退院前訪問指導料の記録は「診療録3行+摘要欄1行」で整理します
退院前訪問指導料で止まりやすいのは、訪問した事実そのものではなく、診療録と摘要欄の記録が薄いことです。この記事では、算定要件の総論ではなく、診療録に何を書くか、摘要欄に何を残すかに絞って整理します。まずは「必要性・確認内容・指導内容」の3行と、「訪問指導日」の1行を固定し、院内で迷わず運用できる形を目指します。
算定要件や必要書類から確認したい方は、先に 退院前訪問指導料の算定要件と必要書類 を確認すると全体像をつかみやすいです。
先に結論|診療録は3要素、摘要欄は訪問日を残します
退院前訪問指導料の記録では、診療録に訪問の必要性・患家で確認した内容・本人や家族への指導内容を残し、摘要欄には訪問指導日を控える形が基本です。
特に2回算定する場合は、各訪問指導日を分けて整理しておく必要があります。請求前に思い出して書く運用では漏れやすいため、訪問当日に診療録メモや評価表の下段へ控えておくと安全です。

| 置き場所 | 残す内容 | 記録の考え方 |
|---|---|---|
| 診療録1行目 | 訪問の必要性 | なぜ患家確認が必要だったかを書く |
| 診療録2行目 | 確認内容 | 家屋構造・介護力・生活動線などを書く |
| 診療録3行目 | 指導内容 | 誰に何をどう説明したかを書く |
| 摘要欄 | 訪問指導日 | 2回算定時は各訪問日を分けて残す |
診療録は「必要性・確認内容・指導内容」の順で書きます
診療録では、長文にするよりも個々の患者に応じた内容が読めることが大切です。「退院前訪問指導を実施した」だけでは、何を確認し、何を指導したのかが分かりません。
臨床では、退院前訪問のあとに記録時間を十分に取れないこともあります。そのため、最初から3行の型を決めておくと、新人PTや病棟担当者でも記録のばらつきを減らしやすくなります。
| 要素 | 書く内容 | 記載の例 |
|---|---|---|
| 必要性 | なぜ訪問が必要だったか | 玄関段差、トイレ動線、浴室環境、介護力確認のため |
| 確認内容 | 患家で確認したこと | 家屋構造、寝室位置、福祉用具、主介護者の介助可否 |
| 指導内容 | 本人・家族へ伝えたこと | 移乗方法、歩行時の注意、見守り位置、福祉用具調整 |
まずは診療録3行テンプレで十分です
院内で最初にそろえるなら、細かい文章例よりもそのまま差し替えられる3行テンプレの方が使いやすいです。目的はきれいな文章を書くことではなく、必要な情報を抜けなく残すことです。
診療録3行テンプレ
① 退院後の在宅生活に向け、[玄関段差/トイレ動線/浴室環境/介護力]確認のため患家訪問を実施。
② 患家にて[寝室位置/トイレまでの動線/主介護者の介助可否/福祉用具設置状況]を確認。
③ 本人・家族へ[移乗方法/歩行時の注意点/見守り位置/退院後の留意点]を説明した。
診療録の記載例
記載例では、「訪問した」「説明した」で終わらせず、患者ごとの生活場面が分かるように書きます。家屋構造、介護力、動作の不安定さ、指導した内容を1セットにすると実務で使いやすくなります。
記載例1|玄関段差とトイレ動線が課題のケース
退院後の在宅復帰に向け、玄関段差およびトイレ動線確認のため患家訪問を実施。患家にて玄関上がり框、寝室からトイレまでの動線、夜間移動時の照明環境を確認した。本人・家族へ、玄関昇降時の介助位置、トイレ前での方向転換方法、夜間移動時は家族見守り下で行うことを説明した。
記載例2|介護力確認が主な課題のケース
退院後の在宅介護体制確認のため患家訪問を実施。主介護者は配偶者であり、日中は単独介助となる見込み。ベッド・車椅子間移乗に一部介助を要するため、家族へ移乗介助の手順、立ち上がり時の介助位置、疲労時は無理をせず訪問サービスへ相談することを説明した。
記載例3|浴室環境と福祉用具調整が課題のケース
退院後の入浴動作確認および福祉用具調整のため患家訪問を実施。浴室入口段差と浴槽またぎ動作に不安定性を認め、現状では見守りのみでの入浴は困難と判断した。家族へ浴室内での介助位置を説明し、シャワーチェア導入と手すり設置候補について共有した。
NG記録とOK記録の違い
退院前訪問指導料の記録で弱くなりやすいのは、患者ごとの差が出ていない記録です。抽象的な言葉を、観察した内容や指導した内容に置き換えるだけでも、記録の質は上がります。
| 場面 | NG記録 | OK記録 |
|---|---|---|
| 必要性 | 退院前訪問指導を実施した。 | 玄関段差と夜間トイレ動線確認のため患家訪問を実施した。 |
| 確認内容 | 家屋確認を行った。 | 玄関上がり框、寝室位置、トイレまでの動線、介助者動線を確認した。 |
| 指導内容 | 家族へ説明した。 | 家族へ移乗介助位置、方向転換時の見守り位置、手すり設置候補を説明した。 |
| 留意点 | 注意点を説明した。 | 夜間トイレは単独歩行を避け、家族見守り下で移動するよう説明した。 |
摘要欄は2回算定時の訪問指導日を先に控えます
