高次脳機能障害の退院支援|令和8年度の対象・提供先・計画書

制度・実務
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高次脳機能障害の退院支援は「2種類の情報提供」を分けて確認する

令和8年度診療報酬改定では、回復期リハビリテーション病棟入院料等に、高次脳機能障害患者の退院支援に関する要件が追加されました。ポイントは、患者・家族等へ地域の支援先情報を説明・提供することと、条件に該当する患者では退院後のリハビリテーション利用予定先へリハビリテーション総合実施計画書等を文書提供することを分けて確認することです。

すべての高次脳機能障害患者が同じ対象になるわけではなく、計画書等の文書提供先にも条件があります。本記事では、対象患者、2種類の情報提供、「受診予定だけ」「ケアプラン作成予定だけ」の扱いまで、退院時に迷いやすい境界を整理します。

最終更新:2026年9月28日

高次脳機能障害の退院支援で分けて確認する2種類の情報提供
区分 誰に 何をするか
① 支援先情報の提供 対象患者または家族等、退院後に患者の看護に当たる者 地域の支援先情報を説明した上で提供する
② 計画書等の文書提供 条件を満たす患者のリハビリテーション利用予定先 同意を確認し、3月以内に作成したリハビリテーション総合実施計画書等を文書提供する
高次脳機能障害の退院支援で患者・家族への支援先情報提供と利用予定先への計画書等の文書提供の2ルートを示した図
患者・家族等への支援先情報提供と、条件該当時の利用予定先への計画書等の文書提供は、別のルートとして確認します。

対象はすべての高次脳機能障害患者ではない|入院期間上限180日の所定患者

患者・家族等への支援先情報提供の対象は、高次脳機能障害があるという理由だけで決まるわけではありません。施設基準では、基本診療料の施設基準等の別表第九に掲げる所定の状態に該当する患者が対象です。

具体的には、別表第九の「高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害、重度の頸髄損傷及び頭部外傷を含む多部位外傷の場合」に該当する患者で、回復期リハビリテーション病棟入院料の入院期間上限が180日の患者です。

退院時の支援先情報提供で最初に確認する対象
確認項目 ポイント
高次脳機能障害 高次脳機能障害があることだけで対象を判断しない
別表第九 「高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害、重度の頸髄損傷及び頭部外傷を含む多部位外傷の場合」への該当を確認する
入院期間上限 180日の区分に該当する患者であることを確認する

院内運用では、「高次脳機能障害あり」のチェックだけで進めず、回復期リハビリテーションを要する状態と算定上限日数まで照合してから対象を確定すると整理しやすくなります。

① 患者・家族等へは地域の支援先情報を説明・提供する

1つ目のルートは、対象患者の退院時に、地域で高次脳機能障害者へ適したサービスを提供する支援先の情報を患者・家族等へ説明し、提供することです。計画書等を特定の事業所へ送る手続きとは分けて考えます。

保険医療機関は、地域における高次脳機能障害患者に適したサービスについて、所在地、連絡先、提供サービス等をあらかじめ把握しておくことが求められています。

あらかじめ把握する地域の支援先情報
区分 主な対象
専門的な支援窓口 高次脳機能障害者支援センター
医療 高次脳機能障害患者に適したサービスを提供する他の保険医療機関
障害福祉 生活介護、自立訓練、就労継続支援、自立生活援助、共同生活援助、相談支援、計画相談支援等を提供する事業所・施設
児童福祉 指定障害児通所支援事業者、指定障害児入所施設等、指定障害児相談支援事業者

ここで重要なのは、患者・家族等へ提供する「地域の支援先情報」と、次に説明する「リハビリテーション利用予定先への計画書等の文書提供」は同じ条件ではないことです。

② リハ利用予定先へは条件を確認して計画書等を文書提供する

2つ目のルートは、退院後に所定のリハビリテーションへ移行する予定がある患者について、患者・家族等の同意を得た上で、利用予定先へリハビリテーション総合実施計画書等を文書提供することです。

施設基準上は、退院後に他の保険医療機関でのリハビリテーション、介護保険によるリハビリテーション、障害福祉サービスによるリハビリテーションへの移行を予定している患者について確認します。

利用予定先へ計画書等を提供するための確認事項
確認事項 制度上の整理
退院後の予定 医療保険、介護保険または障害福祉サービスによるリハビリテーションへの移行予定がある
同意 患者または家族等、退院後に患者の看護に当たる者の同意が得られている
提供する書類 3月以内(3か月以内)に作成したリハビリテーション総合実施計画書等
提供方法 利用を予定している保険医療機関・事業所・施設等へ文書により提供する

「3月以内」は、公式通知で用いられている表現です。院内では、退院時点で使用する計画書等がいつ作成されたものかも確認しておく必要があります。

「利用予定」の境界|受診だけ・ケアプラン作成だけは含まない

疑義解釈では、「利用する予定」とは医療保険・介護保険・障害福祉サービスによるリハビリテーションを利用する場合を指すと整理されています。退院後に関わる機関をすべて計画書等の文書提供先にするわけではありません。

