋の分離運動が弱いのかで、介入の主役が変わります。まずは下位尺度ごとに観察の焦点を固定します。
TIS の下位尺度で「何を見ているか」を先に揃えます
TIS は一般に、静的座位バランス・動的座位バランス・協調性の 3 下位尺度で構成されます。臨床で重要なのは、合計点そのものよりも、どの下位尺度で点が落ちているか=どこがボトルネックかです。
観察は「上肢の到達」ではなく、骨盤帯 → 胸郭 → 頭部の順で崩れ方を追うとブレにくくなります。
| 下位尺度 | 見たい要素 | 観察の焦点 | 代償の例(よくある) |
|---|---|---|---|
| 静的 | 骨盤中間位の維持、左右対称性 | 骨盤帯の保持(崩れの始点) | 骨盤後傾固定、支持への依存、肩甲帯挙上 |
| 動的 | 重心移動と戻り、左右荷重、前後移動 | 移動量より「戻れるか」「減速できるか」 | 体幹ごと倒す、麻痺側荷重回避、過剰な胸郭屈曲 |
| 協調性 | 回旋・分離運動の質とタイミング | 骨盤と胸郭の相対運動(分離) | 回旋が出ず側屈で代償、頭部だけ回す、骨盤が固定される |
TIS の評価方法:条件を固定して「再評価で比較できる形」にします
TIS は端座位で実施するため、まずは安全管理(転倒、循環動態、恐怖心)を優先します。点数のブレを減らす鍵は、座面高・足底接地・支持条件を固定し、記録に残すことです。
介助が必要な場合も、上肢を固定しすぎず、体幹近位で最小限の誘導に留めると、体幹戦略が見えやすくなります。条件が変わった場合は「変えた事実」を書くだけで、点数の意味が保てます。
採点と解釈:点数を「介入計画」と「見立て」に変換します
合計点は分かりやすい指標ですが、臨床で役に立つのは下位尺度ごとの弱点です。静的が低いなら「型作り(支持性・骨盤中間位)」、動的が低いなら「小さな重心移動の反復」、協調性が低いなら「回旋位保持 → 回旋を伴う課題」の順に難易度を調整します。
予後の文脈では、急性期入院時の TIS が退院時の歩行自立と関連し、ROC 解析で cut-off 12 点が報告されています。点数だけで結論を出すのではなく、下肢機能、注意・理解、合併症などを合わせて「次に何を優先するか」を決める材料として使うのが実務的です。
| 下位尺度 | 点が落ちやすい場面 | まず狙うこと(優先) | すぐできる介入例 | 再評価の見どころ |
|---|---|---|---|---|
| 静的 | 端座位の保持が不安定/左右非対称が強い | 骨盤中間位の「型」を作る | 足底接地の調整 → 骨盤帯の支持量を最小化しながら保持反復 | 崩れの始点(骨盤 → 胸郭)と、保持の安定 |
| 動的 | 前後・左右の重心移動で戻れない/減速できない | 小さく動いて、確実に戻る | “小さな”リーチ課題(前方 → 側方) → 戻りを止める(減速)練習 | 移動量より「戻りの質(減速)」が改善しているか |
| 協調性 | 回旋が出ない/側屈や頭部だけで代償する | 骨盤と胸郭の分離を出す | 回旋位保持 → 体幹回旋+上肢課題(小さく) → 速度を上げる | 代償(側屈・頭部だけ)減少、左右差の縮小 |
TIS には Rasch 解析などに基づく見直し提案( TIS 2.0 )がありますが、臨床で一番大切なのは「版を混ぜない」ことです。施設で採用している版を統一し、座面高・足底接地・支持条件を固定して同条件で再評価できる形にすると、点数の比較が成立し、介入の効果判定が速くなります。
現場の詰まりどころ(ここで迷う)
評価が回らない原因の多くは「対象の変化」ではなく「条件の変化」です。特に TIS は、座位条件や支持が揃っていないと点数が簡単にブレます。まずは “迷いを減らす導線” を固定します。
よくある失敗:点数がブレる 4 つの典型
臨床で多いのは、①座面高が毎回違う、②足底接地が不十分、③支持の量が毎回違う、④観察が上肢中心になる、の 4 パターンです。いずれも「介入効果が出たのか」「条件が変わっただけなのか」を曖昧にします。
対策はシンプルで、条件固定+崩れ方の 1 行メモです。合計点に加えて、左右荷重の偏り、骨盤後傾固定、回旋の代償(側屈・頭部だけ回す)など “質” を残すと、次回の介入設計が速くなります。
ブレを減らすチェック( OK / NG )
