- 嚥下調整食の特別食加算は「対象患者」と「食事の中身」を分けて考えると迷いません
- 結論:特別食加算は「医師の食事箋+多職種評価+常食同等の食事設計」で考えます
- 対象患者: VE / VF は必須ではありません
- 算定できる食事の条件:食形態だけでなく「 1 食として成立しているか」を見ます
- 算定できないケース:訓練食品、単なる刻み、栄養量不足は要注意です
- 品質管理とミールラウンド:計器測定より「責任者の管理」と「見直しの継続」です
- 現場の詰まりどころ:体制加算と特別食加算を同じ記事で読もうとして混ざる
- 記録で残す最小セット:食事箋、評価、見直しの 3 点をそろえます
- 1 行でそろえる判定メモ例
- よくある質問(FAQ)
- 次の一手
- 参考資料
- 著者情報
嚥下調整食の特別食加算は「対象患者」と「食事の中身」を分けて考えると迷いません
嚥下調整食の特別食加算で止まりやすいのは、「誰が対象か」と「どんな食事なら算定できるか」が混ざりやすいことです。結論からいうと、対象患者は VE / VF の有無だけで決まるのではなく、多職種評価と医師の判断、食事箋の発行で整理し、食事側は常食と同等の盛り付け・味や香り・温度・栄養量に配慮された嚥下調整食かで判断すると迷いにくくなります。
本記事では、体制加算ではなく特別食加算としての嚥下調整食に絞って、対象患者、多職種評価、品質管理、算定できないケースを整理します。関連:摂食嚥下機能回復体制加算の要件や ST 体制を先に確認したい方は 摂食嚥下機能回復体制加算【2026 改定】ST 要件と加算 3 実績 を先に読むと全体像がつかみやすいです。
結論:特別食加算は「医師の食事箋+多職種評価+常食同等の食事設計」で考えます
今回の改定では、嚥下調整食の特別食加算について、対象患者の考え方と食事側の要件が具体化されました。対象患者は、内視鏡下嚥下機能評価や嚥下造影が必須ではなく、医師、看護師、 ST 、管理栄養士などの多職種で評価を行い、適切な栄養量と内容を有する嚥下調整食が必要だと医師が判断し、食事箋を発行した患者です。
一方で、食事の側では、学会分類 2021 を参考にした安全で嚥下しやすい食形態であることに加え、常食と同等の盛り付け、味や香り、適切な温度、栄養量に配慮されていることが求められます。つまり、食形態だけ整っていても、 1 食としての完成度が足りなければ算定しにくい、という整理です。
対象患者: VE / VF は必須ではありません
特別食加算の嚥下調整食で誤解されやすいのが、「 VE / VF で確認できた患者だけが対象なのか」という点です。疑義解釈では、 VE / VF は必須ではないと整理されています。したがって、ベッドサイド評価、食事場面の観察、多職種カンファレンスなどを通じて、嚥下調整食の必要性を判断する運用でも対象になりえます。
ただし、単に「食べにくそうだから」では弱いです。必要なのは、多職種で評価を行い、適切な栄養量及び内容を有する嚥下調整食が必要であると医師が判断し、食事箋を発行していることです。つまり、観察だけで終わらせず、医師判断と食事箋までつなげてはじめて制度上の形が整います。
算定できる食事の条件:食形態だけでなく「 1 食として成立しているか」を見ます
通知では、加算対象となる嚥下調整食は、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の嚥下調整食分類 2021 を参考に、安全で嚥下しやすいよう適切に調整されたテクスチャーを持ち、食欲を促す食感とを両立した食形態とされています。
さらに実務で大事なのは、献立として常食と同等の盛り付け、味や香り、適切な温度、栄養量に配慮されたものであることです。つまり、「やわらかい」「まとまりがある」だけで終わらず、見た目、温度、栄養量まで含めて “ 食事として成立しているか ” を見ます。
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| 観点 | 見るポイント | 実務メモ |
|---|---|---|
| 対象患者 | 多職種評価+医師判断+食事箋 | VE / VF の有無だけで決めない方が整理しやすいです。 |
| 食形態 | 学会分類 2021 を参考にしたテクスチャー | 硬さ、付着性、凝集性などを “ 安全に食べられる形 ” に整えます。 |
| 食事としての完成度 | 盛り付け、味や香り、温度、栄養量 | 単なる形態調整ではなく、 1 食として成立しているかを見ます。 |
| 見直し | 定期的な多職種ミールラウンド | 常食でよいと判断されたら、速やかに食事変更を行います。 |
算定できないケース:訓練食品、単なる刻み、栄養量不足は要注意です
通知では、単にピューレやペースト状にしたもの、常食を刻んだだけのもの、刻みにとろみをかけただけのもの、主食のみを嚥下調整食とした場合は該当しないとされています。つまり、見た目だけ変えた食事や、一部だけ調整した食事では、特別食加算の対象としては弱いです。
また疑義解釈では、嚥下訓練のためのゼリー等の嚥下訓練食品を提供した場合や、経管栄養併用を含めて患者に必要な栄養量が 1 食の献立として常食提供時と同等に確保できていない嚥下調整食は算定できないと整理されています。したがって、訓練用食品と治療食としての嚥下調整食は分けて考える必要があります。