リハビリテーション総合実施計画書等の文書提供先の考え方
退院後の予定 計画書等の提供先としての整理 理由
他の保険医療機関でリハを利用する 対象 医療保険によるリハビリテーションへの移行予定があるため
他の医療機関を受診するだけ 対象外 単なる受診予定は「リハビリテーションを利用する予定」に含まれないため
訪問リハ・通所リハ等を利用する 対象 介護保険によるリハビリテーションへの移行予定があるため
居宅介護支援事業所でケアプランを作成してもらうだけ 対象外 ケアプラン作成予定だけではリハビリテーションの利用に該当しないため
障害福祉サービスによるリハを利用する 対象 障害福祉サービスによるリハビリテーションへの移行予定があるため

したがって、退院前カンファレンス等では「退院後に関わる事業所はどこか」だけでなく、その先で実際にリハビリテーションを利用する予定があるかまで確認することが判断の分かれ目になります。

介護保険によるリハビリテーションは何を指すか

令和8年度改定の疑義解釈では、ここでいう介護保険によるリハビリテーションとして、次のサービスが示されています。

  • 訪問リハビリテーション
  • 通所リハビリテーション
  • 介護予防訪問リハビリテーション
  • 介護予防通所リハビリテーション
  • 介護保険施設で、医師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士により行われる、高次脳機能障害者に適したリハビリテーション

「介護保険サービスを利用する」というだけではなく、リハビリテーションの利用予定があるかを確認することが必要です。

院内では「対象・説明・移行予定・同意・文書提供」をつなげて確認する

実務では、制度上の要件を1つの流れとして確認できるようにしておくと、退院直前の確認漏れを減らしやすくなります。ただし、以下の項目は厚生労働省が「この項目名で記録すること」と定めた7点セットではなく、公式要件を院内で確認しやすくするための実務上の整理です。

院内で確認しておきたい実務項目
段階 確認すること 記録しておくと確認しやすい内容
対象確認 別表第九の所定状態、180日上限への該当 対象となる区分、確認日
支援先情報 地域の高次脳機能障害者支援センター等の情報 患者・家族等へ説明・提供した内容と実施日
退院後の予定 医療・介護・障害福祉によるリハへの移行予定 利用予定先と利用予定サービス
同意 利用予定先への計画書等の提供について同意を確認 同意の有無と確認日
計画書等 3月以内に作成されたリハビリテーション総合実施計画書等か 使用する計画書等の作成日
文書提供 対象となる利用予定先へ文書提供したか 提供先、提供日など院内で追跡できる情報

記録例は「2つの情報提供」が分かるように分ける

院内記録では、患者・家族等への支援先情報提供と、利用予定先への計画書等の提供を一文にまとめすぎない方が確認しやすくなります。

記録例(院内運用例)

退院後の高次脳機能障害に関する地域支援先について、患者・家族へ説明し情報を提供した。退院後は通所リハビリテーション利用予定。利用予定先へのリハビリテーション総合実施計画書等の文書提供について同意を確認し、作成日を確認の上、利用予定先へ提供した。

実際の記録方法、同意確認方法、個人情報の取り扱い、文書送付方法は、自院の規程や診療録運用に合わせて統一してください。

退院前に迷いやすい3つのポイント

迷ったときは、「対象患者か」「誰への情報提供か」「本当にリハ利用予定があるか」の3点へ戻ると整理できます。

高次脳機能障害の退院支援で混同しやすいポイント
迷いやすい点 整理
高次脳機能障害があれば全員対象か 支援先情報提供の対象は、別表第九の所定状態に該当する180日上限の患者として確認する
患者・家族へ渡す情報と、事業所へ送る計画書は同じ条件か 別ルート。地域支援先情報の提供と、条件該当時の計画書等の文書提供を分ける
退院後に関わる先なら計画書を送るのか 送付先はリハビリテーション利用予定先。受診のみ、ケアプラン作成のみは含まない

よくある質問

Q1. 高次脳機能障害がある患者は全員、退院時の情報提供対象ですか?

全員という整理ではありません。施設基準では、別表第九の「高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害、重度の頸髄損傷及び頭部外傷を含む多部位外傷の場合」に該当する、入院期間上限180日の患者について、退院時に支援先情報を説明・提供することが示されています。

Q2. 退院後に外来受診する病院にもリハビリテーション総合実施計画書等を送りますか?

単なる受診予定だけであれば、今回の要件における文書提供先には含まれません。退院後に医療保険、介護保険または障害福祉サービスによるリハビリテーションを利用する予定があるかを確認します。

Q3. ケアマネジャーが所属する居宅介護支援事業所も文書提供先ですか?

ケアプランの作成を受ける予定だけでは、リハビリテーション総合実施計画書等の文書提供先には含まれません。疑義解釈では、単にケアプラン作成を受ける予定や、担当介護支援専門員が所属する居宅介護支援事業所等は文書提供先に含まないとされています。

次に確認したい記事

参考文献

  1. 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定:回復期リハビリテーション病棟での高次脳機能障害者への退院支援. 2026. 厚生労働省資料
  2. 厚生労働省保険局医療課. 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて. 令和8年3月5日保医発0305第7号. 2026. 厚生労働省通知
  3. 厚生労働省保険局医療課. 疑義解釈資料の送付について(その2). 2026年4月1日事務連絡. 厚生労働省資料

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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