入退院支援加算と介護支援等連携指導料の違い|令和 8 年改定で迷わない使い分け
結論からいうと、入退院支援加算と介護支援等連携指導料は「どちらか一方を選ぶ代替関係」ではなく、退院支援の中で役割が異なる評価です。入退院支援加算は病棟全体の支援体制・プロセスを評価し、介護支援等連携指導料は退院時の具体的な連携行為を評価する位置づけとして整理すると、算定判断と記録設計が安定します。
令和 8 年改定では、地域連携・退院後支援への接続がより重視される流れが明確です。したがって、現場では「会議を開く」より先に、対象抽出→連携実施→記録証跡を同じ様式で回せる運用へ寄せることが実務上の最適解です。関連して、高次脳機能障害の退院時情報提供とも連動させると、退院後の支援接続を一貫して管理できます。
まず結論|2 つの評価の違いを 1 分で把握
迷いの原因は、どちらも「退院支援」を扱うため似て見える点です。実際は、評価対象が異なるため、比較軸を固定すると判定が早くなります。
| 比較軸 | 入退院支援加算 | 介護支援等連携指導料 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 病棟の入退院支援体制を評価 | 退院時の具体的な連携行為を評価 |
| 評価の単位 | 体制・プロセス(病棟運用) | 個別患者への連携実施 |
| 実務の核 | 早期抽出、カンファ運用、支援計画 | 提供先調整、情報共有、説明と同意 |
| 記録で重要 | 対象判定根拠、支援経過、会議記録 | 提供先、提供内容、実施日時、担当者 |
| よくある失点 | 対象抽出が遅く退院前に集中 | 連携は実施したが記録証跡が不足 |
使い分けフロー|入院時から退院時まで
実務では、時系列で役割を分けると混乱が減ります。次の 4 フェーズで運用を固定してください。
1. 入院時( 48 時間〜 72 時間)
- 退院支援が必要な患者をスクリーニング(家族支援、介護負担、認知・高次脳機能、社会資源)
- 入退院支援加算の対象抽出を開始
- 初期情報を病棟共通様式へ記録
2. 中間期(退院 2〜3 週前)
- 退院後に関与する介護・福祉・在宅関係者を仮決定
- カンファで課題と目標を共有( ADL / IADL / リスク)
- 連携指導料に関わる連絡・調整の準備を開始
3. 退院前(最終カンファ)
- 連携先、情報提供手段(書面・電話・面談)を確定
- 患者・家族への説明と同意確認
- 連携実施の証跡(いつ、誰が、どこへ、何を)を必ず残す
4. 退院時〜退院後
- 連携後の未接続リスクを確認し、必要時は追跡連絡
- 再入院/再相談の兆候をチームで共有
会議運用の型は、退院前カンファの議題固定スクリプトを併用すると、部署間の言葉のズレを減らせます。
監査で詰まりやすい記録ポイント
算定漏れの多くは「連携したが証跡が弱い」パターンです。次の最小セットをテンプレ化してください。
| 項目 | 記録する内容 | 実務ポイント |
|---|---|---|
| 対象判定 | 退院支援必要性の根拠(生活課題・介護力・社会資源) | 評価者と判定日を明記 |
| カンファ実施 | 開催日、参加職種、合意事項 | 議題を固定化して抜け漏れ防止 |
| 連携先情報 | 事業所/担当者/連絡先 | 正式名称で統一 |
| 情報提供内容 | 機能、ADL、リスク、必要配慮、サービス提案 | 抽象語を避け具体化 |
| 説明と同意 | 患者・家族説明の実施記録、同意の有無 | 実施者・日時を必ず記録 |
| 連携実績 | 提供日、提供手段、担当者 | 「予定」ではなく「実施」で残す |
現場の詰まりどころ|よくある失敗と対策
| 失敗 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 2 つを同じものとして扱う | 評価対象(体制 vs 個別連携)の区別が曖昧 | 比較表を病棟手順書の先頭に掲載 |
| 退院直前に業務が集中 | 入院時抽出が遅い | 入院初期のスクリーニングを必須化 |
| 連携はしたが算定できない | 提供内容・実施日時の記録不足 | 記録テンプレを 1 画面で完結させる |
| 職種ごとに記録の言葉が違う | 共通語彙がない | カンファ議事録の用語集を統一 |
よくある質問(FAQ)
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Q1. 入退院支援加算と介護支援等連携指導料は同日に扱えますか?
A. 実務では、同じ退院支援プロセス内で関与することがあります。ただし、評価対象と必要記録が異なるため、施設基準・算定要件・算定可否は最新の告示・通知と院内ルールで必ず確認してください。
Q2. どちらを先に整備すべきですか?
A. 先に入退院支援加算の運用基盤(対象抽出・カンファ・経過記録)を固め、その上で個別連携の記録を連携指導料に対応させると、現場の負担が増えにくくなります。
Q3. リハ職が最低限押さえるべき記録項目は?
A. ①生活課題の評価、②退院後リスク、③必要支援、④連携先に伝える配慮事項、⑤説明・同意、⑥連携実施実績です。6 項目で統一すれば運用が安定します。
Q4. 高次脳機能障害の患者では何を追加で見るべきですか?
A. 注意・記憶・遂行機能の生活影響と、退院後の支援接続の必要性を明確化してください。実装は 高次脳機能障害の退院時情報提供 で詳しく整理しています。
次の一手
- 改定全体の位置づけを確認する:診療報酬改定 2026 リハビリハブ
- 関連論点を先に読む:高次脳機能障害の退院時情報提供
- 会議運用を固定する:退院前カンファの議題固定スクリプト
- 計画書運用も合わせて最適化:リハ計画書簡素化の実務ポイント
- 環境面も点検する:教育体制・人員体制の無料チェックシート
参考文献
- 厚生労働省. 令和 8 年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(案). 2026. https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001631272.pdf
- 厚生労働省. 中央社会保険医療協議会 総会資料(令和 8 年度改定関連). 2026. https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo_128154.html
- 厚生労働省. 令和 8 年度診療報酬改定について. 2026. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 日本理学療法士協会. 令和 8 年度診療報酬改定 答申 理学療法士関連項目(資料). 2026-02-13. https://www.japanpt.or.jp/pt/function/asset/pdf/20260213_relational_pt_c.pdf
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


