外的キューは「場面」と「反応」で選ぶと使い分けやすくなります
パーキンソン病の歩行では、床目印、メトロノーム、声かけなどの外的キューが使われます。大切なのは、どれが一番よいかを決めることではなく、歩幅が詰まる場面、リズムが乱れる場面、方向転換で止まりやすい場面を分けて試すことです。この記事では、PT向けに外的キューの選び方、効きにくいときの見直し方、記録例を整理します。
FOGが評価場面で出にくい場合は、先に すくみ足が評価で出ないときの見方 を確認すると、場面設定を整理しやすくなります。
外的キューの使い分けは「歩幅」「リズム」「切り替え」で考えます
外的キューは、歩行を外から補助するための手がかりです。視覚キューは足を出す位置を示しやすく、聴覚キューは歩行リズムをそろえやすく、声かけは開始や方向転換などの切り替えを助けやすい特徴があります。
臨床では、同じ患者さんでも場面によって合うキューが変わります。直線歩行ではメトロノームが合っても、ドア前や方向転換では床目印や短い声かけの方が合うことがあります。

スマホでは表を横スクロールできます。
| キュー | 合いやすい場面 | 注意点 | 記録の一言 |
|---|---|---|---|
| 床目印 | 歩幅が詰まりやすい、ドア前で足が出にくい、狭所で一歩目が小さい | 視線が下がりすぎる場合や、周囲の情報が多い場面では使いにくい | 床目印で一歩目の歩幅が広がったかを書く |
| メトロノーム | 直線歩行でリズムが乱れる、歩調がばらつく、テンポを保ちたい | テンポが速すぎると小刻みや焦りが増えることがある | テンポ設定と歩幅・歩速の変化をセットで書く |
| 声かけ | 歩き始め、方向転換、停止後の再開、短い場面の切り替え | 言葉が長い、毎回表現が変わる、複数指示になると再現しにくい | どの言葉で動きやすかったかをそのまま書く |
床目印は「歩幅の目標」を作りたいときに使います
床目印は、次の一歩をどこへ出すかを見えやすくしたい場面で使いやすい方法です。歩幅が小さくなりやすい人、ドア前や狭い通路で足が出にくい人、目標物があると一歩目が出やすい人では試す価値があります。
ただし、床目印を置くだけで改善するとは限りません。視線が下がりすぎる、周囲が散らかっている、方向転換や会話などの課題が重なっている場合は、かえって動きにくくなることもあります。
記録では「床目印を使用」だけでなく、どの場面で、歩幅がどう変わったかまで残すと再評価しやすくなります。
メトロノームは「歩調の乱れ」をそろえたいときに使います
メトロノームは、直線歩行や継続歩行でリズムが乱れやすい場合に使いやすい外的キューです。一定の拍に合わせることで、歩行速度や歩幅がそろいやすくなることがあります。
一方で、テンポ設定が合わないと小刻み歩行や焦りが増えることがあります。最初から速いテンポを狙うのではなく、普段の歩行リズムに近い設定から試し、歩幅、歩速、ふらつきの変化を確認します。
療養病棟や生活期の場面では、音が聞き取りにくい環境や注意が分散しやすい場面もあります。実際の使用場面に近い条件で確認することが大切です。
声かけは「動作の切り替え」を助けたいときに使います
声かけは、歩き始め、方向転換、停止後の再開など、短い場面で動作を切り替えたいときに使いやすい方法です。床目印やメトロノームの準備が難しい場面でも、その場で使いやすい点が利点です。
声かけは、長く説明するほど効果が落ちやすくなります。「一歩」「大きく」「右へ回る」など、短く一貫した言葉にすると、患者さんも担当者も再現しやすくなります。
新人PTでは、つい多く説明したくなる場面がありますが、外的キューとして使う声かけは短く、同じ言葉で、一度に一つに絞る方が臨床では扱いやすいです。
効きにくいときはキューの種類より条件を見直します
外的キューが効きにくいときは、すぐに別のキューへ変える前に、場面と条件を見直します。歩き始め、方向転換、狭所、直線歩行では、必要な支援が異なるためです。
特に、ON / OFF、疲労、時間帯、補助具、歩行路、二重課題の有無が混ざると、キューの効果を比較しにくくなります。「効いた・効かなかった」ではなく、どの条件では合い、どの条件では合いにくかったかを整理します。
| 詰まりどころ | 起こりやすい理由 | 立て直し方 |
|---|---|---|
| 毎回キューが違う | 反応の比較ができない | まず1種類に絞り、同じ場面で試す |
| 場面が混ざる | 開始、回転、狭所、直線で必要な支援が違う | 一場面ずつ分けて記録する |
| 条件固定が弱い | 薬剤状態、疲労、補助具の違いが影響する | 時間帯、ON / OFF、補助具、歩行路を残す |
| 指示が多すぎる | 注意負荷が増え、動きにくくなる | 言葉は短く、一度に一つだけにする |
記録は「場面・キュー・反応・次回条件」で残します
外的キューの記録は、種類名だけでは次回につながりません。「床目印を使用」「メトロノームを使用」だけでなく、どの場面で何がどう変わったかまで残すと、チームで共有しやすくなります。
おすすめは、場面、キュー、反応、次回条件の4点をそろえる方法です。短文でもよいので、再評価で同じ条件を再現できるように残します。
| 項目 | 記録例 |
|---|---|
| 場面 | ドア前で一歩目が出にくい場面で確認した。 |
| キュー | 床目印を使用。声かけは「大きく一歩」に統一した。 |
| 反応 | 床目印で一歩目の歩幅が拡大。方向転換では効果が乏しかった。 |
| 次回条件 | 次回は同時間帯・同補助具で、右回転時の短い声かけを確認する。 |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
床目印とメトロノームはどちらから試すとよいですか?
