身体障害者手帳(肢体不自由)の評価依頼|PT・OTの確認手順

制度・実務
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身体障害者手帳(肢体不自由)の評価依頼では、最初に「どの欄を評価するか」を確認します

身体障害者手帳の肢体不自由についてPT・OTへ評価依頼が来たとき、最初に確認したいのは「何を測るか」ではなく、どの障害区分・どの様式の・どの欄について所見を求められているかです。診断書・意見書を作成するのは身体障害者福祉法第15条の指定医であり、リハ職は依頼されたROM・MMT・麻痺、動作・活動などの客観的所見を整理して医師へ返します。

特に迷いやすいのが評価条件です。機能障害の程度は原則として義肢・装具等を装着しない状態で判断する一方、動作・活動では杖・装具・車いすなどを使用した状態を確認する項目があります。本記事では、この違いを中心に、評価依頼を受けてから医師へ返却するまでの流れを整理します。

身体障害者手帳(肢体不自由)の評価依頼における確認の流れ
図:身体障害者手帳(肢体不自由)の評価依頼は、障害区分と様式の確認、依頼された欄の確認、評価条件の切り分け、医師への返却の順で整理すると進めやすくなります。

この記事の結論

身体障害者手帳の評価依頼では、独自の「最小セット」を先に測るのではなく、①肢体不自由用の様式を確認 → ②依頼された欄を確認 → ③機能障害と動作・活動で評価条件を分ける → ④客観的所見を医師へ返す、の順に整理します。

PT・OTは所見を整理し、診断・等級判断とは分けて考えます

身体障害者手帳の申請に用いる診断書・意見書は、身体障害者福祉法第15条に基づく指定医が作成します。障害の認定や身体障害者手帳の交付事務は、都道府県・指定都市・中核市が行います。

そのため、PT・OTへの評価依頼では、「何級かを決める」ことより、医師が診断書・意見書を作成するために必要な客観的所見を整理することが実務上の役割になります。

身体障害者手帳の評価依頼|役割の整理
担当 役割
PT・OT 依頼されたROM、MMT、麻痺、動作・活動などを評価し、条件と所見を整理して医師へ返す
指定医 診察・検査所見などを総合し、診断書・意見書を作成する
自治体 提出された診断書・意見書等をもとに認定・交付事務を行う

身体障害者手帳に限らず、診断書などの評価依頼全般で「依頼内容をどう確認するか」を整理したい場合は、リハ職が評価依頼を受けたときの基本フローも参考にしてください。

評価を始める前に確認することは「障害区分・様式・依頼欄」です

評価前に最も重要なのは、使用する診断書・意見書を実際に確認することです。身体障害者手帳には複数の障害種別があり、本記事が対象とするのは「肢体不自由」です。

肢体不自由の評価依頼で最初に確認すること
確認すること 実務上の確認内容
障害区分 今回の申請・再認定が「肢体不自由」に関するものかを確認する
使用する様式 患者の居住地を担当する自治体が案内している最新の診断書・意見書を確認する
依頼された欄 ROM・MMT、麻痺、動作・活動など、医師がどの所見を必要としているか確認する

「身障手帳だからROM・MMT・ADLを一通り測る」と決めるのではなく、今回の障害と様式で何が必要なのかから逆算します。自治体によって手続きや様式の案内が異なることがあるため、院内に保存された古い用紙だけで判断せず、必要に応じて最新様式を確認します。

機能障害と動作・活動は、同じ条件で評価しません

肢体不自由の評価依頼で最も混同しやすいのが、機能障害を判断するための条件と、生活上の動作・活動を確認する条件の違いです。

機能障害と動作・活動|評価条件の違い
見るもの 基本的な考え方 確認例
機能障害 原則として義肢・装具等の補装具を装着しない状態で判断する ROM、MMT、麻痺、痙縮、運動失調など
動作・活動 様式に示された条件に従い、必要に応じて杖・装具・車いす等を使用した状態も確認する 立位、屋内移動、屋外移動、更衣など

たとえば短下肢装具を常用している患者でも、機能障害そのものを「装具を着ければ歩けるから軽い」と判断するものではありません。一方で、実際の動作・活動を記載するときには、装具や杖を使用してどこまで可能なのかが重要な情報になる場合があります。

肢体不自由の診断書作成資料でも、機能障害は一時的な最大能力ではなく、日常的に無理なく発揮できる能力で評価し、義肢・装具等を装着しない状態で判断する考え方が示されています。

評価条件を書き分ける

機能所見:「補装具なし」の条件を明確にする。
動作・活動:杖・装具・車いすなどを使用した場合は、その条件を明記する。

ROM・MMTは「数値だけ」で返さず、何を評価した値かを明確にします

上肢・下肢の肢体不自由では、MMTと他動ROMが機能障害を整理する基本的な情報になります。ただし、数値だけを切り取って返すのではなく、対象部位・運動方向・評価条件を対応させます。

ROMについては、身体障害認定の資料で他動ROMが基本として示されています。臨床上、自動ROMも確認した場合は、他動ROMと混同しないように分けて記載します。MMTも、どの関節運動を評価した値なのか分かる形にします。

