ADLとIADLの違い|4つの評価尺度の使い分け

臨床手技・プロトコル
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ADLとIADLの違いは「基本動作」と「生活を回す活動」です

ADLとIADLの違いは、評価する生活行為の複雑さで整理できます。ADLは食事・更衣・排泄・移動など、身の回りの基本動作です。IADLは買い物・服薬管理・金銭管理・交通手段など、地域で生活を続けるための応用的な活動です。

ただし、臨床では違いを覚えるだけでは不十分です。重要なのは、基本ADLの自立度や必要な援助量を知りたいのか、生活工程の自立度を知りたいのか、最近の活動頻度を知りたいのかを決めることです。本記事では、BI・FIM・Lawton IADL・FAIの最初の使い分けと、判断に迷いやすい境界を整理します。

この記事で確認できること

  • ADLとIADLの違い
  • BI・FIM・Lawton IADL・FAIの使い分け
  • 能力・援助量・活動頻度を混同しない考え方
  • 評価結果と条件差をまとめる記録シートPDF

ADLは身の回りの基本動作、IADLは生活を回すための活動です

ADLは毎日の生活に必要な基本動作、IADLは複数の判断や手順を組み合わせて生活を維持する活動です。

ADLには、食事、更衣、整容、排泄、入浴、移乗、移動などが含まれます。動作の自立度や必要な介助量が、転倒予防、病棟の介助方法、退院支援に直結します。

IADLには、買い物、調理、洗濯、服薬管理、金銭管理、電話、交通手段の利用などが含まれます。基本ADLが自立していても、IADLに問題があれば、退院後に服薬や通院、食事の準備などが続けられない可能性があります。

ADLとIADLの違い
観点 ADL IADL
主な内容 食事、更衣、排泄、入浴、移乗、移動など 買い物、調理、服薬、金銭、家事、交通、電話など
評価する目的 身の回りの動作の自立度や必要な援助量を確認する 退院後や地域生活で、生活工程を維持できるか確認する
問題がある場合 直接的な介助、見守り、福祉用具、環境調整が必要になりやすい 家族代行、サービス利用、手順の簡略化、管理方法の変更が必要になりやすい
記録すること どの動作で、どの程度の援助が必要か どの工程が止まり、誰がどのように補っているか

評価の順序は、すべての患者でADLを終えてからIADLへ進むという意味ではありません。転倒や排泄など安全上の問題があればADLを優先し、服薬管理や独居生活が退院の論点なら、入院早期からIADLの情報も集めます。

BI・FIM・Lawton・FAIは評価したい内容から選びます

基本ADLの自立度を簡潔に把握するならBI、必要な援助量を身体・認知項目から詳しく共有するならFIMが候補です。IADLでは、生活工程の自立度を確認するならLawton IADL、最近の活動頻度を確認するならFAIを検討します。

4つの尺度には重なる部分がありますが、同じ内容を異なる細かさで測るだけではありません。評価結果で何を説明したいのかを先に決めると、尺度を選びやすくなります。

ADL・IADL評価でBI、FIM、Lawton IADL、FAIから最初の尺度を選ぶ4分岐
知りたい内容から、BI・FIM・Lawton IADL・FAIの最初の1本を選ぶための整理図です。
BI・FIM・Lawton IADL・FAIの使い分け
知りたいこと 候補となる尺度 主に確認できること 解釈時の注意
基本ADLの全体像を短時間で把握したい BI 基本ADL各項目の自立度や介助状況 合計点だけでは、介助が必要な具体的場面や認知面の影響が分かりにくい
日常場面で必要な援助量を詳しく共有したい FIM 運動・認知項目における自立度と必要な援助量 採点場面や基準がそろっていないと、職種間・時期間で比較しにくい
地域生活に必要な生活工程の自立度を確認したい Lawton IADL 電話、買い物、食事準備、家事、服薬、金銭管理などの遂行状況 家族が代行している理由を確認しないと、能力低下と役割分担を区別できない
最近の生活で活動がどの程度行われているか知りたい FAI 家事、屋外活動、余暇・仕事などの実施頻度 実施頻度が低くても、本人の能力低下が原因とは限らない

迷いやすい境界は「能力」「援助量」「実施頻度」を分けます

尺度選択で迷う最大の原因は、「できること」「援助を受けながら行っていること」「最近実際に行ったこと」が混ざることです。

たとえば、買い物へ行ける身体能力があっても、入院前から家族がすべて代行していれば、本人の能力と実施頻度は同じ結果になりません。外出できる人でも、交通手段がない、家族に止められている、本人が必要としていないなどの理由で、活動頻度が低くなることがあります。

尺度の結果を読み違えやすい境界事例
状況 読み違えやすい点 追加で確認すること 評価の焦点
能力はあるが家族が家事を代行している 実施していないことを能力低下と判断する 本人が行った場合に、手順を安全に完了できるか 生活工程の自立度と役割分担を分ける
外出できるが、最近は外出していない 活動頻度の低さを移動能力低下だけで説明する 交通手段、環境、本人の希望、役割、季節など FAIの頻度と能力評価を分ける
病棟では見守りがあるが、訓練室では自立している 最良場面だけで日常の自立度を決める 実際の生活場面、時間帯、環境、声かけの有無 FIMでは評価条件と必要な援助量をそろえる
BI合計点は高いが、トイレだけ介助が必要 合計点から生活全体を自立と判断する 失敗時の危険性、頻度、夜間、衣服操作、移動条件 合計点より介助が必要な項目を確認する
発症前から調理や金銭管理をしていない 現在の非実施を発症後の低下と判断する 発症前の役割、経験、本人の希望、退院後の必要性 病前生活との変化を確認する

