5xSTSとは?(目的と使いどころ)
5 回椅子立ち上がりテスト(5 回立ち上がりテスト、Five Times Sit-to-Stand Test:5xSTS/5STS)は、座位⇄立位の移行を 5 回連続で行い、その所要時間から下肢機能・バランス・転倒リスクを評価する簡便な検査です。外来・通所・病棟などでのスクリーニングや介入効果判定に使いやすく、「5STS 評価」「5sts評価」と表記されることもあります。
短時間で実施できる一方で、椅子高や手の位置、開始・停止タイミングがばらつきやすく、基準値の解釈も年齢やサルコペニア・フレイルの文脈で変わります。本稿では「5 回立ち上がりテスト やり方」「5 回立ち上がりテスト カットオフ値」「5 回立ち上がりテスト 基準値 年齢別」といったニーズを一括で押さえつつ、現場でそのまま使える運用プロトコルとして整理します。
構成と採点(全体像)
被検者は背もたれ付きの標準椅子に座り、腕は胸の前で組んだ状態から開始します。「できるだけ速く・安全に」5 回立って座ってもらい、所要時間(秒)を主指標として記録します。補助具は日常的に使用しているもののみ許可し、種類や設定は必ず記載します。再評価時は同じ椅子・同じ靴・同じ補助具条件で実施し、条件の違いによる誤差を減らします。
開始・停止タイミングを統一することで、評価者間・日内外の誤差を抑えられます。代表的な標準手順を下表にまとめます。施設で運用しやすい形に微調整し、マニュアルや評価用紙に明文化しておくと新人教育にも役立ちます。
| 項目 | 標準 | メモ |
|---|---|---|
| 椅子 | 背もたれ付き・座面高 約 43〜45 cm | 毎回同じ椅子で再現。前脚は床に接地させるが、壁付けなどの完全固定は避ける(自然な離殿を妨げない)。 |
| 手の位置 | 腕を胸の前で組む | 上肢支持は禁止。手すり・座面・大腿部を押した場合は無効として扱うかどうかをルール化し、カルテにも方針を記録しておく。 |
| 開始合図 | 「用意、ゴー」でゴーのタイミングに計測開始 | 事前に 1 回デモと練習を行い、本番は 1 回のみ記録する運用が多い。 |
| 停止基準 | 5 回目で臀部が椅子に触れた瞬間に停止 | 施設で「臀部接触」か「5 回目完全伸展」かを統一。SPPB に合わせる場合は後者とし、評価用紙上で明示する。 |
準備物と安全管理(中止基準)
準備物は、背もたれ付き椅子、ストップウォッチ(またはタイマー機能付き端末)、足底すべり止め(床面によって検討)、見守り者 1 名(やや後側方に位置)です。装具や杖などの補助具は日常的に使用しているもののみ許可し、種類・高さ・持つ側を含めて記録します。
中止基準として、胸痛、強い息切れ、めまい・失神前駆、著明なふらつき、痛みの急激な増悪、危険な代償(上肢で強く押し出す、膝折れが連続する等)をあらかじめ共有しておきます。特に心不全や重度呼吸器疾患では、主治医の指示や施設基準で定める運動中止ラインも確認し、「5 回立ち上がりテスト 厚生労働省」関連資料などで示される留意点も参考にしながら実施可否を判断します。
5回立ち上がりテストのやり方(現場で使える逐次プロトコル)
現場では、5 回立ち上がりテスト やり方 を評価者ごとにアドリブで運用すると、結果の解釈が難しくなります。以下のように「声かけ」「姿勢確認」「計測」「安全確認」を一連のフローとしてルーチン化しておくと、患者間・評価者間のばらつきを減らせます。
- 初期姿勢を確認する:背を背もたれに付け、足底は床全面接地、膝関節はおよそ 90 度屈曲、腕は胸の前で組む。
- 口頭指示を行う:「できるだけ速く 5 回立って座ってください。途中で手は使わないでください。つらくなったらすぐに言ってください。」
- 「用意、ゴー」と声かけし、ゴーの瞬間に計測を開始する。5 回目で臀部が座面に触れた瞬間に計測を停止する。
- 終了後、息切れやめまいの有無、膝折れや危険な代償の出現を確認し、必要に応じて休息や追加のバイタルチェックを行う。
- 椅子高、靴の有無、補助具の種類、停止基準(臀部接触/完全伸展)、練習回数などの条件を評価用紙に記録する。
年齢別基準値とカットオフ(サルコペニア・フレイル)
臨床では「5 回立ち上がりテスト 基準値」「5 回立ち上がりテスト 基準値 年齢別」「5 回立ち上がりテスト カットオフ値」といった情報を確認したい場面が多いと思います。下記は代表的な基準であり、いずれも対象集団や評価文脈(健常/サルコペニア/フレイルなど)を踏まえて解釈することが重要です。
- 年齢別の“平均より低い”目安:地域在住高齢者では、60–69 歳で 11.4 秒超、70–79 歳で 12.6 秒超、80–89 歳で 14.8 秒超が、同年代平均より低いパフォーマンスの目安とされています。
