嚥下調整食の特別食加算は「誰に」「どの食事を出すか」で判断します
嚥下調整食の特別食加算で迷いやすいのは、「VE / VF をしていないと算定できないのか」「刻み食やゼリーも対象になるのか」という点です。結論からいうと、VE / VF は必須ではありません。ただし、多職種評価を踏まえて医師が嚥下調整食の必要性を判断し、食事箋を発行していることが前提です。
本記事では、摂食嚥下機能回復体制加算ではなく、特別食加算としての嚥下調整食に絞って、対象患者、食事の条件、算定できないケース、記録で残す最小セットを整理します。この記事を読むと、現場で「算定できるかどうか」を確認する順番が決めやすくなります。
結論:医師の食事箋、多職種評価、常食同等の食事設計をそろえます

嚥下調整食の特別食加算は、対象患者の要件と食事内容の要件を分けて確認すると整理しやすいです。対象患者は、医師、看護師、言語聴覚士、管理栄養士などの多職種評価を踏まえ、医師が必要と判断し、食事箋を発行した患者です。
食事内容は、嚥下調整食分類2021を参考にした安全で嚥下しやすい食形態であることに加え、常食と同等の盛り付け、味や香り、温度、栄養量に配慮されていることが重要です。つまり、単に「やわらかい」「刻んである」だけでは不十分です。
5分で確認する算定判断フロー
算定可否は、次の順番で確認すると現場で迷いにくくなります。
- 摂食機能または嚥下機能の低下が疑われるかを確認する
- 医師、看護師、ST、管理栄養士などで評価内容を共有する
- 医師が嚥下調整食の必要性を判断し、食事箋を発行しているか確認する
- 提供する食事が常食同等の献立として成立しているか確認する
- ミールラウンド等で継続・変更・中止を見直す
この流れのどこかが抜けると、あとから算定根拠を説明しにくくなります。特に、食事箋と見直し記録はセットで残しておくと安全です。
対象患者:VE / VF は必須ではありません
特別食加算の嚥下調整食では、VE / VF の実施だけで対象患者を決めるわけではありません。疑義解釈では、内視鏡下嚥下機能評価や嚥下造影は必須ではないと整理されています。
ただし、検査が不要という意味ではありません。必要に応じて検査を行うことはありますが、制度上の判断では、食事場面の観察、多職種評価、医師判断、食事箋の発行が重要です。「VE / VF がないから不可」と短絡せず、評価と判断の流れが残っているかを確認します。
算定できる食事:食形態だけでなく1食として成立しているかを見ます
加算対象となる嚥下調整食は、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の嚥下調整食分類2021を参考に、安全で嚥下しやすいように調整された食事です。
実務では、食形態だけでなく、盛り付け、味や香り、温度、栄養量まで含めて確認します。常食と比べて、見た目や栄養量が大きく損なわれている場合は、特別食加算の対象として説明しにくくなります。
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| 観点 | 確認ポイント | 実務メモ |
|---|---|---|
| 対象患者 | 多職種評価、医師判断、食事箋 | VE / VF の有無だけで決めない。 |
| 食形態 | 嚥下調整食分類2021を参考にする | 安全に嚥下しやすいテクスチャーに整える。 |
| 食事の完成度 | 盛り付け、味、香り、温度、栄養量 | 単なる刻みやペーストではなく、1食として成立しているかを見る。 |
| 見直し | ミールラウンド等で継続判断 | 常食が適切になった場合は、速やかに食事変更を検討する。 |
算定できないケース:刻み食、訓練食品、栄養量不足は注意します
嚥下調整食という名称がついていても、すべてが特別食加算の対象になるわけではありません。常食を刻んだだけ、刻みにとろみをかけただけ、主食のみを嚥下調整食にした場合は、対象として説明しにくい代表例です。
また、ゼリーなどの嚥下訓練食品は、治療食としての嚥下調整食とは分けて考えます。経管栄養を併用している場合も、提供している嚥下調整食が1食の献立として常食同等の栄養量を確保できているかを確認します。
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| 場面 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 多職種評価があり、医師が食事箋を発行している | OKに寄りやすい | 対象患者の判断根拠が残るため。 |
| VE / VFは未実施だが、食事場面と多職種評価で必要性を判断している | OKに寄りやすい | VE / VFは必須ではないため。 |
| 常食を刻んだだけ | NG | 嚥下調整食としての設計が不十分なため。 |