歩幅が詰まりやすい場面では床目印、歩調の乱れが目立つ場面ではメトロノームから試すと整理しやすいです。迷う場合は、直線歩行、歩き始め、方向転換を分けて反応を比べます。
声かけは何と言えばよいですか?
長い説明ではなく、「一歩」「大きく」「右へ回る」など短い言葉にします。毎回表現を変えず、一度に一つだけ伝えると再現しやすくなります。
外的キューが効いたり効かなかったりするのはなぜですか?
キューの種類だけでなく、場面、ON / OFF、疲労、注意負荷、補助具、環境条件の影響を受けるためです。条件をそろえて比較すると原因を整理しやすくなります。
複数のキューを同時に使ってもよいですか?
最初から重ねすぎると、何が効いたのか分かりにくくなります。まずは1種類で試し、反応を確認したうえで、必要な場面に限定して追加します。
次の一手
外的キューは、単独で覚えるより、パーキンソン病評価やFOGの確認手順とつなげて整理すると実践しやすくなります。
- 全体像に戻る:パーキンソン病の理学療法評価項目一覧
- FOGの確認を深める:パーキンソン病のすくみ足が評価で出ないときの見方
- 関連記事をまとめて辿る:パーキンソン病ハブ
参考文献
- Cosentino C, Putzolu M, Mezzarobba S, Cecchella M, Innocenti T, Bonassi G, et al. One cue does not fit all: A systematic review with meta-analysis of the effectiveness of cueing on freezing of gait in Parkinson’s disease. Neurosci Biobehav Rev. 2023;150:105189. DOI: 10.1016/j.neubiorev.2023.105189
- Ginis P, Nackaerts E, Nieuwboer A, Heremans E. Cueing for people with Parkinson’s disease with freezing of gait: A narrative review of the state-of-the-art and novel perspectives. Ann Phys Rehabil Med. 2018;61(6):407-413. DOI: 10.1016/j.rehab.2017.08.002
- Ghai S, Ghai I, Schmitz G, Effenberg AO. Effect of rhythmic auditory cueing on parkinsonian gait: A systematic review and meta-analysis. Sci Rep. 2018;8(1):506. DOI: 10.1038/s41598-017-16232-5
- Nieuwboer A, Kwakkel G, Rochester L, Jones D, van Wegen E, Willems AM, Chavret F, Hetherington V, Baker K, Lim I. Cueing training in the home improves gait-related mobility in Parkinson’s disease: the RESCUE trial. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2007;78(2):134-140. DOI: 10.1136/jnnp.2006.097923
- Domingos J, Keus SHJ, Dean J, de Vries NM, Ferreira JJ, Bloem BR. The European Physiotherapy Guideline for Parkinson’s Disease: Implications for Neurologists. J Parkinsons Dis. 2018;8(s1):S43-S45. DOI: 10.3233/JPD-181383
- Lee SJ, Yoo JY, Ryu JS, Park HK, Chung SJ. The effects of visual and auditory cues on freezing of gait in patients with Parkinson disease. Am J Phys Med Rehabil. 2012;91(1):2-11. DOI: 10.1097/PHM.0b013e31823c7507
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

