腓骨神経麻痺(腓骨頭)の評価とリハビリ|装具・再評価まで

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腓骨神経麻痺(腓骨頭)の評価とリハ|まず何を確認するか

腓骨頭周囲の腓骨神経麻痺では、足関節背屈・足趾伸展・足部外反の筋力低下によって下垂足を呈し、足背の感覚障害や歩行時のつまずきを伴うことがあります。リハでは、背屈筋力だけを見るのではなく、原因となる圧迫、運動・感覚分布、足関節可動域、歩行への影響をまとめて評価することが重要です。

この記事では、腓骨頭周囲の総腓骨神経障害を疑った、または診断されたあとに、PTが初期評価→圧迫要因の修正→ROM・装具・運動療法・歩行練習→再評価→医師への再共有までどうつなげるかを整理します。

結論:圧迫・神経分布・歩行を確認し、同じ指標で経過を追う

腓骨頭周囲の腓骨神経麻痺では、最初に発症経過と圧迫要因、足関節背屈・足趾伸展・足部外反、感覚分布、歩行への影響を確認します。腓骨頭部への圧迫が考えられる場合は原因を取り除き、転倒リスクや足関節拘縮を防ぎながら、必要に応じてAFOなどで歩行を補います。

一方、下垂足だけで腓骨神経麻痺と決めることはできません。足部内反まで低下する、症状分布が合わない、腰殿部症状を伴う、筋力低下が進行するなどの場合は、L5神経根障害や坐骨神経障害、中枢性病変などを含めて再評価します。

腓骨神経麻痺(腓骨頭)の評価とリハの流れ
腓骨神経麻痺(腓骨頭)の評価とリハの流れ。初期評価から圧迫要因の修正、機能対応、再評価、医師への再共有までの実務上の流れを整理した図です。

初期評価は病歴・運動・感覚・歩行をセットで確認する

初期評価では、単一の筋や感覚点だけで判断せず、どの動きが低下し、どの感覚領域が障害され、歩行へどう影響しているかをまとめます。特に足部内反は腓骨神経支配ではないため、L5神経根障害などを考える際の補助所見になります。

腓骨頭周囲の腓骨神経麻痺で確認する初期評価
評価 確認すること 判断につなげる視点
発症経過 急性・徐々に出現、外傷、手術、長時間同一肢位 圧迫・牽引・外傷などの原因候補を整理する
圧迫要因 脚組み、腓骨頭部への持続圧、ギプス・装具、急な体重減少 修正可能な原因が残っていないか確認する
足関節背屈 前脛骨筋(TA)の随意収縮・筋力 下垂足の程度と経過を追う
足趾伸展 長母趾伸筋(EHL)など 深腓骨神経領域の運動機能を確認する
足部外反 腓骨筋群の筋力 浅腓骨神経を含む総腓骨神経領域を確認する
足部内反 後脛骨筋など 腓骨神経単独で説明できるかを考える
感覚 下腿外側、足背、第1〜2趾間、必要に応じて足底 感覚障害の分布が運動所見と一致するか確認する
歩行 足尖クリアランス、初期接地、つまずき、代償 歩行補助や装具が必要か判断する

ここでは「腓骨頭周囲の腓骨神経麻痺としてリハをどう進めるか」に必要な範囲を扱います。深腓骨神経・浅腓骨神経・総腓骨神経のどこで障害されているかを詳しく絞り込む場合は、記事末の局在推定記事へ進んでください。

腓骨頭への圧迫があれば、運動療法より先に原因を見直す

総腓骨神経は腓骨頭周囲で皮膚に近い位置を走行するため、外部からの圧迫を受けやすい部位です。圧迫性の障害が考えられる場合は、運動療法だけを追加するのではなく、神経へ繰り返し負荷を加えている姿勢や環境が残っていないかを確認します。

腓骨頭への圧迫要因と確認ポイント
場面 確認すること 対応例
座位 長時間の脚組み、膝外側を椅子や物へ押しつけていないか 座位姿勢と環境を調整する
臥位 腓骨頭部がベッドやクッションへ持続的に当たっていないか ポジショニングと除圧を見直す
ギプス・装具 腓骨頭周囲の圧迫、発赤、疼痛がないか 適合を確認し、必要に応じて調整を共有する
生活背景 長時間同一姿勢、しゃがみ込み、急な体重減少など 実際に圧迫が生じる場面を具体化する

