BESTest 系と FGA/FSST の選び方【記録シート付】

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BESTest 系と FGA/FSST は目的と時間で選ぶ

バランス・歩行の評価は、「有名な評価を毎回使う」よりも、いま決めたいこと使える時間から 1 本を選ぶ方が現場で回りやすくなります。BESTest 系、FGA、FSST はそれぞれ得意な場面が違うため、最初に役割を分けておくことが重要です。

この記事で答えるのは、BESTest/Mini-BESTest/Brief-BESTest/FGA/FSST のどれを先に使うかです。各評価の詳しい採点手順、カットオフ、記録用紙の使い方は子記事へ分け、このページでは PT / OT が臨床で迷いやすい「評価選択」と「次に足す評価」を決められる形に整理します。

まずは 1 本:目的別の選び方早見表

最初に決めるのは評価名ではなく、何を判断したいかです。短時間で全体像を拾うのか、動的バランスの要因を分けるのか、歩行課題を抽出するのかで、主役にする評価は変わります。

BESTest系の選び方を目的別に整理した図版。全体像を見るならBrief-BESTest、要因を分けるならMini-BESTest、歩行や切り返しを見るならFGAまたはFSST、詳しく見るならBESTest原版を選ぶ流れ。
図:BESTest 系・FGA・FSST を目的別に選ぶ考え方

※スマホでは表を左右にスクロールできます。

BESTest 系・FGA・FSST の目的別早見表(成人・一般臨床)
いま決めたいこと 先に選ぶ評価 向く場面 所要時間の目安 次にやること
短時間で全体像を拾う Brief-BESTest 外来・通所・病棟で、まず大きな崩れを拾いたい場面 約 10 分 失点したシステムを 1〜2 個に絞って介入する
どの要因で崩れるかを分ける Mini-BESTest 予測的姿勢調整、反応的姿勢制御、感覚条件、動的歩行を分けたい場面 約 10〜15 分 低下領域を介入目標に落とす
歩行課題の難所を拾う FGA 速度変化、頭部運動、方向転換、狭路、階段などで崩れる場面 約 10 分 難所に合わせて課題特異的練習を組む
狭い環境での切り返しを見る FSST 在宅・病棟で方向転換、跨ぎ、切り返しの安全性を見たい場面 数分 安全管理と実施条件を固定して経時比較する
時間をかけて 6 システムを詳しく分解する BESTest(原版) 研究、詳細評価、介入方針を細かく立てたい場面 長め 時間・器具・検査者の習熟を確認してから実施する
BBS 高得点でも不安が残る BBS と Mini-BESTest の比較 基本動作は保てるが、外乱・歩行・二重課題で崩れそうな場面 目的により調整 Mini-BESTest または FGA へ主役を移す

10 分で回す選択フロー:初回から再評価まで

評価を増やす前に、初回の主役を 1 本決めることが大切です。主役が決まると、追加評価・介入・再評価の順番がぶれにくくなります。

※スマホでは表を左右にスクロールできます。

臨床で回る選択フロー(初回 → 追加評価 → 再評価)
場面 まずやる 追加する条件 次にやる評価 再評価の目安
初回で時間がない Brief-BESTest 弱いシステムがはっきりした 低下領域に合わせて Mini-BESTest または FGA 2〜4 週
介入方針を決めたい Mini-BESTest 歩行場面の難所も見たい FGA 2〜4 週
在宅・病棟で転倒が心配 FSST 方向転換以外の歩行課題も残る FGA または Brief-BESTest 2〜4 週
BBS だけでは変化が見えにくい Mini-BESTest 歩行中の環境適応も必要 FGA 2〜4 週

役割の被りを避ける:足す前に分担を決める

スケールは多く取るほど良いわけではありません。チーム内で「この評価は何を決めるために使うか」を共有しておくと、点数だけで終わらず介入へつなげやすくなります。

※スマホでは表を左右にスクロールできます。

BESTest 系・FGA・FSST の役割分担(チーム共有用)
評価 役割 強いところ 補いにくいところ おすすめの組み合わせ
Brief-BESTest 短時間の全体スクリーニング 6 システムを横断して拾いやすい 要因の深掘りは限定的 Brief → Mini/FGA
Mini-BESTest 要因分析と介入の狙い決め 動的バランスの低下領域を分けやすい 歩行課題の細かな難所は FGA の方が整理しやすい Mini + FGA
FGA 歩行課題の抽出 速度変化、頭部運動、方向転換、狭路などを項目別に見られる 姿勢制御システムの要因分析は限定的 Brief/Mini + FGA
FSST 多方向 stepping と切り返し 狭い環境での方向転換・跨ぎを確認しやすい なぜ崩れるかは別評価が必要 FSST + Brief/FGA
BESTest(原版) 6 システムの詳細評価 姿勢制御の背景を細かく整理しやすい 時間・器具・習熟が必要 研究・詳細評価で使用し、通常運用は Brief/Mini へ短縮

記録の型:選んだ理由と次回比較を残す

親記事で大切なのは、評価名を覚えることではなく、なぜその評価を選んだかを記録に残せることです。選択理由、条件、ボトルネック、次回比較をそろえると、評価が単発で終わりにくくなります。

【バランス・歩行評価の選択】
目的:□ 全体像 □ 要因分析 □ 歩行課題 □ 切り返し・跨ぎ
選択した評価:Brief-BESTest/Mini-BESTest/FGA/FSST/BESTest
選択理由:
(例:短時間で全体像を把握したいため Brief-BESTest を選択)

