臨床実習・新人教育ハブ|受け入れ側の「型」を EPA × mini-CEX × OMP で固定する
教育がしんどい原因は「教える内容」より「運用が属人化していること」になりがちです。迷いを減らす“型”と、働き方の選択肢も一緒に整えておくと長期でラクになります。 PT のキャリア設計もまとめて整える(学び方の流れ)
臨床実習( CCS )や新人教育は、運用が “人” に依存すると、学習者の成長にも、指導者の負担にもブレが出やすいです。本ハブは、臨床教育を ①任せ方( EPA )→②直接観察( mini-CEX )→③短時間フィードバック( OMP ) の 3 点で整理し、「忙しい日でも回る設計」に落とし込みます。
まずは 短時間×反復 の仕組みを軸に、教育を “気合い” から “運用” に寄せます。現場で詰まりやすいポイントは先に潰し、必要な小記事(チェック・ルーブリック等)はロードマップで増築します。
想定読者
- 実習指導( SV )を任されたが、指導の型がなく毎回手探り
- 新人教育が場当たりで、フィードバックが属人化している
- 学習者の “臨床推論” を引き出したいが、時間が足りない
- EPA や直接観察を入れたいが、導入手順が分からない
このハブで得られること
- 「任せる範囲( EPA )」を分解し、監督レベルでブレを減らす
- 「直接観察( mini-CEX )」で、見た事実から育成につなげる
- 「 1 分指導( OMP )」で、忙しい場面でもフィードバックを型化する
- “詰まりどころ” を先回りし、教育を属人化させない最小ルールを決める
最短導線(まず読む 4 本)
- EPA( Entrustable Professional Activities )とは?実習の「任せ方」を 3 段階で型化
- mini-CEX( CEX )とは?やり方と評価のコツ(臨床実習・新人指導)
- OMP( One-minute Preceptor )とは? 1 分指導の 5 手順とコツ
- 臨床参加型実習( CCS )とは?受け入れ側の回し方( PT/OT/ST )
現場の詰まりどころ(よくある失敗と立て直し)
教育が回らない理由は、たいてい “忙しさ” ではなく「判断の連続が増え、基準が共有されていないこと」です。下の表は、まず最初に潰すと効く “詰まりどころ” を、修正の 1 手に落とした早見です。
| 詰まり | 起きがちなこと | すぐ効く修正 | まず読む |
|---|---|---|---|
| 任せ方が日替わり | 「任せたつもり」「危ないから戻す」の往復で疲弊 | 監督レベルを 3 段階(見学/共同/監督下で実施)に固定し、今日の段階を 1 行で宣言 | EPA |
| 観察が曖昧で “印象評価” | 点数や感想だけが残り、次回の行動が変わらない | 観察ポイントを 3 点に絞り、良い点 1/修正 1/次回 1 に固定 | mini-CEX |
| FB が長くなる | 論点が増え、学習者が動けない/指導者も疲れる | OMP の ④⑤ を “行動 1 つ” に絞る(短くても次回が明確なら伸びる) | OMP |
| 前提(安全・同意・守秘)が揃わない | 現場で揉める/指導が止まる/学習者が萎縮 | 受け入れ前の “最低限ルール” を 5 分で決め、紙 1 枚で共有 | CCS |
困りごと別:おすすめ記事の早見表
表は横にスクロールできます(スマホ可)。「まず読む → 次に足す」の順で増やすと、運用が崩れにくいです。
| よくある悩み | まず読む | 次に足す | 現場で決めること |
|---|---|---|---|
| どこまで任せて良いか曖昧 | EPA(任せ方) | mini-CEX(観察) | 監督レベルの言葉( 3 段階)と、中止基準の書き方 |
| 評価はしているが育たない | mini-CEX(短時間×反復) | OMP(短い FB ) | 観察テーマを “ 1 つ” に固定するルール |
| FB が感想になる/抽象的 | OMP | mini-CEX | 良い点 1/修正 1/次回 1 の固定フォーマット |
| CCS を導入したいが回らない | CCS(全体像) | EPA / mini-CEX | 「 1 日の標準フロー」と、観察の入れどころ( 1 日 1 回など) |
運用の基本( 5 分で整う最小ルール)
教材よりも “運用の最小ルール” が揃っているかで、教育の再現性は大きく変わります。導入時にこれだけ決めると詰まりにくいです。
| 項目 | 決めること | 現場で起きる詰まり | 先回りの一手 |
|---|---|---|---|
| 任せ方 | 監督レベル(見学/共同/監督下で実施)を共通語にする | 「任せたつもり」「危ないから戻す」の往復 | EPA で業務を分解して段階化 |