ただし、圧迫歴が見つからないからといって評価を終えるわけではありません。外傷、腫瘤、より近位の末梢神経障害、神経根障害など、別の原因が隠れている可能性も考えます。

足関節ROMは下垂足の回復とは別に管理する

背屈筋力が低下した状態が続くと、足関節が底屈位になりやすく、歩行だけでなく装具適合にも影響します。そのため、神経機能の回復を待つだけではなく、他動背屈可動域と底屈筋群の短縮を継続して確認します。

ROM練習では「腓骨神経を治すために伸ばす」という位置づけではなく、足関節可動域を保ち、歩行や装具使用に必要な条件を維持することが目的です。強い疼痛や新たな神経症状が出る方法を無理に継続しません。

リハは一律の順番ではなく、残っている問題から選ぶ

腓骨神経麻痺に対するリハは、すべての症例へ同じメニューを順番に行うものではありません。原因、麻痺の程度、残存する随意収縮、関節可動域、歩行能力に応じて、必要な介入を選びます。

腓骨神経麻痺で検討する主なリハ介入
介入 目的 再評価すること
圧迫要因の修正 反復する外圧を減らす 原因姿勢、局所所見、症状の変化
足関節ROM管理 背屈制限・底屈拘縮を防ぐ 他動背屈角度、筋短縮
装具・歩行補助 足尖クリアランスと歩行安全性を確保する つまずき、初期接地、歩行距離、介助量
運動療法 残存する随意収縮を用いて運動機能を維持・改善する 背屈、足趾伸展、外反の変化と代償
歩行練習 実生活で必要な歩行能力へつなげる 直線、方向転換、段差、屋外、疲労時の安定性

背屈筋力が不十分なまま歩行練習量だけを増やすことが目的ではありません。足尖接触や転倒リスクがある場合は、安全に歩行を成立させるための補助を組み合わせたうえで練習します。

AFOは筋力値だけでなく、歩行中に必要な機能から考える

AFOを検討するときは、「背屈筋力が何点なら装具」という単一基準ではなく、遊脚期に足尖クリアランスを確保できるか、初期接地をコントロールできるか、足部や膝関節まで制御する必要があるかを確認します。

単純な背屈補助で十分なケースもあれば、足部内外反や立脚期の安定性まで考える必要があるケースもあります。装具装着後は、つまずきの有無だけでなく、歩行パターンや歩行距離、疲労、装具の当たりも再評価します。

歩行は「下垂足あり」ではなく、どこで問題が出るかを記録する

歩行では、下垂足の有無だけでなく、どの相・どの環境で足尖が引っかかるかを確認します。平地直線歩行では問題がなくても、方向転換、段差、歩行距離の延長、疲労によって足尖接触が出現することがあります。

腓骨神経麻痺での歩行所見の記録例
曖昧な記録 再評価しやすい記録
下垂足あり 右遊脚中期に足尖接触あり。股関節屈曲増大で代償
つまずきあり 病棟50m歩行で右足尖接触2回。方向転換時に増加
AFOで改善 AFO装着時は足尖接触なし。初期接地は前足部接地から踵接地へ変化

初回評価と同じ歩行条件で比較できるようにしておくと、装具や運動療法による変化だけでなく、神経機能の回復に伴う変化も追いやすくなります。

再評価は筋力・感覚・ROM・歩行・圧迫要因を同じ条件で追う

腓骨神経麻痺の経過観察では、背屈筋力だけを追うのではなく、初回に確認した項目を同じ条件で再評価します。回復速度は原因や神経損傷の程度によって異なるため、「何週間で治る」と一律に判断するより、どの機能がどの方向へ変化しているかを記録します。

腓骨神経麻痺の再評価で追う項目
項目 追う変化 記録例
運動 背屈・足趾伸展・外反の随意性と筋力 TA 2→3、EHL 2→2、外反 3→3
感覚 足背・第1〜2趾間などの分布と左右差 第1〜2趾間の触覚低下は継続
ROM 足関節他動背屈、底屈筋群の短縮 膝伸展位で背屈0°→5°
歩行 足尖接触、初期接地、代償、歩行距離 50mで足尖接触2回→0回
圧迫要因 原因となった姿勢・環境を修正できているか 脚組みなし、装具の腓骨頭部圧迫なし

神経伝導検査や針筋電図は、障害部位や神経障害の性質、予後を評価する補助となります。PT側で検査時期を一律に決めるのではなく、診断や回復経過に応じて医師へ臨床所見を共有します。

