高次脳機能障害の退院時情報提供【記録シート付】

制度・実務
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高次脳機能障害の退院時情報提供|提供先と記録を最初にそろえる

令和 8 年診療報酬改定では、回復期リハビリテーション病棟における高次脳機能障害患者の退院支援として、支援先情報の把握、退院時説明、必要時の利用予定先への文書提供を行う体制が整理されました。本記事で決めることは、誰に、どこへ、何を、どう記録して提供するかです。

このページでは、制度の全体像ではなく、病棟で漏れやすい「提供先の線引き」と「記録の残し方」に絞ります。特に、退院後に関わる先をすべて提供先にするのではなく、リハビリテーション利用予定のある先かどうかで分けることが実務上のポイントです。

最終更新:2026 年 5 月 25 日(図版・A4 記録シート追加)

改定ポイントは「把握・説明・文書提供」の 3 つで整理する

まず押さえるべき変更点は、地域資源の情報把握、退院時の説明、必要時の文書提供です。この 3 つを別々に考えると漏れますが、退院支援フローの中に固定すると、担当者が替わっても同じ判断ができます。

高次脳機能障害の退院時情報提供で押さえる 3 要素
要素 制度上の要点 現場での落とし込み
情報把握 高次脳機能障害者支援センター、他の保険医療機関、障害福祉サービス事業所等の情報を把握する 所在地、連絡先、提供サービスを一覧化する
退院時説明 対象患者や家族等へ、把握した情報を説明して提供する 説明日、説明者、同席者、提供資料を記録する
文書提供 リハ継続予定があり、同意が得られた場合に、利用予定先へ計画書等を文書提供する 提供先、同意、提供日、提供内容を固定欄で残す

A4 記録シート|提供先・同意・提供実績を 1 枚で確認する

現場で使う場合は、提供先の線引きと記録 7 点セットを 1 枚で確認できる形にしておくと漏れを減らせます。退院前カンファや病棟申し送りで使えるよう、A4 1 枚の記録シートを用意しました。

A4 記録シートを開く(PDF)

中身をプレビューする

PDF を表示できない場合は、上のボタンから開いてください。


提供先は「リハ利用予定あり」と「それ以外」に分ける

提供先選定では、退院後に関わる先を広く拾うより、リハビリテーション利用予定の有無で分ける方が安全です。単なる受診予定やケアプラン作成予定だけでは、リハ総合実施計画書等の文書提供先として扱わない整理が必要です。

退院時情報提供の含む先・含まない先を整理した比較図版
「退院後に関わる先」ではなく、「リハ利用予定のある先」で判断すると整理しやすくなります。
退院時情報提供の提供先に含むもの・含まないもの
区分 含む 含まない
医療保険 退院後にリハビリテーションを利用する保険医療機関 単なる受診予定の医療機関
介護保険 訪問リハ、通所リハ、介護予防訪問リハ、介護予防通所リハ、介護保険施設での適切なリハ ケアプラン作成予定のみの居宅介護支援事業所等
障害福祉 生活介護、自立訓練、就労継続支援等のうち、退院後のリハ利用予定がある事業所・施設 生活支援のみでリハ利用予定が確認できない先

5 分フロー|入院時から退院後まで同じ順番で回す

運用は、入院時の抽出、退院前の提供先確認、退院時の説明・同意、退院後の実施記録の順に固定します。退院直前に一気に確認しようとすると、提供先の確認や同意記録が抜けやすくなります。

高次脳機能障害の退院時情報提供を 5 分で確認するフロー
時期 確認すること 記録すること
入院時 高次脳機能障害の疑い、生活上の困りごと、家族支援者を確認 対象候補、生活課題、キーパーソン
中間期 退院後にリハを利用する予定の医療・介護・障害福祉サービスを確認 候補先、未定事項、確認担当者
退院前 説明、同意、提供先、提供内容を最終確認 説明日、同意方法、提供先区分
退院時〜退院後 リハ総合実施計画書等を必要時に文書提供 提供日、提供方法、担当者

