令和8年度改定|運動器リハの9単位算定を現場で確認する
令和8年度診療報酬改定では、疾患別リハビリテーション料の算定単位数上限が緩和される対象患者について、別表第九の三の考え方が見直されました。運動器リハビリテーション料を算定する場面では、「運動器リハは1日9単位まで算定できるのか」「回復期病棟ではいつ6単位を超えられるのか」で迷いやすいと思います。
本記事では、運動器リハの上限判断に絞って、原則6単位と9単位まで算定できる条件、回復期病棟での考え方、発症日・手術日・急性増悪の日から60日以内の確認方法を整理します。制度文を広く解説するのではなく、現場で判断しやすいように「対象確認→60日判定→実施判断」の順でまとめます。
結論:運動器リハは原則1日6単位、条件に該当すれば9単位まで算定できます
運動器リハビリテーション料は、原則として1日6単位までです。ただし、令和8年度改定後も、特掲診療料の施設基準等「別表第九の三」に定める患者に該当すれば、1日9単位まで算定できる場合があります。
運動器リハで特に重要なのが、「脳血管疾患等の患者のうち、発症日、手術日又は急性増悪の日から60日以内」という項目です。疑義解釈その2・問68では、回復期リハビリテーション病棟で運動器リハを算定している患者でも、この項目に該当すれば1日9単位を算定できると示されています。
そのため、実務では「回復期病棟だから可」「運動器リハだから不可」と病棟名や算定料だけで決めるのではなく、まず別表第九の三に該当するか、次に発症日・対象疾患に関連する手術日・急性増悪の日から60日以内かを確認することが大切です。
| 確認項目 | 要点 |
|---|---|
| 原則の上限 | 運動器リハは1日6単位までです。 |
| 9単位まで算定できる条件 | 別表第九の三の対象患者に該当する場合です。 |
| 運動器リハで特に重要な入口 | 発症日、手術日又は急性増悪の日から60日以内の要件です。 |
| 実務上の注意点 | 病棟名や運動器リハという区分だけで可否を決めません。 |
回復期病棟で運動器リハを9単位算定できる条件
回復期リハビリテーション病棟で運動器リハを算定しているという理由だけでは、1日9単位にはなりません。一方で、「回復期病棟の運動器リハは必ず6単位まで」と考えるのも正確ではありません。
疑義解釈その2・問68では、回復期リハビリテーション病棟で運動器リハビリテーション料を算定する患者について、別表第九の三の「脳血管疾患等の患者のうち発症日、手術日又は急性増悪の日から60日以内」に該当する場合、1日9単位を算定できると整理されています。
つまり、回復期病棟かどうかより先に、「その患者が別表第九の三の60日以内の項目に該当するか」を確認する必要があります。運動器リハを算定していることは判断材料のひとつですが、それ自体が9単位可否を単独で決めるわけではありません。
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 回復期病棟に入院している | それだけでは運動器リハ9単位の根拠にはなりません。 |
| 運動器リハを算定している | それだけで6単位固定とも、9単位可能とも判断しません。 |
| 別表第九の三の60日以内に該当する | 運動器リハを算定する患者でも、1日9単位を算定できます。 |
| 手術日を起点にする | 対象疾患に関連する手術であることを確認します。 |
「脳血管疾患等60日以内」は脳卒中だけを意味しません
ここは、運動器リハの9単位判断で最も誤解しやすいポイントです。制度文だけを見ると、「脳血管疾患等の患者」と書かれているため、脳卒中患者だけが対象に見えるかもしれません。しかし、疑義解釈ではそのような限定的な扱いにはなっていません。
疑義解釈その2・問68では、この対象患者について平成18年3月31日の疑義解釈・問96と同様に考えるとされています。問96では、各疾患別リハビリテーションの対象疾患のうち急性発症したものが対象と整理されており、運動器リハについても、急性発症した運動器疾患やその手術後の患者が含まれます。
そのため、実務では「脳血管疾患という診断名があるか」を見るのではなく、運動器リハの対象疾患として急性発症・対象疾患に関連する手術後・急性増悪に該当し、60日以内の要件を満たすかを確認することが重要です。
ポイント:別表第九の三にある「脳血管疾患等」は、この文脈では脳血管疾患リハだけを指すものとして読まないようにします。
2026年改定で運動器リハの上限緩和は何が変わった?