進行・外傷・腫瘤疑い・分布不一致は早めに医師へ再共有する

腓骨頭への圧迫歴があっても、すべての下垂足を圧迫性腓骨神経麻痺として経過観察するわけではありません。特に、筋力低下が進行する、外傷後に高度の麻痺がある、腫瘤や腫脹を疑う、所見が腓骨神経分布だけでは説明できない、期待した方向への回復がみられない場合は、診断や追加検査について医師へ再共有します。

日本整形外科学会では、原因が明らかでないものや回復の可能性があるものでは保存的治療を行い、約3か月経過しても回復しない場合や麻痺が進行する場合には手術が必要となることがあると説明しています。ただし、これはPTが3か月まで再共有を待つという意味ではありません。進行例、外傷、腫瘤疑いなどはより早い段階での医学的評価が必要です。

また、保存療法と手術の最適な切り替え時期については十分に確立されていません。2026年に公表された無作為化比較試験も症例数が少ないまま早期終了しており、治療方針は原因、重症度、電気生理学的所見、画像所見、回復経過を含めて個別に判断する必要があります。

医師へ共有するときは、「腓骨神経麻痺だと思います」だけでなく、発症経過、圧迫・外傷歴、背屈・足趾伸展・外反、感覚分布、歩行所見、初回からの変化まで整理します。

圧迫性では、原因となった生活場面まで修正する

圧迫性の腓骨神経麻痺が考えられる場合は、「腓骨頭を圧迫しないでください」という説明だけで終わらせず、患者ごとに実際の生活場面へ置き換えます。

  • 長時間、脚を組み続けていないか
  • 椅子やベッドで膝外側が硬い場所へ当たっていないか
  • 同じ姿勢を長時間続けていないか
  • ギプス・装具・サポーターが腓骨頭周囲へ当たっていないか
  • 皮膚の発赤や疼痛を放置していないか

再評価では、筋力や感覚の変化だけでなく、原因となった圧迫場面を実際に修正できているかまで確認します。

よくある質問

Q1. 腓骨神経麻痺では背屈だけ評価すればよいですか?

背屈だけでは十分ではありません。足趾伸展、足部外反、感覚分布を合わせて確認します。さらに足部内反など、腓骨神経支配ではないL5領域の筋も確認すると、腓骨神経単独の障害で説明できるかを考えやすくなります。

Q2. 腓骨神経麻痺はどのくらいで回復しますか?

原因、圧迫や外傷の程度、神経障害の性質によって異なるため、一律の回復期間では判断できません。筋力・感覚・ROM・歩行を継続して追い、回復経過が乏しい場合や症状が進行する場合は医師へ再共有します。

Q3. 腓骨神経麻痺とL5神経根障害はどう見分けますか?

腓骨神経麻痺では背屈・足趾伸展・外反の低下が中心となりますが、L5神経根障害では足部内反など腓骨神経以外が支配するL5筋にも筋力低下がみられることがあります。腰殿部症状、感覚分布、反射、他筋の所見を含めて判断します。詳しい比較は下垂足は腓骨神経麻痺かL5神経根障害かで整理しています。

次の一手

腓骨神経麻痺として評価を進めたあとは、現在迷っている内容に合わせて次の記事へ進みます。


参考文献

  1. 日本整形外科学会. 腓骨神経麻痺. 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる.
  2. Benstead TJ. Fibular (peroneal) neuropathy. Handb Clin Neurol. 2024;201:149-164. doi:10.1016/B978-0-323-90108-6.00008-9.
  3. Oosterbos C, Decramer T, Rummens S, et al. Evidence in peroneal nerve entrapment: a scoping review. Eur J Neurol. 2022;29(2):665-679. doi:10.1111/ene.15145.
  4. Oosterbos C, Dubuisson A, Weyns F, et al. A comparison of conservative versus surgical treatment in patients with foot drop due to peroneal nerve entrapment: results of a prematurely terminated randomized controlled trial. Brain Spine. 2026;6:106160. doi:10.1016/j.bas.2026.106160.
  5. Baima J, Krivickas L. Evaluation and treatment of peroneal neuropathy. Curr Rev Musculoskelet Med. 2008;1(2):147-153. doi:10.1007/s12178-008-9023-6.
  6. Marciniak C. Fibular (peroneal) neuropathy: electrodiagnostic features and clinical correlates. Phys Med Rehabil Clin N Am. 2013;24(1):121-137. doi:10.1016/j.pmr.2012.08.016.

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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