| 刻みにとろみをかけただけ | NG | 単なる加工であり、食事全体の要件を満たしにくいため。 |
| 主食だけを嚥下調整食にした | NG | 1食の献立としての配慮が不足するため。 |
| 嚥下訓練用ゼリーのみを提供している | NGに寄りやすい | 訓練食品と治療食は分けて考えるため。 |
| 経管栄養併用で、経口の1食が常食同等の栄養量を満たしていない | NGに寄りやすい | 1食として必要な栄養量を確認する必要があるため。 |
品質管理:計器測定より責任者管理と見直しが重要です
疑義解釈では、嚥下調整食の硬さ、付着性、凝集性などを計器で測定し、一定基準を満たすことまでは求められていません。したがって、機器がないことだけで算定不可と判断する必要はありません。
一方で、嚥下調整食に係る責任者が品質管理を行うことは重要です。さらに、ミールラウンドなどで摂取状況や必要性を確認し、常食が適切と判断された場合は速やかに食事変更を検討します。
現場の詰まりどころ:体制加算と特別食加算を混ぜないことが大切です
現場で混乱しやすいのは、摂食嚥下機能回復体制加算と、嚥下調整食の特別食加算を同じものとして読んでしまうことです。体制加算はチーム体制やST要件が中心ですが、特別食加算は対象患者、医師の食事箋、食事内容、品質管理が中心です。
もう1つの失敗は、「刻み食だから対象」「VE / VFがないから対象外」と単純化してしまうことです。算定判断では、検査名や食事名だけでなく、評価、判断、食事設計、見直しがそろっているかを確認します。
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記録で残す最小セット:食事箋、評価、見直しの3点です
算定根拠をあとから確認できるようにするには、長い文章よりも、誰が何を根拠に嚥下調整食を必要と判断し、いつ見直したかが追える記録が大切です。
最低限、①医師の食事箋、②多職種評価の要点、③ミールラウンド等での継続・変更判断、の3点を残します。特に、常食へ戻せるかどうかの判断日は、算定継続の妥当性にも関わります。
1行メモ例:判断根拠を短く残します
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| 場面 | メモ例 |
|---|---|
| 開始判断 | 食事場面と多職種評価より嚥下調整食が必要と判断。医師食事箋発行。 |
| 継続判断 | ミールラウンドで現行形態の継続が適切と判断。摂取量は概ね安定。 |
| 変更判断 | 多職種評価で常食への変更可と判断。2026年○月○日より食形態変更。 |
| 算定不可判断 | 訓練食品中心で1食としての栄養量を満たさないため、特別食加算は算定しない。 |
よくある質問(FAQ)
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Q1.VE / VFをしていないと算定できませんか?
必須ではありません。多職種評価などにより、医師が嚥下調整食の必要性を判断し、食事箋を発行していることが重要です。
Q2.刻み食なら嚥下調整食として算定できますか?
できません。常食を刻んだだけのものや、刻みにとろみをかけただけのものは対象として説明しにくいです。
Q3.計器で硬さや付着性を測定する必要がありますか?
計器等での測定までは求められていません。ただし、嚥下調整食に係る責任者が品質管理を行う必要があります。
Q4.嚥下訓練用ゼリーも算定対象ですか?
訓練食品は、治療食としての嚥下調整食とは分けて考えます。1食の献立として常食同等の栄養量を満たすかも確認が必要です。
Q5.経管栄養を併用している患者は算定できませんか?
一律に不可ではありません。経口で提供する嚥下調整食が、1食の献立として常食同等の栄養量を確保できているかを確認します。
次の一手
嚥下調整食の特別食加算は、制度全体と体制加算を分けて読むと整理しやすくなります。次は次の順番で確認してください。
参考資料
- 厚生労働省保険局医療課.疑義解釈資料の送付について(その1).2026年3月23日.資料を見る
- 厚生労働省保険局医療課.入院時食事療養及び入院時生活療養の食事の提供たる療養の基準等の一部改正に伴う実施上の留意事項について.2026年3月5日.資料を見る
- 厚生労働省.令和8年度診療報酬改定 個別改定項目について.資料を見る
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会.日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021.公式サイトを見る
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下