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| 場面 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 多職種評価があり、医師が食事箋を発行 | OK に寄りやすい | 対象患者の制度要件に沿っています。 |
| VE / VF は未実施だが、食事場面と多職種評価で必要性を判断 | OK に寄りやすい | VE / VF は必須ではありません。 |
| 常食を刻んだだけ | NG | 通知上、嚥下調整食には該当しません。 |
| 刻みにとろみをかけただけ | NG | 食形態調整として不十分です。 |
| 主食だけを嚥下調整食にした | NG | 献立として常食同等の配慮が不足します。 |
| ゼリー等の嚥下訓練食品を提供した | NG に寄りやすい | 訓練食品は治療食としての嚥下調整食と分けて考えます。 |
| 経管栄養併用だが、 1 食として常食同等の必要栄養量が確保できていない | NG | 疑義解釈では算定できない整理です。 |
品質管理とミールラウンド:計器測定より「責任者の管理」と「見直しの継続」です
疑義解釈では、特別食加算の対象となる嚥下調整食について、硬さ、付着性、凝集性などを計器等で測定して一定基準を満たすことまでは求めていません。ここは現場にとって大きい点で、機器測定の有無だけで線引きする必要はありません。
その代わりに、嚥下調整食に係る責任者が品質管理を行うこと、さらに通知では定期的な多職種ミールラウンドを行って必要性や摂取量を確認し、常食が適していると判断された場合は速やかに食事変更を行うことが求められています。つまり、単発の作成技術よりも、継続的な見直し体制の方が重要です。
現場の詰まりどころ:体制加算と特別食加算を同じ記事で読もうとして混ざる
現場でよく起きるのは、摂食嚥下機能回復体制加算の話と、特別食加算の嚥下調整食の話を同じ文脈で読んでしまうことです。体制加算は ST 要件やチーム体制の話が中心ですが、特別食加算は対象患者、食事箋、食事内容、品質管理が主役です。
もう 1 つの詰まりどころは、「 VE / VF がないと算定できない」「刻み食なら全部対象」「訓練用ゼリーでも算定できる」といった思い込みです。今回の整理では、多職種評価と医師判断、常食同等の献立として成立しているかが核なので、判断軸をそこへ戻すと迷いにくくなります。
記録で残す最小セット:食事箋、評価、見直しの 3 点をそろえます
算定可否をあとで説明できるようにするには、長文記録よりも、どの根拠で嚥下調整食を選び、誰が見直したかが追える形の方が実務で回ります。最低限、① 医師の食事箋、② 多職種評価の要点、③ ミールラウンド等での見直し結果、の 3 点は追える状態にしておくと整理しやすいです。
とくに、常食へ戻せるかどうかの見直しは、算定の継続可否にも直結します。必要性が薄れたのに漫然と継続すると説明しにくくなるため、食形態変更の判断日と理由を短く残しておく方が安全です。
1 行でそろえる判定メモ例
スマホでは表を横スクロールできます。
| 場面 | メモ例 |
|---|---|
| 対象患者の判断 | 食事場面と多職種評価より嚥下調整食が必要と判断。医師食事箋発行。 |
| 食事形態の継続 | 本日のミールラウンドで現行形態継続が適切と判断。摂取量良好。 |
| 常食へ変更 | 多職種評価で常食可と判断。 2026/○/○ より食形態変更。 |
| 算定不可の判断 | 訓練食品中心で 1 食として必要栄養量を満たさず。特別食加算は算定しない。 |
よくある質問(FAQ)
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Q1. VE / VF をしていないと、特別食加算は算定できませんか?
必須ではありません。多職種評価等により、適切な栄養量と内容を有する嚥下調整食が必要と医師が判断し、食事箋を発行した患者が対象です。
Q2.刻み食なら全部、嚥下調整食として算定できますか?
できません。常食を刻んだだけのものや、刻みにとろみをかけただけのものは通知上の対象外です。常食同等の献立として成立しているかまで確認が必要です。
Q3.計器で硬さや付着性を測らないといけませんか?
計器等での測定は不要です。ただし、嚥下調整食に係る責任者が品質管理を行う必要があります。機器の有無より、管理体制が大事です。
Q4.ゼリーなどの嚥下訓練食品を出した場合も算定できますか?
訓練食品の提供や、 1 食として常食同等の必要栄養量が確保できていない場合は算定できません。訓練と治療食は分けて整理した方が安全です。
次の一手
このテーマは、単独で読むよりも「改定の全体像 → 体制加算 → 特別食加算」の順で確認した方が整理しやすいです。次は次の 3 本をつなげておくと、摂食嚥下の制度理解が安定します。
参考資料
- 厚生労働省保険局医療課.疑義解釈資料の送付について(その 1 ). 2026 年 3 月 23 日.資料を見る
- 厚生労働省保険局医療課.入院時食事療養及び入院時生活療養の食事の提供たる療養の基準等の一部改正に伴う実施上の留意事項について. 2026 年 3 月 5 日.資料を見る
- 厚生労働省.令和 8 年度診療報酬改定 – 6. 入院(共通事項).資料を見る
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会.嚥下調整食学会分類 2021 .公式サイト
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