- サルコペニア・フレイル文脈:EWGSOP2 では 5 回椅子立ち上がり 15 秒超、AWGS 2019 では 12 秒以上を「身体機能低下」の目安としており、筋量・筋力評価と組み合わせてサルコペニア診断に用いられます。「5 回立ち上がりテスト サルコペニア フレイル」のキーワードで調べられる場面では、このラインを押さえておくと説明しやすくなります。
- 転倒リスク:一部の実務指針では 16 秒超を転倒リスク上昇の目安とする報告がありますが、対象集団やカットオフの設定によって感度・特異度が変わるため、施設としてどのラインを採用するか事前に決めておきます。
- SPPB との整合:椅子立ち上がりサブテストでは、16.70 秒以上= 1 点、13.70–16.69 秒= 2 点、11.20–13.69 秒= 3 点、11.19 秒以下= 4 点(0 点=不能)といった区分が用いられます。SPPB 準拠で運用する場合は、「5 回目完全伸展で停止」する手順に合わせると整合性が取りやすくなります。
地域のフレイル健診や介護予防事業では、基本チェックリストや体力測定とセットで 5 回立ち上がりテストが紹介されることも多く、「5 回立ち上がりテスト 厚生労働省」などで原資料を確認しつつ、自施設の対象者(在宅高齢者、回復期、通所リハ等)に即したカットオフを選択することが重要です。
解釈と次のアクション(所見→介入)
5 回立ち上がりテストの秒数だけでなく、動作のどの局面で遅れや不安定さが目立つかを観察することで、介入ポイントが明確になります。離殿に時間がかかる場合は股・膝伸展筋力や体幹前傾の使い方、立位保持でふらつく場合は足部配置やバランス戦略を重点的に評価します。
入退院時や通所開始時にベースラインとして測定し、2〜4 週ごとに再評価することで、筋力トレーニングやバランス練習の効果を患者・家族と共有しやすくなります。歩行速度や 6 分間歩行(6MWT)などの持久性評価と組み合わせると、「立ち上がり」「歩行」「持久力」を一枚のシートで俯瞰でき、リハゴールや在宅支援の説明にも役立ちます。
記録テンプレ(コピペ用)
【5 回立ち上がりテスト(5xSTS)】___.__ 秒(開始=「ゴー」/停止= 5 回目臀部接触) 条件:椅子高 __ cm、靴:無・有、補助具:無・有(種類:____) 所見:____(例:離殿遅い/体幹前傾不足/上肢支持出現) 介入:____(例:股・膝伸展筋強化、前傾練習、座面高・足部配置調整) (SPPB 換算:__ 点|停止= 5 回目完全伸展 方式で再現)
よくあるミスと対策
5xSTS は一見シンプルな検査ですが、「ちょっとした条件の違い」が結果に大きく影響します。よくある引っかかりどころをあらかじめ押さえておくと、再現性と信頼性がぐっと高まります。
- 開始・停止のブレ:評価者によって「いつから測り、どこで止めるか」が異なると、数秒単位の誤差が生じます。施設として停止基準(5 回目臀部接触 or 5 回目完全伸展)を明文化し、必ず同じ基準で再評価します。
- 椅子高・手の位置の不統一:毎回違う椅子や手の位置で行うと、トレーニング効果なのか条件差なのか判別しづらくなります。座面高・手の位置・靴の有無を固定し、評価用紙にチェックボックスや記載欄を設けておくと抜け漏れを防げます。
- 上肢支持の許容:立ち上がり途中で手を膝や座面に当ててしまうケースは少なくありません。そのまま記録せず、「上肢支持により無効」として再試行するのか、臨床的にはどう扱うのかをチームで決め、カルテに方針を残しておきます。
5回立ち上がりテストと30秒立ち上がりテストの違い
地域や施設によっては、5 回立ち上がり テスト 30 秒立ち上がりテスト のどちらを使うか迷う場面も多いと思います。5 回立ち上がりテスト(5xSTS)は「何秒で 5 回できるか」をみるため、瞬発的な下肢筋力や移行動作の効率に敏感です。一方、30 秒立ち上がりテスト(30-second Chair Stand Test)は「30 秒間に何回立ち上がれるか」を数えるため、下肢筋持久力や全身持久性にやや近い性格を持ちます。
フレイル健診や介護予防教室では、集団実施がしやすく回数を数えるだけで済むことから、30 秒立ち上がりテストが選ばれることも少なくありません。個別リハ場面では、転倒リスクやサルコペニア評価で年齢別基準値・カットオフが整理されている 5 回立ち上がりテストを使い、地域事業では 30 秒立ち上がりテストを用いるなど、目的と運営形態に応じて使い分けるとよいでしょう。
関連評価とハブ(回遊導線)
参考文献
- RehabMeasures|Five Times Sit to Stand Test(手順・開始停止・椅子高など). sralab.org(閲覧箇所:Key Descriptions).
