療養病棟の ADL 区分|0〜6 点の付け方と記録例

制度・実務
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療養病棟の ADL 区分は「過去 3 日間の介助量」で決める

療養病棟の ADL 区分は、ベッド上の可動性、移乗、食事、トイレの使用の 4 項目を 0〜6 点で評価し、合計点から区分 1〜3 に整理します。判断の中心は「できる能力」ではなく、当日を含む過去 3 日間の全勤務帯で、実際にどの程度の支援が必要だったかです。

この記事では、療養病棟で ADL 区分を付けるスタッフ向けに、0〜6 点の選び方、3 点と 4 点の分かれ目、b 移乗と d トイレ使用の切り分け、記録に残す書き方までを実務用に整理します。医療区分を含めた全体像は親記事で確認できます。

このページは ADL 区分の採点実務に集中しています。制度全体は親記事で確認できます。

親記事で全体像を見る

ADL 区分で見る 4 項目を先に固定する

最初に固定するのは、何を評価するかです。ADL 区分では 4 項目をそれぞれ 0〜6 点で採点します。移乗はベッドからいす・車いすへの移乗を見ますが、便座や浴槽への移乗は含めません。トイレの使用では、後始末、おむつ交換、カテーテルや人工肛門の管理、衣服調整を含めて見ます。

食事は、食べる・飲む動作だけでなく、経管栄養や経静脈栄養も含めて扱います。項目の範囲を病棟内でそろえておくと、同じ患者さんでもスタッフによって点数が変わる問題を減らせます。

療養病棟 ADL 区分の 4 項目と評価範囲
記号 項目 評価する内容 混同しやすい点
a ベッド上の可動性 寝返り、起き上がり、ベッド上での位置調整 端座位保持や移乗介助と混ぜない
b 移乗 ベッドからいす・車いすへ座る、立ち上がる 浴槽や便座への移乗は除く
c 食事 食べる、飲む、経管栄養、経静脈栄養 上手・下手ではなく支援量を見る
d トイレの使用 トイレ使用、後始末、おむつ交換、カテーテル管理、衣服調整 移乗は b で評価し、d に重複させない

0〜6 点は「3 回以上」「体重支持」「50%」で決める

点数を決めるときは、感覚的に「軽介助」「全介助」と書く前に、支援の回数と介助の質を確認します。0 点は手助け・準備・観察が不要または 1〜2 回のみ、1〜5 点は準備・観察・援助が 3 回以上ある場合に選びます。

3 点と 4 点の分かれ目は、体重や身体の重みを支える介助があるかです。4 点と 5 点の分かれ目は、本人が動作の 50% 以上を行っているかです。6 点は、まる 3 日間すべて全面援助、またはその動作が一度もなかった場合に検討します。

ADL 区分 0〜6 点の選び方(過去 3 日間の支援レベル)
点数 支援レベル 選ぶ目安 記録で残したい観察語
0 自立 手助け、準備、観察が不要または 1〜2 回のみ 介助・準備・見守りなし
1 準備のみ 物品や用具を手の届く範囲に置く支援が 3 回以上 物品配置、食具準備、環境調整
2 観察 見守り、励まし、誘導が 3 回以上 見守り、声かけ、誘導
3 部分的な援助 本人が 50% 以上実施し、体重を支えない援助が 3 回以上 手添え、方向づけ、四肢誘導
4 広範な援助 本人が 50% 以上実施するが、体重を支える援助が 3 回以上 体幹支持、下肢支持、重みの支持
5 最大の援助 本人の実施が 50% 未満で、体重を支える援助が 3 回以上 介助者主導、本人参加少ない
6 全面依存 まる 3 日間すべて全面援助、または本動作が一度もない 全面介助、動作実施なし
療養病棟 ADL 区分で迷いやすい介助量、体重支持、動作の 3 つの判断軸
図:療養病棟 ADL 区分で迷いやすい 3 つの判断軸

ADL 区分の採点・記録シート PDF

ADL 区分は、点数だけでなく「なぜその点数にしたか」を残しておくと、月初評価・再評価・申し送りで説明しやすくなります。以下の PDF は、4 項目の点数、介助の根拠、b 移乗と d トイレ使用の切り分けを A4 1 枚で整理できる記録シートです。

印刷して使える ADL 区分の採点・記録シートです。

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合計点から ADL 区分 1〜3 を決める

4 項目を採点したら、合計点を出して ADL 区分に変換します。0〜10 点は ADL 区分 1、11〜22 点は ADL 区分 2、23〜24 点は ADL 区分 3 です。合計点の境界に近い患者さんほど、1 項目の採点ズレが区分に影響します。

そのため、点数だけでなく、どの項目で介助量が重くなったのかを短く記録しておくことが重要です。特に 10 点前後、22 点前後では、準備・観察・体重支持・本人参加割合の根拠を残しておくと、月初評価や監査時の説明がしやすくなります。

