体幹トレーニング|課題の選び方・代償修正・負荷調整

臨床手技・プロトコル
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体幹トレーニングは「何が難しいか」から課題を選びます

リハビリで体幹トレーニングを行うときは、ベッド上・座位・立位という姿勢だけでメニューを決めるのではなく、座位保持、重心移動、リーチ、基本動作、立位・四肢運動のどこで体幹制御が難しくなるかを確認して課題を選びます。動作が崩れた場合も、すぐに種目を変更するのではなく、支持量、可動範囲、方向、速度、反復量、外的負荷などの条件を調整します。

この記事では、PT・OTが体幹トレーニングを選ぶときの考え方を、「課題を見つける→練習を選ぶ→崩れを観察する→条件を調整する」の順で整理します。体幹機能そのものの評価方法を確認したい場合は、先に体幹評価の標準フローを確認してください。

体幹トレーニングは難しい課題に合わせて選びます

体幹トレーニングの中心は、特定の種目を一律に行うことではなく、目的動作で問題になっている体幹制御を練習条件として再現することです。静的な座位保持が難しい人と、座位は保てるもののリーチすると崩れる人では、選ぶ課題が異なります。

体幹トレーニングの選び方。課題を見つけ、練習を選び、崩れを観察し、条件を調整する流れ
図:体幹トレーニングは、目的動作で難しい課題を見つけ、練習・観察・条件調整へつなげます。
体幹の課題からトレーニングを選ぶ考え方
観察された課題 選びやすい練習 主に観察すること 崩れたときの調整例
静的座位が安定しない 支持条件を調整した座位保持、体幹・骨盤の位置調整 支持なしで保持できる範囲、左右への偏り、上肢支持の必要性 足部位置、座面、上肢支持、介助量を調整する
座位は保てるが重心移動で崩れる 前後・左右への重心移動、リーチ課題 移動方向、到達範囲、支持側への荷重、戻り動作 リーチ距離、方向、速度、支持量を調整する
回旋を伴う課題で崩れる 斜め方向へのリーチ、物品操作、体幹回旋を含む課題 骨盤と胸郭の動き、支持面上での重心移動、上肢との協調 可動範囲、対象物の位置、速度、上肢課題を調整する
寝返り・起き上がりが難しい 基本動作の一部または全体を用いた反復 開始肢位、頭頸部・上肢・下肢との協調、体幹回旋 開始肢位、支持、運動方向、介助量を調整する
立位や四肢運動で体幹が崩れる 支持下立位、荷重移動、リーチ、ステップなどの課題動作 基底面、下肢支持、体幹の偏位、目的動作との関係 上肢支持、基底面、荷重量、四肢課題、速度を調整する

この表は、すべての患者を順番に進める段階表ではありません。静的座位が十分でも基本動作で体幹回旋が使いにくい場合や、座位では問題が少なくても立位・歩行で体幹制御が崩れる場合があります。目的動作で何が難しいかを起点に、必要な課題を選ぶことが基本です。

静的座位は「姿勢を固定する」より必要な支持条件を見ます

静的座位では、見た目を左右対称に整えることだけを目的にせず、どの支持条件なら座位を保持でき、頭頸部や上肢を使えるかを確認します。足底接地、座面、背もたれ、上肢支持、介助位置を変えると、体幹に求められる制御も変化します。

支持を減らすこと自体を目標にするのではなく、食事、整容、上肢活動など、次の活動に必要な座位が成立する条件を探します。

動的座位では重心移動・リーチ・戻りを確認します

座位を保てても、前方・側方へのリーチや重心移動で崩れる場合は、動的座位課題を選びます。リーチ距離だけを見るのではなく、どの方向で崩れるか、目的物へ到達した後に開始位置へ戻れるかまで観察します。

難しすぎる場合はリーチ距離を短くするほか、対象物の高さや方向、足部位置、上肢支持、動作速度などを調整できます。反対に課題を高める場合も、距離だけでなく方向、速度、物品操作などを変える方法があります。

