離床10%減算は「端座位できたか」だけでは決まらない
離床10%減算で重要なのは、端座位に至ったかどうかだけではなく、記録上「離床へ向けた介入だった」と説明できるかです。この記事では、ベッド上ROM、起き上がり練習、ギャッジアップ、端座位未実施のケースを、監査で危ない記録と安全寄りの記録に分けて整理します。療養病棟や慢性期で、毎回離床できるとは限らない患者の記録を見直したいPT・OT・ST向けです。
離床関連の制度・監査対策をまとめて確認したい方へ
この記事は、離床10%減算のうち「記録例」と「監査で見られやすいポイント」に絞って解説しています。制度全体や離床レベルの整理は、以下の記事で確認できます。
令和8年度診療報酬改定では、「離床を伴わないリハビリテーション」に対して10%減算と1日2単位制限が導入されました。ただし、疑義解釈を見ると、「端座位に至らなかった=必ず減算」ではありません。
厚生労働省は、ベッド上から移動せず、ポジショニングまたは拘縮予防等を主目的とした他動的訓練のみを行う場合を、減算対象となる「特定の患者」として整理しています。一方で、離床を目指した過程、能動的な運動、座位保持へ向けた段階的介入などが含まれる場合は、減算対象外として整理できる可能性があります。
監査で危ない記録と安全寄りの記録
監査で危ないのは、実施内容が「ベッド上での他動的訓練のみ」に見えてしまう記録です。

現場で迷いやすいのは、「離床準備として股関節ROMを実施したが、端座位には至らなかった」というケースです。疑義解釈では、起立性低血圧を有する患者に対して、離床を目指して臥位から座位へ移行しようとしたものの、結果的に端座位に至らず終了した場合は、減算対象外となる例が示されています。
ただし、「離床準備」と書くだけでは十分ではありません。記録上、離床へ向けた目的、実施した段階、患者の反応、中止理由、次回方針が見えることが重要です。
| 危ない記録 | 安全寄りの記録 |
|---|---|
| ベッド上ROMのみ | 離床へ向けた段階的介入を記録 |
| 他動運動のみ | 自動運動・自動介助運動・起き上がり練習を記録 |
| 「離床準備」とだけ記載 | 目的・評価・反応・中止理由を記録 |
| 端座位未実施の理由がない | 血圧低下、倦怠感、疼痛など中止理由を記録 |
| 次回方針がない | 次回の離床計画や段階づけを記録 |
| 他職種記録と矛盾 | 看護・OT・ST記録と整合させる |
股関節ROMはどこまで減算回避になるのか
股関節ROMだけでは、拘縮予防を主目的とした他動的訓練と判断されるリスクがあります。
実務上、股関節ROMは離床前の準備として行うことがあります。しかし、「股関節ROM実施」のみでは、活動性向上や離床へ向けた過程が記録上見えません。そのため、以下のような文脈を合わせて残すことが重要です。
- 起居動作・移乗動作につなげる目的
- ギャッジアップや座位保持へ向けた準備
- 起立性低血圧への段階的介入
- 寝返り・起き上がり練習の実施または試行
- 自動運動・自動介助運動の実施
- 端座位に至らなかった理由
- 次回の離床計画
つまり重要なのは、「ROMをしたか」ではなく、「離床へ向けた一連の過程として説明できるか」です。
監査で安全寄りに見えやすい記録例
安全寄りの記録では、目的、実施内容、患者反応、中止理由、次回方針を1つの流れで残します。
記録例
離床へ向けた準備として、血圧変動に注意しながら体幹・股関節の自動介助運動を実施。ギャッジアップ後に起き上がり動作練習を試みたが、倦怠感が強く端座位には至らず終了。終了後の血圧低下は軽度で、気分不快なし。次回も血圧を確認しながら段階的離床を継続する。
このように書くと、「ベッド上ROMだけ」ではなく、離床を目指した段階的介入だったことが伝わりやすくなります。
避けたい記録例
ベッド上にて両下肢ROM実施。著変なし。
この記録では、拘縮予防目的なのか、離床準備なのか、患者の反応はどうだったのかが分かりません。療養病棟では、端座位まで進めない日もありますが、その場合ほど「なぜ進めなかったのか」と「次にどうつなげるのか」を残すことが大切です。
現場で重要になりそうなポイント
離床10%減算では、活動性向上につながる介入かどうかを記録で示すことが重要です。
今回の制度は、「端座位ができた患者だけを評価する制度」ではありません。むしろ、ベッド上で終わった場合でも、離床へ向けた段階的介入や能動的要素があったかが問われる制度と考えると整理しやすくなります。
臨床では、特に以下の5点を意識して記録すると、院内で判断を統一しやすくなります。
- 離床へ向けた目的があるか
- 他動的訓練のみで終わっていないか
- 能動的要素が含まれているか
- 端座位に至らなかった理由が記録されているか
- 次回方針が書かれているか
特に療養型・慢性期では、「今日は離床できなかったが、離床を目指した介入は実施している」というケースが少なくありません。単なるROM記録ではなく、活動性向上へ向けたプロセスを残す視点が重要です。

5分で確認する記録チェック
記録後は、次の5項目を確認すると、減算対象に見える記録を減らしやすくなります。
| 確認項目 | 記録に入れる内容 |
|---|---|
| 目的 | 離床、起居、移乗、座位耐久性など |
| 内容 | 自動運動、起き上がり練習、ギャッジアップなど |
| 反応 | 血圧、疼痛、倦怠感、気分不快など |
| 中止理由 | なぜ端座位や移乗に至らなかったか |
| 次回方針 | 段階的離床、座位時間延長、再評価など |
この5項目が入っていれば、「ベッド上で何となくROMをした記録」ではなく、「離床へ向けた臨床判断を伴う記録」として整理しやすくなります。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
ベッド上ROMだけだと減算になりますか?
拘縮予防等を目的とした他動的訓練のみの場合は、減算対象となる可能性があります。一方で、自動運動、起き上がり練習、座位保持へ向けた段階的介入などが含まれていれば、減算対象外として整理できる余地があります。
端座位に至らなかった場合も減算ですか?
端座位に至らなかっただけで、直ちに減算とは限りません。疑義解釈では、離床を目指して臥位から座位へ移行しようとしたが、結果的に端座位に至らず終了した例は、減算対象外となる事例として示されています。
「離床準備」と書けば減算回避できますか?
文言だけでは不十分です。離床へ向けた目的、実施した内容、患者の反応、中止理由、次回方針まで記録することで、実際に離床へ向けた介入だったことを説明しやすくなります。
車椅子へ移乗した後に訓練室でROMのみを行った場合はどうなりますか?
疑義解釈では、車椅子へ移乗したうえで訓練室に移動し、訓練室のベッド上で他動的な関節可動域訓練のみを行った場合は、減算対象外の例として示されています。ベッド上から移動しているか、離床を伴う過程があるかが判断上のポイントになります。
次の一手
離床10%減算の記録では、「離床できたか」だけでなく、活動性向上へ向けた過程を残すことが重要です。制度全体や院内定義も合わせて整理しておくと、記録や監査対応を統一しやすくなります。
参考文献
- 厚生労働省.疑義解釈資料の送付について(その2).2026.https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001689076.pdf
- 日本作業療法士協会.令和8年度診療報酬改定 疑義解釈について.2026.https://www.jaot.or.jp/files/page/seido/r8shinryo_QA2.pdf
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下

