臨床参加型実習(クリニカルクラークシップ)を “回る仕組み” にするハブ
臨床参加型実習(クリニカルクラークシップ)は、運用が “人” に依存すると、学習者の成長にも、指導者の負担にもブレが出やすいです。このハブでは、臨床教育を「任せ方」「観察」「フィードバック」の 3 点で整理し、現場で再現できる導線にまとめます。
まずは mini-CEX のような “短時間×反復” の仕組みを軸に、教育を属人化させない設計に寄せていきます。
想定読者
- 実習指導(SV)を任されたが、指導の型がなく毎回手探り
- 新人教育が場当たりで、フィードバックが属人化している
- 学習者の “臨床推論” を引き出したいが、時間が足りない
- EPA や直接観察を取り入れたいが、導入手順が分からない
このハブで得られること
- 「任せる範囲( EPA )」を分解し、監督レベルでブレを減らす
- 「直接観察( mini-CEX )」で、見た事実から育成につなげる
- 「 1 分指導( OMP )」で、忙しい場面でもフィードバックを型化する
最短導線(まず読む 3 本)
- EPA(任せられる業務)を 3 段階で設計する
- mini-CEX(短時間の直接観察+即時フィードバック)を回す
- OMP( One-minute Preceptor )で 1 分フィードバックを型化する
困りごと別:おすすめ記事の早見表
表は横にスクロールできます(スマホ可)。
| よくある悩み | 起きがちなこと | まず読む | 次に足す |
|---|---|---|---|
| 任せる範囲が曖昧 | 「どこまで任せて良いか」が人で変わり、事故・不安が増える | EPA | 簡易ルーブリック(準備中) |
| フィードバックが属人化する | 指導が “感想” になり、次回行動が変わらない | mini-CEX / OMP | 評価の言語化(準備中) |
| 評価はしているが育たない | 点数だけが残り、改善の作戦が立たない | mini-CEX | 記録テンプレ(準備中) |
| 安全配慮の基準がぶれる | 中止基準・同意・守秘・感染など、前提が揃っていない | 受け入れ前チェック(準備中) | 運用ルール整備(準備中) |
次に作る小記事(増築ロードマップ)
おすすめの作成順は、① EPA → ② mini-CEX → ③ OMP(ここまで公開済み)→ ④ 受け入れ前チェック → ⑤ ルーブリックです。
- EPA の作り方(任せられる業務を 3 段階で設計)
- mini-CEX の回し方( 5〜10 分の観察 → 評価 → 即時フィードバック)
- OMP( One-minute Preceptor )の使い方( 5 つのマイクロスキル)
- 同意・守秘・感染の「受け入れ前チェック」運用
- 簡易ルーブリックの作り方(監督レベルで評価をそろえる)
運用の基本( 5 分で整う最小ルール)
臨床教育が回るかどうかは、教材よりも “運用の最小ルール” が揃っているかで決まることが多いです。ここでは導入時に決めておくと詰まりにくい要点をまとめます。
| 項目 | 決めること | 現場で起きる詰まり | 先回りの一手 |
|---|---|---|---|
| 任せ方 | 監督レベル(見学/共同/監督下で実施)を言語化 | 「任せたつもり」「危ないから戻す」の往復 | EPA で業務を分解して段階化 |
| 観察 | 短時間の直接観察を “反復” する | 観察が曖昧で、評価が印象になる | mini-CEX で観察→コメントの型を固定 |
| フィードバック | 良い点 1 つ+修正 1 つ(行動で) | 改善点が多すぎて、次回行動が変わらない | OMP の ④⑤ を “行動 1 つ” に絞る |
| 記録 | 判断/根拠/次回の一手を短文で残す | 点数だけが残り、次につながらない | 1 行でも “次回の一手” を残す |
| 安全と前提 | 同意・守秘・感染の受け入れ前ルール | 前提が揃わず、現場で揉める | 受け入れ前チェックを先に作る |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. まず何から始めるのが一番失敗しにくいですか?
A. いきなり “評価表を作る” より、まずは「短時間の直接観察を反復し、良い点 1 つ+修正 1 つを行動で返す」仕組みを回すのが失敗しにくいです。観察とフィードバックの型ができると、EPA やルーブリックの導入もスムーズになります。
Q2. 指導者間で基準がズレます
A. ズレは “悪いこと” ではなく、言語化のチャンスです。監督レベル(任せ方)と、観察時に見るポイント(良い行動の例・修正の例)を 5 分だけ擦り合わせるだけでもブレが減ります。まずは 1 つの場面(例:歩行の安全確認)に絞って揃えるのがおすすめです。
Q3. フィードバックが長くなってしまいます
A. 長くなる理由の多くは「論点が複数」だからです。まず “今日見るのは 1 つ” に絞り、良い点 1 つ+修正 1 つだけにします。短くても “次回の一手” が明確なら学習効果は落ちにくいです。
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下
おわりに
臨床教育は「任せ方を段階化 → 短時間で観察 → その場でフィードバック → 次回に接続」というリズムができると、現場の負担を増やさずに質が上がります。まずは EPA / mini-CEX / OMP の 3 本を軸に、 “回る仕組み” に寄せていきましょう。
面談準備チェックと職場評価シートは /mynavi-medical/#download にまとめています。