- Bohannon RW. Reference values for the five-repetition sit-to-stand test. Percept Mot Skills. 2006;103(1):215–222. DOI:10.2466/pms.103.1.215-222.
- Cruz-Jentoft AJ, et al. Sarcopenia: revised European consensus (EWGSOP2). Age Ageing. 2019;48(1):16–31. DOI:10.1093/ageing/afy169.
- Chen LK, et al. Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment. J Am Med Dir Assoc. 2020;21(3):300–307.e2. DOI:10.1016/j.jamda.2019.12.012.
- American Physical Therapy Association. 5 Times Sit to Stand Test (FTSST). In: APTA Test & Measures. apta.org.
- Short Physical Performance Battery(SPPB)スコアシート(椅子立ち上がりの得点区分・停止基準の一例). 例:COSA「How-to Guide: Short Physical Performance Battery」cosa.org.au.
現場の詰まりどころ
実際の運用では、「AWGS2019 と EWGSOP2 のどちらのカットオフを使うか」「SPPB と同じ手順で止めるべきか」「30 秒立ち上がりテストとの住み分けは?」といった点で迷いやすくなります。また、MMT や徒手筋力検査の結果と 5xSTS のタイムが直感的に結びつかず、「筋力はあるのにタイムが悪い」「タイムは良いのにフレイルっぽく見える」といったギャップも典型的な詰まりどころです。
こうした場合は、秒数だけで判断せず、「姿勢戦略(前傾の量)」「足部配置」「めまいや恐怖心」「心肺機能」の要素に分解して考えることが重要です。同じ 5xSTS の遅延でも、純粋に筋力不足なのか、疼痛や恐怖によるブレーキなのかで、取るべき介入はまったく変わります。カットオフ・基準値はあくまで“フラグ”として活用し、観察所見と組み合わせて次の一手を決めていくイメージが現場では扱いやすいです。
おわりに
5 回立ち上がりテストは、「安全確認 → 条件の統一 → 測定 → 解釈 → 再評価」というリズムをチームで揃えることで、日々の立ち上がり介入とサルコペニア・フレイル評価をつなぐ“ハブ”として機能します。歩行や持久力と合わせて記録しておくことで、患者さんへの説明や多職種カンファレンスでも、変化を一目で共有しやすくなります。
働き方を見直すときの抜け漏れ防止に、見学や情報収集の段階でも使える面談準備チェック(A4・5 分)と職場評価シート(A4)を用意しておくと安心です。面談準備チェックと職場評価シートは無料でダウンロードでき、印刷してそのまま使えるので、「今の職場で立ち上がりテストをきちんと運用できる環境か?」を考えるきっかけにもなります。
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q. 5 回立ち上がりテストは毎回同じ椅子で行う必要がありますか?
A. 可能な限り同じ椅子(座面高、背もたれの有無を含む)で実施することをおすすめします。椅子高が数センチ変わるだけでも、離殿の難易度や姿勢戦略が変化し、タイムに影響します。どうしても違う椅子を使う場合は、座面高や肘掛けの有無など条件をカルテに残し、再評価の際も同じ条件で測定するようにしましょう。
Q. AWGS2019 と EWGSOP2 のどちらのカットオフを使えばよいですか?
A. アジア人高齢者を主な対象とする場合は、AWGS2019 のカットオフ(5 回立ち上がりテスト 12 秒以上など)を採用するのが実務的です。欧州の研究や国際共同試験との比較を重視する場合には、EWGSOP2 の基準(15 秒超)を併記するケースもあります。自施設の対象者や研究・診療の目的に応じて、どちらを“主”とするかチームで決め、評価用紙やマニュアルに明記しておくと混乱を防げます。
Q. 5 回立ち上がりテストと 30 秒立ち上がりテスト、どちらを選べばよいですか?
A. 個別リハで筋力・転倒リスクをフォローしたい場合は、カットオフや年齢別基準値が整理されている 5 回立ち上がりテストが使いやすいです。一方、フレイル健診や介護予防教室など多数同時測定が必要な場面では、30 秒間に立ち上がり回数を数える 30 秒立ち上がりテストの方が運営しやすいこともあります。同じ集団で両方を併用する必要はなく、「個別評価なら 5 回」「集団評価なら 30 秒」といった形で用途に応じて使い分けると良いでしょう。