| 場面 | NG | OK | 記録フレーズ例 |
|---|---|---|---|
| 座位条件 | 座面高・足底接地が毎回違う | 条件を固定し、変えたら明記する | 「座面 45 cm/足底接地あり」 |
| 支持 | その場の判断で支持を増減 | 支持条件を固定(必要なら “支持あり” と明記) | 「支持:骨盤帯に軽介助」 |
| 観察 | 上肢の到達だけを見て採点 | 骨盤帯の崩れ方を主に観察 | 「麻痺側荷重回避 → 体幹側屈代償」 |
| 解釈 | 合計点のみで介入を決める | 下位尺度ごとの弱点で優先順位を付ける | 「協調性が低い → 回旋課題を追加」 |
よくある質問( FAQ )
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Q1. TIS はいつ測るのが実務的ですか?
A. 入院早期は「体幹の弱点を素早く特定して介入を組む」目的で有用です。回復期では、同じ条件での再評価により「体幹のどの要素が改善したか」を追いやすくなります。座面高・足底接地・支持条件を固定し、記録に残すのがコツです。
Q2. 点数がブレる一番の原因は何ですか?
A. 多くは患者さんの変化ではなく「条件の変化」です。座面高、足底接地、支持の量(介助の入り方)が揃っていないと点が簡単に動きます。合計点と一緒に「条件」と「崩れの始点(骨盤 → 胸郭 など)」を 1 行残すと、再評価の比較が成立します。
Q3. 座位が不安定で怖がる患者さんでも測れますか?
A. 安全が担保できない場合は無理に実施しません。まずは座位セットと最小限の支持で「成立」を作り、恐怖が軽くなったタイミングで導入します。実施した場合は支持の量を必ず明記し、同条件で再評価できるようにします。
Q4. 点数が上がったのに歩行が伸びないのはなぜ?
A. 歩行は体幹だけで決まらず、下肢機能、感覚、注意、疲労、循環、痛みなどの影響を受けます。TIS は「体幹要素」の改善を捉えやすい一方、歩行のボトルネックが別因子にあるとギャップが生じます。点数に加えて代償(麻痺側荷重回避、側屈代償 など)を残すと原因整理が進みます。
Q5. TIS 2.0 って何ですか?現場では気にするべき?
A. Rasch 解析などに基づき、尺度の構造を見直した提案が TIS 2.0 です。現場では「どの版を使っているか」を混ぜないことが最重要なので、施設で採用している版を統一し、座面高・足底接地・支持条件を固定して同条件で再評価できる運用を優先してください。
次の一手
- 運用を整える:評価ハブ(全体像)(全体像)
- 共有の型を作る:FACT・ TCT・ TIS の使い分け【比較】(すぐ実装)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- Verheyden G, Nieuwboer A, Mertin J, et al. The Trunk Impairment Scale: a new tool to measure motor impairment of the trunk after stroke. Clin Rehabil. 2004;18(3):326-334. DOI: 10.1191/0269215504cr733oa / PubMed: PMID: 15137564
- Ishiwatari M, et al. Prediction of gait independence using the Trunk Impairment Scale in patients with acute stroke. J Int Med Res. 2022. PubMed: PMID: 36506941
- Verheyden G, Kersten P. Investigating the internal validity of the Trunk Impairment Scale using Rasch analysis: the TIS 2.0. Disabil Rehabil. 2010. PubMed: PMID: 20569077
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