記録テンプレ|算定漏れを防ぐ 7 点セット

「実施した」だけでなく、説明・同意・提供先・提供実績がつながって記録されていることが重要です。以下の 7 点を電子カルテや退院支援シートに固定すると、記録漏れを減らせます。

退院時情報提供で残すべき記録 7 点セット
項目 記録例 確認ポイント
対象判定 高次脳機能障害により注意・記憶・遂行機能面の生活影響あり 診断名だけでなく生活課題も残す
説明実施 患者・家族へ退院後支援先情報を説明 説明日、説明者、同席者を記録する
同意確認 利用予定先への文書提供について同意あり 口頭・書面など院内ルールを統一する
提供先区分 医療保険/介護保険/障害福祉サービス リハ利用予定の有無を先に確認する
提供先名称 退院後に利用予定の訪問リハ事業所、通所リハ事業所、保険医療機関等 正式名称で記載する
提供内容 リハ総合実施計画書等、機能面、行動特性、必要配慮 抽象語だけでなく支援条件を書く
提供実績 提供日、提供方法、提供者 未実施の場合は理由を残す

現場の詰まりどころは「広く入れすぎる」「記録が分かれる」「同意が残らない」

この運用で最も多い失敗は、提供先を広く取りすぎることです。退院後に関わる先をすべて入れるのではなく、提供先の線引き記録 7 点セットを同じ様式で確認します。退院前カンファの議題は、退院前カンファの議題固定テンプレと合わせて運用すると漏れを減らせます。

高次脳機能障害の退院支援で起きやすい失敗と対策
よくある失敗 原因 対策
単なる受診先まで提供先に入れる 「退院後に関わる先」と「リハ利用先」を分けていない 受診のみ、ケアプランのみは対象外欄で管理する
説明はしたが記録がない 説明欄、同意欄、提供欄が別々に管理されている 7 点セットを 1 画面または 1 枚にまとめる
退院直前に確認が集中する 入院時から対象候補を拾っていない 初期評価時に高次脳機能障害と退院後支援の確認欄を入れる

記録や制度運用に迷う背景には、教育体制や相談環境の不足が隠れていることもあります。

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よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. このページでいう対象患者は誰ですか?

A. 高次脳機能障害があり、退院後の生活や社会参加に支援が必要となる患者です。制度上の対象に該当するかは、施設基準、算定要件、院内ルールを確認し、診断名だけでなく生活課題と支援先の必要性を記録します。

Q2. 単なる外来受診予定の病院も提供先に含みますか?

A. 含めません。文書提供先として整理するのは、退院後にリハビリテーションを利用する予定の保険医療機関、介護保険又は障害福祉サービス等の利用予定先です。

Q3. ケアプラン作成予定の居宅介護支援事業所は含みますか?

A. ケアプラン作成予定のみであれば、リハ総合実施計画書等の文書提供先としては扱いません。必要な退院支援情報は別の連携記録として管理し、制度上の提供先とは分けると整理しやすくなります。

Q4. 介護保険によるリハビリテーションには何が含まれますか?

A. 訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、介護予防訪問リハビリテーション、介護予防通所リハビリテーション、介護保険施設で行われる適切なリハビリテーションなどを想定して整理します。

Q5. 最低限どの記録を残せばよいですか?

A. 対象判定、説明実施、同意確認、提供先区分、提供先名称、提供内容、提供実績の 7 点です。特に、同意の有無、提供日、提供者、提供先の正式名称は後から確認できる形で残します。

次の一手

運用を整えても、教育体制・記録文化・相談環境で詰まる場合があります。

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参考文献

  1. 厚生労働省. 令和 8 年度診療報酬改定の概要 4. 包括期・慢性期入院医療. 2026. https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001666309.pdf
  2. 厚生労働省. 疑義解釈資料の送付について(その 2). 2026-03-31. https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001684646.pdf
  3. 厚生労働省. 令和 8 年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(案). 2026. https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001631272.pdf

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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