寝返り・起き上がりでは体幹と四肢の協調を練習します

基本動作が目的であれば、体幹を単独で動かす練習だけでなく、寝返りや起き上がりなど実際の動作内で体幹制御を確認します。体幹回旋、重心移動、頭頸部・上肢・下肢との協調など、どの要素が動作を制限しているかを見ます。

動作全体では難しすぎる場合は、一部の局面を取り出したり、開始肢位や支持条件を変更したりします。反対に単純な練習が可能でも目的動作へつながらない場合は、実際の動作課題へ近づけます。

立位・課題動作では下肢支持と体幹制御を分けすぎません

立位、方向転換、ステップ、歩行などでは、体幹の動きだけでなく、下肢支持、感覚、バランス、可動域、疼痛など複数の要因が関係します。そのため、立位で体幹側屈が見られたことだけから「体幹筋力低下」と決めつけないことが重要です。

上肢支持を追加すると改善するのか、基底面を変えると変化するのか、下肢への荷重を変えると体幹の偏位が変わるのかを確認し、体幹への直接的な介入が必要か、別の機能への介入が必要かを判断します。

動作が崩れたら支持量・範囲・速度・負荷を調整します

体幹トレーニングがうまくいかないときは、すぐに「できない種目」と判断せず、何を変えると目的とする動きが出やすくなるかを確認します。調整できる条件は回数や保持時間だけではありません。

体幹トレーニングで調整できる主な条件
調整する条件 具体例 確認すること
支持量 上肢支持、背もたれ、介助量、支持面 支持を変えると動作の質や範囲がどう変わるか
可動範囲 リーチ距離、回旋範囲、重心移動量 どの範囲から崩れや症状が出るか
方向 前方、側方、斜め、回旋方向 方向による左右差や難易度差があるか
速度 ゆっくり行う、速度を上げる、連続して行う 速度変化で制御やタイミングがどう変わるか
四肢課題 リーチ、物品操作、ステップ、両上肢課題 四肢運動を加えることで体幹がどう変化するか
外的負荷 抵抗、物品重量、支持条件の変更 負荷増加が目的に合うか、動作の質を損なわないか
反復量・休息 回数、時間、セット、休息時間 疲労による変化と再現性を確認する

一度に複数の条件を変更すると、何によって動作が変化したのか分かりにくくなる場合があります。一方で、「必ず1項目だけ変更する」と固定する必要もありません。安全性と目的を優先し、必要な条件を組み合わせて調整します。

代償は一律に止めず「目的を妨げているか」で判断します

体幹側屈、骨盤の移動、上肢支持、胸郭の動きなどが見られても、それだけで誤った動作とは判断できません。人は課題を達成するために複数の運動戦略を使うため、観察された動きが目的動作を妨げているのか、安全性や効率を低下させているのかを確認します。

たとえば座位リーチで骨盤が動くこと自体を避ける必要はありません。目的物への到達に必要な重心移動として生じている可能性があります。一方、到達距離を伸ばそうとして支持基底面内での制御を失い、開始位置へ戻れなくなる場合や、疼痛・恐怖・転倒リスクにつながる場合は条件調整が必要です。

体幹の崩れを見たときの確認ポイント
確認すること 判断の例
課題を達成できるか 目的物への到達、座位保持、起き上がりなどが成立しているか
開始位置へ戻れるか リーチ後や重心移動後に安定して戻れるか
安全性が保たれるか 転倒、支持の喪失、疼痛、めまいなどにつながっていないか
別条件で変化するか 支持量、範囲、速度、下肢条件を変えると改善するか
目的動作につながるか 練習した動きが食事、移乗、立位、歩行などへつながるか

脳卒中後の体幹トレーニングは効果が示されていますが方法は一律ではありません

脳卒中後については、体幹トレーニングをリハビリテーションへ加えることで、体幹機能、日常生活活動、立位バランス、歩行能力などの改善につながる可能性が報告されています。ただし、研究で用いられているトレーニングは単一ではなく、core stability、選択的な体幹運動、不安定条件での練習など多様です。