評価表へ点数を記載するときは、可能であれば「家族代行」「病前から非実施」「環境上実施できない」などの条件も残します。点数が同じでも、介入すべき問題は異なるためです。

迷ったときの5分フロー

最初に退院や介入で説明したいことを決め、必要最小限の尺度を選びます。

  1. 今回説明したいことを1つ決める:基本ADLの自立度、日常場面の援助量、IADL工程の自立度、活動頻度のどれを知りたいか決めます。
  2. 安全上の問題を確認する:移動、移乗、排泄、入浴などに転倒や介助上の問題があれば、基本ADLを優先します。
  3. ADL尺度を選ぶ:基本ADLの全体像を簡潔に確認するならBI、必要な援助量を運動・認知面から共有するならFIMを検討します。
  4. 退院後のIADL課題を絞る:買い物、服薬、金銭、調理、交通などから、生活を止める可能性が高い工程を1〜2個選びます。
  5. IADL尺度を選ぶ:生活工程の自立度を確認するならLawton IADL、最近の活動頻度を確認するならFAIを検討します。
  6. 点数以外の条件を残す:本人ができないのか、家族が代行しているのか、環境上行っていないのかを記録します。

記録例:「BIでは移乗は自立しているが、更衣下衣と夜間排泄に一部介助を要する。退院後は服薬管理と買い物を家族が代行予定であり、本人の遂行能力と必要な支援方法をLawton IADLの項目に沿って追加確認する。」

ADL・IADL記録シートPDF

ADLとIADLの評価結果、実施条件、家族代行、再評価時の変化をA4用紙1枚に整理できます。

このPDFは各尺度の設問や判定文を転載するものではありません。使用した尺度の結果と、点数だけでは伝わりにくい条件差をまとめるための記録シートです。初回評価、退院前カンファレンス、再評価時の情報整理に使用できます。

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ADL・IADL評価でよくある失敗

よくある失敗は、尺度名から評価目的を決めること、合計点だけで共有すること、非実施を能力低下と判断することです。

ADL・IADL評価で起きやすい失敗と修正方法
失敗 問題 修正方法
病棟だからFIM、在宅だからLawtonと決める 評価したい内容と尺度の焦点がずれる 何を説明したいかを先に決める
BIとFIMを「できる/している」だけで分ける 項目構成や援助量、認知項目の違いが伝わらない 基本ADLの自立度か、身体・認知面を含む必要援助量かで整理する
LawtonとFAIを同じIADL尺度として扱う 生活工程の自立度と活動頻度が混ざる 自立度を知りたいのか、最近の実施頻度を知りたいのか分ける
合計点だけを共有する 介助方法や退院後の支援内容を決められない 介助が必要な項目と、その条件を1行追加する
家族代行を本人の能力低下と判断する 役割分担と能力を区別できない 本人が実施した場合の遂行能力と安全性を別に確認する

よくある質問

質問をタップすると回答が開きます。

ADLとIADLの違いを簡単に説明するとどうなりますか?

ADLは食事、着替え、トイレ、移動などの身の回りの基本動作です。IADLは買い物、服薬管理、金銭管理、調理、交通手段など、地域で生活を続けるための複雑な活動です。「ADLは生活の土台、IADLは生活を回すための活動」と説明すると伝わりやすくなります。

ADLとIADLはどちらから評価しますか?

一律の順序ではなく、安全と退院支援で優先度が高い問題から確認します。移動や排泄に転倒・介助上の問題があればADLを優先します。独居、服薬、買い物、通院手段が退院の論点なら、入院早期からIADLの情報も集めます。

BIとFIMはどちらを使えばよいですか?

基本ADLの全体像を比較的簡潔に把握したい場合はBIが候補です。身体・認知項目を含め、日常場面で必要な援助量を詳しく共有したい場合はFIMが候補になります。施設の運用、評価目的、採点者の教育状況も含めて決めます。

Lawton IADLとFAIはどう使い分けますか?

電話、買い物、服薬、金銭管理など、生活工程の自立度を確認したい場合はLawton IADLが候補です。家事、屋外活動、余暇・仕事などを最近どの程度行っているか確認したい場合はFAIが候補です。

家族がすべて代行している場合は「できない」と判断しますか?

代行している事実だけでは、本人ができないとは判断できません。本人が行った場合の手順、安全性、認知面、身体能力を確認し、能力低下、役割分担、本人の希望、環境上の制約を分けて記録します。

記録シートPDFはどのような場面で使えますか?

初回評価のまとめ、退院前カンファレンス、家族代行の整理、再評価時の条件比較に使用できます。尺度名と点数だけでなく、介助が必要な場面、実施していない理由、退院後の支援方法を1枚にまとめる目的で使用してください。

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参考文献

  1. Mahoney FI, Barthel DW. Functional evaluation: the Barthel Index. Md State Med J. 1965;14:61-65. PubMed
  2. Keith RA, Granger CV, Hamilton BB, Sherwin FS. The Functional Independence Measure: a new tool for rehabilitation. Adv Clin Rehabil. 1987;1:6-18. PubMed
  3. Lawton MP, Brody EM. Assessment of older people: self-maintaining and instrumental activities of daily living. Gerontologist. 1969;9(3 Pt 1):179-186. DOI
  4. Holbrook M, Skilbeck CE. An activities index for use with stroke patients. Age Ageing. 1983;12(2):166-170. DOI

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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