TCT の歩行予後予測|落とし穴と外さない 3 分チェック

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TCT の落とし穴:歩行予後を点数だけで決めない

Trunk Control Test( TCT )は、体幹コントロールを短時間で把握でき、歩行の見立てにも使われます。ですが臨床で外しやすいのは「点数が高い=歩ける」「点数が低い=歩けない」と点数を結論にしてしまうことです。

本記事では、TCT を歩行予後に使うときの典型的な外れ方(落とし穴)と、外さないための確認手順(チェック表)を“そのまま運用できる形”に固定します。

結論:TCT は「材料」。歩行予後の“判定”にしない

歩行は、体幹だけでなく、下肢運動・感覚・注意・疼痛・持久力・装具適合など複数要素の合成です。TCT は有用ですが、点数はあくまで材料であり、単独の判定にすると外れます。

目安(カットオフ)を参照する場合でも、「その点数に見える理由」「歩行を止めている非体幹要因」を同時に確認すると、誤判定が減ります。

現場の詰まりどころ:なぜ「高得点でも歩けない/低得点でも伸びる」のか

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よくある失敗(落とし穴)へ回避の手順(チェック表)へ関連:TCT の採点・記録(総論)

詰まり 1:TCT が“できたように見える”代償が混ざる

上肢で引く、頸部や肩帯で補う、支持基底面を広げるなど、代償が強いほど「点数は取れるのに、歩行に必要な体幹制御が育っていない」ことがあります。点数だけで見立てると、ここで外れます。

詰まり 2:天井効果で「高得点=同じ」に見える

TCT は簡便な一方で、回復が進むほど点数差がつきにくくなる局面があります。高得点帯で“伸びしろ”を読み違えると、歩行練習量や介助設定の意思決定がぶれます。

詰まり 3:歩行を止めているのは「非体幹要因」だった

痛み、感覚障害、注意障害、恐怖、持久力不足、装具不適合、循環・呼吸の制約などがボトルネックだと、体幹が整っていても歩行は進みません。TCT の点数を見た後に、止めている要因を 1 つずつ潰す視点が必要です。

よくある失敗(落とし穴) 5 つ

「点数は高いのに歩けない」「点数が低いのに伸びる」を生む典型パターンです。該当があるほど、点数の解釈を“予後”ではなく“課題”に寄せます。

TCT を歩行予後に当てたときの落とし穴(成人・脳卒中想定)
落とし穴 起きやすい状況 誤判定の形 回避ポイント
代償が強い 上肢牽引・肩帯固定・頸部過緊張 高得点でも歩行が不安定 「どうやってできたか」を観察して記録
天井効果 高得点帯で差がつかない 伸びしろを見誤る 質(左右差・速度・支持戦略)を併記
測定タイミング不一致 急性期の不安定/回復期の介入量差 同点でも予後が割れる 「時点」と「介入量」を必ず一緒に記録
非体幹要因がボトルネック 疼痛・感覚・注意・持久力・装具 体幹は良いのに歩けない 歩行を止めている要因を 1 つ決めて潰す
“点数”を介助設定に直結 安全策で介助固定/練習量が減る 予後が自己成就する 安全管理は別枠で、練習量を設計

外さないための回避手順:3 分チェック(運用固定)

やることはシンプルです。TCT の点数を見たら、次の順で「外す原因」を最短で拾います。チーム共有にも使えるように表で固定します。

TCT を歩行予後に使うときの回避チェック(記録にそのまま転記)
手順 確認すること 記録の型(例) 次の打ち手
1 「できた理由」=代償の有無 上肢牽引:あり/なし、頸部過緊張:あり/なし 代償を 1 つ減らす課題設定
2 左右差(支持戦略) 支持:右>左、体幹回旋:過多/不足 左右差に直結する練習を 1 本
3 非体幹要因(歩行のブレーキ) 疼痛/感覚/注意/持久力/装具:最優先は ○○ ブレーキ要因を潰す介入を優先

症例ミニケース:TCT が外れた 2 パターン

TCT の点数は材料ですが、外れやすいパターンはだいたい決まっています。ここでは「高得点でも歩けない」「低得点でも伸びる」を 1 例ずつに絞って、見立てのズレを防ぐ視点を固定します。

ケース 1:TCT 高得点でも歩けない(ブレーキは非体幹要因)

  • 状況:座位は安定し、TCT は高得点帯。起立はできるが、歩行は進まない。
  • つまずき:「点数が高い=歩けるはず」で練習が前に進まず、介助設定も固定しがち。
  • 見立て直し:TCT の後に「歩行を止めている要因」を 1 つだけ決めて潰す(例:疼痛/感覚/注意/持久力/装具)。
  • 次の打ち手:最優先ブレーキを 1 つに絞り、歩行を止めない条件(速度・休憩・装具・痛み対策)を先に整える。

ケース 2:TCT 低得点でも伸びる(介入量と課題設定がハマる)

  • 状況:初期は TCT 低得点帯。立ち上がりや移乗が不安定で、歩行は介助量が多い。
  • つまずき:「低得点=歩行は厳しい」で練習量が減り、予後が自己成就しやすい。
  • 見立て直し:点数を“予後”ではなく“課題リスト”に変換し、代償を 1 つ減らす課題に落とす。
  • 次の打ち手:安全管理は別枠で担保し、練習量を確保(短時間×回数)。左右差と代償の減らし方を固定して追跡する。

測定タイミング別:TCT の読み替え(表 1 枚で固定)

TCT は同じ点数でも「測った時点」と「介入量」で意味が変わります。点数を結論にせず、読み替えルールを 1 枚に固定します。

TCT の読み替え(時点×意思決定)
時点 点数の見え方 外れやすい理由 運用のコツ( 1 行)
急性期〜早期 日内変動が大きい 疲労・疼痛・注意・環境でブレる 点数より「代償」と「ブレーキ要因」をセットで記録
回復期(介入量が増える) 点数が伸びやすい 練習量の差で予後が割れる 点数+介助量+練習量(頻度)を同じ枠で追跡
高得点帯 差がつきにくい 天井効果で伸びしろを誤る 左右差・質(戦略)を 1 つだけ併記して固定

よくある質問(FAQ)

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Q1. TCT の点数は「歩ける/歩けない」を決められますか?

決められません。研究では歩行予測の目安(カットオフ)が示されますが、臨床では代償・天井効果・非体幹要因で外れます。本記事のチェックで「外す原因」を先に拾う運用が安全です。

Q2. 高得点なのに歩けないとき、最初に疑うべきは?

①代償(上肢牽引・肩帯固定など)②非体幹要因(疼痛・感覚・注意・持久力・装具)の順で疑うと速いです。「歩行を止めているブレーキ」を 1 つ決めて潰すと進みます。

Q3. 低得点でも伸びるケースの共通点は?

回復余地があり、介入量を確保でき、ブレーキ要因(痛み・恐怖・装具不適合など)を早期に減らせるケースです。点数を“予後”ではなく“課題リスト”に変換して運用します。

Q4. 天井効果が気になるとき、何を一緒に記録すればいい?

左右差、支持戦略、速度、介助量、疲労(持久力)の 1 つを併記すると「高得点=同じ」に見える問題が減ります。運用は増やしすぎず、1 つだけ固定がおすすめです。

次の一手

教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。

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参考文献

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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