2023年のCochrane Reviewでは、脳卒中後の体幹トレーニングについて、日常生活活動、体幹機能、立位バランス、歩行能力などへの改善効果が示唆されています。一方、アウトカムによってエビデンスの確実性には幅があり、特定の種目や進め方をすべての対象者へ一律に適用できる根拠ではありません。

2022年のシステマティックレビュー・メタ解析でも、脳卒中後のcore trainingによる体幹機能やバランスへの効果が検討されています。2026年に掲載された早期亜急性期脳卒中の座位バランス介入に関するシステマティックレビュー・メタ解析では、座位で行う介入が、重心移動・リーチ、core stability、環境調整、課題練習の4カテゴリーに整理されています。

これらの知見からも、体幹トレーニングを1つの種目や「ベッド上→座位→立位」という固定した順序で捉えるより、対象者がどの課題で困っているかを評価し、それに合う練習条件を選ぶことが重要です。

適用範囲に注意:このセクションで示した研究は主に脳卒中患者を対象としています。廃用症候群、整形外科疾患、神経変性疾患などへ同じ効果や介入方法をそのまま一般化することはできません。それぞれの疾患・病期・症状・禁忌やリスクを確認したうえで課題を設定してください。

記録・再評価では「何をしたか」より条件と変化を残します

体幹トレーニングの記録では、種目名だけでなく、どの条件で、どの課題が、どのように変化したかを残すと次回の調整につながります。すべての患者で同じ記録項目や7行の定型を使う必要はありません。

体幹トレーニングで記録しておきたい内容
項目 記録する内容
目的 座位保持、リーチ、起き上がり、立位など何を改善したいか
実施条件 姿勢、支持量、足部位置、対象物位置、介助条件など
課題 実施したリーチ、重心移動、基本動作、立位課題など
反応 動作の崩れ、左右差、疼痛、疲労、息切れ、恐怖感など
条件変更と変化 支持や範囲などを変更したときに何が改善・悪化したか
次回確認 次に再評価したい条件や目的動作

たとえば「座位リーチ10回」だけではなく、「足底接地・上肢支持なしで右前方リーチ。距離を延長すると左殿部の支持が不安定となり、距離を短縮すると開始位置まで自力で戻れる」のように、条件と反応を組み合わせると再評価しやすくなります。

再評価では同じ種目を続けられたかだけを見るのではなく、リーチ範囲、支持量、介助量、動作速度、目的動作などがどう変化したかを確認します。

体幹トレーニングでよくある質問

体幹トレーニングはベッド上・座位・立位のどこから始めますか?

一律の開始姿勢はありません。改善したい動作と、現在どの条件で体幹制御が難しいかから選びます。座位保持が目的なら座位、寝返りが目的なら基本動作、立位で崩れるなら支持条件を調整した立位課題を選ぶなど、目的動作との関連を優先します。

骨盤は常に中間位を保った方がよいですか?

必ずしもそうではありません。リーチや起き上がりなどでは骨盤や胸郭の移動が必要になります。見た目の中間位を固定することより、その動きが課題達成に必要か、安全に重心を移動して戻れるかを確認します。

体幹トレーニングの回数・セット数はどのくらいがよいですか?

疾患、目的、負荷、疲労、症状、運動経験などによって異なるため、一律の回数・セット数では決めません。反復によって動作の質や症状がどう変化するかを確認し、目的と安全性に応じて実施量と休息を調整します。

脳卒中以外でも同じ体幹トレーニングを使えますか?

課題を観察し、支持量・可動範囲・速度などを調整する考え方は、脳卒中以外の対象者でも応用できます。ただし、この記事で紹介した効果研究の中心は脳卒中です。疾患固有の禁忌、術後制限、疼痛、呼吸循環状態などを確認し、脳卒中研究の結果をそのまま一般化しないようにします。

次の一手|体幹だけで原因を決めず目的動作へ戻して確認します

体幹トレーニングを選ぶときは、「体幹が弱いからこの種目」と決めるのではなく、まず目的動作のどこで難しくなるかを確認します。そのうえで課題を設定し、支持量・範囲・方向・速度などを変えたときに動作がどう変化するかを再評価してください。


参考文献

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著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、リハビリテーション実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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