ADL 得点と ADL 区分の対応
合計点 ADL 区分 実務上の見方
0〜10 点 区分 1 自立、準備、観察、部分介助が中心
11〜22 点 区分 2 体重支持を伴う介助や最大援助が混在しやすい
23〜24 点 区分 3 4 項目の多くが全面依存に近い状態

現場の詰まりどころは「項目の混同」と「代表値のズレ」

ADL 区分がズレる原因は、制度の知識不足だけではありません。多くは、どの項目に入れるか、過去 3 日間のどの状態を代表値にするか、体重支持をどう判断するかがスタッフ間でそろっていないことです。

特に、b 移乗と d トイレ使用の重複、3 点と 4 点の混同、できた 1 回だけで点数を下げる判断は起こりやすいです。まずは病棟内で、以下の 3 点を共通ルールにしておくと運用が安定します。

ADL 区分で起こりやすい失敗と回避策
よくある失敗 ズレる理由 回避策
できた 1 回で点数を下げる 普段の介助量ではなく最大能力で判断してしまう 過去 3 日間の全勤務帯で代表的な支援量を見る
3 点と 4 点を混同する 体重支持の有無が記録に残っていない 「体幹・四肢の重みを支えたか」を記録する
b 移乗と d トイレ使用を重複させる トイレ場面全体を d に入れてしまう 移乗は b、後始末・衣服調整・おむつ交換は d に分ける
実施なしの扱いがそろわない 動作がなかった場合の点数判断が人によって変わる まる 3 日間の全面援助または動作なしは 6 点候補として確認する

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→ 記録の型を確認する
関連:評価のハブで記録・再評価の型を確認する

ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、書き方や手順だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。

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b 移乗と d トイレ使用は場面ではなく動作で分ける

トイレ場面で迷ったら、「移る動作」と「排泄行為に伴う後始末」を分けます。便座や浴槽への移乗は b 移乗の対象外ですが、ADL 区分の実務では、少なくとも d トイレ使用に移乗そのものを重複して入れないことが重要です。

d トイレ使用では、トイレやポータブルトイレ、便器、尿器の使用、排泄後の始末、おむつ交換、人工肛門やカテーテル管理、衣服調整を見ます。場面全体ではなく、評価項目の定義に沿って分解すると判断が安定します。

b 移乗と d トイレ使用の切り分け
迷う場面 b 移乗で見ること d トイレ使用で見ること
車いすからトイレへ行く ベッドからいす・車いすへの移乗支援 トイレ使用、後始末、衣服調整
おむつ交換 ベッド上での姿勢変換は a として確認 おむつ交換、清拭、後始末
尿道カテーテル管理 移乗動作そのものは含めない カテーテル管理、衣服調整

記録の型は「点数+介助の根拠」を 1 行で残す

ADL 区分は点数だけを残すと、後から見たときに判断根拠が追いにくくなります。点数の横に、準備、観察、体重支持、本人参加割合、動作なしの有無を短く添えると、月初評価と日々の記録がつながります。

記録は長文にする必要はありません。監査や申し送りで説明できる程度に、点数を選んだ理由が伝わる 1 行を残すことが目的です。

ADL 区分の記録例|点数と根拠を 1 行で残す
項目 点数例 記録例
a ベッド上の可動性 4 点 寝返り時に体幹の重みを支える介助を 3 回以上要す。本人の参加は 50% 以上。
b 移乗 5 点 ベッドから車いす移乗は介助者主導。下肢・体幹支持を要し、本人実施は 50% 未満。
c 食事 2 点 食事中に見守り・声かけを 3 回以上要す。直接介助はなし。
d トイレの使用 6 点 過去 3 日間はトイレ動作なし。おむつ交換・後始末は全面介助。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

月初以外でも ADL 区分は見直しますか?

ADL が変化した場合は、該当日に評価点を見直す運用が基本です。月初評価だけで固定せず、介助量の代表値が変わったときに点数と根拠を残します。

できる日とできない日が混在する場合はどうしますか?

当日を含む過去 3 日間の全勤務帯で、実際に多く必要だった支援レベルを確認します。できた 1 回だけで点数を下げず、ふだんの介助量を代表値として整理します。

3 点と 4 点の違いは何ですか?

大きな違いは体重支持の有無です。本人が 50% 以上動作していても、四肢や体幹の重みを支える介助が 3 回以上あれば 4 点を検討します。

経管栄養や経静脈栄養は食事項目に含みますか?

含みます。食事項目では、食べる・飲む動作だけでなく、経管栄養や経静脈栄養も評価範囲に入れて支援量を整理します。

トイレを使わずおむつ中心の場合、d 項目はどう見ますか?

d トイレの使用には、おむつ交換、排泄後の始末、衣服調整、カテーテルや人工肛門の管理が含まれます。トイレに行かない場合でも、排泄関連の支援量で評価します。

次の一手|ADL 区分を医療区分の運用とつなげる


参考文献

  • 厚生労働省.別紙 8 医療区分・ADL 区分に係る評価票 評価の手引き.PDF
  • PT-OT-ST.NET.令和 8 年度診療報酬改定 別紙 8 医療区分・ADL 区分等に係る評価票 評価の手引き.PDF

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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