実施条件:
補助具:無・有(種類:__)
介助量:見守り・接触介助・最小介助・その他(__)
環境:病棟・外来・通所・在宅・その他(__)

結果:
合計点/時間:__
低下項目・低下領域:__
主な所見:
(例:方向転換時に歩隔拡大、頭部回旋で速度低下)

次回比較:
2〜4 週後に同条件で再評価し、低下項目と所見の変化を比較する。

A4 記録シート PDF

目的、選択した評価、実施条件、結果、再評価メモを 1 枚で残せる PDF です。印刷して使う場合は、評価前に「目的」と「実施条件」を先に記入しておくと、次回比較がしやすくなります。

BESTest 系・FGA・FSST 選択記録シート

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現場の詰まりどころ:条件ブレと点数だけ記録を防ぐ

スケール運用が止まる原因は、評価そのものの難しさよりも、実施条件のブレ記録の粒度不足です。先に「よくある失敗」と「回避手順」を決めておくと、初回評価から再評価までつながります。

よくある失敗を見る回避手順(選択フロー)へ戻る

関連:評価の入口から整理したい場合は、バランス評価の使い分けもあわせて確認してください。

※スマホでは表を左右にスクロールできます。

よくある失敗と、今日からできる対策
失敗パターン 起きる理由 対策 記録ポイント
毎回条件が違う 椅子高、距離、路面、補助具、介助量が日替わりになる 評価前に「環境・補助具・介助量」を固定する 補助具、介助量、実施場所、路面を残す
合計点だけで終わる どの項目で崩れたかを見ていない 最低得点の領域・項目を 1〜2 個に絞る 低下領域と介入方針を 1 行で残す
評価を足しすぎる 主役の評価を決めずに複数実施する 初回は Brief/Mini/FGA/FSST のうち 1 本を主役にする 評価目的を「全体像/要因分析/歩行課題/切り返し」で明記する
安全管理が曖昧で実施が止まる 見守り位置や中止基準が共有されていない 介助への切替基準と中止理由を先に決める 疼痛、息切れ、めまい、失調、恐怖心などを残す

評価・記録の型が職場でそろわないときに

ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、書き方や手順だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。

PT キャリアガイドを見る

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Brief-BESTest と Mini-BESTest はどちらを先に使いますか?

短時間で全体像を拾いたいなら Brief-BESTest、介入の狙いを決めるために要因分析したいなら Mini-BESTest を先に使います。迷う場合は「全体像を先に見るのか」「低下領域を分けるのか」で決めると選びやすいです。

FGA はどのタイミングで足すとよいですか?

Mini-BESTest や Brief-BESTest で全体像を見ても、歩行中のどの場面で崩れるかが曖昧なときに足します。速度変化、頭部運動、方向転換、狭路、階段など、歩行課題を項目別に整理したい場面で使いやすい評価です。

FSST は単独で判断してよいですか?

FSST は切り返し、跨ぎ、多方向 stepping の確認に向きます。ただし、なぜ崩れるかまでは単独で説明しにくいため、必要に応じて Brief-BESTest、Mini-BESTest、FGA と組み合わせて全体像や歩行課題を補います。

BESTest 原版はどんな場面で使いますか?

6 システムを詳しく分けて介入方針を立てたい場面、研究、詳細評価に向きます。一方で時間や器具、検査者の習熟が必要になるため、通常運用では Brief-BESTest や Mini-BESTest を主役にして、必要時に原版を検討する形が現実的です。

BBS と Mini-BESTest で迷う場合はどう考えますか?

BBS は静的〜基本動作を広く見たい場面に向きます。BBS が高得点でも外乱、方向転換、二重課題、歩行中の不安定さが残る場合は、Mini-BESTest や FGA へ主役を移すと判断しやすくなります。

次の一手(この親記事から読む順番)


参考文献

  1. Horak FB, Wrisley DM, Frank J. The Balance Evaluation Systems Test (BESTest) to Differentiate Balance Deficits. Phys Ther. 2009;89(5):484–498. DOI: 10.2522/ptj.20080071
  2. Franchignoni F, Horak F, Godi M, Nardone A, Giordano A. Using psychometric techniques to improve the Balance Evaluation Systems Test: the mini-BESTest. J Rehabil Med. 2010;42(4):323–331. DOI: 10.2340/16501977-0537
  3. Padgett PK, Jacobs JV, Kasser SL. Is the BESTest at Its Best? A Suggested Brief Version Based on Interrater Reliability, Validity, Internal Consistency, and Theoretical Construct. Phys Ther. 2012;92(9):1197–1207. DOI: 10.2522/ptj.20120056
  4. Wrisley DM, Marchetti GF, Kuharsky DK, Whitney SL. Reliability, Internal Consistency, and Validity of Data Obtained With the Functional Gait Assessment. Phys Ther. 2004;84(10):906–918. DOI: 10.1093/ptj/84.10.906
  5. Dite W, Temple VA. A clinical test of stepping and change of direction to identify multiple falling older adults. Arch Phys Med Rehabil. 2002;83(11):1566–1571. DOI: 10.1053/apmr.2002.35469
  6. Oyama C, Otaka Y, Kondo K, et al. Reliability and Validity of the Japanese Version of the Mini-balance Evaluation Systems Test in Patients with Subacute Stroke. Prog Rehabil Med. 2018;3:20180015. DOI: 10.2490/prm.20180015

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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