| 観察 | 短時間の直接観察を “反復” する(週 1 回でも可) | 観察が曖昧で、評価が印象になる | mini-CEX で観察→コメントの型を固定 |
| フィードバック | 良い点 1 つ+修正 1 つ(行動で)+次回 1 つに固定 | 改善点が多すぎて、次回行動が変わらない | OMP の ④⑤ を “行動 1 つ” に絞る |
| 記録 | 判断/根拠/次回の一手を短文で残す(点数だけにしない) | 点数だけが残り、次につながらない | 「良かった点 1/次回 1」を 1 行で残す |
| 安全と前提 | 同意・守秘・感染の “受け入れ前ルール” を紙 1 枚で共有 | 前提が揃わず、現場で揉める | CCS の受け入れ前ポイントから最小化 |
増築ロードマップ(次に作る小記事)
「まず回す → 回ってから増やす」が一番ラクです。おすすめの順番は、① EPA → ② mini-CEX → ③ OMP(ここまで公開済み)→ ④ 受け入れ前チェック → ⑤ 簡易ルーブリックです。
- 受け入れ前チェック(同意・守秘・感染・中止基準・報告先の最小セット)
- 簡易ルーブリック(監督レベルで評価をそろえる:合格基準と例)
- 観察テーマのライブラリ( PT/OT/ST 共通で使える “ 1 テーマ 10 分 ” )
- 記録テンプレ(良い点 1/次回 1 を 1 行で残す型)
関連ハブ(迷ったらここへ)
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. まず何から始めるのが一番失敗しにくいですか?
最初は「短時間の直接観察を反復し、良い点 1 つ+修正 1 つ+次回 1 つ」を返す仕組みを回すのが失敗しにくいです。観察とフィードバックの型ができると、EPA やルーブリックの導入もスムーズになります。
Q2. 指導者間で基準がズレます
ズレは “悪いこと” ではなく、言語化のチャンスです。まずは 1 つの場面(例:歩行の安全確認)に絞り、監督レベル(任せ方)と、観察ポイント(良い例/修正例)を 5 分だけ擦り合わせるとブレが減ります。
Q3. フィードバックが長くなってしまいます
長くなる理由の多くは「論点が複数」だからです。“今日見るのは 1 つ” に絞り、良い点 1 つ+修正 1 つだけにします。短くても “次回の一手” が明確なら学習効果は落ちにくいです。
Q4. mini-CEX は採点よりコメント重視で良いですか?
はい。mini-CEX は学習を促す形成的評価として使われることが多く、点数だけより「次に変えられる行動」が明確なコメントが有効です。点数は “現在地の目安” として添える運用が無難です。
次の一手(運用を整える → 共有の型を作る → 環境の詰まりも点検)
環境要因(教育体制・記録文化・人員・標準化)まで含めて点検するなら、無料のチェックシートを 1 回使うと早いです。
学び方の流れ(迷いの整理)を先に押さえたい方は PT のキャリアガイド(学び方の流れ) も参考になります。
参考文献
- ten Cate O. Entrustability of professional activities and competency-based training. Med Educ. 2005;39(12):1176-1177. DOI: 10.1111/j.1365-2929.2005.02341.x
- Norcini JJ, Blank LL, Duffy FD, Fortna GS. The mini-CEX: a method for assessing clinical skills. Ann Intern Med. 2003;138(6):476-481. DOI: 10.7326/0003-4819-138-6-200303180-00012(PubMed: PMID 12639081)
- Neher JO, Gordon KC, Meyer B, Stevens N. A five-step “microskills” model of clinical teaching. J Am Board Fam Pract. 1992;5(4):419-424.(PubMed: PMID 1496899)
- Norcini J, Burch V. Workplace-based assessment as an educational tool: AMEE Guide No. 31. Med Teach. 2007;29(9):855-871. DOI: 10.1080/01421590701775453(PubMed: PMID 18158655)
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