摘要欄で特に注意したいのは、2回算定時の各訪問指導日です。1回目と2回目の訪問日を請求直前に確認しようとすると、記録が分散して漏れやすくなります。
実務では、摘要欄そのものを長く書くよりも、請求前に転記できるように訪問当日に日付メモを残すことが重要です。評価表、カンファレンスメモ、診療録メモのどこかに、訪問日が必ず残る運用にしておくと安定します。
| 算定パターン | 控える内容 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 1回算定 | 訪問実施日 | 院内メモとして訪問日を残しておくと確認しやすいです。 |
| 2回算定 | 1回目訪問日/2回目訪問日 | それぞれの訪問日を分けて控えます。 |
摘要欄メモ例
訪問指導日:令和○年○月○日
訪問指導日:令和○年○月○日、令和○年○月○日
院内では訪問当日から請求までを3段階で回します
記録の質を安定させるには、個人の文章力に頼るよりも、訪問当日から請求までの流れを短くする方が効果的です。
おすすめは、訪問時に要点をメモし、帰院後に診療録3行へ転記し、請求前に摘要欄の訪問日を確認する流れです。療養病棟や回復期病棟では、退院調整の情報が多職種に分散しやすいため、日付と指導内容を同じ場所で追えるようにしておくと後で確認しやすくなります。
| 段階 | やること | 止まりにくくするコツ |
|---|---|---|
| 訪問時 | 要点をメモする | 必要性、確認内容、指導内容、訪問日を残します。 |
| 帰院後 | 診療録3行へ転記する | 当日中に処理すると抜けが減ります。 |
| 請求前 | 摘要欄へ訪問日を転記する | 2回算定時は各訪問日を分けて確認します。 |
よくある失敗は「訪問内容が記録に残っていないこと」です
現場で多い失敗は、訪問内容自体は十分でも、記録に落ちていないことです。「家屋確認をした」「家族へ説明した」で止まると、何を確認し、何を指導したのかが読み取れません。
対策は、抽象語を減らして名詞+動作で書くことです。「段差確認」「移乗介助方法を説明」「夜間トイレ移動は見守り下で実施」など、具体的な場面に置き換えると記録として使いやすくなります。
| 失敗 | なぜ弱いか | 直し方 |
|---|---|---|
| 訪問理由がない | 必要性が読めません。 | 何を確認するための訪問かを1行目に入れます。 |
| 確認内容が抽象的 | 個別性が弱くなります。 | 玄関、寝室、トイレ、浴室、介護者など具体語で書きます。 |
| 指導内容が薄い | 何を誰に伝えたかが分かりません。 | 本人・家族など対象者と内容をセットで書きます。 |
| 訪問日メモがない | 摘要欄で漏れやすくなります。 | 訪問当日に日付を控えます。 |
よくある質問
各項目名をタップすると回答が開きます。
診療録は長文で詳しく書いた方がよいですか?
長文であることより、必要性、確認内容、指導内容が個別性をもって読めることが大切です。最初は3行テンプレで十分です。
摘要欄は1回算定でもメモしておいた方がよいですか?
院内運用としては、1回でも訪問日メモを残しておくと安全です。特に2回算定を扱う施設では、同じ運用にしておくと迷いにくくなります。
家屋構造や介護力はどこまで書けばよいですか?
すべてを細かく並べるより、退院後すぐ困る場面に関係する内容を優先します。玄関、トイレ、寝室、浴室、移乗、主介護者の介助可否などから整理すると書きやすいです。
2回算定時は診療録も2回分に分けた方がよいですか?
はい。1回目と2回目の訪問日、確認内容、指導内容が分かるように分けて残す方が整理しやすいです。
次の一手
この記事は、退院前訪問指導料の「記録の書き方」に絞ったページです。算定要件や必要書類から確認したい方は 退院前訪問指導料の算定要件と必要書類、似た退院支援項目との違いを整理したい方は 退院前訪問指導料と退院時共同指導料2の違い を続けて読むと整理しやすいです。
参考文献
- 厚生労働省. 別表第一 医科診療報酬点数表 B007 退院前訪問指導料. https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001665292.pdf
- 厚生労働省. 保険診療確認事項リスト(医科)令和6年度改定. https://www.mhlw.go.jp/content/001563227.pdf
- 厚生労働省. 診療報酬明細書の記載要領等. https://www.mhlw.go.jp/topics/2008/03/dl/tp0305-1az_0003.pdf
- 厚生労働省. 疑義解釈資料の送付について(その6). https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001703573.pdf
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・制度・記録の実務情報を発信。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下、退院支援