一方、痙縮、運動失調、麻痺などではROM・MMTだけで実際の機能障害を十分に説明できないことがあります。この場合は、原因となる機能障害と生活上の支障がどうつながっているかを整理することが重要です。

動作・活動は「できる/できない」だけでなく条件を添えて返します

動作・活動欄では、結果だけではなく、何を使用し、どの程度の介助で可能なのかが分かるようにします。

身体障害者診断書の肢体不自由用様式には、立位や移動などについて、手すり・杖・松葉杖・義肢・装具・車いすなどの条件を確認する項目があります。したがって、「歩行可能」「移動困難」といった表現だけでは、実際の能力が十分に伝わらないことがあります。

動作・活動を返すときに区別したい情報
確認項目 記載の考え方
使用物品 杖、装具、車いす、手すり、自助具など
介助状況 自立、見守り、介助など実際の状態が分かるようにする
成立条件 屋内・屋外、距離、環境など、依頼欄の判断に必要な条件を補足する
機能障害との関係 麻痺、筋力低下、運動失調、拘縮などとの整合性を確認する

ADL低下そのものを、そのまま肢体不自由の機能障害の程度と置き換えないことも重要です。認知機能、高次脳機能、意欲、呼吸・循環状態など、別の要因によって動作能力が低下している場合があります。

医師へ返すときは「依頼された欄」に対応させて整理します

医師への返却は、固定の「3行」や独自フォーマットに合わせる必要はありません。診断書・意見書のどの欄に使う情報なのかが分かるように、必要な所見を対応させて返すことを優先します。

医師へ返却するときの整理項目
項目 記載する内容
対象 右上肢、左下肢、体幹など、今回評価した部位
評価条件 補装具の有無、他動ROMか、自動ROMを併記したかなど
客観的所見 ROM、MMT、麻痺、痙縮、運動失調など依頼された項目
動作・活動 必要に応じ、使用物品や介助条件を含めた実際の状態
補足 疼痛、疲労、認知機能など、所見の解釈に影響する要因

すべての項目を毎回埋めるという意味ではありません。依頼された欄と患者の障害像に必要な情報を選び、評価条件が分かる形で返します。

返却例|機能所見と動作条件を混ぜない

依頼内容:右下肢のROM・MMT、動作・活動

機能所見:補装具なしで評価。対象関節ごとに他動ROM・MMTを記載。

動作・活動:普段使用している装具・杖などがある場合は、その使用条件と介助状況を記載。

補足:疼痛、痙縮、運動失調など、数値や動作に影響する所見があれば追記。

具体的なROM・MMTと動作・活動の整理方法は、身体障害者手帳(肢体不自由)のROM・MMT・動作・活動の整理で詳しくまとめています。

身体障害者手帳の評価依頼で避けたい3つの間違い

評価依頼で手戻りにつながりやすいのは、様式を見ずに評価を始めること、機能障害と生活条件を混ぜること、等級判断までリハ職だけで完結させることです。

評価依頼で避けたい間違い
避けたい対応 なぜ問題か 見直し方
「身障手帳だから」と一律の評価セットを測る 障害区分や依頼欄と合わない所見が増える 様式と依頼欄を先に確認する
すべて普段の装具あり条件で評価する 機能障害そのものと、補装具使用時の活動能力が混在する 機能障害と動作・活動で条件を分ける
ADLの介助量だけで等級を推定する 肢体不自由以外の要因でADLが低下している可能性がある 機能障害と動作・活動の整合性を確認する

よくある質問

Q1. PT・OTが身体障害者手帳の等級を決めてもよいですか?

PT・OTは、依頼されたROM・MMT・麻痺、動作・活動などの客観的所見を整理して医師へ返します。診断書・意見書は身体障害者福祉法第15条の指定医が作成し、最終的な認定・交付事務は自治体が行います。

Q2. 装具を普段使っている患者は、装具ありで評価すればよいですか?

評価する内容によって分けます。肢体不自由の機能障害の程度は、原則として義肢・装具等を装着しない状態で判断します。一方、動作・活動では、様式に従って杖・装具・車いすなどを使用した条件を確認する項目があります。

Q3. ROMとMMTは全関節を測ればよいですか?

まず使用する様式と依頼された部位・欄を確認します。必要な部位を漏れなく評価することが重要であり、「全員に同じ最小セット」を測ることが目的ではありません。

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参考文献

  1. 公益社団法人日本リハビリテーション医学会 障がい者福祉委員会. 身体障害者診断書の書き方:総論・肢体不自由. 監修:厚生労働省、国立障害者リハビリテーションセンター. 厚生労働省資料.
  2. 厚生労働省. 身体障害者障害程度等級表の解説(身体障害認定基準)について. 厚生労働省法令等データベースサービス.
  3. 厚生労働省. 身体障害認定基準の取扱い(身体障害認定要領)について. 厚生労働省法令等データベースサービス.
  4. e-Gov法令検索. 身体障害者福祉法. e-Gov法令検索.
  5. 日本整形外科学会, 日本リハビリテーション医学会. 関節可動域表示ならびに測定法(2022年改訂). PDF.

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者が実務で使いやすい情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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