感覚検査の完全ガイド【手順・判定・記録】

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感覚検査とは?(本記事のねらい)

感覚検査は、表在・深部・複合の 3 系統を体系立てて確認し、機能障害の局在推定とリハ方針へつなげる基礎評価です。本ガイドは「順番・説明・判定・記録」を臨床で再現しやすい形でまとめました。新人の方でも 15–20 分で一連の流れを実装できます。

詳細なカットオフは施設の標準や一次情報を参照しつつ、まずは左右差・部位差・一貫性を重視して解釈します。末梢/中枢/小脳性などの鑑別は後半の所見パターン表を参照してください。

理学療法士のキャリアガイドを見る

感覚検査の詳細ガイド(各系統)

感覚の分類と評価原理(表在・深部・複合)

感覚は「表在感覚(触覚・痛覚・温度覚)」「深部感覚(位置覚・運動覚・振動覚)」「複合(立体覚・二点識別・数字書字覚など)」に大別されます。入力経路・中継核・皮質での統合が異なるため、系統ごとの陽性/陰性の組み合わせから病変局在の推定が可能になります。

臨床では「まず表在と深部をスクリーニング → 問題領域を複合で深掘り → SIAS 感覚や ADL( FIM )所見と統合」が基本線です。SIAS の体性感覚項目や、転倒・バランス関連の FSST と組み合わせて運用します。

実施準備(環境・説明・標準化)

1) 静かな環境・視覚遮蔽、2) 体位の安定、3) 十分な説明と同意、4) 練習試行(健常部位で)を徹底します。刺激は一定強度・一定時間で提示し、ランダム化とダミーを混ぜて反応の信頼性を担保します。

記録は部位ごと左右別に「正常/低下/消失」「遅延」「誤認」「異常感(異常知覚)」などの語彙で統一。再評価日・条件・検者を明記し、経時変化を追えるフォーマットを用います(下段の記録テンプレ参照)。

スクリーニングから詳細評価への流れ

  1. スクリーニング:触覚・痛覚・位置覚・振動覚を要所で簡易チェック
  2. 詳細化:低下領域があれば二点識別・立体覚・数字書字覚など複合へ
  3. 統合判断:筋緊張/痙縮(MAS/MTS)、バランス(FSST)、ADL(FIM 5 点の考え方)と合わせて解釈
  4. 方針化:安全性(転倒・褥瘡リスク等)と訓練計画へ落とし込み

代表的な検査項目と手順ダイジェスト

感覚検査の代表項目と実施要点(成人・ベッドサイド)
領域 項目 手順ダイジェスト 判定の着眼 備考
表在 触覚(綿球等) 視覚遮蔽下、ランダムに接触。「今・どこ」を即答させ、ダミーも混在。 左右差/遅延/部位特異。体部位地図の乱れに注意。 注意:皮膚病変・痛みが強い部位は回避。
表在 痛覚(ピンプリック) 安全先端で軽い刺刺激。「鋭い/鈍い」を弁別。ダミー含む。 鋭鈍弁別の誤認/遅延。過敏の有無も記載。 インフォームドコンセント徹底。
深部 位置覚・運動覚 末節骨を把持し最小移動で上/下を回答。関節ごとに数回。 誤答率・試行間の一貫性。近位化で補助戦略に注意。 SIAS 感覚とも整合確認。
深部 振動覚(音叉 128 Hz) 骨隆起に当て「感じる/消える」を報告。左右差と消失時点を比較。 遠位→近位の勾配。左右差の明確化。 寒冷・浮腫は閾値を変える。
複合 二点識別(2PD) 2 点と 1 点をランダム提示。最小弁別距離を推定。 左右差・部位差。連続正答数で信頼性担保。 標準値は部位で大きく異なる。
複合 立体覚(触覚対象認知) 硬貨などを触知し名称を回答。片手ずつ実施。 誤認/無反応/探索延長。半側空間無視に留意。 視覚代償は遮蔽で統制。
複合 数字書字覚(グラフィエステジア) 掌に数字を描記し読み上げを求める。 誤読の傾向・左右差・練習効果。 文化・慣れの影響に配慮。

所見の読み方(疾患別の典型パターン)

疾患/病変別に見やすい感覚パターンの例
病態 所見の傾向 臨床での注意
脳卒中(半球病変) 対側の表在/深部の混在低下、複合で顕在化。無視/失認の関与。 SIAS 感覚+注意障害の同定。ADL の安全性に直結。
脊髄病変 病変高位に応じた分節性パターン。温痛/触圧の解離も。 レベル同定と自律神経症状。起立性低血圧等に注意。
末梢神経障害 末梢神経支配域に一致。遠位優位のポリニューロパチーなど。 振動覚の遠位低下、足部皮膚保護・褥瘡/転倒対策へ。
小脳・感覚性運動失調 深部感覚の障害で協調不良・視覚代償依存。 閉眼での破綻・バランス検査(FSST 等)と統合判断。

記録テンプレート(貼って使える最小構成)

感覚検査 記録シート(抜粋)
項目 所見/スコア 備考
触覚 正常/低下/消失 正常/低下/消失 遅延/誤認 など 部位、再現性、痛み
位置覚 ○/△/× ○/△/× 誤答率 xx% 関節名・肢位
二点識別 指腹:推定 xx mm 指腹:推定 xx mm 左右差あり/なし 基準・方法を明記

よくあるミスと回避のコツ(OK/NG 早見)

実施の質を上げるための OK/NG
場面 OK(推奨) NG(避ける) 理由/メモ
刺激提示 一定強度・一定時間・ランダム化 リズミカルで予測可能 期待/学習バイアスを低減
説明 短く具体的・練習試行あり 抽象的で冗長 理解不足が偽陽性/偽陰性に
記録 語彙統一・左右/部位/再評価日 自由記載のみ 他職種間で共有困難

関連評価との統合(内部リンク)

感覚検査の詳細ガイド: 表在感覚深部感覚複合感覚

関連: FSSTFIM 5 点の考え方疼痛評価スケールSIAS

参考文献(一次情報は DOI/PubMed を後日追記)

  • 標準的神経学的検査の教科書・ガイドライン
  • 二点識別・振動覚など各検査の妥当性/信頼性研究
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