令和8年度改定で押さえたい差分は、「60日以内の起点」と「早期歩行・ADL自立等を目的とする入院患者」の2点です。特に運動器リハでは、従来の感覚のまま読むと誤解しやすいため、改定後の並びを整理して確認しておくと判断がぶれにくくなります。
| 論点 | 改定後の要点 | 運動器リハでの意味 |
|---|---|---|
| 60日以内の起点 | 発症日、手術日又は急性増悪の日から60日以内 | 発症だけでなく、対象疾患に関連する手術や急性増悪も起点として確認します。 |
| 早期歩行・ADL自立等の対象 | 心大血管(Ⅰ)、脳血管(Ⅰ)、廃用(Ⅰ)、呼吸(Ⅰ) | 運動器リハビリテーション料(Ⅰ)はこの入口の並びから外れています。 |
| 回復期等の患者 | 回復期リハ病棟入院料等を算定する患者。ただし運動器リハを算定するものを除く | 回復期病棟で運動器リハを算定する患者は、この入口ではなく60日以内の要件を確認します。 |
したがって、令和8年度改定後の運動器リハでは、「運動器(Ⅰ)だから9単位」「回復期病棟だから9単位」という読み方はできません。まず60日以内の要件に該当するかを確認することが、実務上の基本になります。
発症日・手術日・急性増悪日のどこから60日を数える?
改定後の別表第九の三では、「発症日、手術日又は急性増悪の日から60日以内」と明記されています。したがって、対象となる患者では、発症だけでなく、対象疾患に関連する手術や急性増悪があったかを確認します。
特に注意したいのが手術日です。疑義解釈その2・問68では、手術について対象疾患に関連する手術であることに留意するとされています。単に入院中に何らかの手術を受けたというだけで、60日の起点として扱うものではありません。
| 起点候補 | 確認すること | 実務メモ |
|---|---|---|
| 発症日 | 急性発症した対象疾患の発症日が確認できるか | 紹介状や入院記録で起点が追えるようにします。 |
| 手術日 | 対象疾患に関連する手術か、手術日が確認できるか | 術式名と対象疾患の関係が説明できるようにします。 |
| 急性増悪の日 | 対象疾患の急性増悪として確認できる日があるか | カルテ上の経過から根拠日をそろえておきます。 |
複数の出来事がある症例では、どの事象を根拠に60日以内と判断しているのかを、担当者間で同じ説明ができるようにしておくと安全です。
運動器リハを9単位まで算定できるかの判断フロー
運動器リハの上限判断では、病棟名や「運動器(Ⅰ)」という区分から先に判断するのではなく、別表第九の三への該当性を順番に確認します。以下の図版は、現場で迷いやすい判断順を1枚にまとめたものです。
図の流れは、①運動器リハを算定している、②原則は1日6単位、③別表第九の三に該当するか確認する、④特に60日以内の要件を確認する、の4段階です。判断に迷ったときは、病棟区分や算定料の印象だけで決めず、必ずこの順で立ち返ると整理しやすくなります。
混同注意:9単位の上限緩和と「離床を伴わないリハ」は別論点です
令和8年度改定では、「離床を伴わないリハビリテーション」に関する減算・単位数制限も新設されましたが、これは本記事で扱っている9単位までの上限緩和とは別の制度です。
たとえば、別表第九の三に該当して9単位まで算定できる患者であっても、実際に行ったリハビリテーションの内容によっては、離床を伴わないリハの規定を別途確認する必要があります。逆に、離床を伴わないリハに該当するかどうかだけで、9単位の対象かどうかを判断するものでもありません。
離床を伴わないリハの対象・除外については、離床なし20分リハの算定条件で整理しています。
院内で9単位の判断を共有するときの記録例
ここで示すのは、診療報酬上の新たな必須様式ではありません。担当者間で「なぜ9単位まで算定できると判断したのか」を共有しやすくするための、実務上の記録例です。
長い文章で残すよりも、「対象疾患・状態」「起点日」「60日以内か」「判断根拠」の4点がそろっている方が、あとから確認しやすくなります。算定可能だから一律に9単位実施するのではなく、患者の状態や目標と分けて記録することも大切です。
| 項目 | 記録例 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 対象疾患・状態 | 大腿骨近位部骨折術後、運動器リハ算定 | 運動器リハの対象疾患・状態が分かるように書きます。 |
| 起点 | 対象疾患に関連する手術日:○月○日 | 発症日か手術日か急性増悪の日かを明確にします。 |
| 60日以内 | 評価日○月○日、手術日から○日目 | 日数が追える形で残すと判断の共有がしやすくなります。 |
| 判断根拠 | 別表第九の三「発症日、手術日又は急性増悪の日から60日以内」に該当 | どの入口で該当したかを一文で残します。 |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 回復期病棟で運動器リハを算定している患者は6単位までですか?
