FACTとは?評価方法・採点・解釈|脳卒中の体幹評価
この記事では、FACT( Functional Assessment for Control of Trunk )の評価方法・採点・解釈を、脳卒中の体幹評価で迷いやすい順に整理します。結論として、FACT は端座位の段階課題で「どこで崩れるか」を短時間で見つけやすく、条件固定と代償観察をセットにすると介入へつなげやすい尺度です。
このページで扱うのは FACT 単体の運用です。TCT や TIS との詳しい比較ではなく、実施条件、観察ポイント、採点の読み方、記録の型、配布用 PDF、自動計算ツールまでを 1 ページで確認できる形にまとめます。
FACT とは|治療につなげやすい体幹評価です
FACT は、脳卒中患者の体幹機能を端座位での課題遂行として捉える評価です。静的な座位保持だけでなく、重心移動、骨盤・体幹の動き、回旋、上肢や下肢の運動に伴う姿勢制御までを見られるため、「体幹が弱い」で終わらず、どの要素が崩れやすいかを整理しやすいのが強みです。
また、FACT は 10 項目・合計 20 点で、点数だけでなく代償の出方も読み取れるのが実務向きです。上肢支持、反動、胸郭の過緊張、骨盤のずれなどを一緒に観察すると、次回介入の狙いが立てやすくなります。
いつ使う?|向いている場面と注意したい場面
向いているのは、離床初期から回復期にかけて「体幹のどこがボトルネックか」を手早く見たいときです。特に、歩行や移乗が伸びにくい症例で、座位の質や骨盤・体幹の分離を整理したい場面と相性がよいです。
注意が必要なのは、端座位自体が安全に保てない、強い起立性低血圧や疼痛で姿勢保持が難しい、指示理解の影響が大きく最大能力の評価条件が揃えにくい場合です。実施できないこと自体も重要な所見なので、中止理由や介助量を含めて残します。
実施前にそろえる測定条件|再現性を上げる
FACT は「最大能力」をみるため、条件がズレると点数の意味もズレます。再評価で迷わないためには、座面、足底支持、介助位置、声かけを先に揃えることが重要です。
特にブレやすいのは、足底支持と座面の高さ・硬さです。同じ治療台、同じ高さ、同じ介助位置でそろえられると、変化を患者さんの変化として読みやすくなります。
| 項目 | そろえたい条件 | よくあるズレ | 現場での調整 |
|---|---|---|---|
| 座位姿勢 | 端座位で、可能な範囲で両足底を床に接地 | つま先接地、片脚が浮く、踵が浮く | 足台や台位置で足底支持を確保し、左右差も記録 |
| 座面条件 | 一定の硬さと高さ(目安 40〜45 cm ) | 柔らかいベッド端、沈み込みが大きい | 可能なら治療台を使用。難しければ条件をメモして固定 |
| 安全管理 | ずり落ち・転倒リスクを先に確認し介助位置を決める | 見守り不足、疲労で後半に崩れる | 介助量を統一し、中止理由も記録する |
| 指示の出し方 | 短く具体的に、必要ならデモ併用 | 説明が長くなり理解が落ちる | 要点を 1 文で伝え、失語や注意障害ではジェスチャーも使う |
FACT の実施手順| 5 分で回す運用フロー
FACT は決められた順序で進めるほど、経過比較が安定します。前半は座位の安定性、後半は動的制御や回旋、四肢運動に伴う姿勢制御へと負荷が上がるため、どこで破綻したかを見るのが基本です。
同一課題を複数回行う場合は、施設内で採用ルールを固定しておくと運用が安定します。最大能力を代表値にする前提を崩さないことが大切です。
| 手順 | やること | 見るポイント | 記録に残す一言 |
|---|---|---|---|
| 1. 開始前 | 座面・足底支持・介助位置を固定する | ずり落ち、後方転倒、疲労の出やすさ | 座面 45 cm /足底接地あり/介助なし |
| 2. 指示 | 短い言葉で課題を説明し、必要時はデモを併用する | 理解のズレ、注意の切れ、過剰な緊張 | 口頭+デモで理解良好 |
| 3. 実施 | 決められた順序で 10 項目を進める | どの項目で崩れたか、どんな代償が出たか | 項目 6 で骨盤後傾と上肢支持が増加 |
| 4. 採用 | 施設ルールに従って最大パフォーマンスを採用する | 再現性のある成功か、偶然の 1 回か | 最大パフォーマンスを採用 |
| 5. まとめ | 合計点、止まった課題、代償、安全を 1 セットで残す | 次回の介入で何を変えるか | 合計 11 点/ボトルネックは回旋/次回は骨盤固定を優先 |
採点と解釈| 0〜20 点をどう読むか
FACT は 10 項目・合計 0〜20 点で、得点が高いほど体幹機能が高いことを示します。ただし、臨床では「何点だったか」だけでなく、止まった課題と代償パターンをセットで見る方が実用的です。同じ 12 点でも、骨盤のコントロール不足なのか、回旋で止まるのか、上肢支持で逃げているのかで次の介入は変わります。
歩行との関係では、亜急性期入院患者で歩行自立のカットオフが 9 点、入院時 FACT で退院時歩行自立をみた研究では 8 点 が報告されています。ただし、対象時期やアウトカムが異なるので、カットオフをそのまま当てはめるより、自施設の対象でどの課題が変わったかを追う運用の方が安全です。
FACT 自動計算ツール
合計点をすぐ確認したい場合は、自動計算ツールが便利です。全 10 項目を入力すると合計点が自動で表示され、未入力がある場合は誤って確定表示しない仕様にしています。
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参考ラインは補助表示であり、自動計算ツールの結果だけで臨床判断を確定するものではありません。安全性、代償、介助量、症例背景とあわせて解釈してください。
現場の詰まりどころ|よくある失敗と観察ポイント