A. 一律に6単位までではありません。別表第九の三の「発症日、手術日又は急性増悪の日から60日以内」に該当する場合は、疑義解釈その2・問68により1日9単位を算定できます。
Q2. 「脳血管疾患等60日以内」は脳卒中患者だけですか?
A. いいえ。疑義解釈その2・問68では平成18年3月31日の疑義解釈・問96と同様に考えるとされており、各疾患別リハの対象疾患のうち急性発症したものが対象です。運動器リハでは、急性発症した運動器疾患やその手術後などが含まれます。
Q3. 運動器リハビリテーション料(Ⅰ)なら9単位まで算定できますか?
A. 運動器リハビリテーション料(Ⅰ)というだけでは算定できません。令和8年度改定では、「早期歩行・ADL自立等」を目的とする入院患者の対象疾患別リハの並びから運動器リハビリテーション料(Ⅰ)が外れています。別表第九の三の別の要件、特に60日以内への該当性を確認します。
Q4. 手術を受ければ、その手術日から60日と考えてよいですか?
A. どの手術でもよいわけではありません。疑義解釈その2・問68では、対象疾患に関連する手術であることに留意するとされています。対象疾患と無関係な手術は起点になりません。
Q5. 9単位算定のためにこの記録例の形で残す必要がありますか?
A. 本記事で示す記録例は、9単位算定のために新設された法定の必須様式ではありません。対象疾患、起点日、60日以内への該当性など、判断根拠を院内で共有しやすくするための実務上の整理です。
次の一手
運動器リハで6単位を超える可能性がある患者では、まず対象疾患を確認し、次に発症日・対象疾患に関連する手術日・急性増悪の日から60日以内に該当するかを確認します。回復期病棟や運動器リハ(Ⅰ)という区分だけで可否を決めないことが、令和8年度改定後の重要なポイントです。
迷ったときは、①原則は1日6単位、②60日以内の要件に該当すれば9単位まで、③手術日は対象疾患に関連する手術に限る、の3点に戻ると判断を整理しやすくなります。
参考資料
- 厚生労働省.令和8年度診療報酬改定について.https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省.特掲診療料の施設基準等.別表第九の三 医科点数表第二章第七部リハビリテーション通則第4号に規定する患者.https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa9733&dataType=0
- 厚生労働省保険局医療課.疑義解釈資料の送付について(その2).令和8年4月1日.https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001689076.pdf
- 厚生労働省保険局医療課.疑義解釈資料の送付について.平成18年3月31日.問96.https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/03/dl/tp0314-1c03.pdf
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を2022年4月に開設。医療機関・介護福祉施設・訪問リハの現場経験をもとに、理学療法士を中心とした医療従事者向けに、評価・臨床判断・診療報酬などの実務情報を発信しています。
脳卒中、褥瘡・創傷ケア、呼吸リハ、リハ栄養、摂食嚥下などを主なテーマとし、制度と臨床の両面から、現場で使いやすい形に整理することを重視しています。
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