FACT は簡便ですが、代償が強い症例ほど「できたように見える」落とし穴があります。点数だけで判断すると、実際には質が上がっているのに変化なしと誤解したり、逆に反動が増えただけなのに改善と読んでしまったりします。
続けて読むなら、体幹評価全体の流れは 体幹評価フロー で整理できます。まずは下の表の観点で観察を固定すると、再評価のブレを減らしやすくなります。
| 場面 | 典型的な代償 | 見逃しやすい観察ポイント | 次の一手 |
|---|---|---|---|
| 端座位保持 | 胸郭挙上・頚部過伸展で「見かけの安定」を作る | 骨盤後傾、左右の座骨荷重差、足底支持のロス | 足底支持を整え、骨盤前傾の誘導から始める |
| 側方への重心移動 | 肩甲帯の過活動、上肢支持で逃げる | 支持側座骨のずれ、骨盤挙上の混入 | 小さな可動域から始め、骨盤主導の移動を練習する |
| 体幹回旋 | 肩甲帯だけが回って体幹は回っていない | 骨盤固定の安定性、胸郭との分離 | 骨盤固定で胸郭の分離を先に学習する |
| 上肢運動に伴う姿勢制御 | 腰椎伸展や肋骨外反で「挙がったように見せる」 | 体幹前面の支持低下、肩甲帯の過緊張 | 呼気と下位胸郭のコントロールを先に整える |
記録の書き方|点数だけで終わらせない
記録は、合計点だけでは弱いです。おすすめは、( 1 )合計点、( 2 )止まった課題、( 3 )代償、( 4 )安全、( 5 )次回の狙い、の 5 点セットです。これがあると、点数が同じでも「質が上がった」「条件が違った」「疲労で崩れた」を説明できます。
チーム共有では、長文よりも 1〜2 行の型にしておく方が回ります。申し送りやカンファでも再現しやすくなるからです。
記録例
FACT 11 点。項目 6 以降で骨盤後傾と上肢支持が増加。足底支持あり、介助なし。次回は骨盤固定下での側方移動と回旋を優先。
FACT 記録シート PDF
記録用紙をすぐ使いたい方向けに、A4 1 枚の FACT 記録シートを用意しました。患者基本情報、条件固定、採点欄、再評価メモを 1 枚で残せる構成です。
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よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. FACT は TCT や TIS とどう使い分けますか?
A. 目的で分けると整理しやすいです。短時間で成立確認をしたいなら TCT、FACT は「どこで崩れるか」を見て介入の当たりを作りたいとき、TIS は下位尺度で質の変化を追いたいときに向きます。全体の使い分けは FACT・TCT・TIS の違い【比較】 にまとめています。
Q2. 端座位が不安定で開始できない場合はどうしますか?
A. まず安全を優先します。座面、足底支持、介助位置を調整したうえで、どこまでなら実施できたかを所見として残してください。できないこと自体が重要な情報なので、中止理由や介助量も記録しておくと次回比較がしやすくなります。
Q3. 点数が上がらないとき、どこを見直せばよいですか?
A. ①条件固定が前回と同じか、②代償が増えていないか、③ボトルネック課題に対して介入が合っていたか、の順で見直すと整理しやすいです。点数が据え置きでも、代償が減って質が上がっているなら臨床的には前進です。
Q4. 評価用紙はどこで確認できますか?
A. 原著論文や関連論文の図表で確認できます。自施設の運用では、設問そのものよりも「条件」「所見」「次の狙い」を同じ書式で残せる記録様式を整える方が、再評価の価値は高くなります。
次の一手
参考文献
- 奥田 裕, 荻野 禎子, 小澤 佑介, ほか. 臨床的体幹機能検査( FACT )の開発と信頼性. 理学療法科学. 2006;21(4):357-362. doi:10.1589/rika.21.357
- Sato K, Maeda K, Ogawa T, et al. The functional assessment for control of trunk( FACT ): An assessment tool for trunk function in stroke patients. NeuroRehabilitation. 2021;48(1):59-66. doi:10.3233/NRE-201533 / PubMed
- Okuda Y, Owari G, Harada S, et al. Validity of functional assessment for control of trunk in patients with subacute stroke: a multicenter, cross-sectional study. J Phys Ther Sci. 2023;35(7):520-527. doi:10.1589/jpts.35.520 / PubMed
- 益子 寛人, 金子 明紀, 加藤 大貴, 呉 和英, 池澤 里香. Functional Assessment for Control of Trunk( FACT )の尺度特性について—急性期脳卒中者における妥当性の検討—. 理学療法学. 2025;52(5):276-284. doi:10.15063/rigaku.25-12626
- Sato K, Ogawa T, et al. Functional Assessment for Control of the Trunk Predicts Independent Walking in Patients with Stroke. JMA J. 2025;8(1):226-233. doi:10.31662/jmaj.2024-0212 / PubMed
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


